【テーマ】友達だよね。 がりは(470字)

  • 2017.03.31 Friday
  • 23:35

これからもずっと友達だよね。

きらきらした瞳で確認をしてきた彼女を見て、僕は一瞬気後れしたけど、うまくうなづけたと思う。

両手で僕の右手を包んで、念を込めるように上からおでこを押し当てる。

僕は彼女の好きなようにさせてやる。

僕がしてやれることはもうそれくらいしかない。

二人は別の道を行く。

暖かい涙がしみてきたのを感じる。

ごめんね、ごめんねと言いながら嗚咽する。

肩を震わせて。

逆光で肩の線から光が飛び散る。

桜色のカーディガンは僕のお気にいりだ。

彼女らしいなと少し笑える。

 

どうしてこうなってしまったの。

 

おやおや。

それは僕が聞きたい。

僕の体がしびれて動かないのは君の仕業じゃないのかな。

ベッドから体を起こすこともできない。

しばらくしていなかったアレを求めてきたのもびっくりした。

それは確かに素敵だったけど、少しうとうとしたらもう動けなくなっていた。

 

ひとしきり泣いて顔をあげた君は、ぱっと手を離して慎重に人差し指で目の下をなぞった。

ポーチから化粧道具を出して、しっかりメイクをした。

立ち上がってそばに寄り、僕の頬を挟むと目を見ながら思いっきりキスをした。

【リバイバル】メリーエイプリルフール Mr.Pink

  • 2017.03.31 Friday
  • 19:32

はい、それでは、ウソつきます。
実は私、ミスターピンクじゃないんです。

ミスタービンクだったんです。
特にケータイのちっちゃい画面で見てる人は気付かなかったでしょうけど、小さい点々と丸の違いなんて虫メガネでも使わない限りは分からないはずケケケ、ってんで、ピンクと入れ替わってビンクが登場していたんです。

本物のピンクはって言うと、私なんかと違って頭脳明晰、成績優秀、眉目秀麗、焼肉定食、とにかく何でもアリのすごいやつで、雑兵日記PREMIERなんかもすらすらっと書いちゃうくせに涙が出るような感動の名作っていうのはこれ本当。

一方ビンクは月とスッポン、ところがスッポンとてさる者、いや猿じゃなくて月でもない、スッポンだからこそ煮て食える、焼いて食える、これが月ならどうやってフライパンに入れてやろうかと考え込むところですが、月餅と書いてゲッペイと読む、こいつの原材料はよく見てみるとお月さま、これも本当のようでウソの話。

つまりすなわち要するに、似ているようで煮ていない、いや似ていない、似ていないようで似ているどころか全然違う、そんなものがビンクだけじゃなくてあなたの身近にもどこかにあるのではありますまいかと、そういう話がしたかった、というのはなんとウソではないかもしれない。

当たり前のような顔をして、偽物が堂々としていたりして、なんと私の近くにもいました、電力会社のお友達からのメールを転送されたという人が、内容を見せてもらってあちゃあと思ったのは典型的なデマだったから、残念ながらこれはウソではありません。

畢竟、結局、結論は、今まさに、あなたが見ているものは、ウソかもしれないということでございます。
知ってる人は知っています、知らない人も疑っています、だがしかし、疑っていない人は知りようがございません。
なんのことだかさっぱり分かりませんが、そんなことがあるのも一興、どうせぜぇんぶエイプリルフールの戯言です。

どうせならもっと面白いウソをつきたかった、例えば私が騙されたこと、オレンジだと思って食べたのに、本当はいよかんでした。
ムキーー!!
あれもウソ、これもウソ、でも今日の話はこれホント?

 

 

※プリミエールフライデーのリバイバル企画です。

明日に備えて。

ダイアローグ42〜舞台裏〜 Mr.マルーン

  • 2017.03.31 Friday
  • 12:00

とある山の登山口で、1人のゆるふわ山ガールが鼻歌交じりにストレッチをしている。

 「いい日♪旅立ち♪」天気がいいのでご機嫌である。
準備運動を終えるとわきに置いていたバックパックを背負って、出発しようとした。

「待ちたまえ、Mr.マルーン!」
「!?」

タキシード姿の超絶イケメン紳士が木の上に立っていた。バラをくわえている。どこからともなく流れるムーディなBGM。
「ハッガリーニ仮面様!」
ノリがいいので付き合ってあげるマルーン。でも気分的には面倒な人に引っかかっちゃったなあもう出発したいなあと思っている。
「とうっ」
3回転して木から飛び降りるA.ハッガリーニ。GOE満点の美しい着地で登山口の前に立ちふさがった。
「原稿を置いていかねばここを通すわけにはいかない」
「そんな!」
「ひな祭りもサボっただろうっ!」
「ぐぬう!」
「ホワイトデーだ。ホワイトデーについて一本書いてもらおう」
そういうとA.ハッガリーニは気障な仕草でくわえていたバラをこちらに投げてよこす。届かずにぽとりと地面に落ちたが、山でポイ捨てはだめなのでマルーンは仕方なく拾ってバックパックに入れていたビニール袋にしまう。
さて、ホワイトデーに何のネタがあろうか。マルーンは田舎の根暗娘である。いい思い出も悪い思い出もあんまりない。どうしたものか。
バラの袋をザックにつめこみながら思案する。
ふむ。ひらめいた。
「そんな巷のホワイトデーにそのまま乗っかろうだなんてハッガリーニ仮面様らしくもないですね」
「なにぃ」
「PREMIERオリジナルのホワイトデー、やりたくありませんか?」
不敵な笑みを浮かべるマルーン。A.ハッガリーニの目の色が変わる。
「と、いうと」
「Mr.ホワイト、そう、Mr.ホワイトの日にしましょう。Mr.ホワイトが新作を発表し、さらにMr.ホワイトの過去の名作をリバイバルする、Mr.ホワイトのMr.ホワイトによるMr.ホワイトのための、まさにホワイト祭!ホワイトデー!」
「な、なるほど!」
「さあ、今すぐ戻ってMr.ホワイトに原稿を要求しに行くのです!そして他の執筆者に書評を書かせるのです!」
「わかった!!!ありがとう、Mr.マルーン!」
林道を目にもとまらぬスピードで駆け下りていくタキシードをにこやかに手を振って見送ってから、腕時計を見た。
「ちっ、20分ロスか…」
つぶやきながら、登山道に入っていく。ザックについた熊鈴がちりんと鳴った。

【テーマ】知らないおともだち Mr.Indigo(495字)

  • 2017.03.31 Friday
  • 08:21

「これは知らないおともだちのだからね」
実に奇妙な表現である。「知らない」のに「おともだち」というのは、明らかにおかしい。
近所の公園の砂場には、忘れ物と思われる遊び道具が大量に落ちている。そして、子供がこれらの道具で遊ぼうとした際に、保護者が冒頭のような表現を使うことがある。
「使ってもいいけど、持って帰るのはダメだよ」
保護者が言いたいのはそういうことだ。それを幼児に理解させるために「おともだち」という言葉を使うのである。もっとも「今ここにいない子」とかでも何ら問題はなく、むしろ日本語としてはそちらが正しいのだが。
ほとんどの人はそんなことなど気にも留めないだろう。しかし、考えてみるとなかなか面白い表現である。
知らないというのは、無限の可能性が考えられるということだ。どこに住む何歳の子だろう。男の子かな、女の子かな。いつかこの公園で会うのかな。このようにいろいろと想像を膨らますことができる。
「知らないおともだち」は、子供達だけのものではない。我々大人にも、未知の誰かと仲良くなる機会はまだまだあるに違いない。未来の自分はどこでどんな人と出会うのだろう。想像してみるのはなかなか楽しい。

 

【テーマ】爆裂衝撃波!!からのスーパーバリア!! Mr.X(461字)

  • 2017.03.30 Thursday
  • 12:28

こんな記憶がある。

幼稚園〜小学一年まで住んでいたアパート。おそらく夕方。親は出かけていて自分は一人だ。子供部屋でドラゴンボールちっくな話を空想し、こちらで「xxxx波!!」とか言いながら片手を前に突き出し、あちらへ移動して「バリア!」とか言いながら両手をクロスさせている。
 

同じアパートに友達もいるのに、なぜ一人でそんな空想遊びをすることになったのか分からない。それに、一人で遊んでいた記憶がなぜ残ったのか、分からない。

アパートの友達と大ケンカをして止むを得ず一人で遊んでいたが、子供ながらに空想一人ごっこ遊びがあまり情けなく、強く印象に残った。今はそんな仮説を立てている。


自分のこれまでの人生で、友達と楽しく遊んでいたとき、一人で孤独に耐えているときの両方がある。なんだかんだ言って、やはり友達がいたときのほうが楽しい。

けれどまあ、空想一人ごっこ遊びもそれはそれで楽しかった気もする。
子供には、大人から見て不完全なものではあっても、心がまぎれるのなら、それは必要なものなんじゃないかと思う。子供には、子供の事情だってあるわけだし。

【テーマ】おともだちでいましょうね  Mr.アールグレイ(500字)

  • 2017.03.30 Thursday
  • 00:00

随分と長い時間、ともだちのように付き合ってきました。

この十年ほどの間に仕事をいくつか変わったり、何度か引っ越すたびに、関係する人が変わりました。

それは自分の環境の変化に伴うもので覚悟していた変化ですが、とはいえ、せっかく仲良くなった人たちと離れてしまい、多くの場合疎遠になってしまうのは悲しいものです。

そのようなこちらの変化に関係なく、あなたたちはそこにいてくれました。

私はずっとあなた方の織りなす群像劇をまぶしいなあと思いながら見ていて、去っていく人を惜しみ、やってくる人を歓迎していました。

 

昨年の七月までは。

 

ずっと前から誘ってもらっていながらかわし続けていたのですけど捕まってしまいました、というのはカッコつけで本当は好奇心に勝てなくなっただけです。

あとは少しの憧れと。

私はルーティンをこよなく愛しておりますが、不惑を前に人の文章を必死に読んでそれに対してフィードバックをするというルーティンが加わることは予想できませんでした。

友達は双方向の概念だと思いますが、「私たち友達だよね。」という形では確認されません。

それに甘えて書きますけれど、雑兵日記PREMIERの作家の皆さん、良いおともだちでいましょうね。

やまがある日記〜霊仙山(1094m)上り  Mr.マルーン

  • 2017.03.29 Wednesday
  • 12:01

2017年3月下旬

晴れ

 

3月に入り空気も春めいて、機嫌よく近場の低山を歩きまわっていたが飽きてきて、やっぱりどうしても、今シーズン最後に雪が見たいと思った。というわけで、滋賀県の北東部に位置する、霊仙山へ登りに行く。

 

長浜市街からおよそ40分。榑ヶ畑の登山口に車を停めて、準備体操して出発。

ぬかるんだ山道を少し歩くと、有人の山小屋があり、湧き水で飲み物を冷やして販売している。ちょうど管理者が掃除をして飲み物を補充しているところだった。こうして管理してくださる方がいることに感謝しつつ、今回は湧き水をボトルに汲むだけで通過する。

緩やかな登山道をどんどん登っていくと、汗拭峠という分岐に出る。

さらに登っていくと、徐々に木々がまばらになって視界が開けた。ごつごつとした岩がところどころに露出している。

天気は穏やかで、少し暑いぐらいだ。

急斜面に九十九折に作られた細い登山道を滑落しないよう慎重に登っていくと、登り詰めた瞬間に目の前に広々とした高原が広がる。

霊仙山は石灰岩質の山のため、山頂部はカルスト地形となっているのだ。

もう雪解けがだいぶ進んで、茶色の地面と白い雪がまだらの模様を作っている。少し、初夏のアルプスにも似ていて、不思議で美しい光景だ。

上空をイヌワシがゆるく旋回して飛んでいく。彼の影が雪に映っている。雪の残る斜面に鹿の群れが駆け抜けていく。私はしばし、その大自然の雄大さに見とれた。

山頂を目指す。地面が露出している部分は雪解けのためぬかるんで、さらに泥が登山靴の裏についてグリップもききづらい。ずるずる滑るのを何とかこらえながら登っていくと、霊仙山最高地点に着いた。

実は霊仙山の山頂と呼ばれる三角点のあるピークは1083mの別のピークなのだが、私たちはそれを見逃して直接最高点にきてしまったようだった。

とはいえたどり着いたピークは360度のパノラマだ。西側に琵琶湖、その向こうに比良、北は目の前に伊吹山、奥に金糞岳、能郷白山。さらにその奥にはまだまっしろに雪を頂いて輝く名峰・白山。東側は雲が出ていて御嶽山などは確認できないが、伊勢湾と沿岸の街々まで見えている。南には御池岳、御在所岳をはじめとする鈴鹿の山々。

なんて贅沢な展望だろうか。特に、去年の秋に登った白山の姿をこの目にとらえられたのが嬉しかった。

天候が悪ければ爆風でとてもじっとしていられなかっただろうが、この日はほとんど無風に近い状態で、山頂部で落ち着いて昼食の時間をとれた。

やまがある日記〜霊仙山(1094m)下り  Mr.マルーン

  • 2017.03.29 Wednesday
  • 12:00

西尾根から下って登り返すコースの難易度がわからなかったため、下山をピストンにするか周遊にするかこの時点では決めかねていたのだが、同じく最高点で休憩していたご夫婦の旦那さんに「楽勝だよ!」と言われたので周遊コースをとることにした。

雪庇に注意しつつ、まだ雪のしっかりと残った尾根を歩いていく。トレースの所々に踏み抜いた穴が開いている。私も何度かやってしまった。ゲイターを付けているため怪我のリスクはそれほどだが、いきなりはまるので結構びっくりする。

雪がなくなると、ガレ場の滑りやすい急坂が始まる。地図上でも「踏み跡わかりにくい」とあり実際にわかりにくい。目印のピンクリボンを頼りに慎重に下る。今回の山行で一番危険を感じたポイントだった。

急坂を下りきると樹林帯に入り、やれやれと思っていると、登山道のわきに小さな白い愛らしい花を見つけた。ミスミソウだ。

ミスミソウの可憐さに癒されつつさらに下ると、今畑の廃村に出た。私は歓声を上げた。打ち捨てられた村の跡に一面福寿草が咲いている。ポンポン山の群落は完全に山の中だったが、ここは石垣の隙間、民家の跡地、あぜ道のわきと、人の暮らしの気配がする場所だ。かつてはこの花が咲くのを合図に畑の苗を植えたりしただろうか、などとしみじみする。

村人が植えたのだろうか、梅の花も美しく咲き誇っていた。

今畑の廃村からはしばらく林道を歩き、落合の集落から再び山に入る。ここから汗拭き峠まで谷筋を登っていくのだが、この道が荒れていると聞いていた。

すれ違った年配のパーティに「榑ヶ畑に行くの?登り返したいへんね」「若いから大丈夫よ!ひょいひょいよ!」「渡渉があるけど川の水が多いから気を付けて」などとアドバイスを受けた。

実際道は崩落箇所もありかなり荒れていた。5,6本の杉の木が根こそぎ谷に向かって倒れている。根の浅さに、杉の保持力の弱さが見て取れた。

渡渉については、2度ほど雪解けで増水した沢を渡らねばならなかったが、何とかクリア。トレッキングポールのありがたみを実感する。

とはいえ意外と大した急登はなかったなと思っていると、最後にロープが引かれたほぼ崖のような斜面が立ちはだかった。上の方に目印がある。これか。きついって言われていたやつは。というか先ほどのジジババ集団はここを下ってきたのか。

げに、山にいる高齢者の体力は驚異的である。

ひいこら言いつつ一気に斜面を登りきると、朝通った汗拭き峠に戻ってきた。

そこから登山口まではもう近い。やれやれといったところである。

 

普段なら下山のシーンは省略するところであるが、あまりにも盛り沢山の山行であったので、最後まで全部書いてしまった。写真も多めである。

なんにせよ、大変に満足の山行であった。ついでに下山後の近江牛の焼肉も最高だった。

 

 

ところで、霊仙山がある滋賀県は実は内陸県だが、琵琶湖でしじみが獲れる。

しじみは淡水域または汽水域に生息するので、実は海は関係ないのだよなあ、などと帰りの電車でPREMIERを読みながら考えていた。

大切な読者様からのお題を、「無理に乗っかる必要もない」と。ふうむ。

作家としてはそれぐらい鷹揚であるべきだろうか。私は神経質すぎるかな。

とはいえ、登山も、三題噺も、リサーチ力が重要だと思ったり思わなかったり。

告白3(金髪の女) Mr.ホワイト

  • 2017.03.29 Wednesday
  • 00:00

 私はそもそも喫茶店があまり好きじゃないんだけど、タバコを吸えない喫茶店なんて全然意味がわからない。喫茶店なんてタバコを吸う良い場所が他にないから入るところであって、みんななんでわざわざ喫茶店でぼうっとしたり本を読んだりしているのか。そんなことだったら家でやればいいのに。お金もかからないし。

 

 なんてことを言っておきながら、私がこのちょっとこじゃれた禁煙喫茶店でレモンティーを飲んでいるのは、単にめちゃめちゃカッコイイ店員さんがいるからで、それ以外には何の理由もない。もちろん初めは禁煙と知らずに、タバコを吸うためにここに来ただけだった。「ここって喫煙席あるよね?」と注文する前に聞いた相手がそのメガネの店員さんだった。「ございません。当店は全面禁煙です」と毅然と答えた彼の眼差しに、私は完全に落ちてしまったのだ。その顔に見とれてずっと顔を見すぎたせいで店員さんに「何か?」と聞かれた私はとっさに、「いえ、あの、こちらの喫茶店、素敵ですね」とまったく金髪女らしからぬ発言をしてしまい、そのときもレモンティーを飲みながら、恥ずかしさをこらえるしかなかった。

 

 それから私は頻繁にこの喫茶店に通うようになった。たまには店員さんと話すこともある。それでも挨拶くらいが限度で、好きだなんてとてもじゃないけど言える雰囲気じゃない。毎回、今日こそはと思っても、恥ずかしくて話すこともそんなにできない。あまりにもよく行くので、頻繁に通っているくせに何もしないと怪しまれると思い、父親の書棚からタイトルだけで「悪霊」という本を選んで、勝手に借りてここで読むふりをしている。

 

 とりあえずこれでカモフラージュはできる、とレモンティーのカップを置いたとき、正面の黒髪の女がスマートフォンで私の写真を撮っているらしいことに気がついた。手つきがおかしい。私は昔から女子にむやみやたらと好かれるのだ。男っぽい格好をしているからかもしれない。カッとなってその女のところにとんでいき、スマートフォンを操作する右手の手首をつかんだ。女は突然のことに驚いていたが、私は一言、「写真、見せな」とだけ言った。

 

 スマートフォンを取り上げて見てみると、私の隣に座っている男の写真ばかりだった。私は彼女の目を見た。涙で少しうるんでいた。「ごめん、がんばれ」と言って、私は彼女の肩をポンと叩いた。そうしながら、私は自分が泣いていることに気がついた。「私も好きな人がいるんだ」そう言って私は涙をぬぐい、自分の席に戻っていった。

節目の時  Mr.Indigo

  • 2017.03.28 Tuesday
  • 00:00

4月から次女が保育園に入る。長女と同じ保育園である。いわゆる認可外の保育園で設備の面では不便なところもあるが、行政の縛りが少ない分、何かと融通が利く一面もある。

その一例が、園児の弟妹の優先入園権である。昨年の秋の時点で、早々と内定をいただいていた。希望した認可保育園が全滅し、この保育園に補欠2番手からなんとか滑り込んだ長女の時を思えば、なんと気楽なことか。あっさり入れただけでなく、先生方とも信頼関係があり、保護者にも顔見知りが多い。

そして、気が楽なのは次女本人もだろう。入園前から顔と名前が知れわたっていて、行事などの際には長女の友達もよく声をかけてくれる。本人の性格も長女より穏やかだし、すぐ馴染んでくれるのではないだろうか。

私も、次女を連れて行く時は意図的に名を売って回った。

「4月からお世話になります。よろしくお願いしま〜す」

相手は並々ならぬ子供好きである。気を悪くする先生はいない。

「人見知りしないですね〜」

「おっとりしてますよ。姉ちゃんほど気性は激しくないです」

先生は苦笑する。やんわりと否定されることはない。やっぱりな…と私も苦笑することになる。

 

そして、長女はついに最高学年になる。確かに気性は激しいが、父方の知的好奇心と母方の社会性を兼ね備えたしっかり者に成長した。来年度に関しては、何の心配もしていない。

ただ、1年後については不安がなくもない。同じ保育園に5年在籍し、同じメンバーのクラスで3年もいたから、小学校という新しい環境に馴染めるかどうか。しかも、今のクラスメイト11人の中に、同じ学区に住む子はいない。

しかし私はなんとかなるだろうと思っている。さいたま市という大都会に住んでいると、近くの公園に出かけても知らない子ばかりだ。だが、ウチの長女はそんな状況でも適当な遊び相手を見つけることができる。家に年齢の近い遊び相手がいて、近所の公園に行っても顔見知りばかりだった私とは違うのだ。

幼少時の環境というのは成長に大きな影響を与えるものだと、しみじみ思う。

 

さて、4月から環境が大きく変わるのは次女だけではない。妻もである。次女の慣らし保育が終われば、念願の職場復帰を果たすことになる。

妻は働き者で、適応力が高く友達を作るのがうまい。一方で淋しがり屋でもあり、話の通じない次女と長時間過ごすのは少ししんどいようだ。

そんな妻だから、外で働くようになるのは育児にも好影響を及ぼすだろう。昼間を大人たちの中で過ごすことによって、思うようにならない子供達に苛立ちを感じることも減るのではないだろうか。

そうすると、しょっちゅう妻に叱られている長女も楽になる。そして、フォローに回ることが多い私も楽になる。私や長女の不機嫌な顔を見ることが減って妻はさらに楽になる。そして…というように簡単にはいかないだろうが、次女以外の3人にとってプラスになることは間違いあるまい。

次女は生活が楽になるわけではないだろうが、同じ園内に姉がいることは、1歳児でも心強く感じられるに違いない。両親と先生との信頼関係もなんとなくわかるだろう。

 

家庭に大きな変化が訪れる4月。今は、新年度の到来が楽しみで仕方がない。

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