【テーマ】かんげきしゃ  Mr.アールグレイ

  • 2018.05.31 Thursday
  • 23:58

時々ふと自分が空っぽであるような気持ちがします。

私はただのカメラで、目に入る風景や人間模様をただ眺めているだけ。

みんなが主人公として生きている世界で、私は傍観者として生きている。

 

そんな時、虚しいなあと若い頃は思っていました。

私も充実したドラマの主人公でありたいと。

でも今は違います。

贅沢だなあと思うようになりました。

私が主人公であったなら、他の人のドラマを眺めてのほほんとしてなんていられません。

周りにはドラマが溢れていますし、その一つ一つが愛おしいし滑稽だしとても悲しいし胸が潰れそうになったり頭に来たりもします。

そんなよくできたお芝居を見ているような気持ちがして、気持ちが動く体験というのは経験を重ねることで少なくなっていくので、とても贅沢だなあと。

 

私が大学二年生の冬、一浪して大学に入った友人が学校をやめると言い出しました。

理由を聞いてもわけのわからないことを言うばかりで、ほとほと困ってしまいました。

ずっとフリーターとして生きていく、生きるという意味から逃げたくない、今もって理解できませんが、彼は大切な友達です。

結婚して子供生まれたらどうするの?

結婚しないし、子供も産まない。

そりゃね、産むのはあんたのパートナーでしょうけど。

 

ある程度何かあっても備えてなきゃだめでしょ?

いいんだよ。

怪我したらどうするの?

怪我したら死ぬよ。怪我しなくても四十になったら死ぬよ。

ミックジャガーが言うからそれはカッコいいの。大体ミックジャガーもまだやってるじゃん。

 

という会話をして、仲の良かったはずの友人とどうしてこんなに日本語が通じないのか、頭に来るやらもどかしいやら悲しいやらで心をぐちゃぐちゃにされました。

その彼も今年でいよいよ四十歳ですが、二児の父として楽しく生きています。

子育ての喜び、難しさを嬉々として語る彼の姿を二十歳の時の彼がどう見るのかとても興味があります。

 

これからも特等席で一人でも多くの方の人生の観劇を続けていきたいと思います。

夜型人間度調査  Mr.Indigo

  • 2018.05.31 Thursday
  • 23:15

―今回の雑兵日記PREMIERダイジェストは最優秀作品賞を獲得した『夜型人間の正体 〜HSP(繊細なタイプ)の紹介〜』にちなんで、PREMIER関係者の夜型人間度を調査してまいりました。スタジオには調査を担当したスタッフを呼んでいます。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします」

―今回はどういった方法を用いたんですか?

「毎月の投票の時刻から調査しました。深夜の投票が多い方は夜型人間だと言えるでしょう」

―なるほど。

「昨年1月度から先月度まで15回の投票を皆勤した9人の方について、投票時刻の平均を出してみました。なお、匿名だった昨年12月度は除外しています」

―はい。

「24時間表記で時刻を出し、深夜は24時、25時などとします。小数点以下は6分単位でまとめました。例えば午後10時38分だと22.6、午前2時9分だと26.1となります」

―でも、それだと朝投票すれば一気に平均が下がってしまいますよね。

「はい。ですから朝5時から20時までの投票は全て20で統一しました。夜型人間度とは関係ない時間帯ですので」

―わかりました。CMの後は、いよいよ結果発表です。

 

<雑兵日記PREMIERの予想はPスポ!本紙担当・渡海文殊が4月の予想を振り返ります>

「うーむ…」

<MVPは2着まで的中ですが、イエローマザーの健闘を拾えず。最優秀作品賞は1着こそ取ったものの他は壊滅。テーマは対抗に推したミスターエックスの圧勝。悪くないような、外しているような…>

「微妙じゃな」

<ミスターエックスのテーマ作品が最優秀でも2着でしたから、この作品を高く評価できていれば良かったんですがね>

「うむ。ハイレベルなメンバーの中で自分の強みを見つけるという話はそれほど珍しくないんじゃが、日常を感じさせる内容なのが良かったんじゃろうな」

<ミスターエックスを軽視して圧勝されたこと、前にもありましたよね>

「巨人の背中じゃな」

<研究者としての思いがこもった作品を軽視する傾向があるんじゃないですか?>

「そうかもしれん。反省して次じゃ、次」

<なんか今回は元気がないですね。頼みますよ、ほんと。では来月もお楽しみに!>

 

―ではまず第9位、最も昼型の方を発表してください。

「ダックスフンドさんです。平均は20.55で、8位に1時間以上の大差をつけました。1度だけ26時39分がありますが、他は全て21時30分までに投票しています。極めて健康的ですね」

―はい。では8位7位と続けてください。

「8位はうべべさんで21.65、7位はハッタリストさんで22.09です」

―傾向はどうですか?

「うべべさんは投票時刻にかなりムラがあります。一方、ハッタリストさんはばらつきが少なく、24時以降の投票は全くありません」

―なるほど。根っからの理系であるハッタリストさんと奔放な作風のうべべさん、それぞれの個性が現れている気がしますね。

「そうですね」

―6位からはどうでしょう?

「実は6位から3位まではほぼ横一線です」

ーそうなんですね。

「傾向もよく似ていて、皆さん昼間に投票する月もあれば深夜になることもあります。9人中4人ですから、このあたりがPREMIERの標準といえるでしょう」

―では順に発表してください。

「はい。6位ヤマブキさん22.707、5位アールグレイさん22.713です。お2人の差は時間にしてわずか20秒ほど。6分単位でなくもっと細かく調べたら逆転するかもしれません」

―そうですね。

「4位Indigoさん22.86と3位がりはさん22.89も僅差です」

―ここで現在の主力執筆陣が一気に出てきました。皆さんかなり夜型と言えますね。

「そうですね。平均して午後11時前ですから」

ーでは第2位をお願いします。

「ホワイトさん。23.34です」

―意外ですね。

「午前2時以降の投票が15回中5回もありました。昼間に投票することもあるのですが…」

―午前2時以降にPREMIERに向かっているとなると、かなりの夜型人間だと考えられますね。

「そう思います」

―では第1位を発表してください。

「ホワイトさんを0.04、時間にして2分半ほど上回って1位を獲得したのは、みしぇるさんです!」

―調査対象の9人のうち7人がPREMIERの現役執筆陣でしたが、そうでないお2人が1位と9位だったんですね。

「そういうことになりますね」

―全体を通しての感想はいかがですか?

「予想されたことではありますが、かなり夜型人間が多い印象です」

―HSPの方もいらっしゃるでしょうね。

「はい。HSPは全体の2割ほどらしいですが、2割よりは間違いなく多いと思います。繊細であるがゆえに読書や文筆活動を好むという一面もあるでしょう」

―そうですね。PREMIERは在野の文筆サークルですから、夜型人間が多いのは当然なのかもしれません。

「私もそう思います」

―本日はありがとうございました。

 

<この番組はPスポの提供でお送りいたしました>

 

テーマコンテストありがとうございます Mr.X

  • 2018.05.31 Thursday
  • 21:18

「コーヒーを淹れそびれた日の話」を書いたのは4月22日の深夜だ。テーマは「デアイ」だったが、その時の自分にとってはなかなか難しいテーマだった。

 

というのは、4月いっぱいで、研究所を移ることが決まっていたからである。たまに顔を合わすぐらいの距離感の人たちと顔を合わすたびに「長い間おせわになりました云々。また機会があれば遊びにカンヌン」というやりとりを始めた頃だった。テーマが「ワカレ」だったら良かったんだけど。

 

Mr.Xのドクトリンは「意外性」である、と自分では思っている。ごく普通の話をごく普通に書いて千字読ませられれば理想的なんだけど、そんなことどうやったらできるのか全然分からない。それで起承転結でいえば、「転」に力を入れている。

 

そういうわけで、「そうだ、今回は『誰それと出会った』というのをやめて『自分と出会った』にしよう」となったわけです。

 

幸い、テーマコンテストでは7票を入れてもらって優勝することができた。さらには最優秀作品にも3票も入れていただいた。確認していないけど、今までで一番票を獲得できたのではないかと思う。

 

 

>ヤマブキさん、がりはさん、Mr.Indigo

4月のテーマコンテストは、特に執筆者が個性を出した月だったような気がします。Mr.ホワイトの「戦時下のシャンソン」やMr.アールグレイの「しんいり」と競ったとのお話ですが、その中で選んでいただけたということで、本当に光栄です。

 

>ほわいとさん

文章が上手い、とシンプルなその一言がシンプルに嬉しいです。

 

>おっともっと夏だぜさん

最優秀、テーマ両方に入れていただき、ありがとうございます。「ありがちにも思えるけれども、ぐいっと読ませる作品です」というのは、Mr.X的には望外な喜びで僥倖というやつです。

 

>たりきさん

最優秀のみ、ということですが、ありがとうございます。いやー、どういうところなんかな、めっちゃ気になります。。。

 

>マルーンさん

雰囲気が一番好みとのこと、ありがとうございます。本人からすると辛い時期でもあったので暗い感じがしてしまうのですが、気に入っていただけて光栄です。

 

>nampomさん

「人生は自分を知る旅ですよね」 仰る通りだと思います。けどこの旅、なかなか簡単じゃないですね。

 

書き終えて今眠い、という理由で6月のテーマは「睡眠」になりました。悪しからず、ご了承ください。

【テーマ】ダービー2018  がりは

  • 2018.05.31 Thursday
  • 13:00

いやー、感動しましたね、日本ダービー。

ご覧になりましたか?

競馬と言えば毎週毎週熱量の高い予想を展開するたりき、たりきが行けそうにない時はすかさず代打として予想するMr.Indigoです。

その二人がいつもより買い目を増やして予想する間隙をついて、見事的中させたのは誰でしょうか。

そう、わたくし、がりはでございます!!

いやー、ありがとう!ありがとう!!

とはいえ、馬券を買うことからはもう十年以上遠ざかっているわたくしには金の雨が降ってくるわけではありません。

身銭を切って予想をするお二人とは土俵が違うのは百も承知です。

私は純粋に筋書きのないドラマを最前列で観劇しているだけのことです。

そのドラマが格別だったのは、役者が素晴らしかったのはもちろんですが、観る側の私にPREMIERの名作「ダービー1998」があったことも大きいです。

偉大なる父洋一が取れなかったダービーに初めて乗った若き天才福永祐一の挫折と、やはり天才の武豊がダービージョッキーになった歓喜が同時に訪れた1998年のダービーの話を読み直した時に、今年は福永が取るだろうな、取らないと話が合わない、と思いました。

 

ワグネリアンと福永祐一がいつもと違って前目に取りついた時に、そうだよね、そうするよね、と思いましたが直線で追っても追ってもなかなか前との差が詰まらず、福永がいつものクールさをかなぐり捨てて柴田政人ばりの鞭で追ってもなかなか捉えられず、もう落っこちてしまうのではないかという不格好なフォームで追って、残り30mあたりでついに捉え、捉えるとぐいっと伸びて一着入線。

正座で観ていた私は自分の太ももを叩きすぎて痛いほど。

これだけ楽しんでも一銭も払っているわけではないのが申し訳ないほどです。

 

いま、この文章を書いていて、五度ほどダービーを見直したのですが、福永は鞭が多いし、がむしゃらに追っているように見えるものの、私が見たような落っこちてしまうような不格好なフォームではなく、力感溢れる感じで追っていました。

では私の魂を感激で打ち震わせたあの福永はなんだったのでしょうか。

私が見た不格好な福永は、情熱か怨念か欲求か狂気かはたまたその混合物か、何物かを全身から溢れさせ飛び散らせながら馬に憑りついたエネルギーの塊だったのですが、そんなものはパソコンのブラウザには映らないのかもしれません。

 

鉄の海(88) Mr.ヤマブキ

  • 2018.05.31 Thursday
  • 00:00

「分かりました。ステロイドは確かに色々と副作用が出る薬です。我々医療者も使わなくて済むならわざわざ使いたいわけではありません。ただし、副作用というデメリットがあっても、メリットが上回るならうまく副作用を調節しながら使っていくこともあります」

 

 褒められたやり方ではないが、時間もないので切り札を切ってしまうことにした。

 

「間質性肺炎の治療はステロイドが基本で、場合によっては免疫抑制剤の追加を行います。免疫抑制剤も相応のリスクのある薬剤ですし効果が出るのも遅いと考えられています。なので、今Tさんを救命できる治療は実質的にステロイドの大量投与しかありません。やったら助かるという保証もありませんが、やらなければ死にます」

 

 死にますよ、という脅しは医者ならではの切り札だが、本来の行動変容はより共感的に進めていくのが理想だ。例えば糖尿病患者の食事制限を促すのに、こんな食生活じゃ心筋梗塞で死にますよ、というのはうまくいかないことが多い。なぜ制限できないのか、どう工夫すれば制限できるのかを建設的に考えていく方がよりよいに決まっている。ただ、血糖が高いだけなら時間を重ねて、信頼関係を築いて、前向きに物事を引っ張っていくこともできるかもしれないが、その余裕がない今回のような場合は、そこまでこだわりきれない部分もある。医療にとって時間は何よりも貴重だ。

 

「どうしても投与しないということであればやむを得ませんが」

「どうしてもしなくてはいけませんか」

「もちろん、これ以上つらい思いはしてほしくない、という意味で治療を控えることはあります。病気と闘っていくことも楽なことではないですから」

「それは、何もしないということですか?」

「そうです。苦痛のないようにして、間質性肺炎の治療はしないというのも全然無い選択肢ではありません」

「それはちょっと……」

 

 長女に困惑の色が浮かぶ。

 

「命を助けるということなら間違いなくやるべきです」

「そうですか……」

 

 自分が悪だと思っていた治療をやらなければ父親が死ぬ、という二択を突き付けるのは酷だろう。だが患者や患者家族の気持ちがいくら大事とはいえ、医学的根拠を疎かにすることはできない。間質性肺炎に対する常識的な治療であり、ここは家族の希望に押し負けてしまってはいけない。治療を諦めて緩和治療に徹するというのもTさんにとって決して悪くない選択肢とも思うが、救命を目指すならこの医学的判断は譲れない。

 

「それしかないのなら、仕方ないですね。副作用が出たら対処してもらえるんですよね?」

「ありがとうございます。副作用についてはその都度対応していきますので」

 

 すぐにTさんにステロイドパルス療法が開始された。

【テーマ】間隙を突いた名将たち  Mr.Indigo

  • 2018.05.30 Wednesday
  • 19:55

「会議は踊る。されど進まず」

1814年9月から開催されたウィーン会議は難航した。一致団結してナポレオンを倒したヨーロッパ諸国だが、戦後処理については各国の利害が複雑に絡み合い、ほとんど何も決められなかったのだ。舞踏会ばかりが盛り上がる状況を皮肉ったのが、冒頭の言葉である。

その間隙を突いて、前年失脚したばかりのナポレオンが復権を目指しフランスに乗り込んだ。国内にはナポレオンに味方する者が多く、彼は破竹の勢いで進軍しあっさりとパリを占領した。国王ルイ18世は逃亡し、ナポレオンは皇帝の座に返り咲いた。

ところが、ナポレオンはすぐにヨーロッパ諸国と戦わなければならなかった。共通の敵の出現によって諸国が妥協に至り、ウィーン条約が締結されたためである。そして、ワーテルローの戦いで連合軍に敗れたナポレオンは再び地位を失うことになる。

これは当然の結果であろう。かつてナポレオンに苦しめられたヨーロッパ諸国が彼を放っておくはずがない。前年にフランス軍を撃破した連合軍も健在だ。いかに指揮官が優秀でも、四面楚歌の状況で勝ち続けるのは困難である。

ナポレオンは稀代の戦略家である。だから見通しの厳しさはわかっていたのではないか。無謀だと知りつつも、理想の実現を目指し最後の勝負を挑んだのかもしれない。

 

ナポレオンほどの大物ではないが、日本にも間隙を突いて一世一代の勝負に出た男がいる。明智光秀である。

天正10年(1582)6月1日、羽柴秀吉や柴田勝家が率いる織田家の主力部隊が遠征に出ている隙を狙い、本能寺に滞在していた織田信長を急襲し討ち取った。しかし、毛利家と和睦して強行軍で戻ってきた羽柴秀吉の前に敗れ去っている。

光秀にとって秀吉の迅速な対応は誤算だっただろうが、そうでなくても彼が天下を取るのは困難だったのではないか。毛利家や上杉家と対峙しているとはいえ、織田軍主力は健在である。また、織田家と同盟関係にあった徳川家を敵に回すことになるのも明らかだ。局地的に勝利を収めることはできても、敵対する勢力を全て打倒もしくは懐柔するというのは不可能に近いように思われる。

光秀が本能寺の変を起こした動機についてはさまざまな説があるが、私は光秀自身の野望によるところが大きかったのではないかと思う。黒幕がいたにしても、地位も実力もある光秀が唆されただけでリスクの高い戦いを起こすことは考えづらい。この時55歳の光秀は、千載一遇のチャンスに全てを賭けたのではないだろうか。

 

昭和16年(1941)12月の日本軍による真珠湾攻撃も似たような例であろう。こちらは前2つと異なり、アメリカ軍について十分に研究して警戒体制の間隙を突いた奇襲であった。しかし、局地的な勝利の後が大変なのは同じである。連合艦隊司令長官・山本五十六の狙いは短期決戦で戦果を挙げて有利な条件で講和することだったが、それは軍部の共通認識ではなかった。

日米の総合的な国力の差は如何ともしがたい。ましてや日本は中国や東南アジアにも敵を抱えている。実際、日本が威勢よく攻めていたのはほんの半年ほどで、戦況はしだいに悪化していった。

 

間隙を突いた勝利を躍進につなげた例もないわけではない。日本三大奇襲と呼ばれる河越夜戦、厳島の戦い、桶狭間の戦いはいずれも該当する。しかし、これらは全て領土を守るための戦いであった。

河越夜戦では河越城に攻め寄せた上杉軍を北条氏康が撃破し、上杉朝定を戦死させた。厳島の戦いでは島を攻めた陶晴賢の軍を毛利元就が撃破し、晴賢を自害に追い込んだ。桶狭間の戦いでは尾張攻略を目指した今川軍を織田信長が撃破し、今川義元を戦死させた。すなわち、これらの戦いは敵を増やすリスクが存在せず、相手を動揺させるメリット(小領主が寝返るなど)が大きかったと言えるだろう。

 

敵の間隙を狙うのは軍事行動における常套手段である。特に守勢においては起死回生の一撃となり得る。しかし、間隙を突いて敵の拠点に攻め入るのは局地的、短期的には有効であっても、それを広域的、長期的な成功に結びつけるのは困難である場合が多い。

合戦における戦術の巧拙も重要だが、それが地力の差を逆転させる可能性はゼロに近い。弱者が強者を倒すためには、守りを固めつつ内政や外交戦略によって力を付けるしかないのである。

 

【テーマ】感激おじさん  Mr.X

  • 2018.05.30 Wednesday
  • 00:39

K氏は求職中の身である。34歳男性。どうにも已むに已まれない事情で前職を退いた。結婚はしていないが、これを考えている女性はいる。退職した時、彼女はK氏を励ましてくれたが、半年を過ぎたころから何か様子が違ってきた、とK氏は感じている。

 

そんな時、「株式会社ふぃーる・ぐっと」なる会社を知った。ホームページを見たが「周りの人たちを笑顔にする仕事です」という、ほぼ無意味な内容の文章しか書かれていなかったが、一頃話題になった「レンタルおじさん」のようなものらしい。最初は無視していたが、いつも求人を出していることが気になった。まあ、これも一つの人生勉強だ、とK氏は応募することに決めた。

 

勤務初日、K氏は先輩であるL氏とともに某巨大書店へと向かった。「Kくん、今から仕事をするから、よく見ていてくれ」と言い残してL氏は書店の入り口へ向かった。本を購入し、握手会の列に並ぶ。

 

「先生の見識にはうなずかされることばかりです。朝読新聞のコラム、毎週拝読しています。どうぞこれからも、体に気をつけて」とたどたどしくかつ早口で話しながら、L氏は遠目に見てもわかるほど力強い握手をした。

 

「何だったんですか、今のは?」

「彼は最近落ち目の経済評論家でね。握手会を開くから、熱烈なファンがいてほしい、という依頼があったんだ。次は女性演歌歌手のところだが、君がやってみろ。若いファンの方が喜ばれるからな」

 

3ヶ月後、K氏はテレビの旅番組を収録している某女性アイドルに"偶然"会って感動の涙を流した。同じ日の夜、オープンしたてのラーメン屋で、食べ始めはあえて色々とケチをつけ、最後は豪快な音を立ててスープを飲み干し、絶賛した。

 

順調に業務をこなせるようになった。しかし、仕事に慣れたはずなのに、何をしてもすぐに疲れるようになった。彼女と会っても何故かどこかに違和感のようなものを感じるようになった。

 

入社して一年後、後輩ができた。L氏がやって見せてくれたように、K氏もP氏に仕事ぶりを見せた。
「業務内容、理解できたか?」
「あの女性エステティシャン、ものすごく喜んでましたよ。先輩、マジですごいですね!」

 

K氏は、久々にやる気が出てくる気がした。しかし次の瞬間ある疑念が吹き出してきた。そして、この数ヶ月間、誰と会っても違和感を感じ続けてきた理由が、明確に理解できた。

 

K氏は、再び新しい仕事を探し始めた。

父親たちの運動会  Mr.Indigo

  • 2018.05.29 Tuesday
  • 23:34

「運動会すごい人なんだって」

妻から情報を入手したのは1ヵ月ほど前のこと。長女が通っている小学校は5月下旬に運動会が行われる。入学して1ヵ月半というのはずいぶん早い。

「早い人は5時くらいから並んでるらしいよ。場所取りで」

我が家の代表として並ぶのは当然私であろう。5時でなければならないということはないだろうが、なかなか大変そうだと思った。

 

運動会の1週間ほど前から、妻がLINEで作戦会議を始めた。1年生には同じ保育園の出身者が5人いるので、母親5人で情報を共有し何事も相談している。そして、私にも断片的ながら情報が伝わってくる。

「D君のパパはやる気満々で、5時から並ぶって言ってるらしいよ」

「Bちゃんのパパは朝早くから並ぶのは嫌だって言ってて、ママが並ぶんだって」

私は見えればどこでもいいという人間なのだが、2歳の次女がいるし、まあ場所を確保する必要はあるだろう。親父A氏と親父E氏が6時過ぎに行くらしいので、私もそれに合わせることにした。

 

当日の朝5時前、妻のスマートフォンが震えた。

「Dさん?」

「うん。パパ今出たって」

6時くらいからLINEの受信頻度が高まってきた。A家とE家も動き出したのだろう。私も着替えて朝食をとる。

「あと何分かかる?」

妻に聞かれた。私がいつ着くのか知りたいようだ。

「5分かな」

「了解。E君とこは出たって」

やはりそういうことか。E家は少し遠いから、現地にはほぼ同時に着くだろう。

学校への道のりには、大きな荷物を抱えた人が何人もいた。みんなこれから列に加わるのだろう。

「おはようございます」

歩いていると親父A氏に声をかけられた。親父E氏もいる。

「Eパパ出たよって言うから急いで来たんですよ」

親父A氏は言った。私も同じようなものだ。みんな司令部から指示を受けて動いているのである。

7時に門が開き、場所取りがスタート。最前列は無理だったが、悪くない場所が取れた。

「ここでいいですよね」

「いいと思いますよ」

断言する人はいない。みんな司令部の見解を気にしているようだ。陣取った場所の写真を撮って妻に送る。親父E氏も同じことをしていた。

しばらく経つと、ここが絶好のポジションであることが判明した。1年生の50m走で使用する直線コースのゴールが目の前なのだ。すなわち、反対側から走ってくる子供たちの姿がしだいに大きくなってきて、ゴールのタイミングで写真を撮ることができる。

 

かくして場所取りは大成功に終わった。早朝から並ぶのは面倒だが、行ってしまえばおっさん同士で雑談しているだけで時は過ぎる。弁当を作りながら子供に準備をさせる母親諸氏に比べれば楽なものだと思った。

いろいろ思うことがあるにしても、司令部に従っていれば家庭円満で成果も出せる。ならば、おとなしく先遣隊として働いていればいいだろう。

 

さて、午後になり1年生の競技が全て終わると、父親たちは違うことが気になってくる。

「今日打ち上げやるんですかね」

「さぁ…どうなんでしょう」

「ちょっと飲みたい気はしますけど」

「聞いてみるしかないですね」

やはり、司令部にお伺いを立てないと何も決められないのである。

 

後日妻から聞いた話だが、今回並ばなかった親父B氏も「来年は並ぶ」と言っているらしい。賢明な判断だと思う。

野球偏考(11) たりき

  • 2018.05.29 Tuesday
  • 00:00

書こう書こうと思っている内に開幕から2ヶ月が経過し交流戦を迎える時期になりました。

阪神タイガースは開幕から不甲斐ない試合を続けていた印象ですが、交流戦前にチームの状態も上向いてきていい形で交流戦を迎えることができそうです。

それでは昨年同様にまずはチーム全体の成績を並べてみます。下段は昨年の交流戦前の成績です。

チーム

試合

引分

得点

失点

本塁打

盗塁

打率

防御率

広島

45

27

17

1

216

179

46

26

.254

3.69

 

44

24

19

1

228

186

40

36

.275

3.82

阪神

44

23

21

0

145

160

24

27

.231

3.23

 

40

25

15

0

169

141

28

20

.248

2.92

DeNA

44

21

21

2

176

170

53

29

.251

3.42

 

42

18

22

2

148

185

26

14

.242

4.06

巨人

46

22

23

1

218

193

40

21

.273

3.97

 

41

21

20

0

141

141

28

23

.243

3.20

中日

47

22

24

1

194

208

33

28

.263

4.11

 

43

16

24

3

132

164

26

26

.246

3.45

ヤクルト

44

17

26

1

185

224

39

27

.252

4.54

 

42

19

23

0

153

154

23

17

.244

3.29

 

昨年と比較すると打率、防御率ともに悪化していて貯金2という今の成績はうなずけるものです。むしろ、失点が得点を15も上回っているわけですから貯金があるだけマシと言っても過言ではないでしょう。

 

 

昨年からの課題だった打撃陣は昨年よりさらに悪化しておりチーム打率はリーグ断トツの最下位です。

まず第一の原因として、4番として万全と思われたロサリオの状態が上がってこないことが挙げられます。キャンプやオープン戦当初の評判からそこそこの活躍はできるものと思われていましたが、いざ開幕してみるとなかなか打率が上がってきません。外に逃げるボールを注意深く投げていれば簡単に打ち取れるという方程式が出来上がってしまっています。

個人的には、開幕前から私自身もそこそこの活躍ができると見込んでいました。今年の4番は安泰だろうと。今の状態は予想外ではありますが、ただ思うのは、他のチームメイトが何かしらの活躍をしたときに一番に寄って行って一緒に喜ぶ姿に非常に好感が持てます。マジメな選手らしいですから、悪循環に陥ることだけが心配で、今ももしかしたらその気配があるかもしれませんが、しっかり立て直してもらいたいものです。

 

次には内野陣ですね。

キャンプのときに当初セカンドに挑戦させてた大山をサードに固定してセカンドに鳥谷を回したことは結果論にはなりましたが失敗と言わざるを得ないでしょう。上本はスタメンで大活躍していた最中にケガをしてしまって、それは元々ケガが多い選手だったとはいえ残念過ぎますが。。

大山にポジションを与えてしまったことで、本人にそのつもりはないでしょうが慢心してしまったのかまったく状態が上向いてきませんでした。交流戦前の2試合連続で猛打賞を記録し、競争の中で状態が上がってきた印象があるのは何よりですね。(2戦連続猛打賞を記録してもなお打率2割そこそこというのはこれまでどれだけ打率低かったんだよと思いますが。。)

鳥谷は昨年サード転向して復活したのに今年またセカンドに再転向してこのように調子を落としているのはちょっとかわいそうな気もします。

糸原はキャンプからアピールして、今でもなかなかの打率を残しています。安定的に期待できるという意味ではいなくてはならない選手と言えるでしょう。

あとは植田の活躍も嬉しいですね。打つ方が大丈夫かなあという印象があったのですが、そこそこの打率、そしてなかなかの出塁率を残しています。盗塁できる選手がいるというだけでも相手投手にはプレッシャーになるでしょう。今後さらなる活躍を期待したいですね。

 

外野陣は、個人的には若手で残り1枠を競うというキャンプからオープン戦の報道に疑問を持っていました。糸井、福留の出場を脅かすような若手の出現を望まないのか、と。

結果として、両ベテランは開幕から一定の活躍を見せる中、外野のあと1枠はまったく埋まることも見せずに今に至っています。

俊介は昨年のような打率を残すことができず、高山もまったく状態が上がってこないまま。最近になってようやく江越や中谷が一軍に上がってきたものの二軍で抜群の成績を残してきたというわけではないみたいで。。

中谷はここ2戦でなかなか印象的な活躍をしているものの、打席を見た限りは確実性があるようには見えませんでした。持ち前の長打力に加えて一定の確実性を早く身につけてもらいたいものです。

 

昨年から、野手陣はキラリと光るところがありそうな若手こそ何人も見かけるものの一軍でレギュラーを任せるにはちょっと足りない選手ばかりというイメージです。

この中から抜け出す若手がいるのか、これからの動向に注目です。

 

 

投手陣の方は、個人的には予想したくらいには頑張ってくれているという印象があります。

昨年のこの時期は評価も絶頂だったリリーフ陣は昨年ほどの勢いはないものの、昨年から急落したというわけではなくてまずまず頑張ってくれているという印象です。調子の良い選手、悪い選手がいる中で今のチームとしての状態を保ってくれていますから、今年も昨年くらいの安定感で頼っていいものと期待できそうです。

 

先発陣は昨年以上の状態ではないでしょうか。

メッセンジャーは開幕から好調を維持していて、調子が悪い中でも何とか最低限の仕事をするというエースらしい活躍を見せてくれています。好不調の波こそあるかもしれませんが、一年を通しての活躍を期待してもいいでしょう。

秋山も昨年再ブレークからの2年目のジンクスもなく、勝ち星こそなかなか先行しないものの安定した投球を見せてくれています。四球が少ないピッチャーだけに安心して観戦できるのがありがたいですね。

 

開幕前、先発陣はメッセンジャー、秋山、能見、藤浪までは当確で残りの2枠を争う形と報道されていましたが、個人的には違和感がありました。メッセンジャー、秋山はともかく能見、藤浪はどうなのかなあと。

藤浪はコントロールがばらつくところが一定レベルまで戻れば十分活躍できるでしょうが、オープン戦を見ている感じでは怪しいものでしたし、能見は昨年から初回失点してしまう印象があって、たまにローテーションの谷間に先発させるのであればともかく、ローテーションの一角に加えるのは厳しいという印象でした。

藤浪は、昨年からいろいろな手段をチームとして試して何とか復活しないものかと頑張っていますが、なかなか好転の兆しが見えません。精神的なところも大きいようですから、あとは本人次第というところもあるかもしれませんが。。昨年チラッと見かけたトレードも一つの方法ではないかという意見はそのときはあり得ないと思っていたのですが、今ではその方がいいのかもしれないと思い始めてきています。

(西武に移籍した榎田があれだけの活躍をしてくれることは本当に喜ばしいです。)

 

当初の予定と随分変わってきてしまっていますが、今の先発ローテーションはなかなかバランスが取れているのではないでしょうか。

まず、昨年は2年目のジンクスなのかまったく活躍できなかった岩貞が安定した成績を残してくれているのは嬉しい限りです。昨年は四球でリズムを崩すことが多かった印象ですが、今年はそんなこともなく自信を持って投げることができているのでしょうか。一昨年個人的に成績を見比べていたDeNAの今永選手は、昨秋ポストシーズンで素晴らしい活躍を見せてかなり水をあけられてしまったと悔しい想いでした。今年は巻き返しを期待したいものです。

昨年、監督が我慢して先発で使い続けた小野は今年はローテーションとしてなくてはならない投手となりつつあります。四球は今でもやや多い印象はあるものの、経験を積んでもっと安定感のある投手へとなっていってほしいものです。

 

個人的に、昨シーズンオフの一番の補強ポイントは左の先発候補と考えていました。能見はさすがにそろそろ年齢が気になりますし、岩貞が復活してくれたとしてもやはり少ない印象があります。岩崎が先発に戻るかもしれないといった報道もあったように記憶していますが、せっかく中継ぎでいい活躍を見せてくれたのに、また今の阪神の中継ぎ陣では貴重なロングリリーフを任せられる投手なのに、やめてくれと思っていました。

ドラフトでも即戦力左腕を1位指名してくれないかと思っていましたが。。ドラ1ではありませんがドラ2で高橋遥を指名し、肩の不安がある中ではあるみたいですがなかなかの投球を見せてくれているのは嬉しい限りです。肩の状態との兼ね合いになるかもしれませんが、これからも良い投球してくれることを楽しみにしたいと思います。

高卒2年目の才木が巨人戦で素晴らしい投球を見せてプロ初勝利を挙げました。昨秋に一軍のマウンドを経験して期待された2年目。早くも結果を残したことは自信になるでしょうか。これからまだまだ山あり谷ありかもしれませんが、ローテーションの一角をつかみ取るような活躍を期待したいですね。

 

 

総じて、若手選手は投手陣では安定した活躍を見せ始めてくれているものの野手陣ではまったく物足りないものです。

今後、若手野手陣でどの選手がどのようなアピールを続けていくのか注目です。

【テーマ】間隙婦人 Mr.ヤマブキ

  • 2018.05.28 Monday
  • 00:22

 安い物件には色々理由があって、ここを選んだときは駅から多少遠いくらいかと思っていたが、いざ住んでみると分かる。こちらのベランダのすぐ向かいにもう一棟アパートがあって、その廊下側が面している。要するに、丸見えなのだ。どちらが丸見えなのかこの際不問に付しておくが、とにかく落ち着かない。特に、夜寝る前にベランダで煙草を吸う習慣があるせいで、飲んで帰った住人が廊下を歩いて自室へ入るまでの一部始終を目撃する羽目になる。ほとんどは途中でこちらに気付くので、気まずそうに鼻歌を止めてさっさと自宅へ入ってしまう。

 そこに新しい入居があった。といっても元々空いていたのも知らなかったし、ただある日、廊下で見かけた見知らぬ女がさっと部屋に入っていっただけのことだった。その女は濃い青の嵩高い帽子を被り、こちらに気付くと目深にして、走るみたいに速足で扉の向こうへと逃げ込んだ。変わった女だと思ったが、見かけたのはそれきりだった。

 

 挿絵1

 

 その夜、いつものように煙草を吹かしているとガチャリと小さな音がした。星の瞬きの聞こえてきそうな静かな夜、それ以上の物音は聞こえなかった。特に気にもしなかったが、しばらくして刺されるような居心地の悪さに気付く。ベランダの向かいでは、玄関の扉の一つがわずかに開いている。目だ。たった5cmの隙間から誰かがこちらを覗いている。あの扉は、例の女が逃げ込んでいった部屋だ。変わった女。あの女なら合点がいく。とはいえ、何のために?安部公房は「見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある」と言った。あの夜に僕が彼女を見たことへの腹いせだろうか。逃げるような足取りは、確かに見られることへの憎悪があったはずだ。それ以上、何が起こるわけでもないが、不気味さは一層増して、さっさとベランダから撤退してカーテンを閉め切った。

 それからというもの、ベランダでの喫煙は止めざるをえなくなった。大丈夫だろうと閉め切ったカーテンを少し開けてみると、いつでもあの女がこちらを覗いているのだ。ほんのわずかな隙間から目がこちらを探っている。目的もよく分からないが、だからこそ気味が悪い。家にいてもあの女のことが頭を離れず、見透かされてしまうような心持ちで、とにかくカーテンから離れて生活をするようになった。

 しばらく寝苦しい日が続いた。喉が渇いて闇の時間に目が覚める。キッチンへと立つと、カーテンの下から光が漏れていた。心拍数が上がる。カーテンを人差し指と親指でつまんで恐る恐る開ける。目だ!ライトを持って、顔を窓ガラスに張り付かせた女の目がこちらの姿を捉える。大声をあげて、慌ててスマホを取って警察に連絡する。どうしました?……すでに女の姿は無かった。説明に困る。せいぜい不法侵入くらいのものだが、証拠もない。経緯を一から話してみたが、見られるばかりでほとんど何も起こっていないのだからまともに取り合ってはくれなかった。女の目が思い出される。カーテンを開けるかどうかなど分からないのに、ベランダで一晩中覗き見ようとしていたかと思うと、その異常性に体が震える。

 

 挿絵2

 

 もうベランダで煙草を吸うなんてことは考え付きもしなかった。どこから見られているか分からない。窓という窓はカーテンで閉め切ってしまった。それでも、心は落ち着かない。寝苦しい夜に女の夢でうなされる。女が家に入ってくる夢をすでに何度も見た。今日も同じ夢、女が家に入りベッドに近づいてきたところで夢であることに気付き、夢と現実の狭間へと意識が連れ戻される。目を閉じたまま、イメージだけが頭の中を駆け巡る。体が暑苦しい。顔ものぼせたように暑い。手で顔を拭う。手も暑く感じる。嫌な感じがする。やたら顔や手が暑いのは……ゆっくりと手を下ろし、目を開いてみる。目だった。体熱が感じられるほど近づいた女の顔だった!

 

 

※挿絵1 モディリアーニ作

※挿絵2 中野健夫作

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