某議場での答弁 Mr.X

  • 2018.04.02 Monday
  • 08:01

某議場で答弁が行われている。


某議員「Mr. X!! 3月のテーマに投稿しないのはどういうことですか!」

 

X「年度末で忙しくて・・・」

 

議「年度末に忙しいのはあなただけではありません! 国民が納得できる説明をしてください!」

 

X「刑事訴追の恐れがあるため答弁は差し控えたいと・・・」

 

議「それいえば世間が納得すると思っているんですか?」

 

X「『老いた赤鬼』について、受賞できたことを嬉しく思っています」

 

話をすり替えるんじゃない!とヤジが飛んだが、Mr.Xは無視して話し続けた。

 

X「テーマの鬼について考えていた時に、不意に『泣いた赤鬼』を思い出しました。初めて読んだのは小学校の道徳の授業でのことだったと思うのですが、大人になって改めてこの話を考えると思うところがあり。で、中島敦の『李陵』が好きなので、時間が経ってから再会する話にしようと考えました。しかし文学的な感じにする技量は私にはなく、おもしろ路線で行こうとは思ったのですが、青鬼が急に饒舌になったのには自分でも驚きました。『ブルーオーシャン』て(笑)自分で笑ってしまいましたよ」

 

議「自画自賛とか、そういう態度が国民の不信感につながるのではないでしょうか? 4月のテーマは何にするつもりなのか、また、来月はちゃんと投稿するつもりなのか、お答えください!」

 

X「来月への投稿、はい、前向きに検討したいと、そう考えております。デーマですか? がりはさんの『デアイ』を推します。『卒業』からの『デアイ』、いい流れではないでしょうか?」

 

3月は投稿していないのに何言ってんだよ!とヤジ。Mr.Xは気にせず話し続ける・

 

X「しかしPスポの記者、全く油断がなりませんな。まさか私が通っていた書店まで調べるとは・・・。軽くですが本当に汗をかきました。

 べらべら話す自転車に、『何勝手に喋ってんだよ』と速度切り替えをせずに坂道を駆け上がってやったら苦しそうでしたよ」

 

議場にどよめきが広がる。恫喝じゃないか?と議員たちが口々に話している。

 

議「Mr.X、今の言葉は聞き捨てなりません! あなたは自分が乗っている自転車の人格を侵害しているのではありませんか?」

 

途端に焦りだすMr.X。後ろに座る官僚と何か小声で話をしている。

 

X「えー、これ以上は刑事訴追の恐れがあるため答弁は差し控えたいと・・・」


ふざけるんじゃない!と怒号が議場に広がる。まだまだ混乱は続きそうだ。

善きクレーマー  Mr.X

  • 2018.03.21 Wednesday
  • 19:33

今週は大変だったな。仕事が忙しいのに花粉症は出るし、勝負将棋は指すことになるし。日曜の夜は栄養のあるもん食べるか。今日はトンカツだ! ちょくちょく行く定食屋で食べるか。

 

トンカツ定食 ¥1,500。これお願いします。

 

一切れ目。美味い。これですよ。トンカツですよ。

二切れ目。・・・なんか臭い。なんか脂身が臭い。気のせいかな。。。

三切れ目。・・・・・・脂身のところがやはりなんか臭う。ありゃ、これ困ったな。残り二切れ、食べる気にならんぞ。

 

どうしようかな。どうしようかな。クレーマーと思われたくないしな。黙って残そうかな。いやでもまだ満腹ちゃうしな。「今日はトンカツだ!」ていう気分このままにもできんしな。でも代金踏み倒そうとしている客に思われないかな。もちろん全額出しますよ? 二度と来るつもり無い店なら黙って出るんだけど、この店少し気に入っているから、また来たいんだけど、このままだったら二度とトンカツ頼めないよな。どうしようかな。『同じトンカツを食べて怒鳴り散らす真性クレーマーが今後出るかもしれない。それよりは自分が礼儀正しく指摘し、修正を図るべきではなかろうか? 良い店だからこそ、「善きクレーマー」が必要なのでは無いだろうか?』と理論武装。いやでも、どうしようかな。。。。。

 

すいませ〜ん。このトンカツ(中略)

すいません、ごめんなさい、いや大丈夫です。揚げ直し? 半分だけでいいですけど、、、あ、はい、一枚揚げるんですよね、そうですよね。分かりました。

 

・・・実家の母から電話だ。店の外に出るか。

 

(中略)

 

兄貴のあれが気に入らんとか知らんがな。「私は、あんたに結婚して欲しいとか、孫の顔見たいとか言わんけど」 母さん、電話の度に言ってますよ、それ。

 

あ、トンカツ揚がってる。え、作った人? 腐っている恐れはない? 良かったです、安心しました。なるほど。新鮮過ぎて逆に臭みが強いなんてことも? そうなんですか? 牛乳で臭みを? へえ。あ、はい、早速食べてみます。

 

やばいよ、電話の間に満腹中枢すっかり刺激されちゃってるよ。結構お腹いっぱいだよ。トンカツ一枚はちょっとしんどいよ。かといってこれ全部食べんわけには絶対にいかんよ。臭い? あ、ほぼ無いです。大丈夫です。ごちそうさまでした。はい、¥1,500。

 

なんなんだろうな、この罪悪感、未消化感、後悔の念。俺は何も間違ったことはしていないと思うんだけどな。

【テーマ】老いた赤鬼  Mr.X

  • 2018.02.27 Tuesday
  • 12:00

34年前、青鬼を殴った赤鬼のその後は順調だった。木が倒れて道を塞いだと聞けばその怪力を存分に発揮した。鬼我慢強くもあったので、村の揉め事は双方の言い分を聞き続けることで解決した。さすがに断ったが村長に推されたこともあった。歳を取ったものの、村人が世話をしに来てくれたので何不自由無く暮らすことができた

 

そんなある日、世話をしに来た、昔のことを知らない若い娘から、山二つ越えた先の磯で青鬼がいるという噂を聞いた。波が激しく漁師もめった近づかない崖の下に青鬼がいるのを見た人がいるという。

 

人目を避け、厳しい環境で一人生き続ける青鬼をそのままにして良いのか? いや、34年間吐き続けてきた嘘が露呈しないか?

 

赤鬼は、悩んだ末、まだ体が動く内に、と会うことに決めた。青鬼が大好きだった酒と食料をたくさん持って山を越え、息を切らしながら険しい崖を降りた。大きな岩のそば、日に焼け、真っ青黒になった青鬼が銛を研いでいるのが見えた。

 

「アオくん……!!」

『おお、アカくん! 久しぶりじゃないか!』

「え、ああ、久しぶり。こんなところでどうやって生活しているんだ? 漁師?」

『ああ、人間って、鬼が相手だと商売したがらないからさ、口が固い人間と組んで魚を売っている。有能な奴でね。おかげで酒を毎日酔いつぶれるくらい飲んでるよ、まあ俺も結構な歳だし、ハッハッハ』

「..てっきり苦労しているのかと..」

『何言ってるんだよ、最初は苦労したよ。良い漁場は人間が独占しているからさ、普通に鬼が魚を売っても商売にならないんだ。だから考えたんだ。俺、超人的に泳ぎうまいから、人間がいない海で魚を獲ろうってね。正しく、ブルーオーシャン戦略さ』

「え、はい..」

『この湾では、波に鍛えられた旨い魚が獲れる。しかし新鮮なまま崖の上まで持って行くのが難しい。しかし逆に考えた。ここは風が強いだけじゃなく、南向きで日当たりも良い。干物に最適だとね』

「そう、ですか」

『さすがにもう歳だし、今は泳ぎが達者な若い人間を雇っている。そのうち上がってくるだろう。今日は34年ぶりに飲もう』

 

その夜、赤鬼は語りたかった、34年間、どれだけ苦しんできたのかを、どれだけ罪悪感を持ち続けてきたのかを。けれども「うわー、うちの社長、鬼だわー」『鬼だよ』「うちの会社、ブラック過ぎるってー」『いやブルーだよ』という宴会のやりとりを見て、彼は鬼我慢することに決めた。

【テーマ】23時59分60秒 Mr.X

  • 2018.01.30 Tuesday
  • 22:30

「このままでは、我々人類は2018年2月を迎えることができません。2018年の1月31日の23時59分59秒の1秒後、世界中のコンピュータの時刻と日付が狂う可能性があるのです」

 

2018年の1月1日、某国の総理大臣が記者会見で大仰な身振りで語った。

 

ことの始まりは数十年前に遡る。コンピュータ黎明期の当時の開発者たちが書いたコードに不備があった。その後すぐにエラーは修正されたはずだった。しかし2018年1月31日23時59分60秒になった瞬間、0年1月1日0時0分0秒になるというエラーは修正されていなかった。

 

全世界のほとんど全てコンピュータのシステムはこれを基にして発展してきたものだったので、エラーは修正されないまま世界中に根を張り、広がり続けることになった。

 

「2月になると、銀行の預金残高が0円になる可能性があるらしいぞ」

そんな噂が流れた。銀行も政府も否定した。皆が本当にそうなると思っていたわけではない。しかし「そうは言っても、もしかしたら、万が一でもそうなったら」 少なくない数の人々が銀行に集まり、全預金を引き出そうとした。その結果、世界中で経済が混乱することになった。

 

「コンピュータの異常に乗じて、隣国が我が国に攻め入ってくるらしいぞ」

緊張関係にあるXX国とOO国は疑心暗鬼に陥った。そんな1月のある日、OO国でXX国人が暴行を受けるという事件があり、一部のXX国人はその報復を求めた。全てのOO国人とXX国人が戦争を望んでいたわけではない。しかし、世界の経済の混乱していた最中、和解が仲介されることもなく、その結果、両国は戦争状態となった。

 

世界は2018年1月31日を迎えた。

 

「2月1日になった瞬間、全ての人工衛星が落下するらしいぞ」

そんな噂を信じた人達は、自宅に核シェルターを作り、そこに引きこもっていた。

 

「2月1日になった瞬間、原子力発電所は爆発するらしいぞ」

そんな噂を信じた人達は、家を引き払って移住をしていた。

 

2018年2月1日0時0分0秒になった。世界は何も変わらなかった。一部の古い機種のスマートフォンで時間がおかしくなっただけだった。そしてそれもすぐに修正された。

 

無意味に血が流れ、無意味に経済は混乱していた。それはいつもと同じ情景を、1月31日に詰め込んで少しだけ規模を大きくしたものだった。世界は、いつもの通りだった。

ペンタゴン機密文書(2)前  Mr.X

  • 2018.01.21 Sunday
  • 00:01

〜この文書は、米国防総省が盗聴した宇宙人の会話をGoogle翻訳で日本語にした機密文書である〜

「エージェント、我々の会話盗聴記録の一部を不特定多数で共有する形でデータ保存した(*)地球人だが、我々が宇宙船に持ち帰って以降の様子はどうか?」

  *)この異星人には「インターネット」「ブログ」という概念がない。

『司令官、以前から保管しているイヌネコ幼体数匹と一緒にしているのですが所持していた携帯型情報端末でこれらの写真を継続して撮影しています。理由は不明です』

「やはり地球人類を理解するには時間が必要だな。ところで、この地球人から要求があったとのことだが?」

『はい。いくつか質問しようとしたところ、こちらの姿を見せて欲しいと要求されました』

「地球人類と交流するというのが現在の本部の意向だ。要求に従っても問題ない。私が直々に尋問しよう」

「私がこの宇宙船の船長である。いくつかの質問に答えていただきたい」

【私の方でも質問してもいいですか?】

「何か?」

【あなた方の姿を見るのは初めてなんですが、フィクションで見るのとかなり似ているんですね】

「我々が接する地球人類はあなたが初めてではない、とだけ言っておこう…。サイズはかなり異なるが、地球人類が言うところのグレイ型というのが近いだろう」

【左右相称動物なんですね】

「サユウソウショウ動物とは何か?」

【クラゲなどそうでないものもいるのですが、地球に生息する動物のほとんどには右と左があり、これを左右相称動物と呼んでいます。フィクションで見る宇宙人はみんな左右相称なんですが、本当にそうなんですね。
 系統的には、クラゲよりも私たちに近いのかもしれません。ちょっと調べてみたいので、DNAが抽出できるくらい体組織もらえないですか?】

「それは許可されていない。それにDNAが我々の遺伝情報物質かどうかも地球人類には不明なはずだ。そもそも我々には地球で生息した歴史はない」

【そうなんですか。もし地球の生命と全く異なる形で進化してきたのだとしたら、結果として同じような左右相称性を持ったということになります。こういうのを進化の収斂現象というのですが、とても興味深いですね。左右相称性というのは、宇宙レベルで普遍的な合理性を持っているということになりそうですし。
 よろしければ、あなた方の星にいるその他の生物についても色々教えていただけませんか?】

ペンタゴン機密文書(2)後  Mr.X

  • 2018.01.21 Sunday
  • 00:00

「…こちらの質問にも答えて欲しい」

【あ、はい】

「我々の会話記録が複数の地球人類間で共有され、その結果、あなたが一部で評価されたとのことだが」

【はい。6人の方に選んでいただきました】

「”懐柔”、”戒重”というテーマでもデータ共有がなされたが、何故、”怪獣”が評価されたと考えるか?」

【”怪獣”で他の人と被らなかったので、目立つことができたのが理由かなと考えています。トイプードルみたいな人間に愛でられるためだけの動物とか、前から変な生き物だと考えていて。読んでいただいた方にも身近なところにいる怪獣、というのが面白がっていただけたのではないかと思います】

テーマコンテストという分野ではあなたは評価されることもあるようだが、何が原因と考えるか?」

【普段の日記とテーマコンテストには、”商店街の店”と”祭りの出店”のような違いがあると考えています。プロレス道場や競馬予想屋、怪しげな雑貨店、子育て相談所、振り返る博物館に登山写真館などが並ぶ商店街で、「あのレストラン、いいぞ!」と覚えてもらうのは簡単ではありません。一方で、祭りで店を出す場合は「隣はフランクフルトで、向いはお好み焼きか。それなら自分は佐世保バーガーで目立ってやる!」みたいな戦略を考えやすいのではないかと。
 昨年12月も、「”怪獣”なら目立てる!」というようなことを意識的ではありませんが、考えていたように思います】

「来月はどのようなテーマが良いと考えるか」

【”オニ(鬼)”を推す方が2人もいましたし、これが良いと思います】

「”オニ(鬼)”ではどのように目立つつもりか?」

【えーと、それは極秘事項なんでここでは…】

〜以降、どのように機密文書を手に入れられたのか尋問がなされているが、ここでは割愛する〜

「質問に答えていただき、感謝する。地球にお送りする」

【あ、ここに来る時のあの機械、どういう原理なんですか?
上からライトが当たったと思ったらふんわり吸い込まれたんですが、重力を調節したからかとも思ったのですが、ゆっくり、というのがイマイチよくわかりません。落下じゃないし。物理学的にどうなっているのか、ハッタリスト氏が多分興味を持つと思うんで教えてあげたいんですが】

「地球まで、お送りする」

〜記録はここで途切れている〜

【テーマ】ペンタゴン機密文書 Mr.X

  • 2017.12.27 Wednesday
  • 08:58

〜この文書は、米国防総省が盗聴した宇宙船の会話をGoogle翻訳で日本語にした機密文書である〜


「エージェント、地球人類の間で広く飼育されているイヌネコ(*)の調査は進んでいるか?」
  *)この異星人はイヌとネコの区別がついていない。
『司令官、調査していますが、理解不能です』
「どういうことだ?」
『歴史的には狩猟や穀類の保管等の役割を果たしてきました。しかし現在では役に立っていないイヌネコの方が多いようです』
「ではなぜ地球人類はリソースを費やしてこれら獣を飼育しているのか?」
『分かりません。・・イヌネコの幼体を数匹、調査船に持ち帰りました』
「地球人類より知能も低く、確かに役に立つとは思いにくいな」
『現在は、狭小な家でも飼育する地球人類が増えているようです。なぜそこまでするのでしょうか?』
「それを調べるのが君の仕事だ・・・。しかし理解できん。役割も無いのに地球人類の元で個体数を増大させている。何か特別な能力があるとしか思えない。なんとも怪しい獣だ。
 この謎が解き明かされるまで侵略は一時中止だ。
 ・・・それはともかく、このイヌネコが私の足の上で寝始めたのだがどうしたら良いか? 起こすのもかわいそうだし」

テーマコンテスト優勝者の口頭発表(1)  Mr.X

  • 2017.12.25 Monday
  • 22:08

Mr.X(以下、X)「・・・以上で私に発表は以上です。ご静聴ありがとうございました」

前方が暗かった会場にライトがともる。パワーポイントを使って発表が行われたようだ。ここは某所で開かれている国際PREMIER学会の年大会。Mr.Xの発表が終わったところらしい。

ハッガリーニ(以下、ハ)「Mr.X、ありがとうございました。・・・質疑応答の時間は(腕時計をチラッと見る)5分少々あります。質問のある方は挙手をお願いいたします」

座長であるハッガリーニの言葉を聞いてすぐに、1人の背の高い男性が手を挙げた。

うべべ(以下、う)「あの、Mr.Xの10月の作品で主人公を颯爽と追い抜くUくんのモデルって、僕でしょうか? だってぼく、茶髪ですし、颯爽としますし」

X「全然違います。あと、あなたは颯爽としていません」

う「うべべべべ」

X「うべべべべ」

う「では、いつ僕はMr.Xの作品の中で活躍するのでしょうか?

X「案外、近々そういう時もくるのではないのでしょうか?」

う「うべ?」

ハ「では次の方・・・、そこの左の、はい、後ろにおられる、後光が眩しい・・、あの、申し訳ありませんが、会場では獅子からは降りていただけますか?」

渡海文殊(以下、渡)「おお、それはそれは申し訳ない。友人の飛鳥大仏は入り口を通れなかったので私が参りました。・・・まずはMr.X。テーマコンテスト優勝おめでとうございます。私の予想では本命に推しておらず、汗顔の至りです。Mr.Xご自身は、この優勝をどのようにお考えですか?」

X「ええ、私も優勝は全く予想していませんでした。ヤマブキかマルーンだろうと」

渡「ご自身が推すマルーンとヤマブキに勝てた要因は何とお考えですか?」

X「難しい質問ですね・・・。強いて言うと、”非現実系”という意味では三者は近かったと思うのですが、職業の話を絡めた点を面白がっていただけたのではないかと思っています」

渡「なるほど、なるほど。・・・ありがとうございました」

ハ「・・・では次の質問を最後にいたします・・・あ、ではそこの、赤い靴で、オレンジのズボンを履いて、黒のTシャツを着た・・・」

ハッガリーニが全てを言い終わらないうちに、その男はマイクを奪うように受け取り、話し始めた。

テーマコンテスト優勝者の口頭発表(2)  Mr.X

  • 2017.12.25 Monday
  • 22:05

がりは(以下、が)「おい、Mr.X、こっちにも来てやったぞ。俺のいない11月は楽しかったろうな?」

X「え? あ、すみません、リングに上がらない方の発言は聞こえにくくて」

が「おぁぁ?! 2017年テーマコンテストを3期獲得しているがりはに言う言葉がそれか!」

X「はい、それに関してはこちらのスライドをご覧ください。(会場が再び暗くなる)
 がりはがテーマコンテストを獲得した7、8、10月のうち、7、10月は発表日が31日なんですね。本人はストロングスタイルと言っているようですが、他の人を文章見てから手を変えた、戦略的な勝利であることが示唆されます。」

が「今の言葉! 簡潔に要約した上で挑発的に言ってみろ!」

X「ストロングスタイル? ああいうのはな、”後出しジャンケン”って言うんだよ」

が「おお、よく分かった。今月中にぺしゃんこにしてやる!」

会場の通路を進むがりは。止めに入ったハッガリーニを客席にぶん投げてプロジェクターの前に立つ。がりはの影が大きくスライドに映った。がりは少し迷ってから両手を高く上げる。プロレスラーを意識しているようだが、どちらかというとマイケルジャクソンの"THIS IS IT"である。

Mr.Xの学者生命もこれまでか。会場の誰もがそう思った次の瞬間、会場に「ぎゃあぁぁぁぁぁ」と悲鳴が響き渡る。悲鳴をあげたのは、Mr.Xではなく、がりはだった。傍らにはうべべの灰色の影。忍者のような、両手を合わせ人差し指を立てた独特なポーズを取っている。がりはがプロジェクターの前でポーズに悩んでいる瞬間を狙い、後ろからフィリピン仕込みの低空タックルを決めたのだった。

尻を押さえて悶絶しているがりはの脇を抜け、ハッガリーニが座長席に戻った。

ハ「Mr.X、最後にベストコメントと、あと来月のテーマを」

X「ベストコメントはもちろん、ほわいとさんです。月間最優秀作品にも選んでいただきましたし、OASISは私も好きなので、ちょっとうまく言えないくらい嬉しく思いました。
 1月のテーマですか? 『カレンダー』でいかがでしょうか? 新しいものが今ちょうど手に入りだした頃だと思いますし。
 あと、最後に、メリークリスマス!!」

まばらな拍手の音とともに、Mr.Xの発表は終わった。

【テーマ】巨人の肩の上に立つ Mr.X

  • 2017.11.27 Monday
  • 07:15

「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。」と、なんでも昔の偉い物理学者が言ったらしい。

「なるほどそうか、それならその巨人の肩の上とやらに立って、遠くまで見てみようじゃないか」と思った私は門を叩いて、勇んで巨人登りを始めた。

以来10年、ずいぶんと登った気がするけれど、上を見ると霞が掛かっていてその肩は姿も現してもいない。もう肩甲骨くらいまで来ているんじゃないか?とそう思った瞬間もあった。しかし巨人の成長は著しく、気がつくとそこは腰骨のあたりだった。

この巨人を登ろうとするものは世界中にいる。自分と同じように門を叩き、苦しみながら巨人を登り、肩の上まで登り切ったものも、途中で力尽きてしまったものも、同じように巨人を踏み固めてコブを作る、さらに別の誰かがその上を踏み固めて再びコブができる。そうやって巨人は果てなく巨大になっていく。

なんでこんなに登山者がいるんだよ、聞いてねえよ。そのせいでいつまでたっても上まで行けないじゃねえかよ。口の中で小さくつぶやく。

ある朝、疲れた私は自分が作った小さな小さなコブの上に腰掛けて休んでいた。子供のように足をプラーンプラーンさせながら、冷めてしまったコーヒーを飲み干す。ここからでも遠くまで見える気がするけれど、見えている景色がなんなのかよく分からない。

ぼんやりと巨人の地図を見る。すると次の瞬間、10数年前にある登山者が作ったコブと、そのさらに数年前に別の登山者が作ったコブを、私が作ったコブをつなぎ合わせると、これまで姿を見せていなかった新しいコブが存在することに気がついた。誰も知らないコブだ。私は全力でそこを駆け上がる。他の人たちが踏み固めていった道を登った先からは、今まで誰も見たことなかった景色が見ることができた。

「なんだよ、面白いものが見られるのは、肩の上だけじゃないじゃん」

そう思った私は再び巨人を登り始めた。「今まで誰も見たことがないものが見られる」というその快感が、どうにもこうにも巨人登りを諦めさせてくれないのだ。

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