ホームタウン・ユニコーン  Mr.ホワイト

  • 2012.05.31 Thursday
  • 22:44
5月になると必ず思い出すのは、故郷三田の風景です。

兵庫県三田市は、大阪から北西に向かうJR福知山線に乗って約40分、
山を越え谷を超えてやっとたどり着く、近畿のシベリアとも呼ばれる町です。
とりわけ宝塚からさらに奥へ行く道のりは険しく、山の中にぶち抜いた長いトンネルを、
騒音など気にする必要がない電車は、すさまじいスピードで駆け抜けていくのです。

あれは確か、5年前の5月だったように思います。
その頃、私は大学を卒業していましたが、職にはつかず資格の勉強をしていました。
何度か書いたように思いますが、金も時間も友もなく、
とても受かるとは思えない合格率の試験に挑む孤独な戦いは、
狂気の一歩手前でギリギリの綱渡りをするような危うさがありました。
音楽だけを唯一の救いとして、何とか狂気を押さえ込んでいたのです。
そのときも私は陰鬱にビートルズの「ホワイト・アルバム」を聴きながら、
JR福知山線の長いトンネルを駆け抜ける電車の轟音の中で勉強していました。

長いトンネルを抜けると、そこに現れた風景に私は息をのみました。
5月になり水入れを終えたばかりの水田に、空が鮮やかに反射しているのです。
夕闇に少し藍色に染まった空が、空に浮かぶ白い雲が、すべて地面に映っています。
電車は水鏡の水田の中を、カタンコトンと小気味よく走っていきます。
海の上を走っているような、空の間を走っているような、不思議な感覚です。

空と空の間のあぜ道に、部活帰りの女子高生が自転車をゆっくりとこいでいるのが見えました。
私の母校の制服を着た彼女は、校則違反の長い髪を風になびかせていて、
風に流れる髪の向こうに田んぼがキラキラと輝いているのが見えます。

藍色の空。うっすらと白く光る月。薄むらさきに染まる雲。
黒い髪。白いセーラー服。それらをすべて反射する鏡のような水田。

私は教科書を閉じてその風景にうっとりと見とれていました。
故郷が有しているのは、一種の処女性かもしれないと、
涙が出そうになるのをこらえながら、なぜかそんな考えが頭に浮かんでいました。

夢競馬の人々(69) 葉山悟

  • 2012.05.31 Thursday
  • 08:05
ママの甥の言葉によれば二軒のスナックの出入業者が月末をもって変更させられるという。
どうやら0組の若頭の要請であるらしい。
「これまで通りの料金と仕入れ値で、ただ業者だけが変わるんスッ。ケツ持ちも0組ってことは変わんないみたいスから」
客のいざこざ、他組織からの嫌がらせ、ホステスの引き抜きなど、水商売特有のモメ事を最終的に0組がすべて解決処理してくれるというのだ。
「会長さんの調子ハンパなく悪いみたいッスね。なんていったかな。あっ、ショクモツじゃなくてショクブツニンゲンだって。これってどういう意味ッスか?ああ草みたく、ただはえてるだけってこと?それでもいいッスよね。あれほどハンパなく祝儀くれた人っていないッスから」
その日のナイター競馬が終わって帰りにスーパーに寄った時のことだ。そのスーパーマーケットは深夜12時まで営業していて、独身者には大変貴重で便利な存在である。
「あっ」「ああどうも」。いつだったか、マンションの資源ごみ回収所でやりとりした言葉をかけ合っていた。相手も同じく髪束さんであった。髪束さんのカゴの中は赤い印の半額シールが貼られた商品でいっぱいだった。「うちに猫が二匹いましてね、これはそいつらのごはんです」
髪束さんはマグロの切り身や刺身の見切り処分品を示すと「あいつらワシよりうんと良いものを喰っていますから」とヤニで染まった歯を見せて笑った。前歯が抜けているのは以前のままだ。
「今日は何かいいことがあったみたいですね。この頃どこで競馬しているんですか。あそこでは見かけませんよね」
毎日早朝から自転車を繰り出し、空缶を集め、競馬のタネ銭をつくる。彼が少ない稼ぎを最も配当の低い、しかし的中率の高い複勝馬券に投資するのは、もしかするとこれら二匹の猫のためなのではないか。ホームレス生活を余儀なくされている髪束さんにとって住まいだけでなく、人生そのものが欠落しているのだ。そのたまらない欠落感を埋めてくれる存在が二匹の猫なのであろう。
「何か、イヤな感じがするんです。ガードマンや競馬場の係員から締め出しをくらっているような・・・。そんな不快な思いをするのならやめようと、少し遠いけどK町の場外まで行ってます」
髪束さんは腰ヒモに結び付けられた大きな財布を取り出しお金を支払った。ちらっと見ただけだが、そこには数枚の福沢諭吉が顔を覗かせていた。

夢競馬の人々(68) 葉山悟

  • 2012.05.31 Thursday
  • 08:04
いやな話を耳にした。会長が集中治療室に入ったという噂が流れた頃から0組内部が崩壊しつつあるというのだ。いや統制がとれなくなっているらしい。会長の奥さんが夫に代わって組を取り仕切ろうとしたが、若い衆や一部の幹部が反旗を翻しているという。
「この間もよ、俺の行きつけの店で0組の若い衆が困り果てた様子でボヤキまくるんだ。そいつは何か大きな不始末をしでかしたとかで小指を詰めたばかりだったんだ。包帯をぐるぐる巻きにした掌で頭を抱え、アネさんとアニキとどちらにつけばいいのかって悩んでいるんだ。それは0組が取り仕切っている出入り業者、店などにも波及して、お得意さんの取り合いみたいになっているらしいよ」
0組の情報に精通している白タクの運転手がレストランのママと僕に解説してくれた。会長が贔屓にしていた競馬場のレストランのママは僕にはすこぶる愛想がいい。なぜなら僕の予想が直接ママや従業員の臨時収入に結びついているからだ。予想を的中させて、できるだけ祝儀の額を増やしてもらいたいと考えているのだ。いつしか会長が顔を見せなくなってからは、僕に出走馬の良し悪しを確認するようになっていた。競馬に限らずギャンブルに無縁だった人間がビギナーズラックを境に熱狂的なギャンブラーと化している。その意味でママも認知症のコンビニの親父も何ら変わるところが無い。ただしママはいつも僕に直接問いただすことはせず、調理場に入っている甥を通して買い目を決めている。
「淹れたばっかりっス」とコーヒーを差し入れてくれるのだ。そして僕が推奨した馬を軸に馬券を購入するのだった。
「スゲーッ、スゲー。おニイさんのねらった馬ハンパなくスゲーッスよね。オレッチも会長さんみたくお金あれば大金持ちになっていたかも」
彼は僕の予想が発走少し前まで立たない事をすごく不思議に感じていたのだが、モニターを凝視している僕の真剣さに気圧されて声をかけることが出来なかったという。
「おしぼり、それに備品や雑品、それどころか商品の仕入先まで変更させられたんだって?」
僕はママがレストランの他にスナックを二軒経営していることを知っていた。
「えっ、おニイさん、どうしてそんなことまでわかるんスか。もしかして競馬だけじゃなく何もかもトウシするヒト?うわっ、ハンパなくスゲー人だ」

恋の悩み相談所  Mr.ホワイト

  • 2012.05.30 Wednesday
  • 23:23
街のネオンが涙でにじむ。街灯は寂しく私を照らす。
恋に恋焦がれ恋に泣き、もはや耐えることができなくなった私は、
「恋のお悩み相談所」という看板の前で足を止めざるをえなかった。
わらにもすがる思いだった私には、この出会いは必然的であるように思えた。

相談料、30分5,000円。風俗のような料金設定だ。
さぞかし美人が相談してくれるに違いないと期待して扉を開くと
そこには筋肉ムキムキのタイ人のような男が目を見開いて座っていた。
勢いよく開けた扉についた鈴がカランと鳴った。1.5秒間、時間が止まった。
ようやく平静を取り戻し扉を閉めて立ち去ろうとした瞬間、タイ人はポツリと言った。
「あなたは失恋し傷ついている。台風でなぎ倒された沖縄本島のヤシの木のように。」
見開いた目は私を確実に捉えていた。黒のタンクトップの下の胸板の厚さが目についた。
諦めて私は彼に向かって席に座った。もうしようがない。
「そのとおりです。私の心はヤシの木のように根元からポッキリと折れちまってます。」
「そして折れたところから腐敗が始まっている、ということですね?」
意味不明だったが、とりあえず私は「おっしゃるとおりです」と答えた。

「私は彼女を愛しているのです。彼女もかつては私を愛してくれていました。
 しかし今はもう、彼女の目に私は映っていません。彼女は変わってしまったのです。」
彼女のことを考えていると、わたしの目にはまた、涙があふれてきました。
「なるほど、わかります。私は子供の頃、ほうれん草が食べられませんでした。
 しかし大人になり、ふと気がつくとほうれん草を食べられないどころか好きになっていました。
 人は何の理由もなく変わるものです。彼女の場合もそうだったのではないですか?」
「私はほうれん草のようなものなのでしょうか?」
「そうじゃないんですか。ぱっと見たかんじでは、にんじんよりもほうれん草に似てらっしゃる。」

頭がぐちゃぐちゃになってきた。この方向はダメだと自分の直感が訴え、話を切り替えた。
「しかし、彼女が変わったことには理由があるんです。」
「そうでしょうとも。何事にも理由はあるものです。因果応報、結果オーライです。」
ダメだ、つっこんではダメだと自分に言い聞かせた。とりあえず前進だ。
「はじまりは私の浮気からだったのです。つい風俗にハマってしまって・・。」
そう言うとタイ人の男は見開いた目をさらに広げ、息を荒げて言った。
「何をバカなことを!そのような愚かなことを言っていてはいけません!」
「いえ、確かにそうなのですが、私にも」という言葉をさえぎって、彼は言った。
「風俗は浮気ではありません!私は断固そう主張します!私の妻にも主張したいくらいです!」
「そう・・、そうなんですよ、よくぞ言ってくださった!風俗なんて浮気に入りませんよね!」
「当たり前です。あなたは悪くない。決して悪くないんだ・・。」
私たちは、涙を流しながら手をとりあいました。
街へ出ると夜のネオンは美しく私を包み込んでいました。
吸い込まれるように、私はまた、その街の優美な腕の中にたぐり寄せられていったのです。

シュレーディンガーの猫  by アフリカの精霊

  • 2012.05.29 Tuesday
  • 23:20
今日、宝くじを買った。
1等賞の金額が高額なジャンボも魅力的だが、今回は同時に1等賞の金額が10万円と低く本数がたくさん出るものも発売されているらしく、そちらを買った。
実際、どちらが当たりやすいか、ハッタリくらい計算能力があれば期待値なんかも出すのだろうが、何しろ面倒で感覚的に現実感のある方にした。
ちなみに1等10万円は4万本あるらしい。
2等は1万円で、8万本。
実際の確率はこれでも低いだろうが、なんとも現実味のある数字である。

「1億円当てたら…」宝くじを買ったことのある人なら1度は想像したことがあるのではないだろうか。
まさか、携帯を買いなおしたり、テレビを買い替えたりという想像をする人は少ないだろう。
やはり、少なくても100万以上はするものの購入を考えるのではないか。
家、車、なんてのが候補としてあがりそうである。
私の友人で「貯金」と答えた人もいたが、今の世の中1億円預けても利子は数万円であり利子で生活はできないのを聞いてしょんぼりしていたのを覚えている。

でも「10万円当てたら…」と考えると急に現実味を帯びてくる。
まさか貯金を想像する人はいないだろう。
約1万円分買っているので実質的に9万円の利益であるが、この9万円以内、もしくはこれに少し足して買えるものを想像することになる。
候補としては、電化製品・外食・旅行のたぐいであろうか。
生活費の足しに…ってのもありそうである。
しかし、不思議と「外れたら…」という想像はしない。

「宝くじは夢を買うものである」
よく聞かれるフレーズである。
実際に金を儲かることに価値を置くのではなく、こういった想像ができることに価値を置く考えであるようだ。
自分のもうかる姿を想像する点においては、他のギャンブルとどう違うのかわからないが、少なくてもそういう想像できる時間が長い点において宝くじと他のものを区別することができるのだと思う。

「10万円当てたら…」はもう既に「夢を買う」レベルの想像ではないのかもしれない。
しかしこの小物臭のする私の野望も短いスパンでの「夢」である。
当てた自分を想像し、様々な検討ができることにおいては、1億円を当てたことを想像する点において共通しているといえる。
むしろ1億円の時よりも、現実味のある想像ができる。
「1億円が当たったらどうしよう…」その想像は、本当に自分がしたことのない想像をすることになる。
そのような想像ができることに価値を置く人もいるだろう。
しかし、10万円の想像は、自分が現実に想像できる想像となる。
私はここに価値を置いて今回は1等が10万円の方を購入した。

外れるとただ単に1万円のソンとも言え、本当に現実的に考えるとムダなものでありむしろその確率が一番高い。
「この1万円があったら他のものが…」と考える人には宝くじが買えないらしい。
「確率低い夢」に金は出せないと考えるのも、もっともな考えだと思う。

ただ現在私には「はずして1万円をソンしている自分」と「当選して9万円得している自分」が共存している。
そして、「9万円得している自分」が想像できるのは買っている人にしかできない特権である。
いわば、この特権を1万円を出して買ったことになる。
フタをあければ「なぁんだ」という結論かもしれないが、この特権は人生を楽しむにおいていい刺激になりそうである。


最後の晩餐(2/2) byたりき

  • 2012.05.28 Monday
  • 23:48
「実は、今、妊娠6ヶ月なんです。」
彼女はゆっくりとした口調で慎重にそう言葉を紡ぐと、その柔らかい笑顔をお腹の方に向けて愛おしげにさすってみせた。
そのときに初めて、彼女と久しぶりに会ったときに感じた違和感の正体がわかったような気がした。それは、その身に命を宿していることからくる言いようのない母性だったに違いない。
そのことに一人納得するや否や、一つの疑問が僕の頭に浮かんだ。
「いやいや、こんなところ来ちゃって良かったの!?」
本来ならもっと早くにしなければいけなかったであろう僕のこの問いに、彼女はにっこり笑ってこう答えた。
「大丈夫です。笠間さんと食事するって言ってありますから。」
そういうことじゃないんだけど・・・と思ったが、彼女が大丈夫というのなら大丈夫なんだろうと考えてそれ以上は言わないことにした。
「それより、職場の話を聞かせてください。みんな元気ですか?」
それから、彼女が退職して以降の会社の話を聞かせた。そうでなければ彼女に聞いてもらいたい愚痴もたくさんあったのだが、さすがにそれを言って聞かすのは気が引けた。

そろそろ帰らなくちゃいけない頃合いかなあというとき、お手洗いから戻ってきた彼女が神妙な面持ちでこう切り出した。
「笠間さん、前に飲みに行ったときのこと、覚えてますか?」
話しにくいことを話す前にお手洗いに行くのは彼女の癖だった。
「片桐さんがプロポーズされたって教えてくれたときのこと?」
「ええ。あのとき、二人で飲みにくるのがこれで最後になるかもしれないって言っちゃって。」
「あ、うん、そうだったかな。」
「それをずっと後悔していたんです。」
「えっ?」
「結婚の準備をしているとき、ほんとにつらい時期があったんです。それで笠間さんに話を聞いてほしいと思ったんですけど私からは誘えなくて・・・。あんなこと言ってなかったらもしかしたら誘ってくれたのかなあとか考えたりしちゃってたんです。」
「うーん。」
あの時期、彼女が悩みを抱えていることは痛いほどにわかったし、それが結婚の準備の大変さからきているだろうことは容易に予想できた。
いつもならそんなときは飲みに誘っていたのだが、誘うことができなかったのが彼女のあの言葉が原因なのかというとそれはどうなのかはわからない。
「でも、いつまでも笠間さんに頼っているわけにはいかないから、あれで良かったと思う気持ちもあるんです。ちょっと矛盾してますけど。どちらの気持ちも私の中にずっとあるんです。」
ここまで言うと、彼女は一度深呼吸してこう続けた。
「私、笠間さんがいてくれてほんとに良かったです。笠間さんがいなかったら会社ももっと早く辞めてしまっていたかもしれない。」
「いやいや、そんなことないでしょ?」
「そんなことありますよ。笠間さんにいろいろ話を聞いてもらってどれだけ救われたかわからないです。ほんとにありがとうございました。」
そうやって頭を下げる彼女を見て、僕は何とも言えない妙な気持ちになった。

会計を済まして駅まで行くと、まだ9時を少し過ぎたところだった。
「今日はどうもありがとうございました。」
「こちらこそほんとにありがとう。」
「たぶんですけど、今日がほんとに最後です。」
「そうだね。いい子を産みなよ。」
「はい。笠間さん、ほんとにありがとうございました。」
そうやって深々と頭を下げると、彼女は振り返り立ち去っていった。彼女はそのまま一度も振り返らなかった。
彼女の後ろ姿が見えなくなると、もう二度と会うことはないだろうという想いが胸の奥からこみ上げてきた。そしてそれは、僕の胸をひどく締めつけた。
忘れかけていたその胸の痛みは、間違いなく、失恋したときのものであった。

ハネムーンその9(バルセロナ後篇)  Mr.ホワイト

  • 2012.05.27 Sunday
  • 22:19
バルセロナはアートの街です。
モデルニスモ建築と呼ばれる19世紀アールヌーヴォー期の建築物が街中に残り、
かつ、20世紀後半以降のモダンアートな現代建築物が目立つバルセロナは、
直接的な意味で、街自体がアートであると言ってしまってもよいでしょう。
これは同じく芸術の都であるパリとの比較が面白いと思います。
私はパリも大好きなのですが、バルセロナがもっているのは、
パリのように街が全体としてひとつの宇宙を作っているような美しさではありません。
バルセロナの芸術は、爆発しています。
それぞれの建物や作品が、エゴを主張しまくるのです。
そして地面からニョキニョキと生えてきたかのようなサグラダ・ファミリアが、
その個性たちの中で最も強烈な個性として、この街を統べるように君臨しています。

バルセロナは食事もやはり濃いものばかり。
レストランに行くと酒のあてのようなものばかり出てきます。
パエリア、アヒージョ(オイル煮込み)くらいならメニューを見ればわかりますが、
英語のメニューを見ても、それがどんな料理なのか検討もつかないのがほとんど。
あえてわからない料理を頼む楽しさも、海外独特のものかもしれません。
スペイン料理ではやはりイベリコ豚の生ハムが絶品。
これもイタリアの生ハムとは濃さがまったく違います。

街の中には赤と青のストライプのユニフォームを着た子供たちがたくさんいます。
9割方はメッシの10番をつけていますが、たまにロナウジーニョがいて「へ?」と思ったこともあります。
私は普段サッカーに興味がないのですが、2006年のワールドカップの
アルゼンチン対セルビア・モンテネグロの試合を見てから、メッシのファンではありました。
ホテルでテレビをつけると、「バルサTV」というローカルテレビ局が、
バルサの過去の試合やメッシのゴール集などを延々と流していました。
これにハマってしまったのです。
観光地に来て夜中延々とテレビでサッカーを見るという愚行。
しかし私は後悔していません。素人が見ても美しいのだから、どうしようもありません。

最終日、街をフラフラしてホテルに戻ろうとすると、ホテルのほうから煙が出ているのが見えます。
サイレンを鳴らして消防車が続々と集まってくるのを見て、どうもただ事ではないらしいことがわかりました。
白い煙は勢いよく立ち上り、止まる気配がありません。
自分たちのホテルかもしれませんが近寄ることもできず、迂回して様子を見ることにしました。
結局、ボヤ騒ぎがあったのは3つほど隣の建物でした。
海外旅行は最後まで旅行者を不安にさせてやまない何かを持っているようです。

ハネムーンの長い旅程もこれにて終わり。
ふたりの感想。「もう当分海外はええわ。」
長い旅行記を書く機会をくれたプリミエールに感謝。

ハネムーンその8(バルセロナ前篇)  Mr.ホワイト

  • 2012.05.27 Sunday
  • 22:15
思ったよりはるかに長くなってしまったこの「ハネムーン」も、ここらで終わりにしたいと思います。
イタリアの話ばかりをしてきましたが、実はスペインのバルセロナにも行っておりました。
最後はこのバルセロナ篇で締めましょう。

私がバルセロナへ来るのはこれが初めてではありません。
しかし、バルセロナは何度行っても良いと思えるところなのです。
私がこれまで行った中ではベストの観光地です。
海外へ旅行するならまずバルセロナを検討いただきたい。

スペイン東部のカタルーニャ地方に位置するバルセロナは、地中海に面する港町です。
地中海に面しているかどうかは、ヨーロッパの都市の特徴を理解するためにはきわめて重要です。
バルセロナは地中海性気候ですので、夏は暑すぎず冬は寒すぎず、年間を通して比較的温暖な気候です。
これに対し、同じスペインでもマドリッドではまったく異なります。
マドリッドはスペインのちょうど真ん中に位置するため、バルセロナとはうってかわって、
夏は暑く冬は寒い、あるいは昼は暑く夜は寒いという、寒暖の差が激しい大陸性気候となるのです。
4年前の冬、私はスペイン周遊でバルセロナからグラナダを経由してマドリッドへ行きましたが、
その気候の差に驚きました。バルセロナも寒いですが、マドリッドの寒さは身に沁みてくるのです。
そして、気候の差はそこに住む人間の差となって現れてきます。

一言で言えば、スペイン人はイタリア人よりも「濃い」印象です。
情熱の国スペインに流れるのは、イタリアよりもはるかに濃いラテンの血。
色素が濃く髪の色は日本人よりも黒々としているし、肌の色は褐色。
そしてそこに、イスラム教の独特の雰囲気が入り混じっています。
レコンキスタが完了したのは1492年、現在のスペインは完全なカトリック国ですが、
特に西部に行くにしたがってイスラム教的な異国感が強くなっていきます。

そのように「濃い」スペイン人ですが、その中ではバルセロナの人は「薄い」部類に入ります。
あまりに濃すぎるマドリッドでは、治安の悪さを常に感じざるをえないのですが、
バルセロナも治安は決して良くないものの、マドリッドのような怖さは一切感じません。
温暖な気候と、港町でありオープンな街の文化がそうさせるのでしょう。
人は親しみやすく、また英語がほとんど通じるということもバルセロナの特徴です。

ハッタリストVS暗算   ハッタリスト

  • 2012.05.26 Saturday
  • 23:46
ひょんなことから、
「1000円につき20回の当たりが期待できるパチンコで、それぞれの当たりが400分の1の確率で大当たりになるとき、30000円を費やして少なくとも1回以上の大当たりが出る確率はいくらか」
を計算したいと思ったら、あなたはどうしますか?

とりあえず、30000÷1000×20=600回の当たりが期待できることは分かります。
これら1つ1つの当たりが大当たりにならない確率は400分の399なので、600回の当たりが全て大当たりにならない確率は、
 (399/400)^600  (「400分の399」の600乗)
となります。
よって、少なくとも1回以上の大当たりが出る確率は、
 1−(399/400)^600
です。
ここまでは高校数学の知識でできます。

問題は、この式の値を小数として表すことです。そうしなければ、何%とか言えません。
関数電卓の類があれば楽に計算できます。
しかし、もしなければどうしますか?

はい、そうです。
暗算で解きます。
もちろんそれほど正確な値は出せませんが、少なくとも1ケタ目くらいは求められるに違いない。
そう信じて闘うのが理系魂です。
以下、僕が実際に行った思考をたどっていきましょう。

使えそうな公式として連想されるのは、
 (1+1/n)^n → e  (極限は n → ∞)
という、オイラー数とか自然対数の底と呼ばれる定数eに関する式です。
これをちょっと変形すると、
 (1−m)^(1/m) → 1/e (極限は m → 0)
となります(両辺の逆数を取りました)。
この式を利用して、1/400を十分0に近いと考えると、
 (1−1/400)^(400) ≒ 1/e
と近似できます。
よって、
 (399/400)^(400) = (1−1/400)^(400) ≒ 1/e
と近似できることになるので、
 (399/400)^(600) = [(399/400)^(400)]^(600/400) ≒ (1/e)^(3/2)
となります。
結局、求める確率の値は
 1−(399/400)^600 ≒ 1 − (1/e)^(3/2)
と書けます。

あとは、e ≒ 2.718281828 を代入して計算するだけです。
暗算なので非常に大雑把な計算になりますが、
 (1/e) ≒ 1/2.72 ≒ 0.36
 (1/e)^(3/2) ≒ (0.36)^(3/2) = 0.36×√(0.36)
(0.6)^2 = 0.36 なので、
 (1/e)^(3/2) ≒ 0.36×0.6 = 0.216
よって、求める確率は、
 1 − (1/e)^(3/2) ≒ 1 − 0.216 ≒ 0.78
です。

結論は、求める確率は約78%。
誤差の評価はまじめにしていませんが、最大で±5%くらいのイメージです。
ここまで、5分弱で暗算しました。
これは、大学の理系学部1年の知識でできる計算です。

関数電卓を使って答え合わせをしたところ、正答は約77.7%のようです。
まあまあですね。
理系の人間を敵に回すということは、こういうことなのです。
もし恐ろしいと思うなら、今のうちに理系の人に媚びを売っておくべきでしょう。



しかしながら、この計算に使った関数電卓は、僕が暗算で計算している間に、僕と一緒にいた人がスマートフォンでダウンロードしたソフトなのです。
今の世の中、理系魂はスマホほどの価値もありません。

ところが、そのスマホの持ち主は関数電卓の使い方が分からなかったため、その関数電卓を操作して計算を行ったのも僕です。
なんだか面白い時代になったものですね。

燃えろよ燃えろ、燃えるゴミ  ミスターピンク

  • 2012.05.25 Friday
  • 23:55
これは燃える、これは燃えない…

これは資源、これは…??

おや、私の出番ですか、みなさま、おこんばんは。
ミスターピンクでございます。

ゴミの分別をしていたんですけどね?
さすがに分別ある私と言えどもね?

どうしていいか分からないことくらいあるんですよ。
「プラ」って書いてあれば全部資源ゴミかと思ったら、容器と包装じゃなけりゃダメだとか、なんのことだかさっぱり分かりませんよ。

これは?
燃えるゴミ?違う?
ああ、燃やすゴミね、いいじゃありませんか、燃えるか燃えないか、そんなことで割り切れない世界がここにある、そう、この私が燃やすと決めたらそれが燃やすゴミ。
じゃあこれ燃やしといてくださいね、え?ダメ?なんで?

これはビニール?
じゃあ資源ゴミですかね、あれ、これもダメ?
なんでですか、ビニールってプラスチックでしょ?
違う?
え、プラスチックって何でしたっけ?
ビニールって何でしたっけ?
我々はどこから来てどこへ行くんでしたっけ??

何年たってもよく分からないものだから、最近では他人のゴミ袋の中の様子を探るのが癖になってしまいまして。
おや、カップ麺の容器は燃やすゴミ?
この方はお菓子の個包装は資源ゴミに入れないんですね。
あ、やっぱりビニールは資源ゴミじゃないですか!
と思ったらそんな人、他には誰もいないみたい…
無色または白って言ったら、無色にしなさいよ、そんなに白くちゃ中身が見えやしない。
電池は?電池はどこへ捨てたらいいの??

小市民にとっては、そんな日々のよしなしごとこそ一大事。
噂によると、五種類、十種類と分別がレベルアップしている街もあるとかないとか。
嫌ですよ、そんなところに行ったらゴミの日の度に頭を抱えて一日仕事じゃないですか。

住めば都というものの、住み慣れた私の街でも、ゴミの分別はこれでいいのかしらんと、未だにビクビクしている人もいるわけでして。
ああ願わくは、少々の異物などものともせずに、焼却場の中では全てのゴミが等しく燃え尽きてくれますように。

calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< May 2012 >>

カウンター

ブログパーツUL5

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM