【リバイバル】イカリヤ(中) Mr.ホワイト

  • 2017.03.20 Monday
  • 11:59

イカリヤの家に入ると、内装もなかなかこだわっていた。奥さんの趣味だろうか。
リビングはぶち抜いているらしく、まるで外国の建物のように広く、天井が高かった。
が、この家の内部もやはりオシャレなのだが、一点、明らかにおかしいところがあった。
その広いリビングのあらゆる壁に、天井からの吊り下げ棚が部屋を囲むようについていて、
そのすべての棚に、文学全集や哲学書などがぎっしり置いてあったのである。
ぎええ、かっちょよすぎる、とインテリにあこがれていた僕はシビれにシビれた。

「今日はな、肉買ってきたぞ、肉。お前ら肉好きだろう。」
中学男子は肉が好きに決まっているという断定口調だったが、あながち間違いではない。
イカリヤは慣れた手つきでテキパキとテーブルにクロスをかけ、お茶を出し、
奥さんが作ったというスープをあたためながら、フランスパンを切りはじめた。
それから熱してあったフライパンに肉を投入。ジュウッという音とともに煙が出る。
ほどなくしてワインボトルを手に取り、フライパンに赤ワインを注ぐ。
アルコールをとばし蓋をして数分で完成。見事な手際だった。

スープとパンとステーキと、それからワイングラスが僕らの前に置かれた。
イカリヤは赤ワインのボトルのコルクをポンと空け、全員のグラスになみなみと注いだ。
「今日は飲め。飲んでいい。卒業祝いだ。」
こうして家の周りの1000本のワインの空き瓶ができたらしい。
「おれは毎日1本空けている。それに比べたら、未成年でもたまに飲むくらい問題ないだろ。」
よくわからない理屈だったが、ワインなんて飲んだことがない田舎の中学男子が飲まないわけはない。
いまだに酒が弱い僕は一口飲んで目をシパシパさせたが、
一緒に行った友達のひとりは「うまい、うまい」とガブガブ飲み始めた。
「お前、いけるな。」とイカリヤはものすごくうれしそうだったが、
あとでその友達の親に電話し、少し飲ませたがご容赦ください、家まで届けますので大丈夫です、
などとしっかり連絡しているあたりはやはり単なる変人ではない。大人なのだ、と思った。

それにしても、食事がものすごくおいしかった。食べるとおいしくて笑えてくるのだ。
奥さんが作ったというスープはプロ級。
パンですらおいしく、肉もかなりいい肉を買ってくれたんだと思う。
今まで何千回と晩ご飯を食べてきたが、あれは僕の記憶に残る晩餐だった。

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