非共感とか〜「精霊、蛍光ペンを憂う」を褒めちぎる   ハッタリスト

  • 2012.07.31 Tuesday
  • 23:45
今日のテーマは非共感です。
共感なんてどうでもいい、共感でも反感でもなく非共感の価値を認めてもっとありがたがれ、という主張です。

2012.07.29 MVPの俺が振り返る(3)  がりは
の中で、
2012.06.12 「精霊、蛍光ペンを憂う」 by アフリカの精霊
が星ひとつの評価であり、共感できないことがその理由のひとつとして挙げられています。
今回は反論の意味で「蛍光ペン」を褒めちぎりたいと思います。

僕は蛍光ペンをほとんど使ったことがないので、「蛍光ペン」の内容に共感したわけではないです。もちろん、反感もありません。
非共感という言葉で表したいのは、「そういう点が重要だと思っている人がいるなんて考えたこともなかった」という感覚です。
この感覚に対して、「自分にとっては重要でないことだから無価値である」という判断の仕方をしてほしくないのです。

法律分野での蛍光ペンの色の使い分け、
蛍光ペンでアンダーラインを引く人がいること、
蛍光ペンの細いペン先の使い道に疑問を持つ人、
しかし細いペン先のある蛍光ペンが売られているという事実、
これら全て僕にとっては非共感の対象です。
つまり、それが重要だと思っている人がいることを、僕は初めて知ったのです。
それは共感によっては得られない新しい情報です。

最近、ヘッドホンのコードや電源ケーブルなどのゴチャゴチャした部分が好きな人がいるらしい、ということを知りました。
僕はそれまでうっとうしいとしか思っていませんでしたが、それが好きな人がいるのなら、あのゴチャゴチャには意味があり価値がある、ということです。
新たな視点をひとつ手に入れることができたのですから、非共感万歳です。

とはいえ、例えば「蛍光ペン」に投票でたくさん票が入って最優秀作品に選ばれるということはないでしょう、それはかまいません。
好き嫌いはもちろんありますし、文学的に見てどうという視点など、評価の基準もいろいろあるのが当然です。

しかし、「蛍光ペン」のような文章がなくなれば、僕がPREMIERを読む意味はひとつ減ります。
共感は共感でいいでしょう、しかし共感しか得られない場はあまりに狭い。
僕はもっと、「他人にとっては重要じゃなくても自分にとっては重要なこと」を求めています。
そういうわけで、「蛍光ペン」は良かったです。ありがとうございました。

先輩 byたりき

  • 2012.07.30 Monday
  • 23:48
今週から後輩3人の面倒を見ることになった。
同じチームだった先輩が3ヶ月半の間不在となるためだが、これまで1人の後輩の面倒を見るのにも四苦八苦していたため本当に先が思いやられる。
ここ数年の新入社員が頼りないということは、同世代や歳の近い先輩たちと普段から話していることであった。
これがいわゆるゆとり世代なのだろうか?とも思うし、たまたまそうなのかもしれない。
もちろん、入社数年の若手に対して頼りあることを求めるのはなかなかに難しいことかもしれないが、言葉で言い表しにくいのだがとにかく「なんだかなあ」という感じなのである。
もちろん、われわれが彼らと同じ入社数年くらいのときに先輩方の言っていることをどれくらい咀嚼できていたかというと疑問が残るものの、それでももうちょっとしっかりしてよという気になってしまうのである。
 
さて、私は現在研究開発をする部門に所属している。
部門としての目的は新規化合物の開発であるのだが、その中でも私の担当は評価ということになっている。
新規化合物を探索しそれを合成することは大切なことであるが、その新規化合物が目標としている機能を発揮するかどうかを正当に評価することはこれもまた大切なことである。
自社で評価ができない場合はユーザーに評価してもらうことになる。その場合、化合物を提供したことによるデータのフィードバックはあるのだが、あくまでデータのみである場合は多い。
例えば自社で評価をした場合、同じダメでも惜しいのか全然ダメなのかを判断できることも多かろうが、他社に評価をお願いした場合はそういった微妙な部分をうまく教えてもらえなかったりするのである。
そういう意味では開発の根幹を担う重要な仕事をしているのかあと考えたりしている。

そうやって評価を担当している中で、今回同じチーム内の合成を担当していた先輩が期間限定とはいえ抜けることとなった。
しかも現在のところこれといった目的化合物があるわけではなく、どういった化合物設計をしていくべきかについても手探り状態である。
文献調査等を行っていきながら、合成化合物の策定、合成方法の模索をしていかなければいけない。
現状では今までやっていた評価の仕事だけでも手一杯というところはあるものの、いい機会なのでできる限りやっていこうと考えています。

靴の寿命  Mr.ホワイト

  • 2012.07.29 Sunday
  • 22:21
大メシ食らいの後輩がいる。
焼肉屋のランチで白ごはんを4度にわたりおかわりし、
店側に「申し訳ないがご遠慮願えないか」とまで言わしめた男だ。
茶碗で何度もおかわりするのが面倒なのでおひつでおかわりを要望し、断られたこともある。
だが、大メシ食らいという情報は今回は必要ない。
今回重要なのは、彼がまったくファッションに興味がない男であるという点だ。

彼はあるとき不思議に思った。「なぜみんなあんなに高い靴を履いているのだろう」と。
彼はいつも5千円程度の革靴を履いていたが、同僚の話を聞いていると、
どうも自分の周りの連中は2万も3万もする靴を履いているようなのだ。
考えた末、彼は「2万円の靴は5千円の靴の4倍長持ちするに違いない」と結論付けた。
もう一度言っておくが、彼はファッションをまったく解さぬ男なのだ。
彼はいま自分の理論の確からしさを検証するため、2万円の靴と5千円の靴を交互に履いている。

「あれ、なんで笑うんですか?」
「いやいや、わかるよわかる、ちょっと前まで僕もそう思ってたから。」
「え、ちがうんですか?」
「うーん、まあ、大きくはちがわないけど。高い靴は造りがちゃんとしてるんだろうし。
 でも根本が違うというか。ファッションはねえ、耐久性じゃないらしいんだよ。」

意味を飲み込めない彼は言葉を失ってフリーズした。
脳みそがカシャカシャと動く音が聞こえそうだ。考え中、考え中。
カシャカシャ、カシーン。

「考えましたけど・・よくわからないです・・」
「靴っていっても色々あるやん。高いのは材質が良かったり、格好良かったりさ。」
「僕には同じに見えますけど。」
「まあ、実は僕にも同じに見えるんですけど。ほら、おいしいごはんって高いやんか?」
「僕は味より量なので。」
「そうだよね、あなたはそうだよね。」

ある人にとっては宝物でも、ある人にとってはクズ同然ということはよくある。
ほとんどのモノの価値は、わかる人にしかわからない。
わからないヤツはわからないままでいいと思うが、わかろうとトライしてみる価値はある。
耐久性検証という目的にせよ、2万円の靴と5千円の靴を交互に履くことで、
メシの量にしか興味のない男が目覚めるかもしれないのだから。

MVPの俺が振り返る(5)  がりは

  • 2012.07.29 Sunday
  • 06:47
「精霊、パソコンを憂う」  byアフリカの精霊

☆☆

共感できなかった。
まあケータイ小説のような作りにあえてしてあって、そこに乗りきれないというのが一番大きな問題なのだと思う。
あと日本語がスムーズじゃないのが疵。


明るい悩み相談室PREMIER(40)〜エグザイル〜  がりは

☆☆☆

自作だが。
苦しいね。
掛け合いのところはお馴染みのスタイルなのだけど、受け付けない人は結構いるのではないか。
それでも面白いと思っているから書いてしまう。
「質問しているのは俺だ!」
「じゃあ答えてるのは俺だ!」
のくだりが好き。
まあ共感されづらいと思うけど。
もっとシチュエーションのバリエーションがあった方がよかったな。


ディズニーランド  by Mr.ヤマブキ

☆☆☆☆

ヤマブキの安部公房的な作品。
得点は高いんだが、引っかかるものがないのが「友人A」との差になる。
面白いんだけど突破するにはちょっと足りない、足りない物がなにかわからない。


と、ヤマブキに辛く当りながら全作品を振り返ってみた。
PREMIERがもう三段階くらい上にいくために必要なのは細かいコメントだったり手厳しい批判だったりするだろうから、親心でね。
そうそう、親心。
MVPだから。
みんな勉強すれば伸びるんだ。
MVPを取り続けて、毎月毎月俺が教えてやればみんな伸びるんだ。
安心して勉強して伸びてくれ。
おほほ。

MVPの俺が振り返る(4)  がりは

  • 2012.07.29 Sunday
  • 06:46
救急車を有料化すべき  Mr.アイボリー

☆☆☆

労作だと思う。
プレゼンテーションツールがあって、プレゼンした方がよほど伝わる内容だと思うのだが、論理の飛躍がところどころにあるのが残念。
たとえば救急車の駆けつけ時間の短縮が課題だとすればそれを解決する方法はモラルの低下をお金で防ぐことだけではなく、道路混雑の解消(路上駐車の規制や、大都市圏での車利用の規制等)だったり、救急車両や人員の拡充だったりも検討するべきだと思う。
心停止から6分が生命線ということであれば、蘇生措置の啓蒙や蘇生措置の際の負傷に関しての法整備なども検討するに値するだろう。
核家族化対策なども見たい。
検討するに値するテーマだと思う。
それだけになぜここに問題意識が芽生えたのかきいてみたいところだ。


人生に必要なことは全てパチンコで学んだ   ハッタリスト

☆☆☆

ハッタリストはどこに行くのか。
射幸心については俺も興味がある。
普通の経済学では(主として金銭的に)合理的な判断を下す人間を前提に話をするが、実際には非合理的に振る舞う。
その要因の一つは射幸心にあると思う。
確かに目の付けどころはいい。
煙草を吸う奴に文句を言うには、まず吸ってみなくちゃな、といってヘビースモーカーになった友人がいるが、似たような展開にならなければいいのだが。
俺はパチンコパチスロは日本からなくなった方が良いと思っている。
とりあえず駅前に出店させるのはやめてほしい。


家を出る  がりは   



投票をよびかけるために書いた作品なのに、ちっとも投票数が伸びなかったので。
文系魂のところには突っ込みが誰からもないんだが、どうなんですかね。
ああいうことを書かれると燃える人がいたはずなんだが。
夏バテかな。
投票を呼び掛ける作品は今後も書いていきたいと思う。


友人A  ミスターピンク

☆☆☆☆☆

「他人の手のひらの上では踊れないなんていうやつは、ダンサーとして二流だ」
そのまま小説になりそうな台詞。
俺の祖先のガリレオが「俺に足場をくれ。地球だって動かしてやる。」と見栄を切ったのと似ている。
その後のくだりも実に青春映画のワンシーンのようで、素晴らしい。
ミスターピンクがいつもいつも張る煙幕がなくて、無理にクールを装っているところがまた泣かせる。
好きだこういうの。


見事な馬券 byたりき

☆☆

可もなく不可もなく。
優でも良でもなく。
ほほ。
文字数に限りはあるが、少し丁寧に競馬の馬券の買い方について解説していった方が親切だと思う。
わかる人にはわかる感が、別の意味で強い。
逆にそこにしっかり目配り出来れば化ける作品だと思う。
エピソードとしては洒落ている。
まあ、俺なら最後は「買っときました。」とこっそり買ったワイドじゃない馬券を進呈して、「勉強させてもらったんで」と勝ち金でおごるだろうけどね。
現実はそううまくいかないだろうけど、小説ならいいんじゃないか?

MVPの俺が振り返る(3)  がりは

  • 2012.07.29 Sunday
  • 06:45
野球ファン byたりき

☆☆☆

たりきの日記。
彼の文章の中で好き嫌いが分かれるのは「内輪」意識の濃さだと思う。
内輪と指定している人がいるわけではないのだけれども、はっきりメンバーに指定されている人がいるように思われるのだ。
メンバー入りしたと思っている人からは熱烈な支持があるのではないかとおもう。
「2週間後のオリックス−ロッテ戦、ほんとにちょっと行きたいなあ。」
文末のこれがなければ彼の内輪意識が露わにならなかった(でもそこここに漂っている)だろう。
それにしても中日が大爆発して10安打してて3点しか取ってないっていうのはなんやねん。


「一番の出世頭は半蔵」  byアフリカの精霊


☆☆☆


明日話したくなるトリビアといえば精霊。
有楽町が有楽斎からきたものだったとは。
漫画「へうげもの」を読んでいる身としては、名脇役の一人織田有楽斎がそんなところに名を残しているなんてと嬉しかった。
上野が伊賀上野からきたものだったのも初めて知った。
ここで挙げられている三名のうち藤堂高虎は、藤堂とか高虎とかが残ったわけじゃないから有楽斎や半蔵よりは落ちるのではないだろうか。


見えざる戦争  Mr.ヤマブキ

☆☆

ヤマブキは今書けて書けて仕方がないのではないか、と思う。
しかし今作においては筆が滑っているように思う。
外に出ていく話をするならともかく、本作のような終わり方をするのであれば母さんをもっとしっかり描写してくれないと、まるで書き割りだ。
もっと書けるだろうからもっともっと書いてほしい。


「精霊、蛍光ペンを憂う」 by アフリカの精霊



共感できなくて。
ラインマーカーを使ったことがほとんどなく、線をまっすぐ描くことに困難を覚え、ルールに従うことが苦手な人間なもので、この作品には共感することができなかった。
共感できるかどうかが生命線という意味では他力の日記的作品と共通していると思う。


将棋用語の普及 byたりき

☆☆

あまり共感できず。
手順が妙、というのは将棋用語というよりは将棋部用語では?
普通に「手順」という言葉が普及している場では通用するでしょう。
終電が詰む、は将棋してない人も使い始めているように思う。
締めの一文がなくて、宙ぶらりんにされている気がしてしまう。
こういうのもありなんだろうけど。

能力の欠如 byアフリカの精霊

  • 2012.07.28 Saturday
  • 23:51
私には絶対的に他人より劣っている能力がある。
それはカツラを見破る能力である。
初めは訓練不足かと思った。
しかし人生経験において3分の1くらいの子供にも負けているところを見ると私は明らかに察知能力が欠如しているのだろう。

私の職場には明らかにカツラの人がいたらしい。
そしてその人はどうやら必死に隠していた人らしい。
しかし、大人はもちろん子供も全員ばれているような状態であった。
私以外は。
今、思い出してみれば気づくべき機会はたくさんあったように思う。

「今から小テストの点数聞くぞ〜、まず赤坂!」
「80点!」
「井上」
「60点!」
「岡村」
「70点!」
「先生〜、岡村君、点数ごまかしています!本当は40点です」
「何!岡村。なんでウソついた?そんなに他人から良く見られたいか?自分をごまかすのは駄目な人間のやることやぞ!」
→先生のみが怒っている中教室中、大爆笑

「起立、礼、さようなら」
「ちょっとまて、おい、山田、帽子かぶったまま挨拶するな、失礼やろ!」
→またまた大爆笑

初め私は生徒が笑っている理由がわからなかった。
思えば、はっきり指摘する生徒がいなかったことから考えて小学生なりに遠慮もあったのだが笑いをこらえることができなかったのであろう。
この後に及んでも気づかなかった私は鈍感だったという以外にはない。
大人たちは気が使えるので、敢えて会話に出すこともせず、笑ったりすることもない。
そして、私のみが気づいていない結果、彼に対する気遣いが足りない言動もあったらしい。

堂々とカツラをしている人は少なく、カツラがまだまだ恥ずべき存在であると一般的に考えられている以上、それを気づく能力を持ち合わせていなければ、相手に対しても失礼にあたる場合があることを経験した。
相手から「どうせお前も知っているんだろ」と思われていればさらに最悪である。
つまり周りが知っている状況で、自分だけが知らない場合、相手の取り方次第では相手にさらなる不快感を与える可能性がある。
そんなのカツラをしている人が隠そうとしていることが悪いんであって、気づかない人に過失はないと慰めてくれる人もいた。
しかし今回は私の鈍感力は小学生にも劣ることが確かなので、気づけなかった私が悪いと思っている。
職場での人間関係に悩む人も多い中、能力の欠如のため特定の人とうまくいかないことはできるだけ避けたい。
私とカツラの戦いは続く。



MVPの俺が振り返る(2)  がりは

  • 2012.07.28 Saturday
  • 17:54
ベストコメント賞  Mr.ホワイト

☆☆☆

MVPのありがとう講演。
ホワイトのホワイトストライプス推しで俺も聴くようになった。
ユーロをみて観客席が歌っている歌を書きますかね。
ヤマブキVSホワイト、今月は実現しそうにないが見てみたい取り組み。
記念公演ならではの喧嘩の売り方。


同時性とか(イメージ)   ハッタリスト

☆☆☆☆

「定義しえないもの」は「わからない」とすら言えない、ということを執拗に言っている。
不思議とおもしろい。
今この瞬間に太陽が消滅してたら、という話を文系男子としては想像したいのだけれど、今この瞬間というのはこの場というのと密接に関係しているのだよ君、太陽の近傍にいるのかね君は、とハットリストに諭されそうで。
ハッタリストの塾講師というのはなんかシュールでおもしろい。
これはあくまでイメージのはなしですが。


夢競馬の人々  葉山 悟

測定不能

最優秀作品投票には入れづらい夢競馬。
もう別格。
明日の家のCさんのようにできる人はもう日本の若者には残っていないように思う。
喫煙している中学生に注意する大人すらいない、学校内の暴行・金銭強奪も止められない、それでいてインターネットでは考えられないくらい強気かつヒステリックな怒号が飛び交う、それが今の日本だ。
せめて小説の中ででも身体を張って自分の理想を体現しようとする、そんな人がみたいという要望に見事こたえている。
端役と思っていた髪束さんがこんな最期を迎えるとは。
連載小説の醍醐味が味わえる。


生きているのがメンドクサイ  ミスターピンク

☆☆☆☆

肩の力の抜けた小品。
読んで良かった!とか爆笑した!とか感動した!というような型にはめることなく、周囲にたっぷり余白を残した文章は書けるようで書けない。
緻密な計算がここにはある。
案外、ピンクは天性の何かで鼻歌交じりで書き飛ばしているのかもしれないが。
こういうのは才能だと思う。
俺には書けない。

ばんえい  Mr.ホワイト

☆☆☆☆

Mr.ホワイト最近のトレンドは旅行記だが、この文章でうまいのはここである。
「私は背広のボタンをひとつ留めて、帯広競馬場の中に入って行った。」
背広のボタンを一個止めたところで寒さがどうこうなるわけではないのに、止めざるを得ない、寒さがよく伝わるではないか。
うまいなあ。
他の部分は書けなくはないと思うのだが、こういう表現にぶつかるとうまいなあと感心してしまう。
虚心坦懐に読んで、完成された普通に良い文章だと思います。

MVPの俺が振り返る(1)  がりは

  • 2012.07.28 Saturday
  • 06:55
振り返りましょう。
MVPの私が。
一作一作。

正義の味方は犯罪者!? PART2  アフリカの精霊

☆☆☆☆
アニメや特撮ものに物理で突っ込んでいく「空想科学読本」という本があったが、物理ではなく法律で行うシリーズの第二弾。
正直、一読した時には第一弾と比べるとパワーダウンしているように思った。
しかし丁寧に読むと第二弾の方がより丁寧にうんちくを散りばめており、読んだ次の日に学校で職場で披露したくなる一品に仕上がっている。
これは第一弾を書いた時にはケンシロウのくだりを書きたくて書いただけだったのが、続きを書くにあたって、ネタの弱さを作りのうまさでカバーすることを検討した結果だろう。
技を感じさせる作品だった。
翼とロベカルのキック力に明確に決着をつけないあたりが好き。
最後の一文も効いている。
短文勝負のPREMIERでは締めのひと言のキレは評価に大きく影響する。


海  Mr.ヤマブキ

☆☆

わからないのが詩だと言われればいい詩だねと言わざるを得ない。
「海に闇の帳が下りる。」という部分だけが緊張感に欠ける気がして、すっと醒めてしまった。
他がピンピンに張っているから。
対句をリズムよく重ねてテクニカルなのだけれど、前半は改良の余地があるだろう。
第三パラグラフに顕著。
わざと崩したのかなあ。
第五パラグラフもあと二つは続けてほしかった。
ナイルならどんなフレーズが出てくるんだろう。
それ についている「」も邪魔をしていると思う。
なければすっきりしたでしょう。
などというのも野暮な話。
詩を書けるというのは率直にすごいと思う。
良し悪しはわからないが、応援したい。


明るい悩み相談室PREMIER(39)〜先延ばしその1から4〜  がりは

☆☆☆

自作だが。
回答の難しい問題で、かつ普遍性の高い問題なので大変難儀した、というのは書いている側の感想。
理屈は非常にもろいつながりをしていて、納得できるかどうかギリギリの薄さ。
薄いのだけれどメソッドに辿り着けばなかなかの説得力。
これ試した人いるのかな。
「今あなたがやりたいその瑣末な作業は、か弱き他人を生命の危機にさらしてまで優先すべきことですか、あなたが後回しにしている仕事の中で彼の命を救えるものはありませんか。」とまで書いていますが、なかなかこの瑣末な作業が止められない。
メソッドにたどりつくまでもそっとすっといかないもんですかね。

優しい二人 by Mr.ヤマブキ

  • 2012.07.28 Saturday
  • 01:43
 妻が末期がんだと分かったのは、半年前だろうか。あの暑い日、蝉の合唱がクーラーの聞いた涼しい部屋を暖めていた。彼女はキッチンで血を吐いた。胃がんだった。それを聞いたとき、妻はそうですか、とだけ言った。自分を呪った。俺のせいに違いないと思ったからだ。

 二十歳からだから、もう50年以上の付き合いになるだろうか。高度経済成長もあって、若いころはとにかく仕事が好きだった。努力が報われる確信があった。だからこそ人一倍努力し、そして努力が実り、一層努力に励んだ。そのうち、ゲームみたいにのめり込んで、家のことなど考えたことも無かった。

 一人で家庭の事を全てこなしていたのだから、苦労もかけただろう。あのときは何とも思っていなかったが、確かに、自分が上手くいかないときは慰めようと心を砕いてくれた。そういうことに鈍感になっていた。思い返すほどに、懺悔したくなる。殴ったことも少なくなかった。一番下らない理由は、俺のキノコ嫌いをうっかりして、彼女がハンバーグに三切れ程添えたことだ。白い頬の感触が、右の拳に蘇る。思い出す度、自分の額を殴りつけた。


 妻の入院が決まり、真っ先に、彼女に最後まで尽くそうと決意した。病院には毎日通った。朝から晩までいて、看護師にもう時間ですからと帰宅を促されることも多かった。味気ない病院食だけでは辛いだろうと、りんごや桃、メロンなどを買った。

 ある日、茶髪の若い看護師が妻の採血に来た。あまり上手くないのか、妻が痛み、顔を歪めた。何度か失敗し、その間も妻は痛み続ける。見ていられなくなった。

「おい、別の看護師に代われ。こんな痛がってるのに分からんのか」
「え、あ、はい。すみません」

 何やら不服そうな表情をしたのに、我慢がならなかった。

「あんたにとっては患者のうちの一人かも知らんが、俺にとっては大事な妻なんだ!何がそんな不満だって言うんだ!」

 これではだめだと、妻を守ろうと思い、事あるごとに看護師に注意をした。突然、病院は退院を突きつけてきた。面倒を見切れない、ということだった。

「病院は癌にかかった患者を見捨てるつもりか!こっちから出て行ってやる!」

 妻には、もっと良い病院があるはずだと説明した。今度は、隣の市にある別の病院へと向かった。だがそこも、妻を乱暴に扱う医療者がいて、怒鳴り付けた。再び退院させられた。他の病院もどうにも納得いかない所ばかりで、入退院を繰り返し、もう行く所が無かった。

 日毎やつれて行く妻を家で見守るしかなかった。

「あそこの病院はダメだ。俺が文句の一つでも言いに行ってやる」
「病気ってのは気持ちの問題だからな。負けるんじゃないぞ」
「少しでも食べる方がいいからな。好きなものの方が食べやすいだろう。……そう言えばお前の好きなもの、なんだったっけな」

 冷たい風にも微かな雪解けの匂いが交じる頃。

「変わりませんね」
「俺が?」

 ほんの少し、妻の首が動く。声はかすれている。

「でも、一緒にいる時間、長かったですね」
「そうかもな」
「キノコ、ごめんなさいね」

 恥ずかしくなって、継ぐ言葉を探す内に、すっと妻の呼吸が消えた。あっけなかった。激しい後悔が身を包んだ。結局看病でもエゴイストのまま変わらなかった俺を。あんな情けない遺言を残させてしまった俺を。憎んだ。だが遅かった。外は優しい陽射しに枯れた大地が芽吹こうとしている。妻の亡骸の前で思わず手を合わせ、膝から崩れた。

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2012 >>

カウンター

ブログパーツUL5

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM