馬券の現実(126)〜京都新聞杯、プリンシパルS予想〜 たりき

  • 2018.05.04 Friday
  • 23:29

今週はまずは東西の日本ダービー前哨戦の予想です。

 

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馬券の現実(125)〜かしわ記念回顧〜 たりき

  • 2018.05.04 Friday
  • 22:53

初めてのナイター競馬はなかなか面白かったです。

 

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雲山 Mr.ヤマブキ

  • 2018.05.04 Friday
  • 00:00

 清太が孝の引っ越しの話を聞いたのは、枯葉も残らぬ真冬の頃だった。鈍色の不揃いな空模様が学校の裏山を超えて広がっていた。いつものように二人で下校した途中、一言も話さなかった孝が、ぽつりと言ったのだ。孝だって勇気を出して言ったのだろう。二人の仲であんなに言いにくそうなのは初めてだった。清太も何も言えなかった。寂しさと、寂しさを口にする気恥ずかしさがあった。そのうちに、大粒の牡丹雪が、ひとつ、ふたつと舞い落ちて、二人が別れる頃には白い夜のように町を包んだ。清太が遠ざかる孝を振り返ると、孝も清太を見ていた。清太はすぐに向き直り、やたらに歩を速めた。

 それから、清太はいつか孝の教えてくれた、石を食べる動物の話を思い出していた。消化を良くするために食べるのだと孝は熱弁を振るったが、清太は胃が重いだろうなと思った。丁度、そんな気分だった。孝とは変わらずに遊んだけれど、透明な一枚の膜を隔てているような、二人にしか分からない距離があった。

 そうしてそのまま冬は去ろうとしていた。道端の蕗の薹が残雪の中から顔を覗かせる。孝の引っ越しは刻一刻と近づいていたが、清太は何もできないままでいた。焦燥から、居間やら仏間や奥座敷を忙しなく回って祖父に叱られた。仕方なく、奥庭で大人しくしていた。

 孝の父は転勤族だ。孝がこの町に来たのは五年前で、また家を替えるのだという。地主の家に生まれ、この町の外へ出かけたのも数える程しかない清太には、とてもその気持ちを推し量ることはできなかった。ただ、巨大な不安があって、それに相対しているのはもはや孝なのか清太なのか分からなくなっていた。居たたまれなくなって懲りもせず庭の飛石を一つ飛ばしに歩いてみる。左手には石灯篭と松が置かれ、右手には池がある。赤、白、黒の三匹の錦鯉が頭を揃えて艶やかに泳いでいた。水面に波紋が広がる。そのすぐ隣にもう一つ波紋が広がる。残雪を解かさんばかりの日光はすでに翳り、雨が降り始める。一気に雨脚は強まり、庭奥の竹林を白く染め上げた。その模様を清太は廊下から見ていた。くすんだ木目から冷気が忍び寄る。村雨に冴え返ったようだ。清太は、来るぞ、と呟いた。

 次の朝はよく晴れた。清太は孝を誘って学校の裏山を登った。道には蕨が芽吹き、青葛が黄色い蕾を付けていた。小さな動物の糞が転がり、その側を名も知らぬ虫が通り抜ける。鶯の囀りが響き渡る。春の気配だ。清太は胸が締め付けられた。とりもなおさず、それは別れの気配だからだ。

 とうとう山頂に登りつこうかというところ、木々が突然無くなり、一気に視界が開ける。わあ、と孝が歓声をあげる。雲海だ。山頂の周りをぐるりと雲が覆っている。連なる山々に囲まれたこの町をすっぽりと隠し、さらにその奥までも伸びている。白縹の淡い空模様に春霞が化粧染みて、溶け合わさり、清太たちのいる山頂と、雲と空と、太陽までもが一続きに感じられた。孝が遠くを指さして、あそこが次の町だよ、と清太に教えた。清太が黙って目を凝らしていると、孝はありがとう、と呟いた。

 引っ越しの日、清太は一家で孝を見送った。清太は孝と、父母は父母同士で手短に別れを伝えた。孝たちが車に乗り込むと、清太は父母の静止を振り切って車の真後ろに陣取った。すると車の排ガスが清太を直撃し、咽て顔を背けているうち、孝の乗る車はすでにだいぶ離れていて、すぐに路地を曲がり消えていった。あれだけ恐れていたのに、あっけない別れだった。だが、清太の心は晴れやかさを取り戻しつつあった。清太は空を見上げた。孝の住む新しい町とも雲続きのような気がした。

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