【テーマ】変な先生 うべべ

  • 2016.05.31 Tuesday
  • 23:58
『変な先生』という言葉で思い出すのは、
小学三年生のときの担任(30代後半女性)である。

その先生は、あらゆる意味で「異質」だった。

私の一年生のときの担任は学校で有名なおばあちゃん先生、
二年のときは20代前半でピチピチの新人お姉さん先生だった。
両者とも、明るくてハキハキしたタイプの先生だった。
一年生のときのおばあちゃん先生は、良い意味で印象に残っているので
ぜひ別の機会にご紹介したいと思っている。

三年生ともなると、小学校の仕組みを理解できたころであり
お兄ちゃんへの第一歩を踏み出す年代である。
私の場合は、サッカー部に入ったのもこの時からであり、
新たな世界が広がった印象深い年でもある。

始業式のあと、教室に戻ると担任の挨拶が始まった。
そのゆっくりと落ち着いた感じの喋り方に、私は改めて
お兄ちゃん世代になったのだと感じた。
三年になると、先生もこんなゆったりした感じになるんだなぁ。
のんびりというか、ちょっと眠たそうというか、
これまでに無い感じの先生だなぁ・・・。
去年までは別の小学校に居て、今年からうちに来たらしい。
今の私に言わせれば、覇気ゼロの先生であった。
しかし当時の私はまだ、どちらかというと好意的に捉えていた。

変化が起こったのは、夏休みまであと一週間になったときである。

私のクラスは荒れているというほどでは無かったが、
授業中にお喋りをする輩が数人居た。
しかし、小学三年生のクラスなんてどこに行っても
数人くらいはそんな奴らがいるものである。
そう思い、私は特に気にしてはいなかった。

しかし、担任の先生(30代後半女性)が、突然
「もう嫌だーーーーー」と叫んで教室を飛び出して行ったのである。
教室に残された我々は、しばらく呆然とするしかなかった。

5分くらい経ってから、クラスの優等生的キャラの女の子が
先生を探しに行こうと提案した。
私はこのまま自習になっても良かったが、先生がどこに行ったか気になったので
捜索隊に加わることにした。

職員室には居なかった。
グラウンドにも居なかった。
給食室に居ると思ったら居なかった。
(先生は毎日必ず2回はお代わりしていたので)
もしかしたら帰ったのではないかと思って駐車場に行ってみると
先生の車があった。
そして、先生がその車の運転席で昼寝しているのを発見した。

その次の日も、先生は気に入らないことがあったらしく
途中で教室を飛び出して行った。
また我々が捜索し、給食室の裏でタバコを吸っているところを発見した。
それ以降も、何度も我々は捜索劇を繰り広げることになった。
さすがに隣のクラスの人たちも、何か異様なことが起きていると察知しつつあった。
しかし、異常なクラスと思われたくない、何とかまともなクラスに戻したいという
それこそ担任の先生のような気持ちが我々に芽生え始めていたため
何を聞かれても、何でもないよーと受け流していた。

その後も先生の脱走劇は続いていたが、傾向として
「結婚」とか「旦那」とか「子供」とかいうキーワードが出るときに
教室を飛び出しがちであることが分かった。
当時は今ほどメンタル云々とか言われていなかったし、先生と言えば
絶対的で強い存在であるという思い込みがあった。
読者の皆様はもうお気づきだと思うが、先生は家庭で何かあったために
精神に異常をきたしていたということが今となってはよく分かる。

結局私の小学三年生の日々は、この変な先生とサッカーの記憶しか残っていない。

修了式
の日、次にこの担任にあたる後輩は地獄だなぁと思っていたが、
その後二度とこの先生を学校で見かけることは無かった。

【テーマ】 カツラな先生 byアフリカの精霊

  • 2016.05.31 Tuesday
  • 21:52

 以前、私には人と比べて非常に劣っている能力がある、それはカツラを見破る能力であるということを書いた。今日はその続編である。

 私の同僚の先生にカツラを付けている人がおり、それは誰の目から見ても明らかであるらしい。明らかであるというのは子供である生徒から見てもということである。どうやら生徒を含めて私だけが気づいてなかった事実らしい。

 

 「起立!礼!着席!」

 「おい!帽子被ったまま礼をするな!失礼やろ!」

 教室中大爆笑である。

 

 「点数を聞くぞ、青木」「90点」「井上!」「70点」「江本」「80点」

 「せんせー、江本君本当は50点です。点数ごまかしてます」

 「なにっ!人に良く見られようとごまかしても良いことないぞ!」

 またまた大爆笑である。

 

 以上のようにその先生の笑い話には枚挙のいとまがないくらいなのであるが、私一人がなぜ大爆笑になっているのかわからないままであったのである。

 カツラを見破る能力とは如何にして身につくものなのであろうかと真剣に悩んだ時期もあった。やっぱり分かってその人と接するのとそうでないのとでは、不必要な争いを生まないような気がするからである。例えば、カツラと知っていれば、その人との会話で髪の毛の話はなるべく避けようとするからである。

 

 カツラと知っている人たちは、やはり意図的に毛の話とかは避けていたようである。子供である生徒たちも雰囲気を察して表だって聞くことはなかったのであるが、小学生の持つ残酷さからであろうが、ついに聞いてしまった生徒がいたらしい。

 

 「せんせー、何でカツラつけてるん?」

 「え?やっぱりカツラってわかるか?」

 「うん、バレバレ、みんな知ってるよ」

 「そっかー、お前のお母さん、化粧するやろ、それと一緒」

 「わかったー」

 

 小学生が何をわかったのかは不明であるが、私がわかったことが二つ。

 一つは上記のようないろいろなエピソードがあっても、やはり周りにはバレていないと思っていたということである。やはり髪の毛が少ないことに対してコンプレックスを抱いている人たちには敢えて気づかないふりをしてあげたほうが、優しいのである。一部にはネタにして笑い飛ばしてあげた方がスッキリとすると言った考え方もあるだろうが、やはり隠している人に対しては気づかないフリをしてあげる方がいいのである。そしてそもそも気づく能力すら持ち合わせていない私はそれを気にする必要すらないということである。
 

 二つ目は彼が自分のカツラを女性の化粧に例えたことから、カツラをファッションの一部と考えているのではないかということである。そういえば女性が化粧をするのは相手に失礼のないようにするためと考えている人もいることを聞いたことがある。本心こそわからないが、カツラを付けるのは相手に失礼のないようにするためなのであろうか…。それとも女性がエクステをするのと同様、おしゃれの一部と考えているのであろうか…。

ヨーカイ・ウォッチング Mr.Indigo

  • 2016.05.31 Tuesday
  • 00:00
ウチの会社があるオフィスビルには、妖怪のような老婆がいる。
妖怪といっても近年流行の妖怪ウォッチのような可愛いものではない。水木しげる巨匠の世界を想起させる人物である。
年齢は70歳前後。身長は150cmくらいで、やや華奢に見える。頭髪はほぼ真っ白で、短く整えられている。緑や青のポロシャツを着ていることが多い。
彼女は各社のオフィスには入らないが、それ以外のほとんどの場所で目撃されている。ある人によると、朝の8時にいたこともあるとかいう話だ。
私が目撃することが多いのは、トイレと給湯室と階段だ。男性用トイレに頻繁に出没する女性の職業はただ1つ。そう、彼女はビル内の清掃を生業としているのだ。そして、単なる掃除の婆さんとは思えない不気味さを漂わせている。

まず出没頻度が凄い。ウチの会社がある3階には2社しか入っていないのだが、男性用トイレだけでも1日5回くらいは清掃に入っているのではないか。
「あ、どうぞ〜」
我々が用を足しに入ると、彼女は清掃を中断しそそくさと外へ出ていく。駅などのトイレ掃除スタッフは利用者の存在など気にせず作業を続けるものだが、彼女は違うのだ。
掃除の婆さんなど誰も気に留めていないのに必ず手を止めて出ていくのは、非効率的ではないか。その疑問に対して、私は1つの答えを出した。彼女にはクオリティによる給与の変動がなく、ただ掃除をすれば良いのではなかろうか。

それを裏付ける事実は他にもある。
個室に入ると、トイレットペーパーの先端部が三角に折り畳まれていることがある。すなわち掃除の直後だ。
しかし、便器の中をちらっと見ると、中は清掃で使用されたと思しき大量の紙で埋め尽くされている。紙を使うのは結構だが、流すくらいはしてくれないだろうか。確かに支障はないが、ペーパーホルダーの見た目を気にするんなら、こっちの見た目も気にしてほしいものだ。
「なんか臭くない?」
隣で用を足していた某先輩に話しかけられたこともある。
「確かに、そっすねぇ」
「あっ、これだ」
男性用小便器の底に取り付けられている、尿や水を落とす管の蓋が外れていたのだ。誰の仕業かは言うまでもない。清掃後に嵌めるのを忘れてしまったのか。
「しょっちゅうトイレ掃除やってるのに、けっこう汚かったりするよね」
女性陣からもこんな評価を耳にしたことがある。すなわち、クオリティに関しては多くの人が疑問符を持っているのである。
「でも、あれが生き甲斐なんだろうね…」
ある時誰かが言った。そうだろうなと私も思った。クオリティが給料に影響しないビルの清掃を頑張ってやることが、彼女の生き甲斐なのだろう。

「あやしい」が重なって妖怪という熟語になる。言い換えると、妖怪にはあやしさが詰まっているのである。そして、他者にあやしさを感じさせる理由は、必ず何かあるはずだ。
老後は悠々自適に過ごしたいと思っている私と違って、彼女は清掃を生き甲斐にしている。彼女にも何らかの事情があるんだろうな。そして、その事情がわからないから、我々はあやしさを感じるのだろう。
隠居してもおかしくない歳で、お世辞にもクオリティが高いとは言えない清掃にいそしんでいる老婆を見て、私はそう思うのである。

【テーマ】実録:1992年の変な先生(中学校編)  がりは

  • 2016.05.30 Monday
  • 07:39
私の中学の先生は変な先生が多かった。

技術の先生は眠たそうな目をした東北訛の中年で非常に口下手だった。
変わっていたのは叱る時には握力と尺八をもって行ったところである。
手首を掴まれるとねじ切れるのではないかというほどの痛みがあり、そのまま技術家庭科棟に連れていかれ正座させられ、ひたすら尺八を聞かされるというシュールな拷問。

理科の期末考査では赤ちゃんの泣き声が流された。
先生に子供が生まれたところで、その子の泣き声だった。
設問は「この子が求めていることは何でしょう」。
3点問題だった。
正直に「わからない」と書いた人は×となり、物議を醸した。

英語の先生は二人いて、若い男のバスケ部顧問とおっさんだった。
おっさんは当時ちょっと流行ったランバダ(男女が体を密着させて踊るセクシーなラテン系ダンス)を宿題を忘れた女生徒への罰として踊って問題になった。
この人は宮沢りえのファンで、テストの選択肢に「Rie」「Miyazawa」などがある場合、必ずそれが正答になっていた。
若い男の授業は工夫に満ちており、レベルが高かった。
yearとearの違いを聞きにイギリスに留学した、などと嘯くところも私としては好ましかった。
しかし、彼は女子バスケ部の指導時に激しく体を密着させ、男子の指導時にはそのような情熱が見られないことから「変態」「セクハラ」と陰口を叩かれていた。

教務主任の先生は体育の先生だった。
松方弘樹のような男前で、ユーモラスな面もあり割合人気があったのだが、顧問をしていた女子バレー部に夏でも冬でもブルマでの練習を強制したため「変態」と蔑まれ人気が下降した。

音楽の先生は小柄で痩せた女性の先生で、ライオンのようなパーマが特徴的な先生だった。
エキセントリックな指導ぶり。
博識だし、音楽を聴かせては絵を描かせたりする変わった授業(普通ですかね)をするので、人気があった。
歌う時の姿勢を指導する時に、おっぱいが上を向くように!といって一人一人触って「下を向いている!将来垂れパイになっちゃうぞ!」とやるので、女子も男子も赤面していた。

数学の先生は授業が分かりやすく人気があった。
しかし薄いサングラスに髭、職員室ではくわえタバコというスタイルだった。
体育館の裏でもタバコを吸っており、不良がそこで吸えない、という生徒指導なのかと思ったのだが、校長に叱られているのを見たのでそうではなかったのだろう。

時は流れ、今はきっとこんな先生たちはいないんだと思うが、この「変」が教員の一生懸命さの発露だとすれば(ただの性癖の例もあるように思うけど。)、今もきっと変な先生が形を変えて生き続けているのだと思う。


 

第83回東京優駿(日本ダービー) たりき

  • 2016.05.29 Sunday
  • 13:03
競馬に関わるすべての人にとって特別な日が今年もやってきました。
第83回東京優駿(日本ダービー)の出走馬を簡単に紹介していきたいと思います。
 
ディーマジェスティ
ディープインパクト産駒。
皐月賞は低評価を覆す完勝で一躍世代のトップに。絶好枠から鞍上蛯名Jの悲願でもあるダービー制覇を目指します。
 
マイネルハニー
マツリダゴッホ産駒。
前走は大敗もスプリングS 2着の実績あり。単騎逃げからの逃げ残りに活路を。
 
マカヒキ
ディープインパクト産駒。
皐月賞は完璧な競馬も悔しい2着。世代屈指の末脚で頂点を目指す。
 
レインボーライン
ステイゴールド産駒。
前走NHKマイルCでは低評価を覆して3着好走。ここでも少しでも上の着順を。
 
エアスピネル
キングカメハメハ産駒。
皐月賞では厳しい流れを先行策から掲示板確保し実力を示した。最高の舞台で悲願のGI制覇を目指す。
 
アグネスフォルテ
ハービンジャー産駒。
京都新聞杯2着確保してのダービー参戦。新鋭松山Jとともに少しでも上の着順を。
 
ロードクエスト
マツリダゴッホ産駒。
NHKマイルCでは後方から最速上がりも2着まで。厳しいローテも鞍上岩田Jと最善を尽くす。
 
サトノダイヤモンド
ディープインパクト産駒。
1番人気の皐月賞では3着敗退。最大目標であるこの大舞台で逆転を目指す。
 
マウントロブソン
ディープインパクト産駒。
皐月賞では厳しい流れを先行するも6着まで。ここでも先行策に活路を。
 
スマートオーディン
ダノンシャンティ産駒。
毎日杯、京都新聞杯を連勝しての参戦。共同通信杯では大敗もそれが実力でないことをこの舞台で示す。
 
アジュールローズ
ヴィクトワールピサ産駒。
プリンシバルSを制しての参戦。低評価を覆す走りを。
 
リオンディーズ
キングカメハメハ産駒。
朝日杯FSでGI制覇も皐月賞は完敗。世代屈指の能力を発揮することができるか。
 
レッドエルディスト
ゼンノロブロイ産駒。
年明けデビューも青葉賞2着からのダービー参戦。少しでも上の着順を。
 
ヴァンキッシュラン
ディープインパクト産駒。
青葉賞を制してのダービー参戦。この距離の経験を生かして上位を目指す。
 
イモータル
マンハッタンカフェ産駒。
前走NHKマイルCは大敗も共同通信杯2着馬。鞍上石川Jとともに少しでも上の着順を目指す。
 
ブレイブスマッシュ
トーセンファントム産駒。
短距離路線から一転ダービー参戦。鞍上ノリJにすべてを託す。

プロフェット
ハービンジャー産駒。
京成杯優勝馬。皐月賞は大敗も少しでも上の着順を目指す。

プロディガルサン
ディープインパクト産駒。
東スポ杯2歳S 2着馬が青葉賞で一叩きしての参戦。大外枠は厳しいものの少しでも上位を。
 
 
第83回東京優駿(日本ダービー)は東京10R、15:40発走予定です。
 

【テーマ】天才両生類 Mr.Indigo

  • 2016.05.27 Friday
  • 09:08
「来ましたよ」
敏腕デザイナーM氏に声をかけられ、我々は席を立った。
先生が会社においでになったのだ。

とある案件で、我が社は腕の良いイラストレーターを探していた。
それでM氏が推薦したのがこの先生である。
事前にM氏から聞いていた情報は、先生が赤羽に住んでいることと、通称がカエルで
あることくらいだった。
渾名だけでインパクトを感じさせる先生に私は強い興味を抱きつつ、社内のミーティングスペースへ向かった。
椅子から立ち上がった先生は軽く頭を下げた。
白いTシャツの上にライトグリーンのパーカーを羽織っていて、足元は裸足にサンダル履きだ。
常識的に考えて、仕事で初めての会社に乗り込む時の服装ではない。
しかし、M氏は平然と先生を紹介した。
「Fさんです」
「Fです。よろしくお願いします」
そして、名刺を持ち縦列に並んだ我々に対し、先生はのたまった。
「あ、すいません。名刺ないんですよ」
フリーのイラストレーターで名刺を持っていないなんて、聞いたことがない。
「これまでどんなお仕事されてたんですか?」
当然の質問に対し、先生は鞄から大きな封筒をおもむろに取り出した。中にはイラストが描かれた紙が無数に入っていた。
媒体名も制作日も全く記されていない。しかし、何を描いても上手いということは理解できた。
雑談兼質問タイムの後、今回の案件の話に入った。
イラストはデザインを左右するので、説明するのはM氏だ。旧知の仲だけあって、話はスムーズに進んだ。

そこへ社長が登場。
重要な用事があったのか、高そうなスーツでキメている。初めて見る奇妙な来客に、社長は興味を示した。
「すいません、名刺ないんですよ」
スーツ姿の老紳士が、Tシャツにサンダル履きの中年男に対し、一方的に名刺を渡す。
それは実に滑稽な光景だった。
「期待を裏切らないね」
打ち合わせを終えたカエル先生に、M氏はこう言って笑った。
先生はずっとこのスタイルで働いてきたのだろう。
それでも腕が良いから仕事の依頼が来るのだ。
とんでもない男である。
数日後、イラストのラフが送られてきた。
やはり腕は凄い。
そして、メールの末尾には「カエルより」とだけ記されていた。
電話番号などの連絡先はおろか、名前すら記されていない。
さすがだ。

さて、実はM氏もイラストに関しては相当な腕前である。
ある日、偶々M氏の背後を通った時、氏は別の案件でイラストを自ら描いていた。
実に上手い。これはプロ級ではないのか?
「すげー。カエル先生要らないじゃん」
そう声をかけると、真顔で否定された。
「いや、要る要る。あいつは天才だから」
プロとアマ強豪の違いは、初心者にはわからないということか。
また、秀才型なら名刺も持つだろうし、それなりの服装で打ち合わせに来るはずだ。
天才という評価も頷ける。

あの案件が終わり、カエル先生とは長らく会っていない。
赤羽は毎日のように通るが、先生を思い出すこともめったにない。
しかし、ごくごく稀に、心の片隅で少しだけ羨ましく思うのだ。
この世知辛い時代において、天賦の才を生かし、ビジネスの基本すら無視して自由気ままに生きている両生類のことを。

 

さる  がりは

  • 2016.05.25 Wednesday
  • 00:00
俺?
見りゃわかるだろ、掃除してんだよ。

羊が居座った後はいつも汚れてんの。
普通、自分が使った場所から去る時には、きれいに片づけて去るものじゃない?。
犬とかうらやましい。
鳥のあとでしょ?
発つ鳥跡を濁さずってね。

君たちが使っている公衆トイレだってそうだろう、また君たちが最近どんどん数を増やしているあれ、なんと言ったっけ、そう、フードコート!
ああいう場所もそうだろう。
うどんの汁などこぼしたら拭いて立ち去る、そのことで次の人が気持ちよく、かつスムーズにその場所を使うことができる。
そういうものじゃないか。
それを何だと思ってんのかね、あの羊というのは。
羊ってね、君たちが思っているようなふわふわの綿菓子みたいなテイストの生き物じゃないからね。
ゴワゴワで油っぽくて、なんか臭いんだよ。
そらそうだよ、君たちは毎日頭を洗っているのに、彼らは洗ってないんだぞ。
想像できるよね。
それから、トイレの概念もないからね、彼ら。
多少付いたって乾けば問題ないと思ってるから。
羊毛のセーターなんかね、刈った毛を丁寧にお湯で洗って、汚れと油を抜いてるんだ。
あいつときたら、その汚い毛でそこら中をごしごしやるから汚し放題なのに、一切掃除しないからね。

毎回毎回そう。
十二年に一回、俺の仕事は大掃除から始まるの。
これも誰かにやらせりゃいいんだよな。
十二人に入れなかった奴、いるじゃん。
掃除させてやればいいと思うんだよ。
ジャニーズでもデビュー前のやつらがステージ拭いたりしてるじゃんか。
ああいう感じ。
猫とかキリンとか。
一生懸命仕事してくれたら自分が選んだレギュラーと交代。
ネズミアウト、猫イン、みたいな。
龍が入ったのにキリンが入らなかったのは怒ってんじゃないの?
この話実現したらあいつ頑張るんじゃないかなあ。
もしかして首長くして待ってんじゃないの?
キリンなだけに。
あ、龍とタメ張ってるのってそっちのキリンじゃないんだっけ?
あ、そっちの。
はいはい。

こうやってる間に、壁がきれいになってきましたよ、と。

なんでこんな時期にやってるかって?
俺ら仕事は年末と年始だけなの。
あとは大体遊んでていいからさ。
一応「あれ?今年なに年だっけ?」て急に言う奴いるから、すぐに連絡取れるところにはいなきゃいけないんだけどね。
羊なんかもういやしないよ。

本格的に忙しくなる前に部屋をちょっとずつでもきれいにしておいて、繁忙期に心地よい部屋でゆったり休めるように備えておく、仕事の段取りっちゅうのはこういうことですよ。
ふん。
 

呼称少々 Mr.Indigo

  • 2016.05.24 Tuesday
  • 00:00
子持ちの皆さんにお尋ねしたい。
「お宅は磯野家ですか?さくら家ですか?」

「そんな苗字とちゃうで〜」
「いや、ウチはどっちの両親とも同居してないよ」
まあたいていはそうだろう。しかし、私が聞きたいのはそういうことではなく、呼称の問題である。フジテレビ系列で日曜18時台に放送される2つの国民的アニメには、大きな相違があるのだ。

磯野家に住むフグ田サザエなる主婦(1児の母)は、自分の両親を「おとうさん」「おかあさん」と呼ぶ。その夫のフグ田マスオは義理の親を「おとうさん」「おかあさん」と呼んでいる。
一方、さくらすみれという主婦(2児の母)は自分の義父母を「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼び、その夫のさくらひろしは実の両親を「じーさん」「ばーさん」と呼んでいる。
さて、皆さんのご家庭はどちらだろうか。

我が家は両者が混在している。私は実の親を「じーちゃん」「ばーちゃん」と呼び、義理の親は「おとうさん」「おかあさん」と呼ぶ。妻は双方とも「おとうさん」「おかあさん」である。
実は私が自分の両親の呼び方を変えれば磯野家型に統一されるのだが、そういう気にはならない。私の母は父方の祖母(自らの義母)を30年以上「おばあちゃん」と呼び続けている。一方で父は母方の祖母を「おかあさん」と今も呼んでいる。だから、混在もあまり気にならず、自分の思想を貫いているのだ。

この話題に関する忘れられない思い出がある。
「ばーちゃんの待ちに待った孫や〜」
還暦を迎えてようやく初孫を抱けた母は、ウチの長女にこう声をかけた。母は早く「ばーちゃん」になりたかったのだ。
すなわち、私が自分の母を「ばーちゃん」と呼ぶ理由の1つは、家族ゆえの愛情なのである。母は「ばーちゃん」になったことに幸せを感じている。それを理解しているから「ばーちゃん」と呼ぶわけだ。

ちなみに、私は弟達に対しても「叔父さん」と呼ぶことが多い。
弟のうち1人は仕事のため我々の結婚式に参列できず、妻と初めて会ったのは長女が生まれてからだった。我々が帰省した際、妻に挨拶しようと玄関に出てきた彼を、私はこう紹介した。
「●●叔父さん」
彼は一瞬驚いたように見えたが、すぐに得心して笑みを浮かべた。
「●●叔父さんです〜。はじめまして〜。よろしくお願いします」

私の育った家庭の考え方はさくら家に近いのだろう。すなわち、最も幼い者が呼称の主体であるべきだというものである。
例えば、さくらすみれの家族に対する呼び方は、最年少の家族である次女さくらももこのそれと全く同じだ。
まあ、ウチの実家は4人も兄弟がいたから「おにいちゃん」という呼称は使用不能だったが…。

一方、前述のように妻の一族は磯野家に近い。ゆえに、妻と義父母の会話に違和感を覚えることもたまにある。
しかし、さくら家型と磯野家型に善悪があるわけではないのだろう。双方とも長年にわたって日本の一般家庭に広く受け入れられているのがその証拠だ。大切なのは呼称より絆ということか。
スッキリしないところはあるが、今のところその問題で夫婦喧嘩になったり長女が混乱したりということはないので、まあ良しとしよう。

明るい悩み相談室PREMIER(191)〜記名投票〜 がりは

  • 2016.05.23 Monday
  • 05:15
明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。
こんばんは。
今日はどうされましたか?
 
名前が公開になったので、投票で緊張するようになった。
 
ほうほう、わっかりますわっかります。
誰かを選ぶということは誰かを選ばないということであります。
貴重な時間を割いて投票したにも関わらず「なんで俺を選ばなかったんだ!」などと恨まれるのは嫌ですもんね。
しかし私は言いたい。
そんな奴おらんやろー、と。
いるかもしれませんよ。
特にMr.軍団は覆面ですからね、マスクの下にどんな素顔が隠されているやら。
しかし基本的に我々PREMIERのメンバーは投票でしか評価を明示的に受けることができません。
評価をされない仕事はつらいです。
それがきつい評価だとしても、フィードバックがあるのは嬉しいです。
だからあなたが恨まれることはありませんよ。
安心して投票を。
 
え?
そういうことじゃない?
失礼しました。
何かを選ぶ時に自分の価値観がどうしても現れてしまって、自分が裸にされるような気がするんですね。
わっかりますわっかります。
作品を選ぶ時の基準も「一番笑った」「一番瑕が少なかった」「一番感動した」「一番くだらなかった」「小説以外」「一番役に立った」など様々あると思いますが、それを読み解かれるのではないかと、自分を裸にされるような恥ずかしさを覚えると、そういうことですね。
公衆の面前で裸になる覚悟を持って投票に臨まれる、その緊張を称賛します。
素晴らしい。
ありがとうございます。
基準がぶれないことを誉めそやす傾向が世の中にありますが、ことPREMIERに関しては自由にやっていただければと思います。
つまり、普段は取り得ない軸で投票してくださって大丈夫です。
これからもよろしくお願いします。
 
MVPに推挙した著者の作品が僅差で一位だった場合、賞をいろんな人にあげた方が来期のPREMIERの盛り上がりに貢献するのではないかという考えが最優秀作品賞の投票行動に影響を及ぼすというようなこと、を気にされる方もいらっしゃいます。
どうせ某がMVP取っちゃうんだろ、だから自分の票をそこに混ぜるのではなく、あえて違う人に投票する、ということを考える方もいらっしゃいます。
投票は自由です。
 
そもそも、ハッガリーニが記名投票を採用したのは、ニックネームでの投票ができるシステムなので名前を隠す必要も特にないと判断したからだと思われます。
なので、よくわからない名前で投票しておけばあまり緊張もないのかと思います。
 
え?
ニックネームにもセンスが問われる?
わかりますわかります。
でもね、その辺の話はまた今度にしましょう。
 
※明るい悩み相談室PREMIERではあなたのお悩みを受け付けております。
ブログにコメント、投票時にコメント、ハッガリーニにメール、電話、伝書鳩、のろし、などの手段でどうぞ。
ちなみに投票時のコメントでのお悩みには必ず回答いたします。
 

〜sideB〜 うべべ

  • 2016.05.22 Sunday
  • 01:24
桜満開の公園を家族四人で散歩していた。
小学生になったばかりの長男と、3歳の妹は
桜の木の下で花びらを拾ってはしゃいでいる。
やっとハイハイを始めたと思ったのに、あっという間に
好き放題走り回って遊ぶようになっていた。
子供の成長の早さには驚くばかりである。

公園の隣に大判焼きの屋台が出ていた。
長男が「あれ食べたい」と言うと、妹も「あれ食べたい」と続けた。
妹はとにかくお兄ちゃんのマネをしたいのだ。
味が評判なのか、やたらと長い行列ができていた。
その後も二人がねだるので、家族で列に並ぶことにした。

20分ほど待って、私たちの番まであと少しになったとき
ガラの悪い二人組の男がいきなり私たちの前に割り込んできた。
「あーーー!」と長男が指さして叫んでいる。
右側の金髪男が振り返り、「っるせぇな!!」と凄んだ。
びっくりした長男は、青い顔をして俯いた。
図体のでかい二人組が怖かったが、私はどうしても我慢できずに
「ちょっと、私たちが並んでるんで、後ろに並んでもらえんかな?」
と精一杯迫力を出した声で言い返した。

「うるせぇよオッサン!」
今度は左側の短髪ソリコミ男が振り返って言った。
巨体の二人組に睨まれると、いよいよ凄い迫力だった。
マンガや映画の主人公なら、ここでスパパンとやっつけてしまうのだろうが
運動不足のサラリーマンである私は、1対1でも絶対勝てそうになかった。
それでも、ここで引っ込んだらただの情けない父親だと思った私は
「うるさいのは君たちだ!後ろに並べ!」と吹かしてしまった。

「わかったわかった。あっち行こうや」
私は二人に両脇を抱えられて、公園のほうにズルズル引きずられていった。
ボコボコに殴られて伸びている私が容易に想像できた。
結局はどちらにせよ情けない父親になるのだ。
ケガで済めばよいが、下手をして死んでしまったりしたら
残された三人の家族はどうなるのだろうか。
割り込まれたことぐらい我慢しておけばよかった。
今から土下座をしたら許してもらえるだろうか。

公園の真ん中に着くと、謝る間もなくいきなりぶん殴られた。
左頬がぼうっと熱くなり、口の中に血の味が広がった。
金髪男は私を羽交い絞めにした。
どうやら私はソリコミ男のサンドバッグにされるようだ。
「ゆ、許してください。私が悪かったです」と今さら必死に謝ったが
ソリコミ男は聞く耳持たず、殴りかかってきた。

『パァン!!』

破裂したような音がして、目の前に居たはずのソリコミ男が消えていた。
見ると、5mくらい離れたところに突っ伏していた。
呆然としていると、今度は後ろで『パァン!!』と音がして、両肩がふっと軽くなった。
振り返ると金髪男が同じく吹き飛んでいた。
そして、金髪男が居た場所に、一人の老人が立っていた。
背は私と同じくらいだろうか。穏やかな感じの老人だ。

『蚊を叩くのと、さほど違いはないものだよ』
老人の右手が血で染まっているのをみて、信じられないことだが
この老人が二人を一撃で吹き飛ばしたのだと推測できた。
「あ・・・ありがとうございます。助けていただいて」
『弱いことは、罪じゃあない』
老人は繰り返した。
『弱いことは、罪じゃあない』
そして私に一歩近づき、鋭い声で言った。
『でもね。弱さを認めないこと、これは罪なんだよ』

すべてを見透かされて、私は恥ずかしくなった。
弱い私のちょっとした背伸びが、幸せな家族に危険を招いてしまった。
もし、この老人が助けてくれなかったら・・・。
老人は私の目を見据えて言った。
『正しくありたいと思うなら、強くなりなさい』
私は泣きながら崩れ落ち、頭を地面に擦り付けて言った。
「どうか、私を弟子にして頂けませんか?」

 ◇        ◇        ◇

その3年後、圧倒的強さを誇った「巣鴨のご老人」は
肺炎であっさり亡くなってしまった。
天国のご老人をがっかりさせぬよう、私は日々鍛錬を重ねて
教わった格闘術にさらに磨きをかけてきた。
そして気が付くと、当時のご老人と同じくらいの年齢になっていた。
肉体的には衰えたはずなのに、技のキレは年々増すばかりだ。

ご老人の命日である今日、私は墓参りのため巣鴨に向かっていた。
何の因果か、電車の中で蚊を一匹叩く羽目になった。
私のことをキングと崇める輩が居るが、はっきり言って
当時の「巣鴨のご老人」の足元にも及んでいない。
電車から降りた私は、ご老人が呟いた言葉をふと思い出した。
『私なんぞ、師匠の10分の1にも満たないよ』
ご老人の師匠なんて想像できないが、今の私と同じ気持ちだったのかもしれない。

動き出した電車を見送りながら、私は拳を握りしめた。
私たちの運命は、この電車とおなじ環状線だ。
ぐるぐる巡る、血塗られたバトン。
「山手線のキング」という名前はぴったりじゃないかと思った。

山手線沿いの桜並木の下で、幸せそうな四人家族とすれ違った。
三十年以上前の、ご老人と出会ったあの公園が思い起こされた。
私で終点にしないとなぁ。
そのためには、まだまだやるべきことがある。
『正しくありたいと思うなら、強くなりなさい』
そう呟くと、私は桜の木を見上げて拳を突き出した。

トレイン・キング 完


(編集部註:トレイン・キングはこちらです。)

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