鉄の海(40) by Mr.ヤマブキ

  • 2017.01.19 Thursday
  • 00:00

 入院中の肺炎の患者や喘息、肺癌の患者を診ていると17時がやってくる。今日は当直だ。普通、飛び込みでやってくる患者や救急車を受ける外来当直と、入院中の患者の急変に対応する病棟当直に分かれており、病院によってはさらに循環器疾患だけを診る当直、脳卒中だけを診る当直なども置かれている場合がある。ここはさほど大きくない病院のため、全て一人で診ることになる。

 救急外来と銘打っているが、実際には本当に救急的な疾患を抱えてくる人は少ない。

 

「先生、25歳男性の発熱の人。お願いします」

 

 看護師が先んじてバイタル測定を行っている。体温38.1度、血圧125/72mmHg、脈拍85回、SpO2 98%(室内気)とのことだ。特に引っ掛かる点はない。

 

「今日の昼から熱っぽくて夕方測ったら熱あって来たって」

「分かりました」

 

 入室してもらう。すみません、と言って入ってくる足取りはしっかりしている。

 

「熱があるみたいですけども、調子が悪くなったのはいつからですか」

「そうですね、朝から調子悪くて昼くらいに熱っぽいなって思ったんです。夕方測ったら37℃だったんで。明日も仕事だから早く治したいんですよね」

「咳や鼻水、喉の痛みなんかはどうですか」

「全部ありますね」

「いつからですか」

「うーん、昼くらいですかね」

「他に症状はないですか」

「あと、全身が痛いですね。腕とか、腰とか」

「関節ですかね」

「あー、そんな感じです」

 

 聴診は異常なし。咽頭は発赤あり。扁桃腺の腫脹などはない。

 

「ちなみに、これまで何か大きな病気にかかったとか、今何か病気があって薬を飲んでいるとか、そんなことはないですか」

「ないです」

「分かりました。風邪などの可能性が高いですね。症状を和らげる薬をお出ししますので、様子を見てください。熱冷ましを出しておきますね」

「先生、俺インフルエンザじゃないですか?職場で流行ってるんですよね。インフルエンザだったらやばいんですよ」

「まだ発症して数時間なので、検査が陰性でもインフルエンザじゃないとは言えないですけども、やりますか?」

「お願いします」

 

 鼻の奥まで綿棒を突っ込んでインフルエンザ迅速検査を行う。結果は陰性だった。

 

「インフルエンザの検査は陰性でした」

「じゃあインフルエンザじゃなさそうですね」

「いや、職場でも流行っていたのなら多分インフルエンザです」

「どういうことですか」

「まだ発症してすぐだとかかっていても陰性って出ることがあるんです」

 

 明らかに怪訝な表情をしていた。あらかじめ確認していてもだいたい聞いていないものだ。

 

「まあ薬もらえたらいいです。ありがとうございます」

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