おおみそか byたりき

  • 2012.12.31 Monday
  • 23:21
昨日は一日中冷たい雨が降り続けていた。しとしととではなくざあざあと。
今日は、今年最後のこの日は、寒くはあるが青空も見られるいい天気であった。
昨日の雨のせいで足元こそ悪くまた大きな水たまりもあったりしたが、大掃除として外で作業をするのに文句は言えない。

うちの家はすぐ東に山を抱えていることもあって、冬場は太陽が顔を見せる時間がほんとに少ない。
今日だって、もう正午だというのに太陽はようやく山から出てきたばかりで、その光は驚くほどに弱い。雨が降っていた昨日よりも寒く感じられるのは気のせいではないだろう。
そんな中、今日の昼間は外での作業として裏庭の掃除をした。普段はほったらかしにしているわけだが、一年に一回くらいは見た目だけも整えようというわけである。
それなりには真面目に、そしてまあまあ遊び遊びに作業をしているとき、ふと上を見上げるとそこにはいくつかの果物の木々が見えた。
思わず、そっかあと見入ってしまった。

昔はそこは一面の梨の木が植えられていた。子どもの頃、収穫の季節にそこで取った梨を食べるのが楽しみだったものだ。
しかしながら、10年ちょっと前に祖母が他界してしまってからは世話をするのが大変で梨を作らなくなった。いや作れなくなったと言うべきか。
そんなこんなで20近くはあった梨の木を切ることになった。その代わりに、その場所に様々な果物の木を植えた。
その木があんなに大きくなっていることにびっくりした。

たしかに、木といってもまだそれほど大きくはない。木登りをしようとしてもすぐに折れてしまいそうだ。
とはいえ、背高く伸びた枝からはそれなりの年月が過ぎたことを感じられずにはいられない。
この10年間、半分は大学生として、もう半分は社会人として過ごしたことになる。
この木々たちは、ぼくがどこで何をしていたときも地面から栄養を吸い上げ成長してきた。
そして、その成長した姿をぼくに見せてくれている。

もう少しで今年は終わり、新しい年がはじまり新しい10年に向かっていく。
これからますます太く育っていくだろう木々のように、ぼくもまだまだ成長を続けなければならない。
細くも凛と伸びるあの枝のように、もっともっと手を広げていかなければならない。

明るい悩み相談室PREMIER(67)〜目標についてに〜 がりは

  • 2012.12.31 Monday
  • 02:41
明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。
こんばんは。
今日はどうされましたか?

「毎週、日曜日の夜に、「今週はあれとこれを勉強しよう! 毎日30分はあの本を読もう!」などと小さな計画を立てているのだけれど、今まで実現できたためしがなく、週末になって、「あ〜、今週も何もできんかったなぁ」と自己嫌悪に陥ること。」

ほうほう、それはお困りですね。
分かります分かります。
こういう悩みをこぼすと「それは計画の立て方が悪いんだよ。」などとしたり顔で言ってくるものがありますが、気にしてはいけません。
私はあなたの絶対的な味方です。
日曜日の夜にあれこれしようと考えること自体は絶対にいいことです。
計画を立てようとしたそのこと自体にすでに価値はあります。
素晴らしいですよ。
ただその辺を走るのと、目標を吉川なまずの里マラソンに向けて走るのとでは同じ速さでも意味合いが違ってきます。
あなたの計画がうまくいかなかった理由がたとえ怠惰であったとしてもそれは意味のある怠惰です。
それを認めたうえで次のステップに行きましょう。

計画を立ててそれが実現しない、それが自己嫌悪につながる。
自己嫌悪を避けるためには大きく二つの方向があります。
立てた計画を実現するか、計画外にできたことを見出してそれを評価する。
立てた計画が実現できないのは私の業のようなもので、MVPを5連覇10連覇すると言い放てばそこで連覇は止まる、元旦に目標を掲げてもそれをチェックし忘れ毎年年末に思い出すといった始末。
なので、ここに関してはいい知恵はあってもそれを自信を持ってあなたに伝えることができません。
今回は後者の話をしましょう。
計画を立てたことによって、何気ない日常に評価軸ができ「○○ができた/できなかった」「△△が良かった/悪かった」ということを考えるようになります。
できなかった、悪かったというとその代償を求めるのは資本主義社会の常。
勉強しなかった時間であなたは何をしましたか?
あの本を読まなかった時間であなたは何をしましたか?
計画を立てたおかげでそんな問いが立てられるようになったんですよ。
あなたの毎日が少しでも良いものになりますように。

もちろん計画を少しでも達成できるにこしたことはありません。


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【テーマ】AKB48の真実  葉山 悟

  • 2012.12.31 Monday
  • 00:52
日本の芸能界どうなってんねん。特に音楽業界。なんで去年も今年もレコード大賞AKB48やねん。どう考えてもニューリリースのCD全てオリコンランク入りなんて、おかしいやろ。最近ギネス記録を樹立なんて記事が載ってたけど、アレ一体なんやねん。
<AKB1/149恋愛総選挙>最も多くのポップシンガーがフィーチャーされたビデオゲームというカテゴリーでギネス世界新記録を樹立。この説明の意味わからへん。AKB48の二軍も三軍も予備軍も含めて総勢149人のメンバーが出ているビデオゲームというだけのことや。この出演メンバーのどこにポップシンガーがおるんや。
そもそもAKBとは、アイドルをやりながら経験を積んで卒業してソロの女優や歌手になるのが目標。AKBとは一種の学校であり、メンバーはそこで芸能活動をしている学生で、AKBに青春の全てを捧げ、夢の実現のために日々精進しなさい、というのがプロデュースをしている秋元某の建前、教育方針や。いわば彼女達が歌い踊っているのは学芸会の延長、もしくはそのもの。それがポップシンガー、レコード大賞、全てのCDがオリコンランク入り、おかしいやろ。AKB48のせいで、日本国中総学芸会化が進んでしまった。ありとあらゆる業界、世代で女子を複数集めて、例えば短いヒラヒラのスカートで、今にもパンツ見えそうなカッコで踊らせ歌えば、CDが売れ、商品がPRでき大衆の耳目を集めることが出来る。小中学生の女子ならまだしも、50、60歳代のAKBもどきまで登場したときはホンマ驚いた。日本のポップシンガーの評価を世界的に下げた事は間違いないことや。秋元某さんよ、AKB48が一部のコアなファンで支えられていることは自覚しているやろ。いわゆるオタクって呼ばれている連中のこと。ただCDの売上げを総選挙投票券付といったような特典商法で伸ばすのはあかんやろ。いわば貧乏人から金をむしり取るようなもんや。この商法、小学生の犯罪まで促しているって新聞に出てたな。それに学芸会の催し物やのに、一流ミュージシャン並みの金とっているのが気に入らんな。ちなみに冒頭のビデオゲーム14,679円もするんやて。
AKB48って秋葉原に専用劇場を持っているアキバの略称と、プロダクションの名称48をくっ付けたものらしいけど、ホンマは違うやろ。Aあんたら、Kかんにんしてや、Bバカにしてんのか、の方がぴったりや。

明るい悩み相談室PREMIER(66)〜阪神タイガース強化策〜 がりは

  • 2012.12.30 Sunday
  • 21:15
明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。
こんばんは。
今日はどうされましたか?

「阪神タイガースの戦績が低迷しています。どうしたらチームが浮上するのか友人知人と議論しても結論が出ません。せめてCSには出場してくれたらと思うのですが、どうしたらタイガースは勝てるでしょうか。」

ほうほう、それはお困りでしょう。
わかりますわかります。
久しぶりにまともにこたえちゃいましょう。

私は日本においてプロ野球よりJリーグの方が好きです。
より厳しくフェアな競争環境で行われているからです。
だってそうでしょう。
18チーム1リーグで争うのと6チーム1リーグで争うのでは、戦いの純度が違いすぎやしませんか。
CS出場って、6チームの中の上半分に入ればいいんでしょ?
なんと恵まれた環境なのか。
放っておいても5割くらいの可能性で行けそうじゃないですか。

チームの予算だって随分違うんでしょ?

http://kupilion.symphonic-net.com/money/annual-salary/data/all/total/

あれ?阪神一位ですね。

ところで、あなたの悩みは阪神の強化策でしょうか。
それとも阪神の結果の改善でしょうか

阪神が強くなっても、他チームがもっと強くなったら勝てません。
逆に阪神が弱くなっても、他チームがもっと弱くなったら勝てるでしょう。
あなたのお悩みを考えると、強くならなくても勝てればよい、ということだと思いますのでその線で考えてまいりましょう。

1. 巨人と違うリーグに行く

戦いというのはルールを制定できる立場にある方が有利です。巨人が今のように競争のルールを決められる立場にいるうちは違うリーグにいた方が良いです。日本一を決める戦いで、当たっていないのにデッドボールにしたり危険球にしたりするチームと同じリーグにいることはリスクでしかありません。

2. 同リーグ他チームの一番良い選手を獲得する

これは広島の四番を代々獲得しているので既に取り組んでいる事項ではありますが、四番=一番良い選手ではありませんよね。また、巨人から何人抜いてもあまり意味がありません。上から三番目までに入りたいということは下に3チーム作ればよいということなので、3チームから重点的に抜きましょう。広島からはすでに抜いているので、横浜とヤクルトから抜くということでよいでしょうか。
横浜からは・・・・誰もいりませんか。
ヤクルトからは・・・ピッチャーが結構いいですねえ。一人欠けたくらいじゃなんとも。林、石川、館山をもらっちゃいましょう。そして宮本も。もしかしたら小川監督がいいかも。

3. 年棒40億円以上払わないとリーグに加盟できないことにする。

こうすると参加するのが難しいチームがでます。しかも人数は今のままに設定しておけば、スターでもない選手に不相応な金が行くことになりスポイルされた彼らはパフォーマンスを落とすことでしょう。こんな無茶苦茶な話も読売さんの力を借りれば簡単に実現するでしょう。

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貯金は面倒である 最終回 by アフリカの精霊

  • 2012.12.29 Saturday
  • 22:44
前回までのあらすじ
秘密団体「チーム奈良」の好青年シカより貯金箱を貰った精霊は10円玉貯金を始め約500枚貯めたものの使い方に困る。
郵便局ATMやたばこの自動販売機との戦いを経て、精霊は苦戦しながらも確実に10円玉の数を減らしていく。

前回終了時点において残り360枚
さて、色々悩んできたこの3600円の使用方法。
ここでまでくると精霊の戦略・技術も円熟味を増してくる。
既に10円玉を自動販売機に連続していれる技術は日本代表レベルといっていいだろう。
10円玉を入れている途中に、「時間切れ〜」とばかりに自動販売機に今まで入れた10円玉を全て吐き出されることもなくなった。

そして新しい発見もあった。
ご存知の方もいるだろうが、自動販売機の中にはコインを入れる受け入れ皿のようなものがあり、手裏剣を投げるように入れられるものもあるのだ。
心に余裕が出てくると遊び心も出てくる。
本当に手裏剣を投げるように入れてみる。(シュパンと音を立てながら入っていくので気持ちよい)
41枚を平たくピラミッド型に詰んでそれを崩して入れてみる。(一度に投入口に殺到するのは爽快である。そして渋滞を起こしながらも全てが順番を守るように1枚ずつ吸いこまれていく)
傍目から見ると自動販売機で遊んでいる怪しい大人であっただろう。
しかしこの10円玉が消えていく姿が爽快に思えるのは今まで10円玉の使用方法に悩みぬいた反動であった。
またお店の人が自動販売機を開けた時に10円玉ばかりが溜まっていることに驚くだろう姿を想像するのも楽しくなってきた。
そうして精霊は10円玉は消えていった。

結局は貯めた10円玉のうち大量に消化したのは自動販売機を通じてであった。
しかしそれは普通の自動販売機においてはかなり技術が必要とされる場合もあり、技術の習得が必要であった。
自動販売機の中には時間切れのないものも多いが、精霊が主に使用していたのは時間切れのあるものであったのも不幸であった。
お店では「1980円です。」なんて言われた時にさすがに198枚使うことはできず、8枚消化することしかできず、そんなに減らなかった。

つまり10円玉は貯めたところで使い道に困るというのが結論である。
もちろん、店で何十枚と出すことや、銀行に「これ貯金します」と言えるくらいであればこの苦労は必要ない。
しかし、それを言えない人にとっては10円玉は最適な手段ではなく100円以上、できれば500円玉貯金が最適であるということである。
500円玉貯金であれば、銀行に差し出すことを恥ずかしいと思う人は少ないであろう。

早く貯めたい一心から10円玉にしたことは失敗だった。
最後は貯金して何かを買ったりすることが目的なのではなく、その使い道を探すことが目的になってしまっていた。
そしてその結果、たばこの自動販売機と言う自分のためには全くならないものに使用することになってしまった。
こんなことなら500枚(5000円)で何かを買った方がよかったとも言える。
10円玉貯金はすぐ貯まるので面倒ではない。
しかし、その後の使い道を探すのが「面倒」なのである。

この人を見よ(4)  がりは

  • 2012.12.29 Saturday
  • 18:40
「FAXの乱れは心の乱れ。」
凛とした声が朝の事務所に響く。
事務全般を司っている通称姉さんの声だ。
齢五十を数え電話応対や細々とした事務処理の手際ににじむ几帳面さに磨きがかかり、凄みすら感じさせる。
一週間に一度色が変わっているネイル、上品な香水、きっちりしているが薄い化粧、華美ではないが仕立ての良さがわかるシャツ。
社長よりも実権があると言われるのも仕方がない。

「意味わかんねえっす。FAXはFAXでしょ。」
まだ起き切っていないようなぬたっとした声。
入って半年の若造だ。
甘い顔、185cmで高校ではエースで五番、茶髪で短い髪にやわらかいパーマがあたっている。
いかにも年上に可愛がられそうな感じで愛想もいい男だ。
実際社長が彼を取ったのは何となく気に入ったからだと言っていた。

「人間そういうところに心が出るの。FAX一つに。向こうで歪んで出て見られなかったらどうするの。こっちで曲がってなくたって、向こうの紙が少し曲がっていることだってあるでしょ。そうだったとしてもちゃんと読めるように端まで詰め詰めに文字を書かないとか、なるべく大きな文字で書くとか、情報が多い方を頭にして送るとか考えなさい。」
姉さんの淀みない説教。
人生の諸事に対する心構えから入って、FAXを送る際の実務的な注意点を余すところなく。
事務所にいる人間なら一度はされている通過儀礼のようなものなのだがさてどう出るか。

「人間は外見で判断しちゃだめでしょ。FAXはどっちかっつーと外見でしょ。FAXで心が乱れてるとか言われるのは納得いかないっす。」
185センチが155センチに覆いかぶさるような態勢で仏頂面をしている。

「人間はね、外見でしか判断されないし、判断できないの。そんなことを誰が言ったの?」
姉さんは静かに訊いた。

「ばあちゃんっす。ばあちゃんが言ってたから間違いないっす。」
若造の声のトーンが一つ上がった。

「うちの会社の社是は『社員は家族』でしょ。家族だとしたらあなたが息子で私は母親よね。会社入った時にそう教えたよね。母親の言うことが信頼できないの?」
姉さんの声のトーンは一つ下がった。

「それでもばあちゃんが言ったことが正しいっす。正直、出会って半年の人に母親面されたくないっつーの。」

少し傍観しているうちにのっぴきならないところに来てしまった。
どうカットしていいものかわからないが、カットしないとこの小さいながら居心地のいい会社が壊れてしまう予感がひしひしとする。
私はプランもないまま立ち上がった。

「母さん、下がってなさい。」
社長だった。
昨日の接待で二日酔いだから朝から白湯を何杯もお替りしながら新聞を読んでた社長だった。
のそりのそりと歩いてFAXに近づいていく。
皆の視線が社長の顔のあたりで交差する。
二十二歩。
「息子。」
肩をパンと叩く。
「嫌か?」
若造は固まっている。
もう一回肩を、今度はポンと叩く。
「嫌か?」
若造の肩は震えている。
「俺らにはお前のおばあちゃんの役をできる奴はおらん。だが、家族だ。お前のご両親には及ばないながらも、お前のことを一生懸命考えている。」

社長はげっぷをした。

「だから泣きやんだら、母さんに一言わびを入れろ。」

「社長の嫁、ていうのはちょっとねえ。」
姉さんの声がやわらかい。

花さかにいさん〜前編〜 Mr.ヤマブキ

  • 2012.12.28 Friday
  • 23:48
 今も今。ある所にお兄さんとお姉さんがいました。それは仲の良い夫婦でした。
「おーい、犬を拾ってきたぞー」
「えーどれどれー、きゃーかわいいー!真っ白でかわいい!」
「名前を付けようぜ。うーんと……ポチはどう?」
「だっさーい。昭和よ、昭和。古臭いんだからー。もっとかわいい名前にしないとだめよ。じゃあねえ、沙利菜愛利江留(さりなありえる)はどう?どうって言うか、それで決定!」
「お、おう……そういうのが流行りだもんな……よし、名前が決まったら早速ミルクをあげなきゃ!」
「沙利菜愛利江留ミルク美味しい?」
「わんっ」
 一方、隣の家では。
「ったくー、隣の家は相変わらずうるせえなあ、何だ?犬でも飼い始めたのか?きゃんきゃん泣きやがって」
「これが現代の隣人問題って奴なのよ、あなた。今度会ったらガツンと言ってやりましょ」
 何やら不穏な空気が漂っています。

 その日、お兄さんの家の庭で沙利菜愛利江留を遊ばせていました。沙利菜愛利江留は弾けんばかりの元気に溢れ、何度もお兄さんの足を頭突き、膝カックンをキメていました。
「おいおい、沙利菜愛利江留は元気だなあ。もう五回もカックンしちゃったぞ!」
「ここ掘れわんわん」
「えっ?」
「ここ掘れわんわん」
「うわっ、今こいつ、ここ掘れわんわんって言ったか?人間の言葉を話すなんて気持ち悪い!なんだこいつは!……ん、待てよ、言う通りに掘ったらどうなるんだ?」
 お兄さんは奥さんと二人でそこを掘る事にしました。なんと、大判小判が出てくるのです。
「うわああ、小判だ!初めて見たぞ!保存状態も素晴らしい!これは大変な学術的価値があるに違いない。しかるべき研究機関に寄贈しよう!」
 沙利菜愛利江留は一枚数十万で取引されるそれをお兄さん夫婦に売って欲しかったのですが、文化的価値に理解のあるお兄さんの行動にいっそう感動しました。
 隣の夫婦は小判を発掘する現場を見ていました。
「バカな隣人だ!売ってしまえばこの家のローンが半分は返せただろうに。しかしあの犬すごいぞ!早速借りてこよう」
 隣人夫婦はその筋の人間でしたので、お兄さん夫婦が目を離した隙に沙利菜愛利江留を連れ去ることなど訳ありませんでした。
「ほら、何て言ったか、沙利菜……ええい!とにかく掘れ!このワン公が!」
「ここ掘れわんわん」
「よしよしここか、早速掘ってやる」
 隣人夫婦が掘った穴からは不気味なロシア人形が何体も出てきました。意識の無い笑みに、赤い染みが付いていました。
「うおお、普通嫌がらせにしても、ガラクタだとか節足動物だとか妖怪とかだろう!これは本当に気味が悪い!やってくれたなこの野郎!!」
 隣のお兄さんは沙利菜愛利江留を蹴飛ばしました。玄関の大理石に頭をぶつけ、沙利菜愛利江留はころっと動かなくなってしまいました。
「し、しまった……殺すつもりまでは無かったんだ……そうだ、お前、バーベキューの準備だ」
「今から?何呑気な事言ってるのよ」
「いいんだ、早く!」
 そう言って隣人は沙利菜愛利江留の遺体を燃やし、遺灰をビニール袋に詰めました。

花さかにいさん〜後編〜 by Mr.ヤマブキ

  • 2012.12.28 Friday
  • 23:47
「うう、沙利菜愛利江留……目を離した隙にどこへ行ってしまったんだ……」
 ピンポーン。
「ん、誰だろう」
 隣人夫婦でした。
「実は、うちでバーベキューの準備をしていたのですが、どうやら匂いに誘われてお宅の犬がやって来てしまいまして」
「ほんとですか!それは済みませんでした。ご迷惑をおかけして……」
「それで、大変言いにくい事なんですけども……バーベキューの火に当たってしまったみたいで……こんな風に……私たち二人が場を離れていたのが悪かったんです」
 隣人は遺灰の袋を取り出しました。
「そ、そんな……うう、沙利菜愛利江留!!!」
「あ、あなたぁ……」
 そしてお兄さん夫婦は遺灰を引き取りました。お兄さんは考えました。
「バーベキューの火でほんとに犬一匹が燃えるのだろうか……しかし、だからと言って隣の人たちが沙利菜愛利江留を手に掛けた証拠なんて無い……」
 さすがはこのご時世に若い内から一軒家を構えるほどの鋭い洞察力です。隣人夫婦の仕業だという思いはほとんど確信に近かったのですが、個人的制裁は法の壁に阻まれています。エリート実業家として名を馳せている以上、そういった面倒事には関われません。
「俺は……俺は……」
 その夜、お兄さんの夢に沙利菜愛利江留が現れました。
「お兄さん、可愛がってくれてありがとう。私は隣人夫婦に殺されてしまいました。だけど、復讐しようなんて考えてはいけません。復讐は身を滅ぼします。私の遺灰を川沿いの枯れた桜の木に撒いて下さい。お願いします。それでは、お元気で」
 お兄さんの枕元はしっとりとしていました。
「うう、沙利菜愛利江留、ほんとに殊勝な奴だ……」
 朝、川まで来たお兄さん夫婦は、遺灰を撒きました。
「枯れ木に花を咲かせましょう」
 すると、枯れた桜がたちまち花を咲かせるのです。しかし、知らんフリの得意な現代の通行人は、驚きはすれど、関わり合いになろうとはせず、通り過ぎて行くだけでした。隣人夫婦に何らかの制裁を与えることもできません。世知辛い世の中です。美しい桜を眺め、お兄さん夫婦は沙利菜愛利江留の冥福を祈るばかりでした。

【テーマ】冬の空は高い by Mr.ヤマブキ

  • 2012.12.27 Thursday
  • 01:03
 いらっしゃいませ、の声が通り抜けて行く。温暖な空気が遅れて溢れてくる。昼のコンビニは混んでいて、すっかりうんざりしてしまう。あまりお金も無いので職員食堂にも行かず、昼はカップ麺で済ましてしまう。いつもの大きなとんこつ味にする。とはいえ、味の事など考えない。食べる事ができればいい。
 
 レジには人が並んでいる。左右に五人。自分の列で清算している中年女性は小銭を取り出すのに時間がかかっている。待つ時間が苛立ちを呼ぶ。女性の背後の肉体労働者が待ち切れず、横から首を出す。狭い店内で、自分の背後を通ろうとした客の肩が背中にぶつかる。振り向かずに、側に置かれた新聞に目を遣る。書かれているのは政治の失態、企業の倒産、原発問題、世界の動向、いつからだろう、すっかり慣らされてしまって何とも思わない。日夜繰り広げられる巨大な不条理にあるべき怒りがない。今ある怒りは、怒り以前のこの小さな苛立ち、怒りの芽の集積だけだ。
 
 清算を済ませ、店を出る。冷気が顔を刺す。昼を迎えて些か緩んだ冬の空気は、猶も肌を焼くには充分だ。ダウンの隙間を縫って胴を舐める。冬はもういい、と思う。T字路に出る。直線に合流している方はほとんど交通がなく、歩行者が道を横切るために信号があるようなものだ。その信号は赤に変わったばかりだった。そんな瑣末な事が芽になる。蒔かれた種が芽を出すと、その芽は泣き始める。いくつもの芽が出て、泣き声が泣き声を呼び、両の耳はいつしか騒音で埋め尽くされる。どんな耳鳴りよりもしつこく、消えない。
 
 ふと気付くと、隣にはひっそりと待つ車椅子。老夫婦で、乗っているのが夫、押しているのが妻だ。二人とも毛糸の帽子を被り、そこから混り気の無い白髪が覗いている。皺の堤防と眼鏡の蓋に囲まれた柔らかい目がある。二人の苦労を思う。老老介護の負担、夫の申し訳なさ。いつの間にか信号は青に変わり、老婆はゆっくりと車椅子を押し始める。その表情を見定める。満ち足りた微笑みが浮かび、負担も、心の咎も、微塵も感じさせない。端的に、幸福なのだ。そして静寂に包まれていることに気付く。顔を上げると、合流する道路に車は無く、賑やかな昼の騒音にぽっかり穴が開いていた。耳の奥の泣き声もすっかり消え去っている。聞こえてくるのは車椅子がアスファルトを踏みしめるぷちぷち、という捻髪音だけだった。まるでコマ送りの様にゆっくりと車椅子は進んで行く。
 
 横断歩道を渡り終える。鼻腔一杯に吸い込むと、澄んだ空気が肺を洗い、血となって体を巡り、清められていく。眺めた空には淡い水色が塗られている。ほんの少し浮かんだ雲は歪んでいる。それを見て、自分と雲との間に冷気が蠢くのを知る。冷気の動きは追うに連れて底無しの淡い海へと溶けて行く。張り詰めた空はどこまでも高い。冬の空は高い。

夢競馬の人々(113)  葉山 悟

  • 2012.12.27 Thursday
  • 00:16
「いや僕は何より競馬を投資対象にするという発想に驚きました」
くらくらする頭を左右に振って僕は絞り出すように言った。おそらくK部長はその会社が
開発した予想プログラムを手に入れようと画策したのではないか。
殆んどの予想会社がその的中率の高さを大々的にPRして予想料や的中料、特別会員料といった名目で、決して安くない金を取っている。しかし少し考えれば分かることだが、予想がそれほど当たるのであれば、何もPRして他人に教える必要は無い。有り金を、いやありとあらゆる手段を用いて資金を作り、その予想に賭ける。いや投資をすればいいのだから。
実際に3年間に160億円もの利益を出した会社はその情報の一切を外部に洩らすことは無かった。
「そういえば大崎会長も似たようなところがありました。会長にとって競馬はギャンブルではなく・・・・」僕が言葉に詰まるとK部長が短歌の下の句を詠み上げるように続けた。
「投資でもない。敢えて言えば意地そのもの。プライドがなせる術です」
「中央競馬会が勝つか、会長が勝つか・・・」
癌に侵され、痩せ細った身体に眼光だけがやけに鋭い男が競馬専門紙を片手に立っている。
僕の脳裡にそのシルエットが、残像が強く焼きついている。
「それにしてもその予想ソフトを開発した会社、どうして国税に摘発されちゃったのかしら」
自分たち夫婦で予想サークルを立ち上げ、現在のところ配当も出して順調である片山さんの奥さんも他人事ではないらしい。
「中央競馬会が国税にリークしたのかしらね」
「まさか、JRAもそんな事をしたら命取りだと自覚しているよ。馬券を買った段階で
25パーセントもの天引きを行い、そのうち10パーセントあまりが国税に行くんだからさ。的中馬券を一時所得として再び高い税金をかける。まさに二重課税になっている。おそらくその会社が挙げられたのはインターネットを使っていたからだ。PAT、ネット投票システムが動かぬ証拠となってしまった。どんなレースに、どのような馬券を購入し、幾らの配当を得たのか、履歴や口座情報がすべて残りますからね」
「JRAにとって上得意であるお客さんの情報を洩らしますかね。そもそも一時あれだけ騒がれた個人情報保護とやらはどうなっているんでしょう」僕は頭がくらくらする上に何が何だか訳の分からない怒りがこみ上げてきた。

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