夢競馬の人々(195)  葉山 悟

  • 2013.11.20 Wednesday
  • 23:40
当然会長は何点もの馬券を買っているので、僕の解答はすべて正解というところまでいかないのだが、その数点は必ず的中していた。高額配当ベスト20やオッズモニターの色が変わった部分を抽出して答えを出すのだが、会長は何度も驚いたようにため息をついた。
片山競馬サークルの投資馬券と年金さんのフィリピン移住資金作りの二重の馬券投資は、確実にシャガールの馬の馬券配当を下げてしまう。何故だかそのことを連想してしまったのだ。
年金さんは車を降りる前に「明日N競馬場1レース目のパドックで会いましょう」と声をかけて去って行った。
「馬をお持ちなんですか?」運転している警官が聞いてきた。
「ええ、まあ幻の名馬です」
僕の返答に片山さんが声を出して笑った。
「こんな若い男の人が、親の脛をかじらないで馬主になんてなれるかしら」
「いや今の世の中、何があるかわかりませんよ。IT時代で才能のある若い経営者が一生かかっても使い切れないお金を稼ぎ出していますからね」と警官が笑った。
僕は彼女の「こんな若い男の人」という言葉に、彼女の嫉妬と愛情のようなものを感じた。
僕のマンションに入ると彼女はF署の警部とのやり取りについて説明した。
「捜査の目途がつくまでK、大沢、根岸、それにXさん?の事件について報道しないと主人を説得して欲しいって言うの。いくら退職しても太いパイプがあるはずだからって」
「それでその見返りは?」
「これは私の直感よ。S場長の嫌疑について警察は相当調べが進んでいるように思う。そのデリケートな時にマスコミに抜き打ち的な報道をされたら全てが水の泡となってしまう。それを一番恐れているように思うの。主人にも、そして私達にも決して失望させるような結果にはしないって。もう一つあなたにも、写真のコピーはどこにも流さないで欲しいって。あなたはコピーを持っているの?」
彼女の瞳が潤んだように光っている。
「もちろんだ。僕やあなたに何かあれば、その写真はたちまちのうちにマスメディアに流れることになっている。おそらくS場長もその事を知っているのではないか。この際だからとに角F署の警部を信じて、警部の動きをじっくり見ることにしようよ」
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