ギャンブルは計画的に(前半戦) by NIKE

  • 2009.02.27 Friday
  • 23:16
期末試験の終わった日、学年での打ち上げ会があった。
飲み会で鍋を囲み、2次会の予定は組まれていなかったし、試験疲れもあったので、締めの挨拶を聞いて帰ろうかと思っていたときだった。

「では、2次会でボウリングに行く人はこちらに来てください」

思えば中学時代から事あるごとにボウリングに通い、阪大将棋部ボウリング課(いま適当に作った)にも所属していた自分である。
後ろ指を指されようが、ボウリングホーリックと揶揄されようが、球を転がすと聞けばマタタビを見せられたネコの如く反応せざるを得ない。

大多数は駅に向かうかカラオケに流れていく中で、その場に残った球転がし部隊は発起人Eくんを含めて5名、敗残兵をまとめて引き揚げる部隊のような様相を呈していたが、少数精鋭部隊は気にしない。
向かうは、某所のラウンドワンである。
30分待ちにもひるむことなく、途中合流の5名を加えて10名の球転がし部隊は、第1ゲームに突入する。
3組に分かれてチーム戦を行い、3位が1位にジュースを奢ることになった。
数に流されず自発的に集まったメンバーだけあって、みんな手ごわい。
大体チームアベレージ130前後で揃えてくる。
僕も何とか負けまいと足掻くも、あまりパッとせず、惜敗ながらチームは3位。
まあ、全体としてはいい勝負で盛り上がった。

しかし、それに飽き足らないEくんが、次なる提案をした。
「じゃあ次はチームを入れ替えて、罰ゲーム考えましょう」
何を始めるのかと思って聞いていると、
「負けたチームは、変な顔とポーズでプリクラ撮ります」
「勝ったチームは、好きに落書きできます」
ここまでは、罰ゲームとして面白いかも知れない。問題は次である。
「できたプリクラは、自習室のロッカーと机の前に貼っておく。勝ったチームは適当にメールでばら撒くことにしましょう」

なんだ…と思う人もいるかも知れない。
とりわけ、1局の将棋に髪まで賭けた某君などからすると、かわいいものかも知れない。
しかし、面白おかしく書いてはいるが、ここのメンバーも一応は普通に真面目な学生として通っており、それなりの羞恥心も持ち合わせている。
それが、酔った勢いで撮った(撮らされた)変な落書き付きのプリクラを、自習室という勉強の場で衆目に晒す。
プリクラの中の人、酔ってノリノリ。
自習室の人、勉強中でドン引き。
このギャップは、想像以上のものがある。

ギャンブルは計画的に(後半戦) by NIKE

  • 2009.02.27 Friday
  • 23:15
第2ゲームの開始とともに、空気は一変した。
それまでは、賭けていると言ってもジュース1本であり、場の空気はよく言えば和やか、悪く言えば速水いまいちの集団だった。
しかし、今回かかっているのは名誉である。
金品なら後から頑張れば取り戻せるが、名誉は一度失うと取り戻せない。
みんなよく頑張った。
速水いまいちから(ビジュアルはともかく)もこみちを超えて、テンションだけアサッテの方向へ飛んで行き、派手なハイタッチの応酬となった。
賭け事は勝負にスパイスを添えるともいうが、スパイスが効きすぎてもはや何を食べているか分からない状態だった。

我らがチームのF君が最初からターキーを出すなど飛ばしまくり、自分を含む残り2人も地道にスコアを固め、中盤から独走に入る。
一方、発起人E君のチームがもたつき、中盤5投目あたりで早くも罰ゲームに決まりかと思われた。
しかし後半、やけにE君のチームがハイタッチで活気づいてきた。
左団扇の我々のチームは、
「下民どもがうるさいなあ」
と気にも留めなかった。
しかし、そのハイタッチの連鎖がなかなか終わらない。
ふと見ると、一人がフォース、他の人も着実に追い上げている。
我々はともかく、2位チームとの差がたちまち縮まる。
笑ってのんびり構えていた2位チームも、ここに至って余裕をなくしてきた。
わけても、クラスでも真面目で冷静沈着なM君は、この日もネクタイで爽やかにキメてゲームに臨んでいたが、この時ばかりはクール印をかなぐり捨ててストライクで派手にガッツポーズをしていたのは印象的だった。
人間は、最後はパッションの生き物なのである。
序盤の不調が響いたか、結局E君のチームの追い上げは届かなかった。
それでも、軒並みスコアが10ほど上がり、みんな勝負に辛いところを垣間見た。

プリクラは、何やら悩ましげなポーズをとった4人の姿に、色々と落書きが施され、中にはここに書けないような下ネタもあったが、さすがにE君などから検閲が入り、結局は少し過激な程度の面白いプリクラに落ち着いた。
それでもやはり自習室に貼るのは憚られたのか、後日適当にばら撒かれて落着となったようである。

「ではここで解散しますが、カラオケ組に合流する人は私についてきてください」
E君は、プリクラにめげず、夜はこれからといった表情だった。
若さゆえの元気がちょっと羨ましかった。
ボウリングを満喫したのか賭けに呑まれたのかよく分からなかったが、力を使い果たした老兵は、帰路に着いた。

僕が僕のすべて(typeき) byたりき

  • 2009.02.27 Friday
  • 00:24
空を見上げると星々の光は見えず、月がただただその存在感を示すのみ。
そうか、周りの明るさに気づかなかったけれども今日は満月なのだ。
そう思って改めて見上げた満月は、これまで様々な場所や時間に見た満月とはまた違った顔を僕に見せる。
月の光を体いっぱいに浴びることで、この体の疲れを取り払うことができればいいのにと思う。

高校時代、進学したいとは思っていたものの、将来自分が仕事をしている姿が想像できず、自分がどのような仕事をしたいかもわからなかった。数学や日本史は好きだったが、それらの教科の延長線上に自分のやりたい仕事があるとは到底思えなかった。
そんな中、高2の頃に有機化学のおもしろさを知った。CとHとOが基本の世界に無限の可能性が存在しているという。
当時はまだ紙の上での勉強でしかなかったのだが、大学に入学して実験の授業を受け、さらには研究室に所属となって研究と言った形で実験をすることによって、その奥深さにだんだん心惹かれていった。
大学を卒業した今、僕はある化学メーカーに研究者として日々の業務に励んでいる。こんな仕事をしていることなど高校時代の僕にはまったく想像することなどできなかった。

僕が就職したのはいわゆる中小企業で、ここでは実験室での小スケールの実験ばかりでなく、実際のプラントを使った生産の真似事を自分たちですることになっている。
今日は、新規の開発品50kgを生産している最中だ。
有機化学という分野は様々な反応形態があってそこがまたおもしろいところなのであるが、ひとつ欠点を挙げるとするならそれは反応時間の長さである。
教科書で見た反応において8hrsなどと描かれているのはまだかわいい方で、2daysなどと平気で描いてあるから注意しなければならない。
今日の反応はまだかわいい方の反応時間で終了できる予定ではあるのだが、それでもバッチリ徹夜仕事となる。

僕は今、屋上に上ってきている。
そうでなくても寒いというのに、この辺りでは夜になると海に向かって吹く風が強くなる。
そして、吹きすさぶ風以上にプラント中の機械音が猛烈な音を上げている。
まだまだ夜はこれからだ。
しかし、満月の光と風の冷たさによって眠気が幾分取り払われた僕には、これからまだまだするべき作業が残されている。

これが、僕がただひとつ選んだ今。
そのすべての瞬間を大切にしていきたい。

プリミエールの1月を振り返る(その一) by NIKE

  • 2009.02.26 Thursday
  • 22:38
皆さん、こんにちは。
ヘリクツァーの雛、略して『へりひな』ことNIKEでございます。
ハッガリーニから「つべこべ言わずにとっとと講評を書け」と催促の言葉をいただいたので、問題のハッタリスト作品を含めて、豊作であった1月の振り返りを書かせていただきます。
思えば、前に振り返りを書いたのは半年前、このテスト終了後の時期しか余裕はなさそうなので、書けるうちに書いておこうと思います。

■2009/01/21 (水) 書道 by DENCH
渾身の一筆、「あ、ロン」
彼と卓を囲んだ経験もないですが、それでも面白い。
大学のパソコンで見ながら、笑いをこらえるのに困りました。
彼が笑いながら遠慮がちにボソっと言う感じが浮かぶ気がします。
その後、ピンクも引用してますが、わずか3、4文字でこれほどのインパクトを与えるとは。
ちなみに、字は僕よりは上手いと思います。いや、ホント。

■2009/01/19 (月) 初めてのこと byたりき
個人的には、この手の話は好きです。
何の話をしているのか推理しながら読み進められるので。
僕は、初めの方はウィンズ(馬券)の話をしているのかと思いましたが、ココイチの話とはやられました。
「自分色に色付け」はうまいこと考えたなあと思いました。

■2009/01/28 (水) メインイベンターと必殺技 がりは
最初は読み流し気味だったけれど、今振り返るにあたって読み直すと、なかなか味のある文章だと思わされる作品です。
見る者を飽きさせない多様性というのは、芸術でも興行でも通じるところがあるのではないかという、興味深い視点を提供しています。プリミエールでもポイントの1つかも知れません。
プロレスはともかく、落語にデッサンに当たるものがあるのか、冒頭部分からはっきりとは分からないのですが、絵の上手い中学生の話を聞いて落語のデッサンを聞きに行こうと思うあたり、アクティブな彼らしさが読み取れます。

■2009/01/09 (金) 集へる志士のあるを悦ぶの歌 其の一 Mr.Pink
DENCHのツッコミを受けて、今度は漢詩で挑む。
題材は、年末のプリミエール会と他力結婚披露パーティー。
思いつくことはできたとしても(それだけでも凄いですが)、実際にやってしまうのが
ストロングです。
しかもこれがうまい。
実は詩の形式や言葉遣いが正しいのかよく分からないけれど、詩の意味は分かるし、言葉が豊かで、あの会の楽しさが伝わってくる気がします。
漢詩は旧友と会うとかいう懐かしいイメージにぴったり来るように思うのは、私だけでしょうか。

プリミエールの1月を振り返る(その二) by NIKE

  • 2009.02.26 Thursday
  • 22:37
■2009/01/31 (土) 光と風 うべべ
下宿のエアコンのその後について。
昨年12月の『クーリングオフ』の「太陽より北風」のうまさに投票した僕としては、気になる後日談です。
反射した日光に反応して起動する、そんなことが起こり得るのかという驚きが大きかったです。
これを科学的に分析できると、さらに凄かったかも知れません。

■2009/01/10 (土) ガガーン、結晶だ! ハッタリスト
まず、天才物理学者の面目躍如かと思われるタイトルが目を奪います。
何だ何だと思って読み進めていくと、実は人間ドラマで、指輪をめぐる丁々発止のやり取りを経て、女性が男性の企みを見抜いて目出度くゴールイン。
おかしくも温かいラブコメディー?とそれにおよそ似つかわしくないタイトル、面白いと思います。
しかし、それ以外にも色々と考えさせられます。
「…そうやって誘導することで本物にたどりつかせようということ?」
というところは、個人的には、
「動揺させて私を試しているということ?」
の方がしっくりくるのです。
あと、「残りはどこかに引き取ってもらおう」という彼の言葉を聞いて、彼女が全てダイヤモンドだと確信したという点も、実はその中に1つだけ本物が紛れていただけで捨てるのが惜しかったのかも知れないのに、どうして12個全部が本物だという話になっていくのか。
考えていくと、色々と不思議に思う点がないわけではありません。
しかし、僕はこう思うに至ったのです。
数ある選択肢の中からできる限り善意的に彼の言動を解釈できるほどに、彼女は彼を信頼しているということなら、話はつながります。
愛の前には論理など無力なのです。
そして、そこまで彼を信じられる彼女なら二人はこれからもうまくであろう、とまで読んだ上での店長の祝福ということであれば、これはかなり深い話ということになりそうです。
そう思いませんか?
そんなものは当然過ぎて深くも何ともない話なのでしょうか。
それにしても、もし彼女が言う通り全て本物だとすると、彼は大金をかけながら単に彼女が真剣に本物を探すのをみて楽しみたかっただけであり、彼女は彼女で「初めから分かっていた」という通り、あえて知りながら茶番につきあっていたという、何だかオノロケ全開なお話になってきそうですが、結婚前の二人というのはこんなものなのでしょうか。
僕もいつかそういうことが分かる日が来るように、精進させていただきます。

プリミエールの1月を振り返る(その三) by NIKE

  • 2009.02.26 Thursday
  • 22:36
■コンサート Mr.ホワイト
音楽に文字通り命を賭ける吟遊詩人の物語。
まず、情景描写に優れている点が光っています。
マネージャーが暗殺者を警戒して神経を研ぎ澄ます様子。
靴職人の、暗殺者を取り押さえようとしてもなかなか近づけないもどかしさ。
映画を見ているかのようにシーンを思い描くことができます。
特に秀逸だと感じたのは、18日の『コンサート4〜開演』の3段目後半。
どこにも音楽は流れていないのに、その場で聴いているかのような臨場感があります。
また、各章ごとにテーマが切り替わっており、冗長にならず、話に流れがあって読みやすいのです。
ハッガリーニのところで指摘の通り、個人的には、この丁寧さからすると収束のさせ方が粗いように感じたのですが、そのギャップがまたいいと言われるとそれもその通りだと思うので、これは本当に好みの問題としか言いようがありません。
それから、自分の歌いたい曲を歌うというくだりは、吟遊詩人の職人としての矜持めいたものを感じ、示唆に富んでいます。それによって聞く人を幸せにできるのなら、確かにこれに勝る幸せはないことでしょう。
「自分の歌がつくるグルーヴは、自分のまわりで渦巻いているのではなく、自分の歌が聴こえる範囲で、大きな大きな渦を巻いているらしい。」
言い得て妙な表現だと思います。

■2009/01/04 (日) KOC Mr.イエロー
コミュニケーションに長けた後輩についてのお話。
年賀状、エピソードを添えてというのが頭が下がります。
僕はというと、疎かになりがちですが、必ず一筆は添えるようにしています(当たり前か)。
年の瀬の休日(忘年会の日の昼など)に、喫茶店で一年を思い返しながら年賀状に一筆添える、というのが年末のお決まりの一つでもあります。
しかし、コミュニケーション、それは永遠の課題です。

プリミエールの1月を振り返る(その四) by NIKE

  • 2009.02.26 Thursday
  • 22:34
■2009/01/26 (月) 嘘 by ATM
先月の最優秀作品。
王座戦への思いが吐露されている、熱く激しい作品です。
団体戦というのは、チームが勝って嬉しいのは勿論ですが、そこに自分が貢献できてこそ心の底から喜べるもので、どこか埋めることのできない心の隙間、その複雑な胸の内がリアルに伝わってきます。
なぜこれほどリアルなのか。
それは、自分の弱さと真摯に向き合っているからではないかと思います。
「ただ純粋に、将棋に対する想い、目の前にいる相手に勝ちたいという想いが致命的に欠けている。とにかく将棋が、負けることが怖い。」
僕にとっても耳の痛い話です。
心のどこかで分かっていても、なかなか認めることができない。
そこをあえて認めつつ、必死に振り払おうと、一番頑張ったと言えるだけの努力を見せた。
そのひたむきさが、リアルに感じさせる原動力ではないでしょうか。
でも、僕は他のOB諸氏と同じく、拍手を送ってあげたい。
足立君の目の輝きの違いを見抜けるほどに、部員の状況をよく把握している。
自分の事に手一杯だった部長時代を思うと、頭が下がります。
最後まで自分に出来るだけのことをして、阪大将棋部を支えた。
その充足感が、最後の2行によく表れていると思います。
4年間お疲れさまでした。

■2009/01/27 (火) 夢、青春、王座戦 Mr.オレンジ
こちらも、少し中身が違うけれどやはりリアルな感情が伝わってきます。
夢の舞台の王座戦で、舞い上がってしまうくらいの楽しさ。
「対局はもちろん、棋譜を採る時も応援する時も、休む時だって全力。」
嬉しいときって、何をしてもハイな感じですよね。
しかし、主将の涙を見てふと疑念がよぎる。
自分は泣けるほどに熱く頑張ってきたのだろうか。
そのコントラストがうまく描かれています。
実際、泣けるほどに頑張るということは難しいことだと思います。
そして今年へ向けての決意表明。
ぜひ頑張ってください。

少々長くなりましたが、各作品を思い返しながら読んでいただけると幸いです。
いざ書いてみると、書評とは難しいと思います。
あくまで主役は題材ですが、題材の中に埋没してしまうようなものならば、書く意味もない。
また、「表現がうまい」などと指摘しているところも、どううまいのかもっと分かりやすく伝えたいと思っていながら、それがなかなか難しい。
そう考えるとなかなか書き進めないのですが、時間の許す限り丁寧に書いたつもりです。
今後ともプリミエールをよろしくお願いします。

ダイアローグ27 がりは

  • 2009.02.25 Wednesday
  • 08:18
「よーし、今日はお前らそれぞれにキャッチャーをやってもらう。」とがりは。
「今配ったミットとマスクを付けて、そこで俺が打席に立つから、うまいことささやいてくれ。」

「何か大喜利みたいですね。」とうべべ。
「よっ!にせ円楽!」とたりき。
「やかましい!このバットの切れ味、尻で味わうか?」と殺気をうっすらと漂わしたがりはに
「まあまあ始めようや。」とさすがに人格者のNIKE。

「覚悟できた人!」
はいはいはいはいはいはいと元気よく手が上がる。
「じゃあ、ハッタリ!」
「僕くらい天才になると今日のピッチャーが球場に入ってきた時の顔色を見ただけで今日の一球一球の軌道がわかります。あなたの顔を見れば、今日何球目がどういう結果になるかまでわかってしまう。ある時点での分子のポジション、そして運動のベクトルさえ与えられればそんなものは簡単なんです。天才の僕にはね。」
「わかったわかった。長いねん!次ミッチー!」
「ひとつ伺いたいんですが、あなたがあの彼が投じるボールを打つ瞬間、カンとかポコとか音がしますよね、その音というのはどこで鳴っているんですかね。そんな棒きれで玉ころを打つことより、その問いについて考える方がより面白いと思いませんか。何時間でも付き合いますよ、同志。」
「誰が同志やねん!次NIKE!」
「君、奥さんと最近うまく行ってるの?そういえばこの間奥さんのこと銀座で見たで。」
「えっ?」
「すとらいーく!」
「自分はうますぎや!!次うべべ!」
「うべ、うべべべべうべべべべうべべうっべっべ?」
「UBE語でNIKEのパクっても伝わらんねん!次たりき!」
「内角にしよかなー、外角にしよかなー、こいつコントロール悪いしとりあえず真ん中投げさせたら散るか、いや、うわ、全部言うてもうてる、どないしょ、どないせえっちゅうねん、あーうーきゅうう。」
「何を混乱しとんねん。」
「すとらいーく!」とたりき。
「う、うまいやんけ。次DENCH!」
「・・・・・。あ、ロン。」
「えー、当たるのこれー。筋やで筋、て引っ掛かる奴おるか!!次、最後か、ピンク!」

「おーい、はよせえよ。」
仮面の上からマスクするのがことの他難しいらしく、もがいている。
「少々お待ちを。こう、なんかうまく行かないのよね。」
「なにしとんねん。このバットで両断したろか!」
「ストライーク、バッターアウト!!」
「や、やられたー、というところでお開き。また来週お会いしましょう。さようなら。」

アイスランド Mr.ホワイト

  • 2009.02.24 Tuesday
  • 21:15
僕が住んでいる町は、町といえるかどうかが微妙な田舎で、
山を切り開いてできたベッドタウンだから、冬はおそろしく冷える。

大阪から長い間、電車に揺られて帰ってくると、
植木の枝に雪がかぶさっていて、さすがやな、とため息をつく。
大阪も確かに寒かったが、雪などチラつく様子もなかった。
寒い寒いと自然と猫背になって駅の駐輪場へ行くと、
僕のグレーの原付のうえには雪がたんもり降り積もっていて、
氷漬けのマンモスの上に、カキ氷を嫌というほど盛ったような様相を呈していた。
本当に嫌だと言いたいくらいの量だった。夏でもこんなにいらない。
何の罰ゲームだ、これは?と思いながらも、怒りはわいてこない。
心のどこかに諦めがある。雪の白さには、人を諦めさせる神秘性がある。

タオルで雪を振り払い、ガシガシと氷を剥ぎ取って、エンジンをかける。
冷え切っているから、何度キックしてもエンジンがかからない。
このあたりの機械っぽさが、原付の良いところだ。
なんとかご機嫌をとってエンジンをかける。
アスファルトの道路に出てすぐ、しまった、と思った。
道路が凍結している。
二輪車にとって、凍結した道路はもはや道路ではない。
ボーリングのレーンのように滑りまくる。
しかし、もはや引き返すことはできない。
そっと、一歩一歩確かめるように、ゆっくりと走る。
進むたびに、まずい、という思いが強くなる。
事実、何度か滑りかけた。恐ろしいことに、足をついてもその足が滑る。
ゆっくり、ゆっくりと。死なないように。

濃い霧が出ている。
目の前は、うっすらとしか見えない。
ゆっくり進んでいくと、歩道に現れたのは、
電柱にぶつかってぐにゃりと曲がった自転車だった。
やはりスリップしたらしい。乗り手は大丈夫だったろうか。
自転車がクラッシュした箇所を左折し、坂を上ると、
ガードレールにぶつかって車体が大きく歪んだ軽自動車が現れた。
ぞっとした。心底、こわくなった。
ヘンな町へ入っていくときのホラー映画みたいだった。
ここは一体、どこなんだ?

霧は濃く、妙に静かで、車も人もまったく通らない。
僕の原付のエンジン音も、霧と雪とに吸収される。
真っ暗で、真っ白な、凍りついたような町。
時間が止まってしまったかのような錯覚に陥る。
僕は、本当に家に帰っているのか?
黄色い信号の点滅だけが唯一、時を刻んでいたが、
それすら霧でぼやけてしまって、まるで深海にいるみたいだった。

2009年1月度読者の声 その1

  • 2009.02.24 Tuesday
  • 00:06
こんばんは。
雑兵日記PREMIER2009年1月度読者の声の時間がやってまいりました。
今回も案内人を務めます、A.ハッガリーニです。
よろしくお願いいたします。
今回の投票では過去最多の27名もの方から投票をいただき、まことにありがとうございました。
6名の新しい投票者をお迎えすることができました。
今後ともみなさまよろしくおねがいいたします。

2009年1月の雑兵日記PREMIERを簡単に振り返ってみたいとおもいます。
非常に豊作でした。
前月が作品数が物足りなかったことの反動でしょうか。
レギュラーがローテーションをしっかりと守り、穴があきそうな時にはお互いであったりゲストオーサーに穴埋めをしてもらう。
また、DENCHの「古典」、Mr.ホワイトの「コンサート」のように長編も出てきました。
心情の吐露たっぷりの作品、文法について微に入り細を穿ち説いたもの、さらりとしたエッセイ、こってりした小説など幅広いジャンルの作品がてんこもりです。
その中で最優秀作品賞レースの本命と目されたのが
「嘘」 ATM
「コンサート」 Mr.ホワイトでした。
実際この2作品は他の作品をまったく寄せ付けず、全33票のうちの20票をこの2作品で占めました。
面白かったのは、今回複数の作品に投票された方が5名いらしたのですが、この2作品に同時に投票したのはハッタリストだけだったということです。
「僕にとっては、この2つが票を集めるだろうという気持ちが強すぎて、好きなのかきらいなのかよくわかりません。」
つまり、あとの18票は単独票だったということです。
さらに、「嘘」を最優秀に推した方のMVP投票を見てみると、5名の方がMr.ホワイトを推しています。
その逆が1例にとどまっているところを見ると、投票者のみなさんのMVPに関する考え方や、各々の作品に対する評価が見えてまいります。

MVPに関してはMr.ホワイトが全投票の3分の1を集める9票で獲得しました。
この投票の内訳は、先程も申しましたように最優秀で「嘘」を推している方から5票、「コンサート」を推している方から4票、その他から1票、ハッタリストも推しているのでマイナス1票となっています。
これだけ支持を集めたとなると、1月はMr.ホワイトの月だったと言ってもよいかもしれません。
ATM、Mr.ホワイトともにゲストオーサーですので、レギュラー陣に今一度の奮起をうながしたいところです。

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
<< February 2009 >>

カウンター

ブログパーツUL5

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM