【リバイバル】イカリヤ(上) Mr.ホワイト

  • 2017.03.20 Monday
  • 12:00

中学3年の夏、夏期講習だけ入れられた塾にイカリヤというあだ名の講師がいた。
理由はものすごく単純で、いかりや長介に似ていたからだ。本名は忘れた。
イカリヤは顔も変わっていたがそれ以上に人間そのものが変わっていて、
みんなに変人扱いされていたが、変人好きの僕はすぐにイカリヤのファンになった。

冬になり高校受験を終えて卒業間近になったとき、仲の良い友達ふたりと3人でイカリヤの家に招待された。
3人でお金を出し合って近所のケーキ屋でちょっとした手土産を買う。
あそこで待っておいてくれと言われた場所で1時間以上待ってやっとイカリヤの車が到着。
詳しくはわからなかったが、奥さんが昔から病気がちでたまたまその日調子が悪くなったらしい。
そういえば、イカリヤの車は車いすを乗せることができる福祉車両のようだった。
僕らが住んでいるニュータウンは山を切り開いたところにあって、周りは山だらけ。
イカリヤの福祉車両は僕らを乗せて、その近所の急傾斜の山道を登り始めた。
このおっさん、いったい、どこに住んでるんだ?
確かに山の中にはいくつか家があるのだが、これらはすべて物好きが山の中に作った別荘である。
福祉車両はウィンウィンとうなりながら、山道をどんどん登っていく。

「着いたぞー。」と言われて降りたところはもうかなり山の上だった。
「ほれ、あっちあっち。」とイカリヤが指さすほうには確かにちゃんと家があった。
あまりにも山道を登っていったことと、イカリヤの常にだらしない服装から、
僕は途中からイカリヤは山小屋みたいなところに暮らしているに違いないと決め込んでいたが、
実際には山とマッチしたハンドメイド感のある、オシャレでわりと大きな家だった。
「うおー、すげー。」と中学男子3人が頭の悪い感想を述べると、
イカリヤは「どうだ、いいだろ。」と自慢げににやりと笑って言った。

確かにオシャレな家だったのだが、その家には決定的におかしいところがひとつあった。
家のまわりに色とりどりのワインの空き瓶が、まるで薪でも積むかのように所狭しと積んであるのだ。
その空き瓶の数、1000本では済まないだろうことは一目でわかった。
空き瓶を拾って集めてリサイクルでもしてるのだろうか?
「このワインの空き瓶って、何なんですか?」と僕は尋ねた。
何を聞かれているのかよくわからない、という顔をしてイカリヤは言った。
「そりゃあ、お前、飲んだから空になったんだよ。」

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