「ワイフのサイフ」を読んで by Mr.M
- 2009.06.29 Monday
- 23:15
<a href=http://www5.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=534309&log=20081114>■2008/11/14 (金) ワイフのサイフ Mr.Pink</a>
「お金が全てなんかじゃないのさ。お金があるからって、幸せになるとは限らない」
くたびれたネクタイを締めながら、鏡の中の眠そうな顔に語りかける。頑張ったって報われるかどうかは運しだい。楽をしてても儲かるかどうかは運しだい。
僕は一体、何のために金を稼いでるんだろう。
あくびの途中で、ふと奇妙なことに気が付いた。
口をあんぐり開けたまま視線を行き来させるが間違いない。ああ、何てことだ。
鏡の中の僕が、僕とは違う服を着ている。
僕なんかが持てるはずのない、あのヤンマルクイーナのフォーマルスーツを……。
寝ぼけているのか。それともまだ夢の中なのか。時間に追われるまま家を出た。
仕事は朝の不思議な体験など構ってはくれない。まるで何事もなかったかのように、プラットホームで電車の通過を見送るような目まぐるしい一日が過ぎ去った。
夢ではなかった。
翌日もそのまた次の日も、僕は鏡の中の自分を羨望の眼差しで見る羽目になった。
自宅の鏡だけではない。会社の洗面所でも、よくよく見れば帰宅中の車窓でもそうだ。
服だけではない。鏡が小さくて気づかなかったが、家具だって艶々と光るインテリアにすりかわっている。信じがたいことに、食べてる料理すら違う。
一体何なんだこれは。
自分だけの秘密を持ち、ちょっと新鮮な気分になっていたのは最初のうちだけ。
1週間もすると無性に腹が立ってきた。
こっち側の僕はあくせく働いて、それでも全然稼ぎは良くならない。それなのにどうして鏡の中の僕だけが、良い暮らしをしてるんだ。
鏡の中の自分を睨む。不機嫌そうな顔が正面から睨み返してくる。
なんだよそれ。お前良い暮らししてるくせに。
カラフルなシャツを着た僕が、怪訝な表情を浮かべた。そう言えば、何でこいつはこんなに不満そうなんだろう。
おいしい思いばかりしているくせに。
名前も忘れたある童話が頭をよぎった。王子様と貧しい男がちょっとだけ立場を入れ替えてみるやつだ。
ひょっとすると、鏡の向こうでは豊かさの感覚が全く逆なんじゃないだろうか。
だってあんなにまじまじと、しょぼくれた僕の姿を眺め回してくるのだから。
そう思うとちょっと可笑しくなった。
自慢げな表情の憎たらしいことといったら。
「お金が全てなんかじゃないのさ。お金があるからって、幸せになるとは限らない」
くたびれたネクタイを締めながら、鏡の中の眠そうな顔に語りかける。頑張ったって報われるかどうかは運しだい。楽をしてても儲かるかどうかは運しだい。
僕は一体、何のために金を稼いでるんだろう。
あくびの途中で、ふと奇妙なことに気が付いた。
口をあんぐり開けたまま視線を行き来させるが間違いない。ああ、何てことだ。
鏡の中の僕が、僕とは違う服を着ている。
僕なんかが持てるはずのない、あのヤンマルクイーナのフォーマルスーツを……。
寝ぼけているのか。それともまだ夢の中なのか。時間に追われるまま家を出た。
仕事は朝の不思議な体験など構ってはくれない。まるで何事もなかったかのように、プラットホームで電車の通過を見送るような目まぐるしい一日が過ぎ去った。
夢ではなかった。
翌日もそのまた次の日も、僕は鏡の中の自分を羨望の眼差しで見る羽目になった。
自宅の鏡だけではない。会社の洗面所でも、よくよく見れば帰宅中の車窓でもそうだ。
服だけではない。鏡が小さくて気づかなかったが、家具だって艶々と光るインテリアにすりかわっている。信じがたいことに、食べてる料理すら違う。
一体何なんだこれは。
自分だけの秘密を持ち、ちょっと新鮮な気分になっていたのは最初のうちだけ。
1週間もすると無性に腹が立ってきた。
こっち側の僕はあくせく働いて、それでも全然稼ぎは良くならない。それなのにどうして鏡の中の僕だけが、良い暮らしをしてるんだ。
鏡の中の自分を睨む。不機嫌そうな顔が正面から睨み返してくる。
なんだよそれ。お前良い暮らししてるくせに。
カラフルなシャツを着た僕が、怪訝な表情を浮かべた。そう言えば、何でこいつはこんなに不満そうなんだろう。
おいしい思いばかりしているくせに。
名前も忘れたある童話が頭をよぎった。王子様と貧しい男がちょっとだけ立場を入れ替えてみるやつだ。
ひょっとすると、鏡の向こうでは豊かさの感覚が全く逆なんじゃないだろうか。
だってあんなにまじまじと、しょぼくれた僕の姿を眺め回してくるのだから。
そう思うとちょっと可笑しくなった。
自慢げな表情の憎たらしいことといったら。