【リバイバル】竹島、五輪、天皇 その5 Mr.ホワイト

  • 2017.03.18 Saturday
  • 13:46

まとまらないまま、ものすごく遠回りをしてきました。戻りましょう。
天皇謝罪要求がなぜ日本人を逆上させたか。先に私は次のようなセリフでその本音を例示しました。
「オレらのことは何と言われても構わん、だがあいつのことを悪く言うのはオレらは絶対に許さねえ。」
天皇のことを悪く言うことを私たちが許せないのは、まず、天皇が「和」を支える重要な存在であり、
しかもそれは圧倒的な力を持ちながらそれを行使しないといういわば献身的な姿勢が基礎となっているため、
私たちは天皇に対し何か非常な人格者のようなイメージを持ち、自己犠牲に感謝していることも要因としてあるでしょう。
さらに言えば、天皇に対し謝罪を要求するという行為は、私たちが最重要視している「和」を乱す行為に映ります。
これに加え前述のとおり、少なくとも私たちにとっては、行為主体でない天皇には責任があるはずがないのです。
一言で言えば、「あの人はホントいい人だし、何も悪いことなんてしてねえだろうが!」。

韓国人は、天皇謝罪要求によって逆上する日本人の感情をまったく理解できていません。
わかるわけがないのです。日本人にも説明できないのですから。
「非礼」とか「常軌を逸している」と非難していますが、こんな言葉で韓国に伝わるわけがない。
私がずっと興味を持っているのは、この論理的にうまく説明できない私たちの思想です。
長らく日本人の感覚の奥底にビルトインされている伝統思想がいまだに生き続けていることが、
今回の天皇謝罪要求に対する日本の反応と韓国の驚きでわかりやすく実証されたように思います。

長くなりましたので、最後に本論をまとめておきます。

・少なくとも私は、竹島上陸よりも天皇謝罪要求にキレた。
・天皇を崇拝していない自分がなぜキレたのかをうまく説明することができない。
・天皇は日本の中心にいながら実権がない。まわりの人間は天皇のまわりで世の中を回す。
・かといって天皇が不要なのではなく、天皇は中心の巨大な空白として存在する必要がある。
・天皇という中心がいることで話し合いの場が設けられ、天皇という中心が無言でいることで話し合いが機能する。
・天皇は自分を犠牲にしてみんなのことを思ってくれているいい人だ。(と日本人が思っている。)
・天皇は何も言ってないし何もやってないんだから、謝罪する責任なんてない。(と日本人が思っている。)

なお、本文はすべて私見によるものであり、自分自身が混乱しているがゆえに、
文章も混乱し、極論に走っていますが、日本人のひとりの見方として鷹揚に読んでいただければと思います。

 

【推薦文】 推薦者 ハッタリスト

世の中、理屈が通じるとき、通じる相手、通じる場合は限られているので、それが通じないとき僕は無力です。Mr.ホワイトは理屈ではないことを語り、しかもしばしば理屈以上に説得力がある。そういうことをされると、僕は困ります。

【リバイバル】TPPをめぐって その1  Mr.ホワイト

  • 2017.03.17 Friday
  • 12:05

TPP交渉参加の是非が選挙の論点になっているが、
この論点、ちょっと判断が難しすぎるのではないかと感じている。
私自身、まったくわからなかったので、5冊ほど関連本を読んだ。
それでもやはりよくわからなかったのでネットで調べたら、いよいよわからなくなった。
単純に、推測に依拠する部分が多すぎるのだ。

なぜ推測の部分が大きいかというと、日本は交渉に参加してもいないので、
もしTPPに参加するとなった場合の条件が決まっていないからだ。
いま政治家や識者がうだうだ噛み合わない議論をしているのは、
この前提部分の「TPPの条件」について意見が割れているのが原因のようだ。

さらにややこしいことに、TPPの議論には様々なイメージの「ノイズ」が入っている。
例えば、反TPPの人はよく「アメリカの陰謀」と言う。
アメリカは輸出を増やしたいだけだからいっぱい買わされるぞ、
日本の国民皆保険制度がアメリカに崩壊させられるぞ、と陰謀論を振りかざす。
しかし陰謀も何も、TPPは交易を盛んにするためにやるんだから当然輸入は増えるし、
アメリカ政府自身が国民皆保険制度導入に向けてがんばっているところなのに、他国の制度をつぶすわけない。
「アメリカの陰謀」論はデマに近いもので、有意義な議論にとっての「ノイズ」でしかない。
逆に、TPP賛成の人はよく「鎖国」をしていてはいけない、と声高に叫ぶ。
鎖国という言葉だけを聞くと、壁を高くして内に閉じこもっているイメージを持ってしまうが、
日本の関税率はすでに国際的に非常に低い水準にあって、すでに十分に「開国」されている。
「鎖国」というマイナスイメージの言葉をあえて使い、「バスに乗り遅れるな」という危機意識を煽っている。
このように、TPPのまわりは固定観念を植え付けようとする「ノイズ」が多く存在している。

【リバイバル】TPPをめぐって その2  Mr.ホワイト

  • 2017.03.17 Friday
  • 12:04

そして、最大の問題がTPPの「専門性」である。
そもそもTPPというスキーム自体が難しいことに加え、各方面に影響を与えるが故に、
各業界の専門家達がしゃしゃり出てきて好き放題に専門的なことを言っているし、
同じ業界の専門家でも意見が違ったりして素人には何のことだかさっぱりわからない。
この「専門的で何言ってるかよくわからないこと」そのものにも問題があるのだが、
それよりも問題なのは「専門的なことを言っているようで完全に間違っている」場合だ。
例えば、「TPPに参加すれば海外から安いモノがたくさんはいってきてデフレになる」
とTPP反対派はよく言っているが、この考えは経済学的には完全に間違っている。
デフレとは簡単に言えば買い控えによる物価下落のことで、価格競争による物価下落はデフレとは言わない。
単に価格競争でモノの値段が下がっているだけの場合、消費者は余ったお金で他のモノを買うからだ。
ところが、経済学を知らない人間はデフレと言われればそうかと思ってしまう。

話は長くなるが問題はまだある。それは「それぞれの立場の主張の強さ」だ。
TPPは様々な方面に影響を与えると考えられていて、ということは様々な産業で環境変化が起こる。
変化が起きればチャンスも生じるが、同時にいま手元にある仕事がなくなる可能性もある。
経済界はやたらとTPPを押しまくっているが、日本国内では逆の反応が起こるのが当然だろう。
コメの関税がなくなったら日本農業は沈没する!
海外の安い労働者が入ってきたら日本人の仕事がなくなる!
それを各業界が主張するのは自由だが、各業界の声が大きくなればなるほど、
全体最適化こそが命題であることを政治家もわれわれも意識する必要がある。

ややこしくなってきたので、ここまでの議論をいったん整理する。
TPPはとてもわかりにくい。主な理由は以下のとおり。

 1.ほとんど推測で議論が行われている。
 2.イメージのノイズがある。マイナスイメージがすり込まれやすい。
 3.専門性のノイズがある。専門用語はよくわからない。
 4.それぞれの立場の主張が強い。全体でどうなのかが見えにくい。

私がTPPをめぐる議論について思うことは、これがほとんどである。
すなわち、「ノイズを出すな、ノイズを聞くな、クリアな議論をしてくれ」ということだ。
こんなことをあえて言うのは、私自身が情報を集める中で苦しんだからである。
何がまともな主張なのかを選別することすら難しい状況なのだ。

【リバイバル】TPPをめぐって その3  Mr.ホワイト

  • 2017.03.17 Friday
  • 12:03

私が言いたいことは以上だが、具体的にどのように情報を収集し判断したかを述べておく。
ただし、私は経済学部出身であり、考え方は偏っていると思う。
TPPに参加したほうがおもろくなるやん、というのが基本姿勢。
市場の機能を過信しているかもしれない。そのあたりのバイアスを考慮に入れていただきたい。


■TPPは経済の問題か、それとも政治の問題か。

TPPは経済の問題ではない。
経済界で反対意見は少なく、経済学者も一部を除いては反対していない。
もちろん、グローバリズムの弊害や市場の失敗についても経済学者は考えているが、
だからといって保護主義をすべきだと言う経済学者はいない。一部のエセ経済学者を除いて。
TPP反対派の主張においても、経済に悪影響を与えるという明確な主張はほぼ見られない。
(あえて言うならば、デフレになる、格差が広がる、といった根拠のない主張はしているが。)
したがって、TPPは政治の問題であると割り切ったほうがわかりやすい。
つまり、TPPの問題として考えられるのは単純に言えば次の2つである。

 〃从囘損失以外の損失を被る可能性がある。
 ∩澗里箸靴討老从囘便益を受けるが、特定の人間が経済的損失を被る可能性がある。


■TPP参加の「交渉」にすら反対するのはなぜか。

TPP参加の「交渉」にすら反対している政党がある。
TPPがどういう条件かはまだ決まってもいないが、絶対に不利だという「推測」をして、
交渉に参加してしまえば現実的にはそこから離脱することは難しくなるため、参加交渉そのものに反対している。
常識的には、ちゃんと交渉してダメだったら撤退すればいいじゃないかと思ってしまうが、
確かにTPP交渉にいったん乗り出せば、そこから離脱することは実際には難しいかもしれないが、
「いったん交渉したらもう離脱できない」というメッセージを暗に出してしまっているのが気持ち悪い。
交渉なんだから撤退はできるし、TPPは日本を求めているから、強い立場にあると言っていい。
いかに戦略的に交渉を行うかを議論すべきなのに、交渉参加するか否かでもめていることですでに交渉に失敗している。

【リバイバル】TPPをめぐって その4  Mr.ホワイト

  • 2017.03.17 Friday
  • 12:01

■輸出の拡大について

(賛成派)
原則関税撤廃なので、TPP参加によって輸出は増える。

(反対派)
諸外国の関税率など大したものではない。むしろ円高が問題で、輸出は増えない。

(私見)
円高は確かに輸出に不利となっているが、輸出拡大には関税は低いに越したことはない。
また、まず円高を是正すべきだという意見が多いが、基本的に為替操作はできない。
韓国が為替介入できているのはウォンが二流通貨だからであって、円では現実的に不可能である。
さらにいえば、そもそもTPPの目的は輸出の拡大ではない。交易による経済活発化である。
輸出の増加は必ず輸入の増加を伴う。われわれは輸入するために輸出するからだ。
結論を言うと、輸出が増えないことはTPP反対の理由にならないし、輸出はおそらく増える。
ただ、輸出を増やすためにTPP参加すべしと言うのも説明不十分である。


■デフレについて

(反対派)
TPPに参加すれば海外から安いモノがたくさんはいってきてデフレになる。

(私見)
上述したがこれは完全にウソ。価格競争による物価下落はデフレではない。
TPPに参加してなかったこれまでもずっと日本だけがデフレだった。
TPPとデフレは直接関係ないし、グローバリズムとデフレも関係ない。


■低賃金労働者の流入について

(反対派)
TPPへの参加により、東南アジアや南米諸国から低賃金労働者や技術者が多量に流入する。

(賛成派)
単純労働者の受け入れはTPPの議論の対象外。低賃金労働者は流入しない。

(私見)
すでに中国人が山ほどコンビニでバイトし、北関東に行けば多くのブラジル人が車を作っている。
TPPとは関係なく低賃金労働者の流入は進んでいるし、社会はそれを受け入れてしまっている。
おそらく、海外からの労働者の流入は増えるだろう。それによって日本人の雇用は減るかもしれない。
しかし、これからはそんな外人の低賃金労働者程度の仕事しかできないようじゃダメなんだろう。
この点について私個人は過激な見解を持っていて、能力のない人は仕事がなくて当然だと思っている。
日本人であろうとなかろうと、できる人には仕事が与えられ、そうでない人は安い賃金で働けばいい。
ただし、「日本語が話せること」は外人にとっておそろしく高い障壁で、
逆に日本人にとっては大きなアドバンテージになっているから、そう簡単に日本人が職を失うことはないだろう。

【リバイバル】TPPをめぐって その5  Mr.ホワイト

  • 2017.03.17 Friday
  • 12:00

■格差について

(反対派)
TPPは大企業に有利で中小企業には不利である。中小企業は経営が厳しくなり格差が拡大する。

(賛成派)
TPPに参加しない場合、大企業は生産拠点を海外に移すことになる。
中小企業は大企業を得意先にしている場合が多く、大企業の生産拠点が海外に移転して困るのは中小企業だ。
ゆえに、TPP参加によって中小企業も恩恵を受ける。

(私見)
中小企業が差別的な取扱いを受けているとはあまり思わない。
日本では下請法なども厳しく、税制面での優遇措置もある。
日本で一番金を持っているのは大企業の役員ではなく、中小企業のオーナー社長である。
また、格差が拡大しているという説自体、個人的に信用していない。
ある経済学者の実証研究によれば、格差に関する現状は一言で説明できる。
「同世代間の格差は過去に比べて拡大していない。ただし、世代格差は拡大している。」
中小企業どうのこうの言うよりもまず、世代格差解消に向けた現実的な努力が先だろう。


■農業について

(反対派)
TPPによって廉価なコメが流入すれば、日本農業が崩壊し、食料自給率の低下は必至である。

(賛成派)
日本の農業は過度に保護されてきた。コメの関税率は778%と他に比べ異常な水準だ。
日本のコメは品質も良く、食料需要が急拡大する中国などでも競争力を持っているはずだ。

(私見)
TPPに参加すれば、コメに関しては農家にとって厳しい状況となるだろう。
牛肉などの輸入も増加すると思われるため、畜産農家にとっても同様だろう。
賛成派は「関税をかけるという方法ではなく、農家に所得補償などをすればいい」と言う。
その方法は理にかなってはいるが、果たして現実的にどこまで実施可能なものか。
確かにTPPは農業にはマイナスと考えられるが、日本農業の本当の問題はTPPではなく、むしろ高齢化のほうだろう。
たとえTPPに参加しなくとも、今のままでは急速に衰退する。
逆に言えば、これまでロクに手を打ってこなかったということで、
TPPがどうこう言う前に、それに対する対応策を何か持っているかが問われる。
私は父母の実家がいずれも農家だが、農業が衰退することはやむをえない流れだと考えている。
また、食糧自給率が低下してはならないというのは、農水省が勝手に言っているだけで信じる必要はない。
食糧自給率が低下して困るのは、\鐐茲覆匹砲茲蠖糧輸入が断たれたときと、∪こεに凶作になったときくらい。
,脇本が世界を相手に戦争するなんてことはないだろうし、どう考えてもTPPに参加したほうが輸入は確保できる。
△論こΔ凶作になっているのに日本が豊作ということはないだろうから、どっちにしても食糧価格は上がる。
日本国内の食糧確保という観点からは、食糧備蓄と貿易ルートを確保しておくことが重要で、
なぜ食糧自給率を上げなければならないかについては私には理由がよくわからなかった。


他にも論点はあるが、これくらいにしておく。TPPの議論を調べるのは非常にストレスだ。
みんなの立場にたって考えてしまうがゆえに、何も決められない日本人の特徴がよくあらわれている。
自分で書いていて何だが、議論がぐちゃぐちゃしている。
どこが政権をとるのかわからないが、いまはとにかく説明不足だ。よりクリアな議論をしてもらいたい。

 

『【テーマ】TPPをめぐって シリーズ』 寸評 文責:Mr.Pink

 

 

みなさま、ごきげんよう。久しぶりのMr.Pinkでございます。

こんな深夜に(今書き染めているのは午前2時20分)原稿に追われて、ガリハさんに追われて必死のパッチで書き進めております。

 

今日はなんと、「ホワイトデー」世間一般では殿方から淑女のみなさまにお返しがもらえるという素敵な日。

ちなみに、マシュマロを送った貴男(あなた)。それは、お前とは(どうでも)いいオトモダチの関係でいましょうねというサインだそうです。

 

ブッ…ブフッ!!

見た目と違って、結構えげつないわね。

 

さて、そんなこんなでプリミエールでは「Mr.ホワイトを讃える日」だそうです。

ホワイトを讃える日、ねぇ。なんで、ホワイトだけいい目に…いい目に…いい目にあうんでしょうね?!

 

てか、なんでそんな企画が、締め切りを月の半ばにして要請してくるんだか。…200近くある作品から一つ選んで褒め称えよって。。。読者のアナタよりA.ハッガリーニの方がえげつないわ。ホント。

 

というわけで、今日ご紹介いたします作品は、こちらっ!

TPPをめぐって』著Mr.ホワイト!!

 

いよっ!待ってました、大統領!

 

この作品は昔テーマコンテストで「TPP」を題材にした作品でシリーズ5集を出した大立者。これを読まずしてプリミエールは語れないっ!という圧巻の作品でございます。

 

国論を二分して、ガタガタ騒いだ上に、担当大臣が問題起こしてやめちゃって、無理に国会に通した挙句アメリカには捨てられ、国会審議の日程を誤ったせいでパリ条約(COP)の批准に間に合わなくて世界から取り残されたという悲惨なTPP議論。

もう一度ここで確かめることができます。ぜひ、おすすめ♡

【リバイバル】オーロラになれなかった人のために Mr.ホワイト

  • 2017.03.16 Thursday
  • 12:00

 いま思い返せば、私が小さい頃、我が家は相応に貧しかったのだと思います。昭和が終わろうとするその頃にはすでに古くガタがきていたくすんだアパートの、その狭い一室で家具に埋もれるようにして私たち家族5人は、普段は貧しさを実感することもなくのんびりと暮らしていました。私の父は公務員で、今でこそ給料が安定した良い職業と思われていますが、バブルの当時の公務員は銀行員の半分程度の給料しかなく、物価が高騰する中そのわずかな給料で子ども3人を養っていたのですから、生活に苦労したのも当然のことでした。

 しかし、その頃の私はまだ小さな子どもでした。自分の生活が貧しいかどうかなど判断できませんし、そもそも子どもにそのような発想はありません。畳がカサカサになるような古い部屋に住んでいようと、よその家庭からもらったお下がりの服を着ていようと、少なくとも私にとってはそれらはどうでもいいことでした。

 ある日、家族で買い物に出かけたことがあります。記憶が定かではありませんが、歳は、姉が8つ、私が5つくらいの頃だったように記憶しています。父が文庫本を買い母が食料品を買うだけの、いつもと同じ買い物のはずでしたが、いつもと違ったのは、姉が服の売り場から離れなくなったことです。姉の目の前にはカラフルなスカートがあって、姉はぼうっとそれを見ています。「行くよ」と母が言っても、「うん」と返事はするものの目はスカートから離れません。見かねた母が「欲しいの?」と聞くと、「ううん」と首を横に振ります。そんなわがままを言えるはずはありません。それでも、目はスカートにはりついたままです。どうしよう、と母がため息をついて父のほうを見ると、父はスタスタと歩いて行ってスカートを手に取り、「これ、買ってくるよ」と姉に言いました。姉は「いいよ、いらないから、本当にいらないの!」と父の腕をひっぱりましたが、父は「まあ、まあ」とニッコリ笑って、そのスカートを買ってしまいました。姉は喜んでいいのかどうかわからず、渋々とそれを受け取りました。母が父に「ありがとう」と言っていたのが、子どもながら心に残っています。

 家に帰ると早速、鏡の前でスカートの試着です。姉は恥ずかしがってスカートをはこうとしませんでしたが、そこは母がきっちりとはかせました。そのカラフルなスカートは古ぼけたアパートには似合いませんでしたが、姉には不思議とよく似合っていました。姉は喜びを隠しきれず、我慢しようとしても笑みがこぼれてしまいます。そして、鏡の前でくるっとターン。スカートがオーロラのように、ふんわりと波打ちました。こんなことを私が今でも覚えているのは一体なぜなのか、自分にもよくわかりません。美しさとうれしさがないまぜになって、とても印象的だったのかもしれません。一つ言えることは、あのとき、私も涙が出そうなほどにうれしかったということです。

 昨年、姉は若くして亡くなりました。後年、姉と会う機会は減ってしまいましたが、今はただ、姉の人生があのときに見たオーロラのように、貧しくとも美しいものであったことを祈るのみです。

【推薦文】 推薦者 Mr.マルーン
ホワイトさんは一瞬の風景をセピア色の写真みたいにノスタルジックに切り取るのがお上手です。古びた団地の畳の部屋にスポットライトみたいに夕日が差し込んで、その真ん中ではにかみながら真新しいスカートを翻す少女と、それを見つめる弟の姿が、美しく浮かび上がります。

【リバイバル】僕らが早く帰る理由  Mr.ホワイト  

  • 2017.03.15 Wednesday
  • 12:00

東京の人と飲みに行くとたいていは大阪との文化比較論になるのだが、先日聞いた話には少しショックを受けた。

「東京の人は飲みに行っても21時くらいには切り上げることが多いですよね。」
「そうですねえ、みんな、家が遠いですから。遅くまで飲んでると帰れなくなっちゃう。」
「大阪人は大体、電車がなくなるまでアホみたいに飲んでますけどねー。」
「あとね、やっぱり震災以降はみんな早く帰るようになった気がしますね。無意識だと思うんですけど。」

この一言が、グサリと刺さった。アホみたいに飲んで家に帰れなくなる大阪人と、無意識に早く帰る東京人。当事者意識の差というものは、こういうところに現れてしまう。

私は東日本大震災のその日、たまたま東京に出張していて、東京の人たちがその日に見たものと同じものを見て、その日に感じたことと同じことを感じていたはずだった。翌日、なんとか大阪に帰るとその落差に愕然とした。「来週、予定どおり東京出張に行くべきかどうか」なんてことを真面目に話し合っているのだ。まるで他人事。あの阪神・淡路大震災を経験していたはずの大阪人たちが・・。でも、その時に大阪人に憤りあきれ返った私も、「震災以降はみんな早く帰るようになった」という感覚はまったく想像さえもしていなかった。この意識の差は私自身が痛感していたもののはずだったのに。

震災のことは語ってはいけない雰囲気がいまもある。あれは、言葉になんてできないと。語れるようなもんじゃないと。東北の人のことを思ってもみろよと。だから私も言葉にするのがためらわれるのだが、やっぱり、あのとき、東京の人たちは「少しだけ」死んだんじゃないかと思うのだ。一瞬、本当に死を覚悟して、ああ、もう家族とも会えないかもしれない、まだ何もしてあげられていないのに、と無意識的に感じてしまったからこそ、「震災以降はみんな早く帰るようになった」のだという言葉が出てくるのだろう。それが事実か否かはどうでもよくて、そういう言葉が出てくること自体に、やはり当事者意識が薄かった私は戸惑わざるをえなかったのだ。

あれから5年が経って、防災がどうとか原発がどうとか復興行政がどうとかいう議論がまた新聞紙面をにぎわすんだろうけど、私はむしろその無意識のほうが大事なんじゃないかと思ってしまう。人がたくさん亡くなったこと、自分も死んでいたかもしれないとみんなが少し思ってしまったこと、そしてそのことを忘れていないこと。

そう、つまり、早く帰って家族と過ごそうってこと。まだ生きてるうちに。

 

【推薦文】 推薦者 Mr.Indigo

 

「お父さんは無事に帰ってきたよ〜」

平成23年3月12日未明、私は身重の妻の腹部に手を置き、こう言葉をかけた。妻も、自分も、そして芽生えつつある新しい命も無事だった。不謹慎な表現かもしれないが、並々ならぬ喜びを感じたのは間違いない。

まだ情報が錯綜していたが、とんでもない事態になっていることはわかっていた。その中で、自分と家族はしっかりと生きている。実にありがたいことだ。人智を超えたものの存在を感じ、そして感謝の念を抱いた。

それは、Mr.ホワイトが語るところの、東日本に住む者が無意識のうちに感じていることなのだろう。

 

現代の日本人は、いささか死と離れすぎたのではなかろうか。医療や防災技術が進歩し、治安が良くなり、人があっさりと死ぬことは少なくなった。そのため、死への耐性が低くなっているのかもしれない。

だから、天災人災問わず多くの人命が奪われる事件が起こっても、直視する必要がなければ直視しない。もしかすると、本能的に目をそらしているのかもしれない。「僕らが早く帰る理由」を読んで、私はそんなことを思った。

しかし、死は誰にも必ず訪れる。いかに健康な人でも、天災や人災であっさり死んでしまう。命とはその程度のものなのだ。

Mr.ホワイトは死を知っている。そして、それを語る術を知っている。「僕らが早く帰る理由」のみならず、他の作品でもその強さは垣間見ることができる。

それは、生きていることのありがたさを知っているということでもある。生と死は一体であり、死を意識するがゆえに、人は強く生きることができるのだ。

 

〜死がくれる世にも美しい魔法、今を大切にすることができる魔法。神様、私にも死の魔法をかけて。永遠なんていらないから、終わりがくれる今を愛したいの(SEKAI NO OWARI『不死鳥』)〜

【リバイバル】アナ雪の歌について  Mr.イエロー

  • 2017.03.05 Sunday
  • 21:57

(内容についての記述があります)

「アナ雪」こと『アナと雪の女王』を見てきた。主人公が歌う「ありの〜ままの〜♪」があまりに印象深い作品だが、見た人は一様に「おもしろかった」というので、内容にも何か深みがあるのだろうと期待していた。しかし、ある点でひっかかり、内容に入れず。

 どこにひっかかったかというと、「ありのままの〜自分〜見せるのよ〜♪」とやった結果、たくさんの人に不幸が訪れたという展開のしかたである。あの歌はクライマックスではなく、けっこう序盤に登場し、エルサが国を離れ、一人雪の城を作って籠城してしまう場面であった。その結果、エルサの魔法が国全体を凍りつかせてしまった。「ありのまま」やったら、たいてい良い出来事が引き起こされるものじゃないの?という軽い混乱は、映画の最後まで頭を支配してしまった。

 なぜこのようなことが起きたのか。 日本語で「ありのまま」というのは、どちらかというと良い意味で使われることが多い。日本のように互いに気を使い合うことの多い文化では、「自分を作らず、素の自分でいる」という考え方にあこがれる人も多い。なので、主人公が「ありのままの自分を見つける」というのは、度々物語の主題にもなる。そのため、私は「ありの〜ままで〜」が序盤に早々と登場し、しかもその後不幸が訪れるという流れについていけなかったのである。

 一方、元の英語 ’Let it go’ は、どちらかというと「どうでもいいや」「どうにでもなれ」「ほっとけ」という意味。「ありのまま」と比べると、かなり投げやりなニュアンスなのである。これなら、国が凍り付いてもストーリーとして流れが自然。

 そうかと言って、「どうに〜でもなれ〜」と歌ったら、ここまでサントラは売れないだろう。日本人は「ありのまま」が好き。ということを踏まえた戦略的な訳なのか。それにしても、かなり意味が違うと思うんだけど・・・。私の混乱を返してほしい。

【リバイバル】真実はいつも一つだけっ! Mr.Pink

  • 2017.02.24 Friday
  • 18:00

でも、事実は無限にあるものなのよ?
坊や?

みなさま、おこんばんわ。
今宵も、貴男の傍に忍び寄るMr.Pinkでございます。

金曜日のアフターシックス
ほっとした、気の緩んだその瞬間。

狙います。その隙を。
頂きます。そのハート。

さあて。
これだけ、脅しておけば当分は、大丈夫やろ・・・。

突然ですが、今日は何の日でしょう。



いえ。
私の誕生日じゃありませんよ。

違います。
執筆陣の記念日じゃありませんよ。

おしい。
けど、電池月間じゃない。

正解は、「コナン切手」発売開始日でした。

・・・

って、だーさん。そんな、怒らんでもよろしいがな。
記念切手の発売日。

これ、マニアは欠かしちゃいけない、チェックポイントなんだから。

義理と褌と発売日は欠かしちゃならねぇって、昔から言うでしょ。

郵便局営業開始は、午前九時。
会社始業時間は午前八時(一時間ノーギャラ)。

この矛盾を如何にせん?
社会人ともなりますとね。

二律背反した局面をも乗り切らなくてはならない時があるのです。
よく見ておきなさい。

無理難題を、どうやってこなすのか。
取引、駆け引き。探り合い。






ピンク「すみません。一瞬だけ郵便局行かせてくださいm(_ _)m ≒ 土下座」

上司A「・・・5分で戻れるならええケド、それより遅れたら今日残業やってもらうで?(ノーギャラ)」

ピンク「(クっ・・・)かしこまりました。ありがとうございます」


郵便局が目の前にあるから、よかったものの。
これが10km先だったら、絶望的やな・・・。

とりあえず、抜け出して9時開門と同時に飛び込んで、「コナン切手30枚下さいっ!」と、怒鳴り込む変人アリ。

局員 「え?すみません。30枚、うちの割り当ての全部になってしまうのですが・・・」

ピンク「くださいっ!(睨みつける)」

局員 「え・・・ええぇ〜・・・全部はちょっと、もうしわけ・・・」

ピンク「くださいっ!(万札を叩きつける)」

局員 「あの・・・ちょっと・・・」

ピンク「くださいっ!(机を叩きつける)」

局員 「ひ、ひいぃ!」

さすがに、ビビってたなぁ。
お気の毒様。
けど、こっちも、仕事が控えてるんでね。
はよせな、今日の発注間にあわへんし。

全力ダッシュで戻って9時4分。

上司 「あと1分遅かったら、遅刻扱いで人事に報告してたで。」

・・・ひ、ひいぃ!

 

(プリミエールフライデーのリバイバル企画。

 プレミアムフライデーとは真逆の思想の会社で数寄と仕事を両立させるMr.Pinkの奮闘。)

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