【テーマ】タイムマシーン Mr.X

  • 2018.10.29 Monday
  • 08:49
Mr.X「ドラえも〜〜〜〜ん」
 
ドラえもん『どうしたんだい、Mr.X。またハッガリーニにプロレス技かけられながら、「今日中に一本書けや!」とか言われたのかい?』
 
X「ちがうよ、ドラえもん。Mr.ヤマブキのテーマ作を読んで書く気が失せちゃったんだよ。コンテストであんなのに勝てる気がしないよ〜」
 
ド『しょうがないな君は。ベストを尽くしてMr.ヤマブキよりも面白い作品を書けばいいだけの話じゃないか』
 
X「正論がそのまま通る時代じゃないんだよ! 何とかして〜〜〜」
 
ド『仕方ないなあ。(テッテレ〜)”アンダードッグ効果”!!』
 
X「何それ〜?」
 
ド『これまでの何回か投票でもあったじゃないか、「こちらに投票します、ooさんの作品が勝ちそうですが」みたいなのが。今回Mr.ヤマブキが強過ぎるというなら、趣の違う作品で判官贔屓を期待して、みんながこちらに投票すれば優勝できるんだよ』
 
X「ドラえもん、そとみは青色なのに四次元ポケットの中は真っ黒なんだね〜。でもそれ、口に出して言ったらもう無理なんじゃない?」
 
ド『そうだね。この時点で君には無理だね』
 
X「わ〜〜〜ん」
 
ド『困ったなあ。そうだ!! (テッテレ〜)”メタフィクション”!!』
 
X「今度は何?」
 
ド『他の人の作品が凄すぎて書く気が失せた、というところからスタートすればいいんだよ』
 
X「どういうこと?」
 
ド『作中に作者が登場して「次の話、どうしよう?」みたいな会話から話をスタートさせるんだ。そういう感じの、漫画や小説とかで読んだことがあるよ』
 
X「ドラえもん、今のこれがそうなんだね!! でもこれ、一度使ったらもうできない技なんじゃない?」
 
ド『そうだね、おまけに内容によってはダダ滑りする恐れがあるよ』
 
X「そんなのもう無理じゃないか〜。おまけにこの作品が創作物なのか、その形を借りただけで心情を吐露しているエッセイなのか、自分の中でもまだ整理がつかないよ〜」
 
ド『そもそもこれでMr.ヤマブキに勝てるわけでもしないしね』
 
X「もういい! テーマコンテストは諦めた! タイムマシーンで過去に戻って、Mr.ヤマブキっぽい作品を書いてそっちで注目を集める!」
 
ド『君の作風じゃMr.ヤマブキのパスティーシュは無理だよ。というか、最後になってドラえもんらしいお願いするなよな』

【三題噺】不条理のヤマブキ色のハンカチ Mr.X

  • 2018.10.18 Thursday
  • 12:53
初めて訪れたのは旅行だったのだが、文化、風習、食事その全てが気に入り、私は母国を捨ててこの国の人間として生きて行くことに決めた。以来10年、始めた小さな店も軌道に乗り始め、ようやく生活も安定してきた。
 
当初はただの店員であった彼女は、すぐに公私ともに大切なパートナーとなった。私は心に決めた。高級レストランで彼女の好きな料理を振る舞い、花束を贈り、そして指輪を見せつつ「これからの人生を共に歩んでください」と言った。
「え? 私たちすでに一緒に暮らしているじゃない」と指輪を見たときの笑顔を口元に残しつつ、不思議そうな顔をして彼女は言った。
「えっと、公に認められる形で人生をともに送りたいんだ」
「一緒に暮らすことに、どうして『公に認められる』が必要なの?」
 
会話が全然噛み合わない。役所へ行ってみたが婚姻届のような書類そのものが無い。この国には「結婚」が存在しないのだ。どうしても彼女との生活を公式なものにしたかった私は、この国の人たちを巻き込み、「結婚」という世界では一般的なシステムを導入するための社会運動を始めた。
 
すると途端に「外国人が私たちの国の伝統を破壊する」とテレビで評論家達が私を名指しで非難し始めた。インターネットは私への非難の言葉で溢れ、店の窓が全て割られた。この国の主流であった保守政党は、私を国外の風習を持ち込んで国を変革しようとする「革命分子」として私を糾弾した。最終的に「国の秩序を乱した」という判決が裁判所から下り、苦労して築き上げてきた財産を全て没収された上で強制収容所に入れられてしまった。
 
看守以外の人間とは一切連絡が取れない社会とは隔絶した環境での強制労働を8年続け、ようやく釈放された。しかし、収容所の門を出たからといって私の絶望が無くなるわけではない。全てを奪われたのだ。これからどうやって生きていけばよいのか?
 
とぼとぼ歩いてかつて私の店があったところに向かった。そこには変わらず小さな店があった。彼女が出てきた。
「あなたがいない間、私ずっと頑張って働いてきたのよ」
 聞けば、私がいない間、彼女は政府から店を奪い返し、一人で続けてきたのだと言う。
「さあ私たちの家に帰りましょう」
「え? 私たちの、家?」
「もちろん。だって私たち、ケッコンしたんでしょ?」
 
私は、本当に大切なものは奪われなかったことを知った。

【テーマ】本当は怖い連絡網 Mr.X

  • 2018.10.01 Monday
  • 00:47
大学院に入った頃、私は1人研究室にこもり、実験を続けていた。夜は実験が捗る。とはいえ夜も遅くなり、だいぶ疲れてしまった。そろそろ帰ろうかと帰り支度を始めていると、携帯電話が鳴り出した。高校卒業以来顔を合わせていない友人Wくんだった。高校一年の時に同じクラスで「そこそこ親しい」くらいだった。電話番号を交換したのも、卒業式特有の変なテンションからだったと思う。何か、緊張してきた。
 
『…もしもし、Xくん? 久しぶりです。Wです』
 
緊張している声が聞こえてきた。なんだ、向こうも同じか。
 
「ごぶさたです。Wくん、元気? どうした?」と緊張していないふり。
『え、ああ、元気です。今、電話大丈夫?』と向こうの緊張はほぐれたようだ。
 
そこからは会話は順調に進んだ。大学行ってからあいつに会った?、あいつ今何している?、あいつ結婚したって、しかもあの女の子と、まじで?、とまあ一通り会話を済ませてから、Wくんは切り出してきた。
 
『いや実は学年全体で同窓会やろうという話が持ち上がっていて。それでできるだけ人集めたいんやけど、案外みんなお互いの連絡先がわかっていなくて』
「まあ、そのころはみんなが携帯電話持っているわけじゃなかったしね」
『そうそう。...で、連絡ついた人に、誰か別の人と連絡つかないか、っていうのも聞いているところで』
「なるほど! 新しい連絡網の形やね!・・わかった、誰かいないか、携帯電話、調べてみるわ」
『ありがとう!…あと、もう一つお願いというか、ちょっと考えて欲しい話があるんやけど』
「何?」
『実はこの同窓会を企画した最初の5人が、誰が一番人を集められるか賭けをしよう、と言っていて』
「へえ?」
『それで、1人に声をかけると1,000円を徴収できて、さらにその人がさらに誰かに声をかけて1,000円を徴収できれば、声をかけられた”親”にお金を500円を払うという仕組みで』
「え? え? それってつまり俺がWくんに1,000円払うってこと? 損するだけやん」
『いや、君も誰かに声をかければいいんだよ。さらにその人が誰かに声をかけると黙っていてもお金が入るというシステムなんだ!』
 
何がなんなのかわからなくなってきた。その後もWくんは熱心に話をしてきたが「ごめん、今電車来たから。また連絡するわ!」と無理やり電話を切った。冗談なのか、本気なのか、今でもわからないし、怖くて誰にも聞けやしない。

Chicken chicken chicken Mr.X

  • 2018.09.10 Monday
  • 23:57

YouTubeにChicken chicken chicken」という動画がある。極めてふざけている。学会発表の風景を映した動画なのだが、まあふざけている。

 

研究者の仕事は、研究をする事だ。ただ、自分の家で一人で実験して自分が満足できる結果を得られたからといって何も評価されない。その研究内容を論文という形で公開することが求められている。

 

医学・生物学系の研究者の憧れは「Nature」「Science」「Cell」(これらをまとめてCNSと称せられる)。少年漫画雑誌でいうところの「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」みたいな感じだろうか? 「おれ、ジャンプに漫画載せたことあるよ」と言えれば売れた売れなかった関係なしに漫画家としてすごいんじゃないかと感じさせるように、「おれ、Natureに論文載せたことあるよ」と言えれば、研究者として大したものだと思われる。無論、全ての論文が素晴らしいわけでないことは、2014年にみんな学んだことだけれど。

 

CNSほど有名ではなくとも優れた雑誌はたくさんある。研究者は何はともあれ「自分は優れた研究者である」というためにそういう雑誌に投稿を試みている。というか、論文を書かない研究者は死んでいる、と見なされるくらいだ。「その研究、論文として雑誌に載らないの? じゃあやる意味なかったね」と言われても不思議ではないのだ。

 

そうなるとあまり優秀でない研究者たちは困ってしまう。「私は優れた研究者だ。是非あなたの大学の研究者として雇ってくれ」と言いたいのに、論文がなければ「あなた研究者じゃないじゃん」と言われてしまうわけだ。

 

そういう心の隙間を埋める産業が現れた。最近も一部で報道されたが「ハゲタカジャーナル」という、要するにお金さえ積めば雑誌に載ったことになるよ?という悪魔の囁き的商売である。 

 

最初に紹介した動画は、その「ハゲタカジャーナル」がどれくらいふざけたものであるかを示したふざけたものである。論文として「chicken」以外の単語しか使っていない論文風のもの(PDF)を金を出して送ってみたら、なんと掲載されてしまったというのだ!

 

こんなふざけたことがあって良いはずがない。しかし、研究者という商売を評価する基準が、論文というものだけである以上、こういう闇が生まれて来るのもある意味学術的に興味深い。

【テーマ】カラオケ@地球系外惑星 Mr.X

  • 2018.08.30 Thursday
  • 21:15
宇宙エレベーターが一般化したのは今からおよそ200年前の話だ。宇宙へと向かうコストが下がり、多くの探査船が宇宙へと漕ぎ出した。

 

多くの人間が旅立った。すでに人間よりもはるかに賢い頭脳を持ったヒューマノイドが開発され、脳にデータを流して疑似体験する技術もすでに確立されていた。だから、人間が行くなんて無駄にコストとリスクがかかるだけなのに。だけど「自分の目で直接見たい!」などと言い、これまでに地球を飛び出した人数は軽く億を超えるらしい。

 

田植えを含む農業を、地球から1.3光年の距離があるこの惑星「ディープリバー」で行い、近隣の惑星に輸出するという私の祖先の計画は、当初、地球各地で嘲笑されていたという。有機物循環システムから食品を再生産することができるのに、どうしてわざわざ宇宙で高コストな農業を? しかし、そもそも合理的な理由がないのに宇宙へ向かうのが人間である。「やはり自然のものは味が違うから」「再生産ミールはやっぱりなんか臭う」などと非科学的なことを言って多くの宇宙船がこの惑星へ降りてくるようになり、祖先たちは巨万の富を築き上げ、この惑星で事実上の新しい「国」を作った。

 

ヒエラルキーが自然と出来上がり、創立者の子孫であった私はその上位にあり、生活に不便を覚えたことがない。だから地球へ行ったこともないし、特に今は行きたいとも思えない。20年前、地球で火山の噴火や地震が立て続けに起きる時期があった。お互いが強く依存しあう社会システムを築き上げられていたので、複数の国にまたがって生じた大規模な食糧危機と経済や社会の混乱が地球中が波及し、今は混乱の極みにあるという。

 

カラオケで昔々の地球の歌を歌った。数百年前のある国の女性シンガーの歌だ。頼めばこの女性シンガーの歌によく似たものを人工知能が作ってくれる。だけど、非科学的だと初恋の相手には笑われるけれども、それはやはり亡霊が作ったようなもので心が位置する脳には響かないはずだ、と私は思う。

 

ルーツである地球だが、混乱が収まってからいつか行こうと思っている。地球には、とんでもなく青い"海"というものが広がっているという。いつかこの目で見てみたい。「そういうところが人間っぽいよね」と初恋相手のヒューマノイドにまた笑われるとしても。

【テーマ】24依存症  Mr.X

  • 2018.07.31 Tuesday
  • 06:27

私が「将棋倶楽部24」(以下、24)というインターネット上で将棋が指せるサービスにのめり込んだのは2004年ごろのことだ。今では信じられない話だけれど、それまで将棋を指す環境といえば、家族や友人同士、町の道場、学校のサークル、ぐらいしか無かった。しかし24では文字通り24時間指し続けることができた。

 

将棋が強くなりたかったら、将棋を指すことである。大学の将棋部に在籍し、将棋が強くなることが全てだった当時の私が始めない理由はなかった。

 

R(レーティング)という勝てれば上がり、負ければ下がる、理屈はシンプルなポイントシステムがあり、一局の結果、10-20ほどのポイントが増減することになる。それを金銭か何かに変えられるわけでもないというのに、気がつくと何局か勝利してRが100上がることが代え難い快感になり、逆に負けが込んで100下がることは激怒と絶望を意味するようになっていた。

 

しばらくして、狂ったように毎日指しているはずなのにあまり将棋が強くなっていないことに気がついた。当たり前の話だ。私が求めていたのは「全力で、より良い将棋を指すこと」ではなく、ただRという数字が1でも増えることだったのだから。「めんどくせーから投了してくれないかな」などと思いながら指している人間が強くなるわけがない。

 

しかしそのことを理解し、さらに大学の単位と視力をずいぶん犠牲にしても、それでも24をやめることができなくなっていた。重症ではないかもしれんけども、明らかにネトゲ依存症だった。

 

朝から晩までパチンコを打ち続ける人を笑えない。おそらく彼ら彼女らは金のためではなく、うまくいった時の快感を忘れることができず、今日も始めてしまうのだろう。

 

今でもちょっとした勢いで軽く一日に10局以上、3-4時間は指してしまうことが、たまにだが、ある。Rが上がって快感を覚え、下がって激怒している。その様は10数年前と変わることがない。

 

自分はおそらくこれからもずっと「24依存症」なのだな、と思う。アルコール依存症の人が一回アルコールをやめられてもちょっとした弾みに飲んでしまって再発することがあるらしい。何か仕事やプライベートでうまくいかないことが続いた時、自分は再び「24」を24時間やり続ける生活を始めてしまうかもしれない。その沼は足下の薄い床板のその下でいつまでも私を待ち続けている

菜の花と毒ガス  Mr.X

  • 2018.07.11 Wednesday
  • 14:06

小学5年の3学期の終業式は午前で終わり、私は気分良く帰り道を歩いていた。

それまでの寒さが嘘のようにぽかぽかと暖かい日だった。アホの子だった私は年中半袖シャツで、さすがに冬はシャツの上にチョッキを着ていたが、3月末に入ったその日はチョッキの下が汗ばむほどの陽気だった。気持ちよく晴れわたった空の下、菜の花の美しい黄色で覆われている田んぼ一面を、白いモンシロチョウが蜜を求めて飛び回っている。

 

そのおよそ2ヶ月前に関西であった大震災は子供ながらに恐ろしく、現実とは思えないくらい破壊された街並みの映像と、増え続ける死者・行方不明者の数を見て、もう終わってくれよと祈っていたことを覚えている。

そんな陰鬱な気分や冬の寒さを少し忘れられる気がしていたのかもしれない。小五の私は普段は花なんて見ないのに、その時はしばらく立ち止まって菜の花畑を見ていた。

 

爽やかな気分で帰宅し、「ただいま」と言いながら私は台所へと入った。母は椅子に座ってテレビをじっと見ていた。テレビではサイレンが鳴り続けていた。救急車や消防車が走り回り、大人の怒声が聞こえてくる。

 

「東京で毒ガスが撒かれたって」

 

母は「お帰り」とも言わず、振り返りもせず、静かな声で私に言った。

 

私も黙って椅子に座る。母と一緒にテレビを見続けると、何だか息が苦しくなって来た。「ここまで毒ガスが? いやいや、さすがに東京からは届かんでしょ」そんなことを考えていた。温かった心持ちはあっさりと失われ、私の1995年は再び暗くなっていった。

 

それからテレビのワイドショーは狂ったように騒ぎ立て、私のクラスの男子たちは体育の時間に「カナリヤ真理教」と称し、座禅を組んで体育マットの上を膝で歩き回った(ちなみに隣の小学校ではスズメ真理教だったらしい)。

 

そして5月16日、少し遅れて登校して来た友人が「麻原彰晃が逮捕されたぞ」と言うので、教室のテレビを勝手につけてクラス全員でパトカーに囲まれて移動する護送車を見た。気がつくと、普段ならテレビをつけたことを叱るはずの先生が教室の入り口のところに立ってテレビを見ていた。生徒たちと同じような真剣な面持ちで。

 

あれから20年以上経った。成長するに従ってオウム真理教やそれを取りまく社会に関する知識も増え、考え方も変わる。しかし春の陽の下からいきなり暗い闇に引きずり込まれたあの日の恐怖は、私の中で今でも少しも色褪せてはいない。

【テーマ】私が殺される夢  Mr.X

  • 2018.06.30 Saturday
  • 16:57

殺される夢を見た。

場面はビールを飲むところから始める。一口飲むと眠気に襲われ、夢の中で眠りにつく。場面が変わり、暗い道で、俺は誰かに抱きかかえられている。声も出ないし、体が動かせない。ベランダで干される布団のように、俺はガードレールに載せられる。ガードレールの下にスマホが置かれるのが見える。ちょうど俺の手が届くところだ。その後、俺は両足を持ち上げられ、そのままガードレールの向こう側に落とされる。そこは崖になっていて、俺は頭から地面に激突する。

 

目が覚めた。当然だが気分はあまり良くない。

しかし、と俺はタバコに火をつけてから考える。俺は物事を冷静かつ客観的にみることができる男だ。誰だか知らないが、悪くない計画だ。俺の酒癖が悪いことは誰もが知っている。そのせいで会社を一度クビになった。落とされたのは家の近くの坂道だろう。ガードレールの向こう側が数メートル低くなっていて、頭から落ちればまず助からない。警察が事故死として検死をしなければ睡眠薬が見つかることもない

 

朝食を食べて会社に向かい、社長椅子に座る。まだ小さいが、これから大きくしていくつもりだ。だから俺は社長として社員たちにハッパをかけ続けている。生まれつき口が悪いが、全員、それが愛情からだと分かっているはずだ。感謝こそされても恨まれるはずがない。

 

この日、念願だった大きな仕事が決まった。ここをつかめば次が見えてくるし、さらにその次も見えてくる。間違いなく、今期の年商は前期の倍近くになるだろう。これも全て俺が出した指示のおかげだ。

 

当然この日は飲み会が開かれる。俺が席に着くと自動的に中ジョッキの生ビールが出た。少しためらい、口にしたふりをしてから「なんかビール味変じゃないか?」と言った。首をかしげる部下の顔を見る。全員とぼけた顔をしている。「焼酎、ボトルで。氷も持ってこい。 いいよ、全部自分でやるから!」と注文を出す。終電前だったが帰りはタクシーを使った。「変な夢のせいで無駄な金使っちまったなあ」とタクシー内で思う。

 

帰宅後、妻にラーメンを作らせる。いつもの習慣だ。「タバコが無くなったから、下のコンビニで買ってこい」と言いながらお茶を一口飲む。健康茶に凝っている妻はいつも変な味のお茶を買う。「普段よりまずいなあ」と文句を言う。グラスに注がれた冷たいお茶がビールに見えた。そして眠気が襲ってきた。

テーマコンテストありがとうございます Mr.X

  • 2018.05.31 Thursday
  • 21:18

「コーヒーを淹れそびれた日の話」を書いたのは4月22日の深夜だ。テーマは「デアイ」だったが、その時の自分にとってはなかなか難しいテーマだった。

 

というのは、4月いっぱいで、研究所を移ることが決まっていたからである。たまに顔を合わすぐらいの距離感の人たちと顔を合わすたびに「長い間おせわになりました云々。また機会があれば遊びにカンヌン」というやりとりを始めた頃だった。テーマが「ワカレ」だったら良かったんだけど。

 

Mr.Xのドクトリンは「意外性」である、と自分では思っている。ごく普通の話をごく普通に書いて千字読ませられれば理想的なんだけど、そんなことどうやったらできるのか全然分からない。それで起承転結でいえば、「転」に力を入れている。

 

そういうわけで、「そうだ、今回は『誰それと出会った』というのをやめて『自分と出会った』にしよう」となったわけです。

 

幸い、テーマコンテストでは7票を入れてもらって優勝することができた。さらには最優秀作品にも3票も入れていただいた。確認していないけど、今までで一番票を獲得できたのではないかと思う。

 

 

>ヤマブキさん、がりはさん、Mr.Indigo

4月のテーマコンテストは、特に執筆者が個性を出した月だったような気がします。Mr.ホワイトの「戦時下のシャンソン」やMr.アールグレイの「しんいり」と競ったとのお話ですが、その中で選んでいただけたということで、本当に光栄です。

 

>ほわいとさん

文章が上手い、とシンプルなその一言がシンプルに嬉しいです。

 

>おっともっと夏だぜさん

最優秀、テーマ両方に入れていただき、ありがとうございます。「ありがちにも思えるけれども、ぐいっと読ませる作品です」というのは、Mr.X的には望外な喜びで僥倖というやつです。

 

>たりきさん

最優秀のみ、ということですが、ありがとうございます。いやー、どういうところなんかな、めっちゃ気になります。。。

 

>マルーンさん

雰囲気が一番好みとのこと、ありがとうございます。本人からすると辛い時期でもあったので暗い感じがしてしまうのですが、気に入っていただけて光栄です。

 

>nampomさん

「人生は自分を知る旅ですよね」 仰る通りだと思います。けどこの旅、なかなか簡単じゃないですね。

 

書き終えて今眠い、という理由で6月のテーマは「睡眠」になりました。悪しからず、ご了承ください。

【テーマ】感激おじさん  Mr.X

  • 2018.05.30 Wednesday
  • 00:39

K氏は求職中の身である。34歳男性。どうにも已むに已まれない事情で前職を退いた。結婚はしていないが、これを考えている女性はいる。退職した時、彼女はK氏を励ましてくれたが、半年を過ぎたころから何か様子が違ってきた、とK氏は感じている。

 

そんな時、「株式会社ふぃーる・ぐっと」なる会社を知った。ホームページを見たが「周りの人たちを笑顔にする仕事です」という、ほぼ無意味な内容の文章しか書かれていなかったが、一頃話題になった「レンタルおじさん」のようなものらしい。最初は無視していたが、いつも求人を出していることが気になった。まあ、これも一つの人生勉強だ、とK氏は応募することに決めた。

 

勤務初日、K氏は先輩であるL氏とともに某巨大書店へと向かった。「Kくん、今から仕事をするから、よく見ていてくれ」と言い残してL氏は書店の入り口へ向かった。本を購入し、握手会の列に並ぶ。

 

「先生の見識にはうなずかされることばかりです。朝読新聞のコラム、毎週拝読しています。どうぞこれからも、体に気をつけて」とたどたどしくかつ早口で話しながら、L氏は遠目に見てもわかるほど力強い握手をした。

 

「何だったんですか、今のは?」

「彼は最近落ち目の経済評論家でね。握手会を開くから、熱烈なファンがいてほしい、という依頼があったんだ。次は女性演歌歌手のところだが、君がやってみろ。若いファンの方が喜ばれるからな」

 

3ヶ月後、K氏はテレビの旅番組を収録している某女性アイドルに"偶然"会って感動の涙を流した。同じ日の夜、オープンしたてのラーメン屋で、食べ始めはあえて色々とケチをつけ、最後は豪快な音を立ててスープを飲み干し、絶賛した。

 

順調に業務をこなせるようになった。しかし、仕事に慣れたはずなのに、何をしてもすぐに疲れるようになった。彼女と会っても何故かどこかに違和感のようなものを感じるようになった。

 

入社して一年後、後輩ができた。L氏がやって見せてくれたように、K氏もP氏に仕事ぶりを見せた。
「業務内容、理解できたか?」
「あの女性エステティシャン、ものすごく喜んでましたよ。先輩、マジですごいですね!」

 

K氏は、久々にやる気が出てくる気がした。しかし次の瞬間ある疑念が吹き出してきた。そして、この数ヶ月間、誰と会っても違和感を感じ続けてきた理由が、明確に理解できた。

 

K氏は、再び新しい仕事を探し始めた。

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