【テーマ】世界名作劇場  がりは

  • 2016.01.31 Sunday
  • 23:53
「世界名作劇場復活なんてありえないだろう・・・。」
プロデューサーは頭を抱えていた。
敏腕と言われた彼が、千のアイディアを持つ男という異名を取る彼が、バラエティの王様と言われた彼が、役員会議の結果を受けて社長が発表した「日曜のプライムタイムのテコ入れ策=世界名作劇場のリバイバル」という奇策に悩まされている。
 
頭を抱えているのはたった今終わったスタッフとのブレストの結果を受けてだ。
世界名作劇場のネタになりそうな作品はほとんど残っておらず、新しい作家の有望な作品は大体アニメ化、漫画化とタイアップされている。
おまけによく調べてみたら家族の在り方が変わり、家族で無難なアニメを見るよりは、クイズやトリビアをまき散らす番組を見るでもなく見るのがメジャーなライフスタイルになっており、今更世界名作劇場をやったところで、というのが今日の結論だった。
 
番組の方向性を決めなければならない。
バラエティと違いアニメでは生放送というわけにもいかない。
期日は迫ってくる。
何も決まらない会議を幾つも重ねて、明日が締め切り。
「世界名作劇場」というお題がなんとも邪魔だ。
彼がいたバラエティでは枠を壊すごとにブレイクがあったものだが、さすがにこの枠だけは壊せないだろう。
椅子の上で膝を抱え、その上に顎を乗せ、一点を見つめる彼をスタッフは遠巻きに見ていた。
見ることしかできなかった。
 
「・・・・やって、着たんだ」
 
かすれた声が彼の口から洩れた。
息をのむ周囲。
 
十秒後、椅子から跳びあがるように立ち上がった彼は「しゅーごーしゅーごー!」と大声を出しながら手を叩き、会議室に入っていった。
 
二時間後、久しぶりに手ごたえのある会議ができ、意気揚々と会議室から彼が出てきた。
ようやく方向性が出たのだ。
 
翌日の記者会見。
「先日社長からのリリースもございましたが、今年の日曜夜七時半は世界名作劇場を復活させます。12本ずつの4クールを予定してまして『赤ずきん』『白雪姫』『人魚姫』『シンデレラ』の4作品の予定です。」
「大丈夫ですか。大体赤ずきんを12回に分けるって無理がありませんか!」
「御心配には及びません。ネタばれになるので多くは語れませんが、今までにない斬新な角度からおとぎ話という現代まで語り継がれている名作をとらえなおしたいと考えております。」
「ヒントを少しだけ、少しだけでいいんで。」
「狼はなぜ赤ずきんと会った時に、その場で丸のみしなかったんでしょうかね。」
「え?」
「狼は赤ずきんに花を摘むように勧めるんですよ。食べちゃえばいいのにね。それに、狼はおばあさんを丸のみしたはずなのに、おばあさんの服を着れたのはなぜでしょうかね。」
「え?」
「我々の作る世界名作劇場は今までとは違います。ターゲットはもう子供ではありません。元・子供です。あー、白雪姫って風呂はどこで入ってたんですかね。人魚姫って、水から出てきたのにほんとにきれいだったんですかね。シンデ」
「大変申し訳ないですがお時間になりましたので会見はここで終了いたします。ありがとうございました。」
 
不敵に笑うプロデューサー。
 
世界名作劇場は三回目まで圧倒的な視聴率を稼いだが、過激な性描写が問題となり四回目から打ち切り、過去の名作が流れることになった。
めでたしめでたし。
 
 

物理学的コミュニケーション   ハッタリスト

  • 2016.01.31 Sunday
  • 22:10
殴り合いの話ではないです。
今日の主張をまとめると、

1.「コミュニケーション」の成立を期待することは、物理学的にはほとんど不可能である
2.それでも「コミュニケーション」を期待するなら、信じて祈ることが必要である

となります。


広い意味では見知らぬ他人と無言ですれ違うだけでもコミュニケーションに含まれると思いますが、ここではおおよそ「おはよう」と言ったら「おはよう」と返事される、くらいのことであるとしておきます。

そのような現象を物理学的に解釈するならば、
・「おはよう」のような声を発する
・音波が相手の耳に伝わる
・耳から脳へ信号が伝わる(?)
・脳で何か処理される(??)
・脳から声帯へ信号が発せられる(?)
・「おはよう」のような声が返ってくる
といったところでしょうか。意味不明です。

特に相手の脳内?で起こっていることは、
「相手は自分を何だと認識しているか」
「おはようじゃなくてオハイオだったのではないか」
「そもそも日本語を知っているのか」
「ぼんやりしていたんじゃないのか」
「返事をする気があるのか」
などなどの前提を必要としますが、とてもではないですが現代の物理学で記述できる内容ではありません。こんなもんは物理じゃないです。

物理学的に解釈するならば、いわゆるコミュニケーションとは、加速器の中で起こる1兆分の1の確率的現象のような、宇宙に放りだした人工衛星が太陽系の彼方の小惑星に着陸するような、風が吹けば桶屋がもうかるような、そのような奇跡であろうと思います。

であるならば、いわゆるコミュニケーションを望む人がするべきこととは、自分達の理論が正しいことを信じて実験の成功を祈る物理学者のように、コミュニケーションを信じて祈ることしかないのではないかと。
一方で「おはよう」と言われる側の立場とは、相手の祈りを叶えるも叶えないも自分次第であるような、神にも等しい役割かもしれません。
人事を尽くして天命を待つという言葉がありますが、いわゆるコミュニケーションに関して人事としてできることの割合はとても小さいのではないかという気がします。


などなどということを、ここ数年考えるようになりました。
本当は物理のことなんてあまり関係ないですが、僕はそこから出発するのが考えやすいので。
 

成長と衰え byアフリカの精霊

  • 2016.01.31 Sunday
  • 20:52

 テーマコンテスト 成長と衰えに書いてたものを遅ればせながらアップします。


 人は誰でも自分が成長するために努力をする。

 しかし、ある時を境に自分が成長する以上に他人の成長を見ることを楽しいと思えるようになる瞬間が来るように思う。

 ここで言う他人とは、まったくの他人という人もいるだろうが多くは自分の身近な人物を指す場合が多い。

 わかりやすい例としては自分の子供がいる人は子供の成長を見ることが楽しく、単に身体の成長を楽しむこともあれば、自分の教えたことができるようになることに喜びを感じることもできるだろう。

 子供の成長というのは確かに見ていて楽しい。11日を比べてみるとほぼ変わっていないように見えるのだが、1週間・1ヵ月というスパンで見ると必ずといっていいほど変わっている部分がある。そんな部分を見て何が楽しいのだと思う人もいるかもしれないが、体の成長と共に、自分の教えたことをスポンジが水を吸い込むがごとく吸収していく子供の成長をみるというのは最上級の娯楽に感じる人も多いのではないかと思う。

 

 このような例は例え自分の身内でなくても、そして対象が子供でなくても程度の違いこそあれ感じる気持ちではないかと思う。

 学校の先生や習い事の先生の生徒に対する気持ち、上司と部下の関係、先輩後輩色々な関係で成り立つ。

 表現が難しいが、アイドルを応援している人も他人の成長を楽しんでいるという点では同じなのかもしれない。

 

 問題はこれらの成長を見る楽しみと自分の成長が両立の難しいところにある。理想としては自分も成長しながら他人の成長を楽しむべきだと思うが、それは難しい。

 上記の例で考えれば、子供の面倒を見ると言うのはそれなりに自分の時間を割いて行うものであるし、アイドル応援も多くの自分を成長させる時間やお金を割いて行っているということでは同じであろう。

 そして何より前述したように他人の成長を最大の娯楽に感じてそれで充実感を得てしまうことも大きい。

 

 「他人の成長を願うようになった瞬間、自分の成長が止まる」なんて悪い意味の言葉で使われる場合も多い。自分の成長に最大の価値を置くとするとマイナスになるということだろう。しかし私はこの衰えを悪い衰えとは思えない。他人の成長を願い、時には自分の成長を犠牲にすることはあってもいいし、それこそが衰えてきたものの役割だとも思う。

 

 衰えという言葉を決してマイナスには捉えたくないのである。

8,000,000の神  Mr.Indigo

  • 2016.01.31 Sunday
  • 18:26
神社が好きだ。
近年はほぼ限られた神社しか行かなくなったが、若い頃は旅行のついでに各地の神社を訪ねた。北は新潟県の弥彦神社から南は大分県の宇佐神宮まで、あちこち参拝したものだ。

結婚式も神社だった。地元・奈良県の大神神社だ。式を終えた後、外へ出て記念写真を撮った。
「おめでとう」
通りすがりの参拝者に、我々は声をかけられた。見ず知らずの人に祝福してもらえるのは神前式だからこそ。私はとても嬉しかった。
「埼玉にお住まいだそうですが…」
長女のお宮参りで愛媛県護國神社に行った際には、祈祷の後、神主さんに関東の現状を聞かれた。震災から半年ほど後のことだ。この時期に埼玉で暮らしていたのは私1人だったので、他の面子が写真撮影や雑談を楽しむ中、私だけ残って話をした。
神主さんは単なる儀式屋ではなく、人の心に深く関わり、幸せを願う仕事をしているのだ。被災地から遠い埼玉や東京も復興ムードには程遠い雰囲気だという当時の状況を話しながら、私は思った。閑静な神社で待ち人がいなかったから、貴重な体験ができた。
最近は大宮の氷川神社に参拝することが多い。大都会だけにいつ行っても人がいっぱいだ。奈良の古社を知る私は物足りなさを感じなくもないが、厳かな雰囲気はあり、立地を考えると良い神社だと思う。

ところで、神が鎮座するのは神社だけではない。「代打の神様」とか「一分将棋の神様(この人は一神教の信者だが)」とか、日本では節操なく神が現れる。
「Nさん、神!」
少し前のことだが、私は興奮を抑えきれず電話で叫んだ。電話の相手は我が社から代理店に出向中のY氏で、仕事関係では貴重な理解者の1人。そしてN氏は某有名観光施設の広報担当者だ。
その30分ほど前、私はY氏から気が重い依頼を受けていた。私も関与しているパンフレットに某施設の写真があり、クレジットを載せる必要があるのだが、印刷所のミスでそれが微妙に誤っていたという。そこでN氏に電話して謝ってくれと頼まれたのだ。
「人間のやることですからね、ミスはありますよ。そのくらい違ってもウチのクレジットだとわかりますしね!」
明るい声で応対したN氏が、私とY氏の中で神と認定されたことは言うまでもない。
「八百万の神」を「はっぴゃくまんの神」と読んで自らの無教養を晒してしまった人がいたらしいが、「はっぴゃくまんの神」もあながち間違いではない気がする。日本のどこかで神と呼ばれている存在は、そのくらいいても全く不思議でないと思うのである。
「お主が代打の神か。お互い大変じゃの〜」
マスコミに「代打の神様」と持ち上げられている野球選手が神社に参拝すると、現地の神はこう言うのではなかろうか。少なくとも怒り狂うことはなさそうだ。
神社が好きな理由は、きっと厳かさとおおらかさの共存にある。他にどんな神が現れても受け入れるというのは、一神教では考えられない。
伝統や格式があり、荘厳な空気が漂っていても、どこかに緩さがある。例えば、我が地元では世界遺産の古社の境内を野生の鹿が我が物顔でたらたらと歩き、所構わず糞を落としている。そんな鹿が神の使者だと言うのだから、この国の文化は凄い。
日本という超ウルトラ多神教文化の国に生まれて良かったと、しみじみ思うのである。

鉄の海(1) by Mr.ヤマブキ

  • 2016.01.29 Friday
  • 00:00

 部屋は鉄の海に沈められたように静かで、人工呼吸器の規則正しい音が波のように響く。窓の外では暗がりの中に雪がちらついている。ベッドには老婆が横たわっていた。口には管が挿し込まれ、肺と人工呼吸器を繋いでいる。足の付け根の静脈には点滴が何本も刺し込まれていてそのそれぞれが点滅するポンプによってゆっくりと薬剤を流している。僕にはもはや、その老婆は物にしか見えなかった。生きているわけでも死んでいるわけでもない、そんな状態は生物では不可能だ。無機物でしかあり得ないのだ。老婆はその意味で、極めて無機物だった。
 
 その日の当直で、CPA、つまり心肺停止の救急搬送依頼があったとき、僕はまたか、と小さく呟いた。救急隊からの連絡が入る。
 
「患者は89歳女性、施設入所中で、貴院での入院歴が多数あります。今回はここ数日微熱と活動性の低下があったようで、本日15時頃、部屋に職員が様子を見に行った際、動きがなかったため救急要請となりました。救急隊到着は15:24で、すでに心肺停止。初期波形はPEAでした。ルート確保、挿管は行っております。5分後に到着予定です」
 
 救急車から救急隊に囲まれてストレッチャーが降りてくる。一番の若手に心臓マッサージを受けながら、意識の無い老婆が処置室へと運び込まれる。処置台へ移し、モニターを付けていると、便臭が漂ってくる。脳虚血に陥ったために失禁したせいだろう。その間に救急隊から事前連絡同様の申し送りを受ける。半ば聞き流しながら頸動脈の拍動と波形をチェックする。やはりPEAだ。心臓を動かす電気信号は出ているが、有効な心臓の収縮の得られていない状態だ。心臓マッサージを続けながら、アドレナリン投与を行う。
「血糖、120です」
 看護師による簡易測定では、低血糖は否定的ということになる。僕はエコーで老婆の体を覗く。内臓の出血は無いか?心臓の壁運動に異常は無いか?大動脈解離は無いか?心エコーを当てた時、肋骨や胸骨が心臓マッサージのために折られていることに気付く。それもいつものことで気にも留めずにエコーを続ける。心臓はほとんど動いていない。それに、ひどい脱水だ。やはり微熱が続いていたことと併せると敗血症性ショックだろう。それに矛盾ない所見だ。その間に、救急隊が揉んでいた酸素を送り込むためのバッグバルブマスクを看護師が簡易的な人工呼吸器へと繋ぎ変える。あっ、と看護師が声を上げる。心臓マッサージによって肺胞出血を来たしていたため、挿管チューブから血液が溢れ出てきたのだ。さらに心臓マッサージの圧力によって泡沫状の血液が辺りに飛び散った。厳しい……。そう思っていたところで、二分を告げるアラームが鳴る。波形チェックのタイミングだ。頸動脈が触れる。心拍が再開していた。

中邑真輔選手の移籍について  がりは

  • 2016.01.27 Wednesday
  • 00:00
新日本プロレスリングのIWGPインターコンチネンタル王者中邑真輔が世界最大のプロレスリング団体WWEに移籍することが濃厚となった。
新日本が世界二位の団体とはいえ、事業規模では圧倒的な差があり、自らのパフォーマンスが届く範囲も格段に広くなるし、待遇も厚くなるだろう。

中邑真輔は世界のプロレスファンに知られる存在であり、アメリカでもヨーロッパでも彼が出場する試合は彼目当てのファンが押し寄せる。
WWEの選手の中にも彼の熱狂的なファンがいるほどだ。
 
私はプロレスラー中邑真輔が大好きだし、今までの人生で辛い時苦しい時に何度も彼の試合や言葉で救われてきた。
特に2011年3月20日尼崎大会でのニュージャパンカップ決勝で永田裕志に敗れた時のコメントは試合と合わせて何度も何度も見た。
その後もビッグマッチの度にこちらの度肝を抜くような新奇性と壮絶さに満ちた凄まじい試合を見せてくれた。
 
私は新日本プロレスの月額999円のインターネットサービスに加入しており、過去の試合を見放題なのとLIVE中継を見ることができるのだが、ここでも何度も中邑の試合を見ている。
大きな大会になるとテレビに映した中継を家族で観戦するのが恒例になっている。
中邑の試合がそこで見られなくなるのは控えめに言って本当に残念だ。
中邑が新日本を退団することを発表してからどうにも元気がでない。
控えめに言って。
 
同じようにWWEにも月額10ドル程度でのインターネットサービスが開始されている。
じゃあ中邑を追ってそっちのサービスに入ればいいじゃないか。
そう思われるかもしれない。
WWEは選手のキャラクター管理が厳格で、今までの慣例だと中邑真輔が「中邑真輔」としてリングに上がることはない。
過去にもKENTAが「ヒデオ・イタミ」、華名が「ASUKA」に、プリンス・デイビッドが「フィン・バロール」に、ミスティコが「シン・カラ」に、ブライアン・ダニエルソンが「ダニエル・ブライアン」に変わっている。
中邑もきっと「ナカムラ」としては上がれない。
それでも私は中邑真輔が好きなので彼の戦いを観たいと思う。
 
なのでWWEのサービスに申し込もうとしたのだが、妻から異議が。
「WWEの思うツボじゃないの?」
確かに!
このままでは新日本との格差は広がる一方、試合内容ではWWEを上回ると考えられるのに事業規模の差だけでやられてしまう。
草刈り場になってしまう。
WWEはその成立過程で全米に点在していたプロレス団体のエースを引き抜いてはその団体を弱体化させ、吸収することで全米統一を果たした。
その動きは現在も続いており、メキシコのメジャー団体からトップを引き抜いているし、全米二位、三位の団体からの引き抜きも常態化している。
日本の二位、三位の団体からも抜いている。
その彼らの魔手がとうとう日本最大の団体に伸びてきている。
 
中邑は観たい、でもWWEに与したくない。
今しばらく、考えたいと思う。

ハイキングロードへ  Mr.Indigo

  • 2016.01.26 Tuesday
  • 00:00
6年3ヵ月ぶりの寄稿になる。
前回(2009年10月31日)は婚活の話を書いた。何度地に叩きつけられても蜘蛛の糸を見つけて上っていこうと、私は意欲を語った。

その半年後、私は1本の糸を見つけた。遠目にはいつもと同じ細い糸のように見えたが、実際は違った。太い縄でしかも手足をかける結び目が適度についていて、まるでよじ上ってくれと言わんばかりだった。
縄を見つけてから7ヵ月、私を遮るものは何もなかった。将棋で勝ちが見えた時のように手が震えることはあったが、掴んだ縄は離さなかった。悲願はあっさりと、実にあっさりと達成されたのだ。

それにしても不思議だ。
なぜ妻は私を選んだのだろう。
後で知ったことだが、妻は私と会う前に2人の男性と会っていて、ともに感触は悪くなく、どっちかかなと思っていたという。そこへ私が現れ、並ぶ間もなく差しきってしまったというわけだ。
先に会った2人の詳細は不明だが、基本的なスペックにおいて私が圧倒していたとは思えない。高収入でもなく、当時は休日も少なかった。旅行という共通の趣味はあったが、旅好きはいくらでもいるし、それが決め手になるとは思えない。
しかし、他者を凌駕していた可能性を感じるものがある。
気概である。
「絶対ここで決めるぞ!」
妻と初めて会った日の夜、私は下町の古いアパートの一室で何度も叫んだ。おそらく近所迷惑だっただろう。次に会うのは2週間後で、今気合を入れても意味がないということもわかっていた。しかし叫ばずにはいられなかった。
この日会った人は感触が全く違った。このチャンスを逃すと、次はいつになるかわからない。ここが人生の勝負所、二度とないかもしれない勝負所だ。
そう思えたのは、婚活を2年も続けていたからである。1回目や2回目で気が合う人に当たっても、特別な思いは抱かないだろう。継続は力なり。石の上にも3年。そう、長い苦闘があったからこそ、私はこの出会いを大切にできたのだ。
一方、妻は私と違って現実主義者で「無理しない、無茶しない」をモットーに生きてきたという。穏やかな性格のため人間関係も苦にしない。いわゆる八方美人だ。しかし、逆にそんな彼女だからこそ、理屈抜きに自分を大切にしてくれる情熱的な男を探していたのかもしれない。

入籍から5年余。我々は2人の子を授かり、家族4人で道を歩んでいる。
ちょっとしたハイキングのようなもので、道は決して平坦ではない。時には転ぶこともある。しかし今は助け起こしてくれる人がいる。1人で蜘蛛の糸を手繰っていた婚活時代とは、まさに雲泥の差だ。
このハイキングロードに何が待ち受けているか、それは進んでみないとわからない。しかし、あの頃のように肩肘を張る必要はない。調和を重視して自然に生きていけばいいだろう。
もう1人ではなく、4人なのだから。

明るい悩み相談室PREMIER(178)〜スマホの修理〜 がりは

  • 2016.01.25 Monday
  • 23:59
明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。
こんばんは。
今日はどうされましたか?
 
「スマホの修理代が,保険に入っていても5000円かかると言われました。高すぎると思いますが,どうにかなりませんか。」
 
ほうほう、わっかりますわっかります。
修理にかかる費用がただになるから保険に入るもんじゃないのかと、直すのめんどくさいからふっかけて来てるんちゃうんかと、直すくらいなら新規回線引いて端末タダでもらう方がええんちゃうかと、そういうことですよね。
 
どうにかなりませんか、とおっしゃられても私には眉を八の字にして「おつらかったでしょう。」と発声するくらいのことしかできません。
いくらの見積もりが保険によっていくら軽減されたのか、そして保険の掛け金はいくらだったのか、まず知りたいところです。
キャリアによって補償制度が違いますが(たとえば水濡れ故障への対応、落下破損による故障への対応)、どこをお使いですかね。
手厚いのはドコモ、やる気が薄いのはソフトバンク、というのは私見です。
 
おそらくですが、保険に入った時にこんな説明をされていませんか。
「補償範囲は○○の場合と△△の場合です。水濡れや落下による破損は入りません。ただし、補償外でも修理できるものであれば上限5千円で修理します。」
各キャリア、程度の差こそあれ、そんな対応です。
法人向けなら壊し放題月額○○円、というような補償もあるのですが。
 
壊し放題での補償はマス向けにも成立すると思うのですが、逆選択のリスクをキャリア側がヘッジしようとしていると考えられます。
逆選択というのは経済学の用語で、情報の非対称性が存在する場合に、市場メカニズムによって高品質の財が淘汰されてしまって、高品質でない財ばかりが出回るようになってしまう現象のことです。(通常=「選抜」は良いものが選ばれることを指す。良いものが淘汰されてしまうので「逆選抜」)
今回のケースでいうと壊し放題の保険に入る人は壊しやすい人が多い、普通の人が集まってくれれば保険として成立したのになあ、仕方がないので加入者の行動に制限をかけるためにも水濡れと落下は上限5千円かかることにしよう、という理屈が働いているのではないかということです。
みそは情報が保険の提供側と申し込み側の間で非対称で、どんなに加入者側が「俺は大事に使う」と言ってもそれは保険屋側には伝わらないということです。
そこで強制的に保険屋に都合の良い行動に誘引するために「水濡れ、落下は五千円」という負のインセンティブを設けています。
で、あなたのスマホの故障原因はおそらく落下だったのではないですか?
残念です。
 
スマホの修理代ですが、そもそもスマホ自体の値段から考えてみましょう。
iPhone 6S86,800円(税別)です。
他の機種も似たり寄ったりだと思うのですが、これがキャリア間の過当競争により大きく値下げされて売られています。
新規契約なら端末代は10,000円でいいですよ、とか家電量販店に行くとザラですよね。
そこで10,000円で買ったものが壊れた時、修理に5,000円かかると言われるとどうでしょうか。
頭に来ますよね。
しかも保険に入ってるんやぞと。
わかりますわかります。
 
レンタルビデオ店のセールで「旧作は1本100円で7泊8日借りられます」というような形式よくありますよね。
調子に乗って10本借りて返さなければいけない日に寝坊して返せない、なんてこと一回くらいやったことないですか?
その時、延滞料金は通常料金が適用されるので1本340円かかったりするんです。
7泊借りて100円だったものが1日の延滞で340円という悪夢。
調子に乗って10本借りたから3,400円に。
頭にきて返さなかったら次の日には6,800円に。
実はレンタルビデオ店の儲けは延滞料金から出てるんじゃないかって。
まあそんな棚ボタ狙いのビジネスモデルなんてないでしょうけど、そんな邪推をしたくなりますよね。
 
その時の感情と似てませんか?
わかりますわかります。
 
でも、仕方のないことですよ。
だって壊れてしまったのですから。
過去は変えられない、自分は変えられます。


さっさとスマホを直してプリミエールでも読んでください。
スマホの修理はできませんが、あなたの機嫌を直すことはできるかもしれません。


 
※明るい悩み相談室PREMIERではあなたのお悩みを受け付けております。
ブログにコメント、投票時にコメント、ハッガリーニにメール、電話、伝書鳩、のろし、などの手段でどうぞ。
ちなみに投票時のコメントでのお悩みには必ず回答いたします。

アルビノ by Mr.ヤマブキ

  • 2016.01.22 Friday
  • 00:00
 日焼けをしたときに肌が黒くなるのはメラニンと呼ばれる色素が沈着するからです。そのメラニン産生機構が生まれつき破綻している状態を「アルビノ」と呼びます。アルビノは広く動物一般に見られる現象で、人間にも一定数存在しています。
 アフリカの一部ではアルビノと性交渉をするとエイズが治ると信じられています。過去のことではありません。今でもアルビノの幼女がレイプされる事件が後を絶えません。もっと言えば、アルビノの人肉は万能薬と信じられており、呪術者たちによって腕を切り落とされたり、殺害されたりして人肉が高値で取引されている現実があります。それを聞いてあなたは例えばこう思う、いや、意識の底で自覚のないまま感じているのかもしれません。それはアフリカのような未開の人々だからこそそんな迷信がまかり通るのであって、ここ日本ではあり得ない野蛮な行為だ、と。
 
 
「完全母乳じゃないとまともな子供に育たないわよ」
「帝王切開じゃだめよ、おなかを痛めて生まないと母性なんか出ないんだから」
「統合失調症?ひゃあ殺される」
「触らないで!エイズなんでしょう。うつさないで!」
「アレルギーは甘え。ほら、この食べ物を食べて」
「がんは放置しましょう(近藤誠)」
「ワクチンは製薬会社の利権です。ワクチンは危険です」
 
 これらは現代日本でいまだに叫ばれていることです。科学的根拠の無いことを信じた結果、他人を傷つけるに至ります。その意味で、これらはアルビノのレイプとどれほどの隔たりがあるのでしょう。アフリカ人を土人だと笑う洗練された日本の人々が一体どれほど進歩しているのでしょう。
程度が違いすぎると言うかもしれません。しかし例えば、重度のアレルギーを持つ場合、当該食物の摂取で、30分程で死に至ることもあります。アメリカでは、キスした彼女が朝食にピーナッツバターを塗ったトーストを食べていた、たったそれだけの理由で死んでしまったピーナッツアレルギーの少年の事件が報道されていました。アレルギー食品を食べさせて人を殺すなら、アフリカみたいに腕を切り落とすほうが死なないだけまだマシだとすら言えてしまうのではないでしょうか。
 また、子宮頸癌ワクチンで阻止できたであろう30代の末期の子宮頸癌患者はいます。20代にもいます。ワクチンは無効という思い込みが若年での癌死を引き起こすかもしれません。無知なままに「怖いから」という理由でエイズ患者や統合失調症患者をむやみに避けて隔絶しようとする心はハンセン病の過ちを繰り返すでしょう。
 
 我々は決して、科学的事実のみで生きるのではありません。お盆には墓に花を供えて手を合わせます。新年には神社にお参りをします。霊的なものを信じていても一向にかまいません。しかし、明らかな誤りは訂正されるべきです。それが他人を深く傷つけるのであればなおのことです。テレビでまことしやかに報道される非科学的事実や人口に膾炙するあらぬ噂を聞いたら、時々でいいからアフリカのアルビノたちのことを思い出してほしいのです。そして、振り返ってください。我々は決して野蛮なアフリカ人をリードする進歩的な日本人ではありません。

 

来月のテーマ「ががばば」  がりは

  • 2016.01.21 Thursday
  • 00:00
テーマコンテスト王者のがりはです。
今回の作品は格闘技の話を情熱に任せて書いてしまって少し気恥ずかしいが、それすらも面白いかと思い表に出したものですが、ご支持いただきありがとうございます。
二作品しかなかったので、書いたこと自体を評価していただく向きも多かったですが、まずはベルトの感触がありがたいです。
これからいろんな戦いを通じてこのベルトの価値を高めて行きたいと思います。
すっかりほこりをかぶっちゃっているのでね。
レギュラー陣、テーマコンテストのベルト、欲しくないかい?
書きたいことだけ書くのではなく、どんな注文にもプロの仕事で返す、それがPREMIERでしょう。
今月のテーマは「世界名作劇場」ですよ。
 
ヤマブキの作品、私にはピンときませんでしたがもしかすると時が経つにつれてピントが合うかもしれません。
過去の作品を読み返しているのですが、書かれた当時の評価と今の評価が異なることがよくあります。
今回のコンテストの結果も1年後やり直したら変わっていることでしょう。
 
投票の中で「投票用紙不備」というご意見がありました。
Mr.Pinkの問題作にテーマコンテストに触れた部分があり、それも候補に挙げるべきだというご意見でした。
プレイヤーとしての意見を述べます。
あれはテーマコンテストに参加した作品ではなく、そういうギャグでしょう。
なので投票用紙には不備がなかったと考えます。
 
ついでにMr.Pinkにも一言。
テーマコンテストで戦うのであれば、きっちりそれで一本書いてこい、今まで語ってきたので語らない、というような一文で戦ったつもりになるな。
ちょうど今月のテーマはお前向きだ。
そして俺にはちょっと苦手なテーマだ。
それくらいのハンデがあってちょうどいい。
 
来月のテーマは「ががばば」にします。
 
意図はあえて申しません。
良い戦いを。

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