【テーマ】「普通の便座」 byアフリカの精霊

  • 2016.03.31 Thursday
  • 23:03

 トイレのウォシュレットが壊れた。お湯を出すボタンを押すと普通はノズルが出てきてお尻を洗ってくれるのだが、なぜか押したボタンのそばから水が出てくる。変なものでウォシュレットに慣れるとウォシュレットのないトイレが普通でなくなり何故か落ち着かなくなる。そう、私にとってウォシュレットつきのトイレが普通だったのだ。そこで、もう20年ほど使っているので長くもったほうではないかと思い、思い切って買い替えることにした。

 

 次にウォシュレットの内容で悩む。あくまで「普通の」ウォシュレットでいいと思っていた。今家にある壊れたヤツはお尻を洗う機能だけのやつで、まだ学生の頃はこれで十分と思い買ったものだった。同じ機能のついているものを見ると取り付け工事抜き、本体価格のみで2万円くらいで売っている。私にとっての「普通」はこれで、初めはそれでいいと思っていた。

 

 しかし色々な商品を見ていると様々な機能がついている。匂い消して快適に保つ機能、リズムを付けて強弱のお湯で出てきて気持ちいい(?)機能、温風が出てくる、便座が自動的に開閉する、使わない時には節電してくれる、リモコンの有無、など選択肢を上げればキリがないくらいである。

 「今は何かの機能を付けた便座が普通ですよ」店員が言った。

 「どんな機能を付けたものが売れてますか」と、私。

 「お客様の好み次第ですね。痔の人にはお尻に優しいリズム洗浄や温風乾燥のついたものが人気ありますね」

「・・・・・・・」

 なぜ例として痔が出てきたのか不明で、店員は私が痔持ちで必要に駆られて買いに来たと思ったのかしきりにお尻に優しい機能の付いたものを薦めてきた。

 私は肯定するわけにもいかず、またどんな機能をついたものを買うか一度検討するために帰ることにした。店員の機能付のものを買うというのは高いものを買わせる方便なのかもしれないが、商品を見ているとやはり色々な機能は魅力的に思える。

 

 しかし店員に言われなくても、商品を見ることによって機能付のものへ目移りはしていただろう。自分がこれで普通だと思っていたものが、心や金に余裕ができることによってよりグレードの高いものが「普通」となり、それでも良いと思えるようになっていたのだ。

 自分にとっての普通は年齢や収入、家族構成何かで簡単に変わるんだなと思った瞬間だった。私は今、自分にとっての普通の便座を検討中である。

 みなさんは今もし便座を買うならどんな機能をついたものを買いますか?

【テーマ】ふつう  がりは

  • 2016.03.31 Thursday
  • 04:40
副業で通信会社の営業を十年以上やっている。
今はお客様第一線ではなく、トップ下のような位置でプレイをしているのだが、第一線にいた際一番ピリピリしたのが「ダン」という響きや「フツウ」という響きが耳に入った時だった。
普段空気のように水のように使って頂いて当たり前の通信。
その通信を前提にそれを使ってどうやって世の中をハッピーにしていきましょうかと話をして、少しでも実現につなげていくのが営業の醍醐味であるし、会社の社会的役割だ。
そのようにしてお客様と信頼関係を築いてきたし、そのようにしか築けないものではないかと思うのだが、それを一瞬にして台無しにしてしまうのが「断」や「不通」なのだ。
不通になるのはデータネットワークだったり、音声ネットワークだったり。
原因は様々。
東日本大震災のような大規模災害による広範囲の不通から、太った社員がケーブルを踏んだ時にだけ起こる不通まで、さまざま経験した。
例をいくつか。
Case1 クレーンを積んだトラックが豪快に電線をひっかけ、一帯が電話もネットワークも不通。
Case2 大雪が屋根にたまり、コーキングが甘かったところから浸水。室内の天井に水がたまり、そこがたまたま電話の交換機の隠れ家で、電話不通。
Case3 宗教団体の集会所。ある儀式で壁に斧を打ち込んだ所、運悪くその壁の裏に電話線が配線されており、その建物全体が電話不通。
Case4 電力会社が道路を掘削して、掘り当てたところが電話線の集合体だった。一帯が不通。
Case5 事務所の横の大木に落雷。誘導雷が発生し、電話交換機がショート。
Case6 支店長の席の真後ろにルーターが置いてあった。支店長が踏んで通信断。支店長が踏んで壊したこと可能性を排除して相談をしてきたため、電話ごしでの原因の究明は困難を極めた。現場に行って一発解決。
Case7 年末の大掃除で掃除機の電源のために電話交換機のプラグを抜き不通。
Case8 外出中の支店長に叱られたことに腹を立てた社員が、かかってきた電話を迷惑電話登録。支店長から店舗の電話が不通に。
Case9 電話機が壊れたから、と家電量販店で電話機を買ってきて接続。ショート。
Case10 店舗の模様替えをDIYで行い、不要と判断した線をズルズル抜く。先に電話交換機がついており、もちろん不通。
Case11 店舗の5S講習で「このようにぶらぶらしているケーブルがあると危ないですね。」と言った講師。そのケーブルを最寄りのハブに差した。しばらくして通信がループし、異常な量の通信が発生したため通信を遮断。

書けるのはこれくらいだろうか。
一つ一つに一生懸命に対応してきたのでよく覚えている。

俺のお客様は流通業が多く、電話が通じなくなることが機会損失、信頼の失墜につながることが肌感覚にしみついている。
なので電話がつながらなくなるとジャック・バウワーばりに「Do!It!Nooooow!!!」と叫ぶ人が多い。
叫んでも直らないことを知りながらも叫ばずいられないその気持ち、よくわかる。
なので「不通」と聞くと俺の血は沸き立った。
祭りの始まりである。
持っている知識と知力と記憶を総動員した。
持っている政治力の全てを駆使した。
目的的に判断し、局面局面で最悪からつぶしていく判断をした。
コミュニケーションを各所と密にとり、絶対にネガティブな言葉を使わずに心から励ました。

普段からこの時のために仕込みもしていた。
各所に恩を売った。
予防策も重要度に応じて用意したし復旧までのつなぎの方策も用意した。
不通時にいらいらしないよう、どのようなプロセスで復旧するかも平時から説明していた。

数々の協力と少しの奇跡が起きて不通が解消されると、祭りは終わる。
お客様とも関係各所ともまた少し仲良くなって。
終わった時には不通も悪くないな、などとちらと思うがもちろん錯覚である。
こんな信頼関係の取り結び方はもちろんイレギュラーだし、ない方がよい。

あってはならない、でも無くすことはなかなかできない、それが不通。
不通という非日常の中で試されるのは、日常の営業力である。
テストは常に抜き打ちで行われるのだ。
 

鉄の海(10) by Mr.ヤマブキ

  • 2016.03.31 Thursday
  • 00:00
「え、まだなの」
「そうなんです。すみません」
患者の長女へと向き直る。
「すみません、これはこちら側が相談させていただきたいことなんです。今はできる限りの治療をして快方へ向かいつつありますが、大変ご高齢ですし、何が起こっても不思議ではありません。どんなに注意していても予期できない事態で急激に状態が悪化する可能性もあります。例えば普通の酸素投与では呼吸が保てなくて人工呼吸器が必要となった場合、あるいは心臓が止まってしまって心臓マッサージが必要となった場合、それらの処置を希望されるかどうかを決めておきたいんです。こんなお話をして気を悪くされるかもしませんが、ご高齢の入院の方では、みなさん聞かせていただいています。そうでないと何かあったときに希望されない延命処置を施すかもしれないからです。どうでしょう、これまでそういったことを考えられたことはありますか」
「いえ、それはまだ……。でも、やっぱり楽にって思います。父も延命処置は望まないと思います。助かるならって思いますけど、きっと厳しいんでしょうね……」
「そうですね、お父さんの状態で一度心臓や呼吸が止まればかなり厳しいと思います。もちろん、こんなこと今すぐ決めるのは難しいと思いますし、あとで決めてお伝えいただければ構いません。ただ、何か起こった時に決まっていないと困るので、できるだけ早いのに越したことはないです」
 やや硬めだった表情が一層引き締まる。
「わかりました。家族と相談してみます」
「家族さんはどなたがいらっしゃいますか」
「母は家にいるんですけど、もうだいぶ弱っていて今日も連れてこなかったんですけど、こんな話をして決めるのは難しいと思うんです。あとは、東京に住んでいる兄がいます。子供は私と兄だけなので、兄と二人で決めようと思います」
「わかりました。なかなか決まらないかもしれませんが、これは一度決めたら変えられないというものではないですから、とりあえずの結論だけでも大丈夫です」
 
 そして病室の扉の窓からは話すことのできない父親に向かって手を重ねて話しかける彼女が見えた。
 その後、DNRを希望する旨の電話連絡が病棟に届いた。
 

4月のテーマは「魂」   ハッタリスト

  • 2016.03.30 Wednesday
  • 00:22
2月度投票の回答の中から来月のテーマの候補を見てみましたところ、「魂」だけあんまり何も連想しませんでした。
という理由でもって、4月のテーマは「魂」とします。
さて何を書いたものか。

他に「人工知能」という候補もありました。
僕は最近そういうこともやっているので、そのうち個人的に書こうかと思います。
少しだけ雑に触れるなら、定義のはっきりしている「機械学習」と比べて「人工知能」は何のことなのかいまいち分からないので、「機械学習=人工知能」と考えるのはかなりの飛躍であると感じます。
仮にそれを認めるとするとただの丸暗記も人工知能に含まれることになり、知能ってその程度でいいんですかと。

ついでに先月の「ががばば」について。
「ががばば」は意味不明の単語なので、それに意味を与えるのではなくて意味不明のまま扱い、かつ、意味不明であることに文脈としての意味があることを求めたところ、昔ながらの数学には定義が不要であるにもかかわらず定義されている概念があるということの説明にピッタリであると考えました。
「ががばば」じゃなくても書けるというのは正しいですが、しかし意味のある単語であっては書けないので、まさにテーマとしてふさわしいと思います。

最後にもう一度、4月のテーマは「魂」です。

なお、3月のテーマは「ふつう」です。
まだ間に合う、急げ!

【テーマ】一般と特殊について   ハッタリスト

  • 2016.03.30 Wednesday
  • 00:16
今月のテーマは「ふつう」です。
そこで今回は、数学の用語?である「一般」と「特殊」の話をします。

早速ですが、以下のAとB、どちらが正しいかお分かりでしょうか。

A.実係数2次方程式の解は一般に実数であるが、特殊な場合には虚数となる
B.実係数2次方程式の解は一般に複素数であるが、特殊な場合には実数となる

ちょっと分かりにくいかもしれないので、もうひとつ。

A.バナナは一般においしいが、特殊な場合にはまずい
B.バナナは一般においしいともまずいとも限らないが、特殊な場合にはおいしい

正解は、どちらもBです。
「ふつうはバナナっておいしいやん」という主張はありそうですし、それが間違いであるとも言えないのですが、それは「ふつう」が何を意味するのか分からないから否定できないというだけです。

数学などで使われる言葉づかいとしての「一般」は「常に」という意味です。ひとつでも例外があれば「一般に」とは言えません。
対して「特殊」は「一般ではない」、つまり、「常にではないけれどそういうこともある」という意味になります。数が多いとか少ないとか、そのような意味は含まれません。

こういった言葉づかいのことは学校の授業ではなぜか教えてくれませんが、重要な概念のひとつであると思います。
知っている人は教わらなくても知っていますが、知らない人はずっと知らないままなのではないかと思って、今回の内容を書きました。


ここから先はただの個人的な感想ですが、たまたま自分が遭遇した場合がそうであったということを指して「ふつう」と呼ぶのはイマイチだな、という気がします。
「数というものは、ふつうは実数で特殊な例外として虚数がある」という認識はあまり良くないです。

ふつうは交通事故を起こさないとか、ふつうは病気にならないとか、そんなことを言ってもあまり意味はありません。
事故に遭うのが特殊な場合であるのと同様に、事故に遭わないこともやはり特殊な場合です。

要するに、それが「ふつう」だと思い込んでいるのは自分だけじゃないのかという疑問を常に持つべき、という常識的な感想でした。

【テーマ】普通 Mr.Indigo

  • 2016.03.29 Tuesday
  • 14:23
普通であることに、あまり魅力を感じない。
関心のないことは普通であろうがなかろうが構わないし、関心のあることはむしろ普通でありたくない。

例えば、私は大学時代から千葉ロッテマリーンズのファンを続けている。言うまでもなく、関西育ちとしては非常に珍しい。
将棋のスタイルも独特だ。大事な対局になればなるほど盤から離れて座り、対局中もしばしば席を立って気合を入れていた。
若い頃はファッションも派手だったし、普通でないということにこだわっていたものは枚挙にいとまがない。
世間の荒波にもまれ、婚活も経験し、2児の父となった今は、普通を装うことに抵抗はなくなった。しかし、普通であることを良しとしないという根本的な考えは、あまり変わっていないように思う。

そんな私が、あえて普通であることにこだわったことがある。
子供の名前である。
長女の時も次女の時も、妻にいくつか案を出してもらったが、その中で我々が選んだのは、ごくごく普通の名前だった。漢字2字、読みは3音。名前の読みのランキングでは上位の常連である。平成生まれのトータルでは、どちらもベストテンに入るかもしれない。
字もいたって普通で、深い意味は込めていない。妻はどうだか知らぬが、私はそこに愛情を込めたつもりである。

普通の名を選んだ理由は2つある。
1つは、何十年経っても間違いなく浮かないということ。同世代や少し上の世代に多い名前なら、90歳になっても一般的な名前として認知されているだろう。また、結婚などで苗字が変わっても、不自然な姓名になる可能性は低い。
もう1つの理由は、深い意味が込められていない普通の名前だからこそ、人格的な融通が利くと思うからである。
「名は体を現す」という言葉があるが、実際は必ずしもそうではない。怠け者の勤さんや悪事に手を染める正義さん、不倫地獄にハマる良夫さんもいるだろう。
自分の名前は選べない。だからこそ、名前で娘達を縛りたくないと思う。意味が込められていないということは、自由であるということでもある。どんなふうに進化することもできる。
娘達の人生は、私や妻の人生とは違う。親子とはいえ、それぞれ違った自分らしさがある。そして、その自分らしさを築くのは自分自身である。他の誰でもない。だから、名前で娘達の邪魔はしたくないと思うのだ。

数ヶ月にわたって長考し、練りに練った名前を付けるのも親の愛情である。「こんな人物に成長してほしい」という願望を込めて、工夫を凝らした名前を付けるのも親の愛情である。実際、私の父はそうして私の名を決めたという。それはそれで立派なことであり、悪くないとは思う。
もしかすると、普通の名前を娘達に付けた理由には、その反動もあるかもしれない。しかし、敢えて普通の名前を選ぶのも、立派な愛情だと思うのである。

長女の名前には彩という字を使っている。彼女は将来、どんな色に彩られるだろうか。
次女の名前には花という字を使っている。彼女は将来、どんな花を咲かせるだろうか。
そして、今からそれが楽しみで仕方ない私は、ごくごく普通の親バカなのだろうか。

強く生きなきゃと思うんだ Mr.Indigo

  • 2016.03.29 Tuesday
  • 00:00
〜人波の中をかきわけ、壁づたいに歩けば、すみからすみはいつくばり、強く生きなきゃと思うんだ〜

私は驚いて耳を疑った。
とんでもなく好きな曲がテレビから流れてきたからだ。違う方向を向いていたため、CMで若い女性が歌っていることしかわからなかったが、まさか今になってこの曲をテレビCMで聴くことになるとは思わなかった。
この曲の名は「十七歳の地図」。今から33年前に尾崎豊が世に出した曲である。青年の強く生きようという意志が詰まった歌詞や叫ぶような歌い方、躍動感あふれるサウンドがたまらなく好きで、カラオケでもしばしば歌っている。

尾崎豊の曲を聴き始めたのは大学時代、彼が世を去って10年ほど経ってからのことだ。25歳くらいの頃は流行など目もくれず尾崎ばかり聴いていた。SEKAI NO OWARIのFukaseもそうだが、危うさの漂う理想主義者に共感を覚えるのだろう。
短い人生で多くの曲を残した尾崎だが、その中でも特に好きな曲は、年を重ねるとともに変わり続けている。勝利にこだわって部活に取り組み、就職活動に悪戦苦闘した20代前半は「僕が僕であるために」、仕事に追われ婚活も苦戦していた20代後半は「卒業」が代表格として挙げられる。
そして30代半ばで2児の父となった今は「十七歳の地図」が最も好きな曲の1つである。理由は下記の歌詞にある。

〜電車の中、押し合う人の背中に、いくつものドラマを感じて、親の背中にひたむきさを感じて、この頃ふと涙こぼした〜

高校時代、私は自転車通学だった。親父は20年以上にわたって徒歩通勤だった。ゆえに若き日の私は、この部分は特に何も感じることなくスルーしていた。共感がなかったのだ。
それが変わったのは、電車の中で押し合う子持ちのオッサンになってからだ。ああ、青年尾崎はこれを見ていたんだなと、近年になってようやく実感するようになったのである。
33年前より格段に利便性が増し、車両がグレードアップされても、首都圏の通勤ラッシュは相変わらずだ。17歳の尾崎が見ていた光景と、今の高校生が見ている光景は、細かい違いはあれども、根本的なところは変わっていないだろう。
そう、電車の中で押し合う人々は、皆それぞれ何かを背負って生きている。子を持つ者は、家族のためひたむきに頑張っている。ちょっと考えれば気付くことだが、通勤する立場だと普段はそんなことを思いもしない。
しかし、我々が見過ごしているその事実を青年尾崎は感じとり、「涙こぼした」という歌詞を書いた。多感な年頃とはいえ、その感性には恐れ入る。やはりこの男、並の人間ではなかったのだ。

さて、前述のCMがあまりにも気になるので、私はインターネットで調べてみた。どうやらGUというファストファッションブランドの商品のCMで、歌っているのは若手女優3人らしい。しかし、GUのレディス商品と尾崎豊はどう考えても結びつかない。ギャップがありまくる。
しかし私は嬉しい。CMで流されることで、大好きな曲が脚光を浴び、中には尾崎豊の世界観・人生観に興味を持つ人もいるだろうと思うからである。
そして、電車の中で押し合う子持ちのオッサンとして、強く生きなきゃと思うんだ。

フィリピン旅行記その1000 うべべ

  • 2016.03.27 Sunday
  • 21:26
フィリピン生活22日目。
フィリピン生活最後の週末に、友達とアジア最大級のショッピングモール【モール・オブ・アジア(MOA)】に行ってきた。
私の地元である宇部市にも、宇部市最大のショッピングモール【フジグラン宇部】があるが、MOAでいうと
玄関ホールほどの広さにすぎない。
しかし、広ければ良いというものでもない。
MOAはぐるっと一周するだけでも1日がかりだし、まともに見て回ったら一週間くらいかかるのではないか
という規模である。
どこに何があるか把握するのが大変で、人ごみの中で辿り着くのもひと苦労。
それならいっそフジグラン宇部くらいの広さのほうがちょうど良い。
よって世界一のショッピングモールは【フジグラン宇部】であるとこの私が認定する。

MOAから私のホテルまではかなり遠いので、帰りのタクシーを捕まえるのは困難を極めた。
その1で述べたとおり、フィリピンのタクシーは長距離を乗ってもかなり安い。
そのため運転手としては短距離で初乗り料金をコツコツ稼ぐ方がお得なのだ。
10台くらい声をかけたが、行き先を言うと「あームリムリ」とすぐ断られた。
そんな中、一台のタクシーが私たちの前に停まった。
自前で改造したと思われるゴツゴツのタクシーである。
行き先を言うと「ノープロブレム。乗りな」と快諾してくれた。
タクシーはゴツくて、運転手は岡村隆史とオランウータンを足して2で割ったような男だったが、
これを逃すと帰れないかもしれないと思い我々は乗ることにした。

乗り込もうとしたとき、後ろのタクシーがクラクションを鳴らしてきた。
5回くらい長く鳴らしたあと、距離を詰めて我々に圧力をかけてきた。
「さっさと乗れ、さっさと出せ」というのだ。
傭兵時代の私ならとっくに蜂の巣にしていただろうが、今は引退した身なので
大人しく乗り込んだ。
しかし、運転手のオランウータンは激昂していた。
「俺はこのあたりでタクシー団体のボスをやっている。あんな奴は商売できないようにしてやる」
と物騒なことを言い始めた。
そしておもむろにポケットからスマホを取り出した。
「ピストルを撃つわけにもいかないから、俺達はこれを使うんだ」
聞くと、スマホでナンバープレートを撮ってどこかに送るらしい。
その後どうなるのかは聞かなかったが、ナンバープレートを撮影するために
目標のタクシーを先に行かせたあと、後ろからぴたりと追いかけることになった。
ゴツいタクシーが追いかけてくるので、前のタクシーは一気にスピードを上げて
振り切ろうとしてきた。
しかし、改造ゴツゴツタクシーはあっさり追いついた。
「よし、シャッターチャンスだ」
と言ってスマホを構えたが、まだ操作に不慣れなようで、カメラの起動に手間取っている。
その間、前を見ずにずっとスマホ画面を見つめて運転しているので気が気でない。
このスピードで追突したら、木っ端微塵になるだろう。
私が心配そうに見つめているのにオランウータンが気づいて言った。
「大丈夫だ、心配するな。相手が筋肉ムキムキで強そうなやつだったらどうしようと思っているだろ?
俺はバックミラーで、相手がひょろひょろで弱そうなのをちゃんと確認してるんだ。だから、こうやって追いかけてるんだ」
自信に満ちた表情で情けないことを言うと、ついにナンパープレートを撮影することに成功した。
「どうだ見てみろよ」と後ろを向いて写真を見せてきた。
運転中に後ろを向くのはやめてほしかったが、もう何を言ってもムダな気がした。

その後無事にホテルに到着した。
カーチェイスでかなり遠回りしたはずなのに、到着時間は想定より早かった。
さすがボスというだけあり、裏道を駆使してショートカットしたようだ。
疲れたので帰ってすぐシャワーを浴びることにした。
絶対に石鹸置き台を触らないように気をつけていたが、上がったあとで
洗面台の蛇口をひねった瞬間にバチンと音がしてまだ感電してしまった。

これがフィリピン生活最後の感電となった。

旅行記を1〜1000まで書き連ねてきたが、書いてみるとあっという間だった。
色々あったものの、私はフィリピンを嫌いになることは無いと思う。
第二の故郷として数年経ったころにまた訪れてみたいとさえ感じている。



この時の私は、数年後にフィリピンで起こる大事件をまだ知る由も無かった・・・(完)

ベストコメント賞 by Mr.ヤマブキ

  • 2016.03.26 Saturday
  • 13:39
 ありがとうございます。鉄の海はさっそく息切れして2週間に1回とかになりそうですが、それを思えばこそ夢競馬の2週間に2本ずつってのは驚異的だなと思うわけです。
 さて、今月も投票コメントを振り返ります。
 
「悪くはない。しかし、このくらいで良かったと思ってはいけないと、自戒もこめて。」とMr.Indigo。この高い志はレギュラーのそれでしょう。そうです。これからはレギュラーでお願いします。
 
「がりはさんの本数を超えたのは久しぶりな気がします。」とダックスフンドさん。これからも超え続けられるかは鉄の海にかかっています。
 
「バリエーションの広さ、テーマもうまくまとめた感じでよかったと思う。」と源頼朝さん。ありがとうございます。バリエーションで言うと、また昔みたいに前衛っぽい小説書きたいなと思っています。
 
「これを僕が選ぶのは反則な気もするけど、やっぱりすごく嬉しかったので。」とホワイトさん。僕の提案に真っ先に乗ってゲストオーサーの作品群を書いて頂いたのがホワイトさんでした。こんな感じで紹介しあうと、少なくとも著者同士は楽しいと思うんですよね。もっと続けばと願います。
 
「質と数。ちなみに私の職場は違う意味で鉄の海です。」と宇部さん。その傭兵経験でどんなふうに鉄の海を乗り切られているのか、様子を伺いたいものです。
 
「僕が書いたものですが、どう考えてもこれが一番おもしろくて、テーマにも合っています。」とハッタリストさん。僕も投票しましたが、確かに面白かったです。自己投票で優勝してしまうというオチも付きました。
 
「今月になり新しいシリーズ物が続けて投稿されましたね。続き物って難しいと思います。一気に書いてしまわないと書くことを忘れたり、内容が一貫しなかったり。新しい挑戦に一票」と精霊さん。ありがとうございます。僕以外にも、それぞれ選んだ人に対して丁寧にコメントされていて好感の持てる内容でした。
 
「鉄の海がすばらしい。苦しいと思うがこれからも書いてほしい。また、ホワイトの作品紹介がすばらしかった。俺のも紹介してほしい。」とがりはさん。実は次にがりはさんの紹介も書こうと思ったんですが、斜め読みになってしまうとは言え、371+相談室214本を読むのは結構骨が折れるので止まっています。がりはさんも誰かを紹介してみてください。
 
「ゲストとは思えない活躍だから」とみしぇるさん。そうなんです、Mr.Indigoはレギュラーで行くべきでしょう。そうでしょう。
 
 ベストコメント賞は、作ったようなオチの付いたハッタリストさんです。
 

栄誉と回顧 Mr.Indigo

  • 2016.03.25 Friday
  • 14:53
薄氷の連覇である。票数も少なく、しかも同着だ。
しかし、最優秀作品賞をいただいたのは事実。たいへん光栄に思う。

さて、今回は受賞コメントを除く2月の4作を簡単に振り返ってみよう。

まずは受賞作「依存」から。
これは清原逮捕を受けて一気呵成に書いた作品。おそらく平日2日(実質3〜4時間程度)くらいで仕上げたのではないだろうか。
もともとどこかで使おうと思っていた弟の「マザコン」発言など我々兄弟の気性ネタが素材とうまくリンクし、自分らしいエッセイになった。
清原ではなくASKAを掴みに使ったところが趣向で、敢えて清原とか野球という単語は全く入れていない。
収束にやや不満は残るものの、勢いを重視して寄稿。まあ、収束もさしたる欠点ではなく、最優秀作品賞をいただけるならこれだと思っていた。

続いて「松山末吉・大吉」。
これは私にしてはやや緩めの身内ネタ。義母には今後もしばしば登場いただくと思われるが、非常に面白い人なので重宝そうだ。
タイトルは言うまでもなく某漫才コンビからのパクり。ちょっとひねってみたというところだ。

次に「OWARI naki OWARI」。
とにかく自分が書きたいことを書いた作品で、素材が若者に人気のバンドだけに、評価はあまり気にしていなかった。
敢えて言うなら、読者のストライクゾーンを測る遊び球という位置付けだろうか。まあ、後々SEKAI NO OWARIとかFukaseがまた素材になるかもしれないので、Indigoのマイブームとして認識していただければ幸いである。
タイトルはMr.Childrenの名曲のパクり。

〜時代は混乱し続けその代償を探す。人は辻褄を合わすように形にはまってく。誰の真似もすんな、君は君でいい。生きるためのレシピなんてない、ないさ〜(「終わりなき旅」)
〜世間という悪魔に惑わされないで、自分だけが決めた答えを思い出して〜(「RPG」)

表現は違えど要旨は近いので、拝借させていただいたのである。

最後にテーマの「ががばば」。
この単語自体を知らなかったので検索してみたのだが、私の知らない分野の言葉で、真っ向勝負ならまるで勝ち目はなさそうだ。
変化球でいくならナックルのように無茶苦茶な変化にしてやろう。そこで思いついたのが「縦読み」と「ばいきんまん」である。
何か良い言葉はないかと、私は国語辞典をめくった。そこで見つけたのが「鎧袖一触」という四字熟語。「鎧袖一触アンパンチ」というフレーズを思いつき、私は手応えを感じた。四字熟語を散りばめた変態的な作品にしてやろう。
しかし、そこはエッセイを主戦場とする者の悲しさ。がりは氏も指摘しているが、もう少しシェイプアップするべきであった。エッセイにおいて贅肉は役立つが、詩文風にまとめるなら贅肉は少ない方が良いということだろう。

最後に願い事だが、「家内安全」はもはや言うまでもないので、「ばいきんまんについて誰か語って下さい」ということで。

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