夢競馬の人々(197)  葉山 悟

  • 2013.12.05 Thursday
  • 23:48
もしかするとK部長はSからの依頼や相談内容を記録していたのではないか。あるいは妻に「私の身に万一の事があればこれを警察に提出するように」と遺書のようなものを遺していたのではないだろうか。
N競馬場に限らず、他の競馬場においても大なり小なり贈収賄に絡む事件があって、それが火山の噴火のように一斉に噴き出したのである。暴力団構成員の入場黙認、未成年者の馬券購入、生活保護受給者の馬券購入など、競馬法に抵触するような問題にも広がりを見せ始めた。
中でも中央競馬会を含めて競馬界と警察との癒着ぶりが問題視された。警察官や警察官僚の天下りを大幅に受け入れているというのだ。警察官やそのOB達が競馬場や場外馬券売場から競馬法に抵触する人間を締め出せば、競馬の売り上げが激減してしまう。そのことは競馬場の即廃止、閉鎖問題に結びついてしまう。警察官OBの警備担当者は忽ちのうちに職を失うことになる。僕は何年も競馬場に出入りしているが暴力団員の入場を咎めた警備員の姿を見たことがない。
一時期パチンコやスロットマシンにはまる主婦が多くて、主婦売春や多重債務者を生み出す元凶としてそれらがヤリ玉に挙げられたが、競馬も本質的に変わらない。ギャンブル依存症の人間を毎日のように生み出している。例えば競馬の3連単馬券で何十万円、何百万円も的中させた人間は、一生涯ギャンブルとしての競馬を断つことは出来ないだろう。
依存症の要因として脳内ホルモンやアドレナリンが取り沙汰されているが、僕は人間の本質部分、本能に決定的な刻印を打たれたような気がしてならない。
例えば思いもしないような大穴馬券をゲットした時。例えば自分が予想した通りの展開でレースが推移した時。例えば、絶望的な位置にいた自分の買った馬が剛脚で、ゴール前で全ての馬をごぼう抜きし一着になった時。脳天がジンンジン痺れ、胸の中に海が広がり、世界の何もかもがすぐ手の届く位置にあると思い込む。全く怖いものなど何も無い。まるで天下を取った気分なのだ。自分には不可能なものは無い。自分は天才だ。
これが依存症の躁の状態なら、鬱の状態はどうだろう。予想が当たらない。自分の全てが否定されているような気になり、どこまでも落ち込んで行く。同時に経済的に逼迫して行き借金してまで競馬にのめり込んで行く。的中しないと解っていても馬券に手を出す。出さざるを得ないのだ。
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