寒い夏 Mr.Indigo

  • 2017.07.31 Monday
  • 12:00

7月半ばになっても長袖で通勤している。会社のルールなどではない。単に冷房が苦手だからである。

以前はそれほど冷房への苦手意識はなかったのだが、ここ数年で染み付いた気がする。そして、この夏は一段と体がきつい。


昔は冷房とほとんど縁のない生活を送っていた。私が17歳の時に両親が新居を建てたのだが、それまでは自宅に冷房は全くなかった。新居も自室にはなく、リビングには設置されていたが使うのは来客などの際だけ。真夏は扇風機が頼りであった。

大学進学後も非冷房生活が続いた。大学の教室も冷房が設置されていたのはほんの一握りで、恩恵にあずかったとは言い難い。大学を卒業してからは職場の冷房があったが、夜間は蒸し暑さに耐える日々だった。

自分の寝室に冷房が入ったのは31歳で結婚した時だが、結婚したのは秋のことで、翌年の夏は妻が里帰り出産のため私1人で過ごした。すると、もったいないから冷房など使わない。結局、夜間に冷房を使うようになったのは33歳になる直前の夏のことであった。

この時は長女が1歳になるかどうかの頃だったから、冷房はかけていたはずだ(乳幼児は暑がりで、しかも汗疹が出ると面倒なのだ)。しかし、それが苦痛だった記憶はない。冷房がつらくなったのは、おそらくそれ以降だろう。


昨年7月、会社が移転した。通勤経路が変わり、東京メトロ千代田線を利用することになった。そして、車内の猛烈な寒さに驚愕した。

私が乗るのは朝の9時過ぎ。通勤ラッシュのピークを少し過ぎた時間帯なのだが、いわゆる寿司詰め状態の時間帯と設定温度が変わっていないのだろうか。しかも、空いているわけではないから、風の当たる場所を避けて立つのも難しい。最寄駅から会社へ行くには最後方の出口が便利なのだが、あいにく弱冷房車は前のほうにしかない。仕方なく、私は長袖で通勤することにしたのである。

そして今年は家庭の冷房もつらくなってきた。次女の寝かしつけをしているとなんとなくわかるのだが、彼女が寝る時の適温は私にとっては寒いと感じるくらいの温度である。室温が上がると暑さで目を覚ましかねないから、暑い日は一晩中冷房が作動している。それは長女の時と同じはずなのだが、今年はどうも違う気がする。

妻に相談してみた。

「歳のせいじゃない?私もそうだもん」

「そっかぁ、歳かぁ…」

「でも、我慢して慣れるしかないね」

いや、俺ら兄弟はだな…と反論しても何ら説得力がない。30年以上前の田舎と今の大都会では暑さが違うのだ。暑い夜は薄着で布団を掛けず寝るのが幼少時からの習慣だったが、どうやら改める必要がありそうだ。布団は蹴飛ばせるから、少し厚着にするしかあるまい。


それにしても、なぜどこもかしこも冷房がきついのだろう。特に電車や商業施設。冷房対策で羽織るものを常備している人も少なくないというのに。寒ければ厚着をすればよいが、薄着には限界がある。それは理解できるにしても、今の日本の夏は寒すぎやしないか。

電車でいうと、10両中1両しか弱冷房車がないのは本当に妥当なのか。6両編成なら2号車と5号車、10両編成なら2号車と5号車と8号車とか、せめて3分の1くらいは弱冷房車にしてほしいものだ。

冷房が苦手な人は、少なくともそのくらいの割合にはなると思うのだが…。


【テーマ】夏の日の出来事  がりは

  • 2017.07.31 Monday
  • 07:18

夏。

あれは夏の日の出来事だった。

良く晴れた日の名残りが窓の外に薄紅色に残っている。

遠くから花火の音が聞こえる。

人が少なくなったオフィスで、周囲の島からは人がいなくなり、隣の席の後輩と俺だけになった。

くりくりとした目が特徴的で、明るい茶色の前髪を横に流している。

机の上にそっと置かれたスマホが小さくうなり、後輩は中を確認し、大げさなため息をつく。

「デート行きましょ、デート!」

「はあ?」

 

デートという単語をそもそも久々に聞いた。

昔はもっと大事に扱っていた単語だった。

さらっと使えるようになってもう二十年くらい経つだろうか。

 

「夏ですよ。花火とか上がっちゃってるじゃないですか。デート行くしかないでしょう。」

「仕事しろよ仕事。終わったんかよ。」

「終わったか、終わってないのか、答えはもちろん」

「トランキーロ!!て俺がいつも使ってるやつ!!パクるなよ。」

 

我々のようなポスト高度成長のデスクワークはどこまでやれば終わるのかは割合本人の裁量だったり、最終承認者の機嫌に左右されることが多く、最終承認者がオフィスを後にした今日のような日の仕事はいつ上がっても良いと言えば良い。

 

「気持ちよく晴れた日に一日中で仕事して、どうかしてますよ。デートですよ。デートしかないですよ。わかりました。二人きりだと気まずいとか思ってるんでしょ。お子様か。いい年してお子様か。安心してください、あと二人、用意してますから。傍から見たらデートに見えませんから。」

 

デートって恋人同士でするものじゃなくて、少なくとも片方が恋人になりたいなと思って誘い、距離を詰めていく時に行われる行為だったなあと懐かしく思い出した。

こいつは何を考えているんだろうか。

 

「こんな日に二人で残ってるのもディスティーノですよ、先輩。私割とかわいい方だし、いろいろとわかってる方だし、デートしたら楽しいですよ?」

「確かに誰もいねえな。いろいろとわかってるってなんだ!おそろしい。他のやつ誘えよ。いるだろ、もっと若いの。」

「ひっどーい!私は先輩を誘ってるのに、どうしてそんなこと言えるんですか?」

「それはね」

後輩の方に向き直り、両肩に手を置き、しっかりと目を見つめながら言う。

「お前はたしかにとてもかわいい後輩だ。だーけーどー」

左目を閉じながら、ゆっくりと言い渡す。

「お前がただの麻雀好きの男で、メンツが三人そろったから俺を麻雀に誘っているだけで、残りの一人は俺じゃなくても誰でも良いってことを俺は知ってるからだよ。」

「ぐぬぬ。」

「そしてそれをデートとは言わないんだ。今日をお前の敗戦記念日にしてやる。覚悟しとけ。」

「ということは?」

「15分で片付けて上がるぞ。お前のデータ麻雀を俺の魂のツモで粉砕してやる。」

「わーい☆こわーい☆」

 

四角い緑のジャングルに消えていく二人、夏の日の出来事であった。

明るい悩み相談室PREMIER(238)〜ねむい〜  がりは

  • 2017.07.30 Sunday
  • 00:56

明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。

こんばんは。

今日はどうされましたか?

 

やたら眠いです。

 

ほうほう、わっかりますわっかります。

春眠暁を覚えず、冬は昼まで寝ていたい。

三千世界の烏を殺しぬしと朝寝をしてみたい。

睡眠はいつも甘いものです。

 

しかしその反面、寝ている間は自分でなくなる、寝る前の自分と起きた後の自分が連続しているか疑わしいというような哲学的な悩みが生じたり、単純に寝ている時間がもったいなくて起きていたいということもあります。

私も副業が忙しくなると本業であるこの相談室を開くのが夜中の一時になることもあります。

起床は六時なのでかなり厳しいです。

日中もかなり眠くなりますし、仕事の効率が下がるので副業がうまく進捗しなくなり、帰りが遅くなります。

一日ぼうっとして過ごす感じになり、そんなのは本当の自分ではないしそんな不本意な状態で一日が終わると思うと悔しく、何か自分に還元されるものを睡眠時間を削ってても行いたいと思い、PREMIERの原稿を書いたりして寝るのが遅くなり、翌日はさらに・・・・

というような悪循環に陥ったこともありました。

ここまでではなくても、眠い中会社に行く、というのはかなりの精神力が必要です。

まず目覚ましを止めて起き上がる、この動作だけでも「あと5分だけ」の誘惑と戦い勝利せねばなりません。

そこを切り抜けても朝の分刻みのスケジュールの中トラブルはいくつもあり、普段のコンディションであればそんなトラブルは起こらなかったり、起きてもすぐにリカバリーができたりするわけですが、眠いというハンデを負っているとそうはいきません。

駅まで走れば間に合うところ、走らなくてもいいや、遅れてもいいやということが起こりえます。

負ける理由を背負って戦い続けるという不条理がそこにはあります。

会社に無事着いても今度は会議、運転、と眠気を誘うようなイベントはいくつもあります。

会議で寝ても死にませんが、運転中寝ると自分だけでなく誰かを殺してしまうかもしれません。

寝るよりも重要なことはいくつもあるとお考えかもしれませんが、寝るのはかなり大切なことであることがおわかりいただけたかと思います。

もし日中眠気を感じたら、早めに十分程度で良いので目をつぶってください。

眠らなくても結構です。

それだけで眠気は改善されると思います。

 

あれ?

それほどでもない?

ちょっと眠かっただけ?

 

いやいや、どんな小さなサインも見逃しちゃいけません。

最近の研究では睡眠時間六時間でもまだ短い、七時間は寝るべしとなっているようで、七時間寝ないと睡眠負債を抱えることになり深刻な健康リスクにつながるぞと言われています。

眠かったら寝る、眠くならないように早く寝て早く起きる、お互い心がけましょう。

 

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夏祭に感じる地域の底力 Mr.Indigo

  • 2017.07.29 Saturday
  • 21:00

「こんにちは〜。お願いしまーす」

「こんにちは〜。はい、どうぞ」

公民館脇の受付へ行くと、法被を着たおばちゃんから長女に黄色い紐が渡される。ハチマキにもできるが、首から掛ける子が多い。手続きはそれだけで、名を名乗る必要はない。

ウチの家族が住む地域には、住宅街らしからぬしっかりした夏祭りがある。もっとも、しっかりした寺社はないので、拠点は公民館だが。


祭りの行列が動き出すのは炎天下の13時30分頃。先頭は大人の神輿で、小学校高学年くらいの大きな子が担ぐ神輿が続き、小学校低学年くらいまでの子が曳く山車が最後方を進む。数百メートルに及ぶ長蛇の列である。

長女とともに適当な場所に陣取る。彼女は私の手を離さない。小さな認可外保育園に通っていて、顔見知りの子がいないというのは心細いだろう。来年から小学校で同級生になる子はたくさんいるのだろうが。

子供たちは2列で山車を曳いていく。先頭に大人がついているし、紐を持って神輿を追って行くだけだ。長女は私の手を離し、無言で淡々と進んでいった。

ただとにかく暑い。水筒を携帯している子も少なくない。ウチも持たせておけば良かったか。まあ、歩きながら器用に飲めるとは思えないし、程々のところで休憩が入るだろう。

30分ほど歩いたところに幼稚園があり、ここでいったん停止。園内に小さな社があり、子供たちにも30秒ほど脱帽させて簡単な神事が行われた。公立学校ではできないこういう体験は大切だと思う。その後は休憩タイムで、アイスと麦茶が配られた。ウチの長女はトイレに行きたいと言い出したが、場所が幼稚園なので容易に行かせることができた。ルートもうまく作られているものだ。


さらに2度の休憩を挟みつつ町内を巡り、公民館に戻る。移動距離は2kmもないはずだが、2時間近くかかった。大人も子供もなかなか大変だ。

さて、3本締めの後にマイクを持ったのは衆議院議員のM氏。私と同年代の若手議員で、途中からだが神輿を担いでいたという。挨拶は1分ほどで簡単に済んだ。都市部に弱いとされる政党にも関わらず、氏は毎回小選挙区で勝っている。若さと東京からの近さを生かして地域の行事に参加しているのが、強さの秘訣かもしれない。話が短いのも好感が持てる。

一方、子供たちは受付に並び、お菓子と夜の部で使えるチケットを受け取る。これが目的でみんな頑張るのだ。この程度で頑張らせることができるのが地域の力であるとも言える。

このような住宅街で、昔からの住民と我々のような新しい住民がともに参加し、コミュニケーションをとりながら祭りを盛り上げるのは、なかなかできないことだろう。偶然ではあるが、この地に住んで良かった。


ちなみに、夕刻は公民館横の駐車場にいくつか露店が出る。昼にもらったチケットはここでヨーヨーや玩具類と交換できる。かき氷50円など、飲食物の値段も良心的だ。相当な数の子供が集まるからいささか手狭だが。

今年の長女は私が付き添ったが、来年からは学校の友達と参加することになるだろう。我々保護者も自分の子の交友関係を知ることができるし、相手方の保護者との会話もできる。ウチの次女と同学年の弟妹がいる家庭もあるかもしれない。

我々家族にとって、この夏祭りは来年以降さらに面白いものになっていくだろう。今後も地域の一員として、楽しく参加させていただきたいと思っている。



2016年12月を丁寧に過ごす(14) Mr.アールグレイ

  • 2017.07.29 Saturday
  • 09:29

なんだか会見で混乱が起きていたようですね。

がりはさんのあれ、私は楽しめました。

損をしたのはマルーンさんだけではないでしょうか。

がりはさんはインディゴさんを攻撃すると見せかけて、実はマルーンさんを攻撃していたのではないでしょうか。

そういうダブルミーニング、トリプルミーニングを仕掛けてけっけっけと笑っているのが実にがりはさんらしいですし、それを理解した上で振られた役を演じ切るインディゴさんとマルーンさんも立派だなあと思います。

マルーンさんはあんな高地にまで黒のワンピースとパンプスを運んで行くなんて素晴らしいプロ根性ですね。

見習いたいです。

 

【テーマ】魔法書店  Mr.Indigo

 

 

紹介だけー。

 

暮れゆくもの、迎えるもの  Mr.Indigo

 

これも紹介だけー。

 

201611月テーマコンテスト試合後の会見(1) がりは

 

会見で混乱が生じたタイミングでこの作品を取り上げることになるとは。

新日本プロレス内藤哲也選手に刺激を受けたのかと思われる語り口と、鈴木みのる選手が負けた時の荒れ方をミックスしたような人物造形で、私は内容とともに楽しめました。

 

ここで突然長身のマスクウーマンがドアを開けて乱入。

持っていたパイプ椅子で三度がりはの頭を殴打し、たまらず椅子から転げ落ちたがりはの背中に追い打ちをかけるようにサッカーボールキックを三発!

「なにが丁寧だ!お前に何がわかる!!」

言い捨てて去っていくマスクウーマン。

 

がりはさんが手を替え品を替えいろんな人の悪口(批評というよりは悪口に近いと思います。)を言うのはこの頃から変わってませんね。

私の扱いは相変わらずひどいのですが、これは実際ちょっとやってみたいことだったので、不思議と不快感はなかったです。

本当の私は優しくおしとやかなはず・・・です。

悪い扱いであっても取り上げられたい、という気持ちはどこからくるのでしょうか。

今回の会見に私が出てこなかったのも少し寂しく感じました。

タイトルを取って会見に登場したいと思います。

 

捲土重来?  Mr.Indigo

 

紹介だけー。


2016年11月テーマコンテスト試合後の会見(2) がりは

 

がりはさんの会見の2つ目。

 

「何だよあいつ。MVP取れなかった腹いせか?やるならリングでやれよ!ふざけんなよ!雑すぎるんだよ!パイプ椅子の殴る角度一つとっても俺とあいつでは丁寧さが違うんだよ。最後の蹴りは『☆三つ』てか?振り返りは月内に終わらせてから言え!そしたらこのベルト、触れるとこまで来れるんじゃねえのか。で、何の話だっけか。」

 

振り返りは月内に終わらせてから言え!

何度見ても重たい言葉です。

私だって一生懸命やっているのですが、いかんせんノルマが重すぎると思います。

ノルマをこなそうと思うと働き方を改革するしかありません。

無理難題はイノベーションのチャンスです。

丁寧さと量産を両立するイノベーションにチャレンジしていきたいと思います。(一例としてがりはさんの作品を紹介だけー、にするとか。冗談ですよ。)

 

「ヤマブキのオムツの話、あれを彼が書いた意味は何なのか、考えるのは楽しいじゃないか。さらに上級になってくるとなぜハッタリストはテーマに参戦してこないのか、ホワイトは静観しているのか、なんてところもあるよね。」

―ヤマブキは体験談、ハッタリストとホワイトは多忙なんじゃないですかね。

 

オムツを着用している成人男性が出てくる作品を書いたヤマブキに対してさりげなくインタビュワーを使って悪口を言っています。

この時からいろんな人の悪口を書いていますね。

その言い方のいやらしさ、使う手段の多彩さ、ともに職人芸だと思います。

【テーマ】3D連携 Mr.Indigo

  • 2017.07.28 Friday
  • 12:00

「あ〜あ、なんとかならんかなぁ…」

閑古鳥の鳴く店で、大は溜め息をついた。大はきりたんぽ鍋の店を営んでいて、秋田犬のブリーダーでもある。しかし、どちらも売上が芳しくないのだ。

とりあえず客が来ないことには話にならぬのだが、大にはハンデがあった。立地があまりにも不便なのだ。いろいろと手を尽くしてはいるが、改善の兆しは見えない。

大は誰も見ていない店のテレビに目を遣った。洒落た洋風建築に住む函という男が紹介されていた。古いけどいい家だな。大は素直に感心した。どうせ暇なんだし、ちょっと見てみるか。

美人リポーターを連れた函が敷地を案内していく。海に沿って煉瓦造の赤い倉庫が並んでいた。海はいいな。内陸に住む大は羨ましく思った。ウチの店にあれがあっても、虫だらけのボロ倉庫だよ…。

やがて、函はリポーターを裏山へと案内した。

「…うっ……」

絶句するリポーター。その視線の先には大海原が広がっていた。

「夜はこっち側がすごいんですよ」

函は得意気に言った。そして画面は夜の動画に切り替わる。山から見下ろす風景は例えようのない美しさだった。大はもう素直に感心できなかった。自分にない客寄せの手段をあの男はいくつも持っている。

「くそっ、つまらん」

テレビを消そうとした大は、ある事実に気づいた。

「あっ」

閃いた。起死回生の策が。

「よし!」


翌日、大は近くに住む角という男を訪れた。近くといっても彼らにとっては近い部類に入るというだけで、車でかなりの時間を要するのだが。

「角さん、お願いがある」

大は両手を畳について頭を下げた。函の家と違って角の家は純和風だが、こちらもなかなか風格のある建物だ。趣深い庭や立派な蔵もある。春には桜並木を見に多くの人が来るらしい。これまでの大にとっては角も羨望の対象であったが、起死回生の策のためには角に一肌脱いでもらわなければならなかった。

「一緒に函さんのところへ行ってくれんか」

大が単身で函のもとを訪れても、歯牙にもかけられぬ可能性が高い。しかし、人気者の角ならば一目置いてもらえるのではないか。これが大の目論見だった。

「よし、わかった。行こう」

角にとっても大の提案は魅力的なものだった。函の口利きがあれば、角も儲かるに違いない。


「どうも、初めまして」

「おぉ、あなたが角さんですか。お噂はかねがね伺ってますよ。なかなかの人気だそうで」

「いやいや、函さんにはかないませんよ」

「まあ、角さんと手を組むのは大歓迎ですよ。お互いにお互いをPRしていけば、どちらも集客アップ、収益アップ間違いなし!」

会話は弾む。函と角はすっかり意気投合したようだ。しびれを切らした大は口を挟んだ。

「あの…ワタクシは?」

「あ、えーと、大さんでしたっけ。あなたと組んでも別に損するわけじゃないし、一緒にやっていきましょう」

「おお!ありがとうございます」

「ウチに得があるかはわかりませんが、DATEの仲間ですからね」

こうしてDATEという共通項を持つ3者は手を結んだ。

この連携はDATEの頭文字から「3D連携」と呼ばれ、地方新聞の記事にもなったが、成果のほどは未だ明らかでない。


※この作品はフィクションですが、実在の人物や団体などとは関係があります。秋田県大館市、秋田県仙北市(角館)、そして北海道函館市の3市による「3D連携」、特に大館市の今後にご注目ください。


【テーマ】鉄の海(58) by Mr.ヤマブキ

  • 2017.07.27 Thursday
  • 00:00

「先生の言うことは聞くものですね」

 例のしわくちゃの笑顔だ。Mさんは言う。

「痛くないと気分も違いますね」

「今度からは僕を信用してください」

 そう言って笑い合う。

「たまに痛むこともあるんですけど、前とは違っていい感じですね。この前までは麻薬なんて使うほどじゃないと思ってたんですけど、使ってみると結構我慢してたなって思うんです。おかげで旅行も楽しく過ごせました」

「二条城近くの喫茶はまだありましたか?」

「なかったですよ。仕方のないことです。……それで、雨だったんですよ」

「それは生憎でしたね」

「いえいえ、出会ったときも雨でね」

 うつむきがちなMさんの奥さんはいつもよりいっそう首の角度が深い。

「そうだ、この前そうおっしゃってましたね、思い出しましたよ。でも歩くのも大変でしたでしょう」

「先生、濡れたくないと思うから雨は不快なんです。濡れてもいいと思えたら雨の日なんてこんな楽しいことはないですよ」

「体だけは冷やさないようにお願いします」

「そこはばっちりでした。厚着していると今度はどんどん上気してきて雨が気持ちいいんですよ、ほんとうに。色々と思い出しました」

「楽しい旅行だったようですね」

「いや、これは失礼。お忙しいところにこんな話を」

「お話いただけなければこちらから伺っていたところです。でもまあそろそろ治療の話に戻しましょう」

 二人の顔が途端に引き締まる。

「と、その前に。奥様は旅行、いかがでしたか」

「えっ、……それは、うれしかったですよ。あんなに楽しそうなの久しぶりでしたから……」

「それはよかったです」

 まだ言い足りないような表情だったので、数秒待った。

「今日入院する前に、主人と、次の抗癌剤もがんばろうって言ってたんです。先生が旅行に行ってくださいとおっしゃったから」

 Mさんが引き受ける。

「覚悟できたような気がしてね」

 頷くことしかできない。

「分かりました。週明けに入院して抗癌剤治療をしましょう」

「もうあとは先生にお任せですよ。よろしくお願いします」

 

 お任せします、の言葉に心に潜む大魚が蠢く感じする。

明るい悩み相談室PREMIER(237)〜本〜  がりは

  • 2017.07.26 Wednesday
  • 01:04

明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。

こんばんは。

今日はどうされましたか?

 

本を買いすぎてしまいます。本屋で一度に2、3万とか。そして、今年がすでに赤字です。

 

ほうほう、わっかりますわっかります。

本はね、無駄になることありませんからね。

どうしても財布のひもが緩みがちです。

五千円の肉は買えなくても五千円の本は買えちゃいますよね。

読まなければ無駄になる?

読まないかどうかなんて死ぬまでわからないじゃないですか。

積んである本はいつか読む本なんですよ。

いのちというのは、いかに他の人のために時間を使うか、そこなんです。

未来の自分というか弱い他者、最も身近で最も遠い他者のために今の自分が時間を使って稼いだお金を使う、本を買うというのはそんな行為です。

え?騙されない?

 

ほら、自分で読まなくても本て使い道があるじゃないですか。

1.インテリアとして

 知的な雰囲気作りに欠かせないですよね。

2.自分の興味の記録として

 日記やブログなどで残す方法もありますが、本棚を見ればあなたがどんなことに興味を持って生きてきたのか一目瞭然ですよ。この一覧性は捨てがたい。

3.書いた人への敬意表明として

 私の先輩は「コンテンツに金を払わないやつは馬鹿だ。」と夏目漱石の現代版のようなことを言い放ちましたが、素晴らしい作品を残してくれた人に評価とお金を回してあげたいものです。

4.次代へのタスキとして

 自分が読めなくても次の人が読めばいいんです。子孫がいる人は子孫に託せばよい、頼りになる友がいるならその友へ。見ず知らずの人でも良い、この人になら託せるという人が出てきたならそうすれば良いのです。日本の今の本の流通制度はかなりいびつなので、新刊を買わないとその本が世に出ない恐れがあります。自分の好きな本は迷わず買い、手に余るという結論になれば誰かに託し、その人がいなければ売れば良いのです。

 

こんなに使い道があるのだから、本はどんどん買うべきです。

どうですか。

もっと買う気になりましたか?

明るい悩み相談室PREMIERの本が出たなら買ってくださいね。

ニーズあるのかしら・・・。

 

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如宝の情報 Mr.Indigo

  • 2017.07.25 Tuesday
  • 08:13

こんばんは!

奈良・西の京にあります唐招提寺の金堂です。

よその寺社では脇役の皆さんがいろいろ言ってましたけど、ウチは境内の主役であるわしが登場させていただきます。よろしくお願いしますね。

それではいきなりですが問題です!


[問1]唐招提寺金堂、すなわちわしを建設する際に中心となった人はナニジンでしょう?


「鑑真!」

よく勉強されてますね。しかし残念!不正解です。わしが建設された頃には鑑真和上は既にお亡くなりでした。

「日本人!」

…うーん、日本人の概念の問題は割愛しますが、日本出身者ではありません。

「中国人!」

鑑真和上とともに唐から来日した中国人ということですね。惜しい!だいぶ近づいてきました。しかし、いわゆる漢民族でもないんです。

「コジン!」

おっ!ちなみに漢字ではどう書きますか?故人?いやいや、奈良時代だから当たり前じゃないですか。でも、ものすごく惜しいです。故を胡にすれば、それで正解になります。


では解説しましょう。

鑑真和上のお弟子さんに如宝さんという方がいらっしゃいまして、この方が中心になってわしを建設して下さったんですが、文献によると如宝さんは胡人ということになっています。

胡人というのは、漢民族から見て北方や西方の異民族のことです。これは中国こそが世界の中心だという中華思想に基づく蔑称の意味合いもあるんですが、日本の古代の文献の話なんでここでは無視しましょう。胡人と呼ばれた民族はたくさんあるんですが、如宝さんはソグド人だったといわれています。ですからさっきの問題は「ソグド人」でも正解ですね。

さて、ソグド人は現在のウズベキスタンのあたりにいた民族で、その多くはシルクロードの交易に携わる商人でした。そのため、シルクロードの東側の大国である唐に住みつく人も多かったようです。細かいことはわかりませんが、それで如宝さんは鑑真和上に師事し、日本に渡ることになったわけですな。

ちなみに如宝さんが来日された頃はまだお若く、20代くらいだったようです。鑑真和上が日本へ行くことを決心なさってから平城京に着くまで9年かかっていますから、おそらく如宝さんは10代のうちから未知なる国に渡る決意を固めていたのでしょう。仏道を広めんとする志や和上への尊敬の念もあったでしょうが、もしかすると旅商人として名を馳せたソグド人の血が騒いだのかもしれませんね。


さて、如宝さんは来日してから布教活動で各地へ派遣されました。遠くは下野国(現在の栃木県)に住まわれたこともあるといわれています。中国や朝鮮半島ではなく中央アジア系の方ですから、東国の人々は風貌を見てずいぶん驚いたでしょうね。

その後、奈良へ戻った如宝さんは、唐招提寺の4代目管主に就任します。そして、この時期にわし、金堂が建てられたというわけです。

ちなみに、如宝さんは当時としては稀な長寿でもありました。桓武天皇による長岡京、さらには平安京への遷都も見届けていらっしゃいます。あの弘法大師空海さんとも面識があったらしいですね。

それでは最後に問題です。


[問2]「如宝」の読みを答えてください。


「ジョホウ!」

ぶ〜。タイトルを見たらそう思いますよね。でも違うんです。正解はニョホウでした!

ではまた!


ANSP2O【22】〜合コン必勝法〜 Mr.臙脂

  • 2017.07.24 Monday
  • 00:00

どうなさいました?

No.22「毎月のように合コンに顔を出しているものの、一向に彼女ができません。こちらからモーションをかけても、相手が気がなさそうで脈無しのまま終わってしまいます。何かコツのようなものがあれば教えて下さい。」

 

1stはこちら


医療面談結果

では、たまにはあなたも気がなさそうに合コンの席に着いてみましょう。
自分から積極的にアプローチしていくのではなく、力を抜いて、相手の趣味・悩み・理想の恋愛などに耳を傾けるスタンスで言葉少なめに簡潔に質問し、相手の言葉をじっくり聞き、その全てを肯定し、別れ際はお話できたことへの感謝の気持ちのみを伝えて散会しましょう。


合コンでの数時間を共有したのみで恋愛に発展することなど稀有なことです。
合コンに参加する目的は様々です。まずは、合コンに臨む目的意識を『恋愛相手を求める』ことから『他者の価値観を知る』ことへ変えてみましょう。
恋愛のみならず、人間関係が深化するには価値観の覚知・理解・共有といったプロセスが必要です。合コンという限局的な状況では、表面的な情報でのみ相手の印象を決定してしまいます。
あなたは、これまでに合コンでアプローチした方全てのお顔・お名前・話題を覚えていますか?
あなたにとってお相手の情報に何ら印象の無い合コンであったなら、お相手もおそらく同様です。
そして、相手の全てを肯定してみるというプロセスは、少なからず相手の理解につながり、コミュニケーション能力向上のトレーニングにもなり得ます。
せっかく精力的に多くの合コンへ参加されているのですから、異性の多様な価値観を知る情報収集に努め、自己研鑽を図るという活動として再認識なさって下さい。
あなたにとって唯一の相手を求めるのに、他人から教示されるつかむべきコツなどありません。合コンでの経験を経て、あなたがいつの日か結ばれるべき相手の心をつかむのです。

…と思ってたら、合コンであなたが心をつかまれちゃったという幸運もあり得ます。

合コンも含めて、他人の話が聞けない・人前で非常に落ち着きが無いなどとよく指摘されるならば医療的関与も検討すべきですが、現状では目的意識を変容させて冷静に合コンへ参加されることが大切です。

お相手をお大事にどうぞ。
 

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