菜の花と毒ガス  Mr.X

  • 2018.07.11 Wednesday
  • 14:06

小学5年の3学期の終業式は午前で終わり、私は気分良く帰り道を歩いていた。

それまでの寒さが嘘のようにぽかぽかと暖かい日だった。アホの子だった私は年中半袖シャツで、さすがに冬はシャツの上にチョッキを着ていたが、3月末に入ったその日はチョッキの下が汗ばむほどの陽気だった。気持ちよく晴れわたった空の下、菜の花の美しい黄色で覆われている田んぼ一面を、白いモンシロチョウが蜜を求めて飛び回っている。

 

そのおよそ2ヶ月前に関西であった大震災は子供ながらに恐ろしく、現実とは思えないくらい破壊された街並みの映像と、増え続ける死者・行方不明者の数を見て、もう終わってくれよと祈っていたことを覚えている。

そんな陰鬱な気分や冬の寒さを少し忘れられる気がしていたのかもしれない。小五の私は普段は花なんて見ないのに、その時はしばらく立ち止まって菜の花畑を見ていた。

 

爽やかな気分で帰宅し、「ただいま」と言いながら私は台所へと入った。母は椅子に座ってテレビをじっと見ていた。テレビではサイレンが鳴り続けていた。救急車や消防車が走り回り、大人の怒声が聞こえてくる。

 

「東京で毒ガスが撒かれたって」

 

母は「お帰り」とも言わず、振り返りもせず、静かな声で私に言った。

 

私も黙って椅子に座る。母と一緒にテレビを見続けると、何だか息が苦しくなって来た。「ここまで毒ガスが? いやいや、さすがに東京からは届かんでしょ」そんなことを考えていた。温かった心持ちはあっさりと失われ、私の1995年は再び暗くなっていった。

 

それからテレビのワイドショーは狂ったように騒ぎ立て、私のクラスの男子たちは体育の時間に「カナリヤ真理教」と称し、座禅を組んで体育マットの上を膝で歩き回った(ちなみに隣の小学校ではスズメ真理教だったらしい)。

 

そして5月16日、少し遅れて登校して来た友人が「麻原彰晃が逮捕されたぞ」と言うので、教室のテレビを勝手につけてクラス全員でパトカーに囲まれて移動する護送車を見た。気がつくと、普段ならテレビをつけたことを叱るはずの先生が教室の入り口のところに立ってテレビを見ていた。生徒たちと同じような真剣な面持ちで。

 

あれから20年以上経った。成長するに従ってオウム真理教やそれを取りまく社会に関する知識も増え、考え方も変わる。しかし春の陽の下からいきなり暗い闇に引きずり込まれたあの日の恐怖は、私の中で今でも少しも色褪せてはいない。

テーマコンテストありがとうございます Mr.X

  • 2018.05.31 Thursday
  • 21:18

「コーヒーを淹れそびれた日の話」を書いたのは4月22日の深夜だ。テーマは「デアイ」だったが、その時の自分にとってはなかなか難しいテーマだった。

 

というのは、4月いっぱいで、研究所を移ることが決まっていたからである。たまに顔を合わすぐらいの距離感の人たちと顔を合わすたびに「長い間おせわになりました云々。また機会があれば遊びにカンヌン」というやりとりを始めた頃だった。テーマが「ワカレ」だったら良かったんだけど。

 

Mr.Xのドクトリンは「意外性」である、と自分では思っている。ごく普通の話をごく普通に書いて千字読ませられれば理想的なんだけど、そんなことどうやったらできるのか全然分からない。それで起承転結でいえば、「転」に力を入れている。

 

そういうわけで、「そうだ、今回は『誰それと出会った』というのをやめて『自分と出会った』にしよう」となったわけです。

 

幸い、テーマコンテストでは7票を入れてもらって優勝することができた。さらには最優秀作品にも3票も入れていただいた。確認していないけど、今までで一番票を獲得できたのではないかと思う。

 

 

>ヤマブキさん、がりはさん、Mr.Indigo

4月のテーマコンテストは、特に執筆者が個性を出した月だったような気がします。Mr.ホワイトの「戦時下のシャンソン」やMr.アールグレイの「しんいり」と競ったとのお話ですが、その中で選んでいただけたということで、本当に光栄です。

 

>ほわいとさん

文章が上手い、とシンプルなその一言がシンプルに嬉しいです。

 

>おっともっと夏だぜさん

最優秀、テーマ両方に入れていただき、ありがとうございます。「ありがちにも思えるけれども、ぐいっと読ませる作品です」というのは、Mr.X的には望外な喜びで僥倖というやつです。

 

>たりきさん

最優秀のみ、ということですが、ありがとうございます。いやー、どういうところなんかな、めっちゃ気になります。。。

 

>マルーンさん

雰囲気が一番好みとのこと、ありがとうございます。本人からすると辛い時期でもあったので暗い感じがしてしまうのですが、気に入っていただけて光栄です。

 

>nampomさん

「人生は自分を知る旅ですよね」 仰る通りだと思います。けどこの旅、なかなか簡単じゃないですね。

 

書き終えて今眠い、という理由で6月のテーマは「睡眠」になりました。悪しからず、ご了承ください。

【テーマ】感激おじさん  Mr.X

  • 2018.05.30 Wednesday
  • 00:39

K氏は求職中の身である。34歳男性。どうにも已むに已まれない事情で前職を退いた。結婚はしていないが、これを考えている女性はいる。退職した時、彼女はK氏を励ましてくれたが、半年を過ぎたころから何か様子が違ってきた、とK氏は感じている。

 

そんな時、「株式会社ふぃーる・ぐっと」なる会社を知った。ホームページを見たが「周りの人たちを笑顔にする仕事です」という、ほぼ無意味な内容の文章しか書かれていなかったが、一頃話題になった「レンタルおじさん」のようなものらしい。最初は無視していたが、いつも求人を出していることが気になった。まあ、これも一つの人生勉強だ、とK氏は応募することに決めた。

 

勤務初日、K氏は先輩であるL氏とともに某巨大書店へと向かった。「Kくん、今から仕事をするから、よく見ていてくれ」と言い残してL氏は書店の入り口へ向かった。本を購入し、握手会の列に並ぶ。

 

「先生の見識にはうなずかされることばかりです。朝読新聞のコラム、毎週拝読しています。どうぞこれからも、体に気をつけて」とたどたどしくかつ早口で話しながら、L氏は遠目に見てもわかるほど力強い握手をした。

 

「何だったんですか、今のは?」

「彼は最近落ち目の経済評論家でね。握手会を開くから、熱烈なファンがいてほしい、という依頼があったんだ。次は女性演歌歌手のところだが、君がやってみろ。若いファンの方が喜ばれるからな」

 

3ヶ月後、K氏はテレビの旅番組を収録している某女性アイドルに"偶然"会って感動の涙を流した。同じ日の夜、オープンしたてのラーメン屋で、食べ始めはあえて色々とケチをつけ、最後は豪快な音を立ててスープを飲み干し、絶賛した。

 

順調に業務をこなせるようになった。しかし、仕事に慣れたはずなのに、何をしてもすぐに疲れるようになった。彼女と会っても何故かどこかに違和感のようなものを感じるようになった。

 

入社して一年後、後輩ができた。L氏がやって見せてくれたように、K氏もP氏に仕事ぶりを見せた。
「業務内容、理解できたか?」
「あの女性エステティシャン、ものすごく喜んでましたよ。先輩、マジですごいですね!」

 

K氏は、久々にやる気が出てくる気がした。しかし次の瞬間ある疑念が吹き出してきた。そして、この数ヶ月間、誰と会っても違和感を感じ続けてきた理由が、明確に理解できた。

 

K氏は、再び新しい仕事を探し始めた。

【テーマ】コーヒーを淹れそびれた日の話 Mr.X

  • 2018.04.27 Friday
  • 01:44

私は、とても楽観的に生物学研究者の道の第一歩、博士後期課程(通称、D)に進んだ。やる気はあるし、頭だって悪くないはずだ、まあ、何とかなるやろ、と。

 

しかしすぐに、自分は周りの人たちよりも劣っていることを自覚した。自分とは比べ物にならないほど、生き物が、あるいは研究が好きで好きでたまらない人たちがいる。長時間生き物を観察し続けることで、普通なら気がつかないような全く新しいことを発見する。飽きることなく一つのテーマを考え続けることで、驚くようなアイディアを思いつく。そのような自分には到底できないことを普通にする人たちがいるのだ。

 

本物の情熱を持っている人には絶対に勝てない。そう自覚するのに時間はかからなかった。一方で、人生をかけて戦おうという自分の手には何の武器もなかった。

 

D進して数年後、とある勉強会がきっかけでプログラミングを学び始めた。やることはシンプルだ。プログラムを書く。リターンキーを叩いて実行する。直後、思っていた通りの結果が出たり、全然ダメ!とエラーが出たりする。

 

ある日、昼食後に思いつき、あると便利だなーというくらいのプログラムを書き始めた。何回やってもエラーとしか出ない。午後4時を回った。いつもならコーヒーを淹れて一息ついているのだが、今は面倒だ。気がつくと午後7時を回り、研究室には自分しか残っていなかった。帰ろうか。いやでももう少しで完成しそうだし。午後9時が近づいてきていた。参ったな、お気に入りのカレー屋が閉るじゃないか。いやでも、もう少しで出来そうだし。

 

あーできた、ようやくできた! これだ! と完成を喜んだのは、午前0時を回ってからだった。

 

自分にコンピュータ方面に適性があることを、私はその時初めて理解した。それは、全く予想すらしていなかった自分の性質だった。

 

これからの時代、生物学業界でもコンピュータが重要になるのは間違いなかった。プロのプログラマーみたいな人には及ぶわけもないが、生物学者の中ではできる方になれるだろうという予測が立った。そして、自分には頑張れば伸びるものがある、そのことが私を精神的に救ってくれた。無能さを突き続けられて心が折れる寸前に、それまで知らなかった自分を知ることで、自分をなんとか保てたのだ。

 

「汝自身を知れ」 そういう本当に大事なことはもっと早く言ってくんないかな? 言ってた? 軽く言うくらいじゃ、分かんないって。

某議場での答弁 Mr.X

  • 2018.04.02 Monday
  • 08:01

某議場で答弁が行われている。


某議員「Mr. X!! 3月のテーマに投稿しないのはどういうことですか!」

 

X「年度末で忙しくて・・・」

 

議「年度末に忙しいのはあなただけではありません! 国民が納得できる説明をしてください!」

 

X「刑事訴追の恐れがあるため答弁は差し控えたいと・・・」

 

議「それいえば世間が納得すると思っているんですか?」

 

X「『老いた赤鬼』について、受賞できたことを嬉しく思っています」

 

話をすり替えるんじゃない!とヤジが飛んだが、Mr.Xは無視して話し続けた。

 

X「テーマの鬼について考えていた時に、不意に『泣いた赤鬼』を思い出しました。初めて読んだのは小学校の道徳の授業でのことだったと思うのですが、大人になって改めてこの話を考えると思うところがあり。で、中島敦の『李陵』が好きなので、時間が経ってから再会する話にしようと考えました。しかし文学的な感じにする技量は私にはなく、おもしろ路線で行こうとは思ったのですが、青鬼が急に饒舌になったのには自分でも驚きました。『ブルーオーシャン』て(笑)自分で笑ってしまいましたよ」

 

議「自画自賛とか、そういう態度が国民の不信感につながるのではないでしょうか? 4月のテーマは何にするつもりなのか、また、来月はちゃんと投稿するつもりなのか、お答えください!」

 

X「来月への投稿、はい、前向きに検討したいと、そう考えております。デーマですか? がりはさんの『デアイ』を推します。『卒業』からの『デアイ』、いい流れではないでしょうか?」

 

3月は投稿していないのに何言ってんだよ!とヤジ。Mr.Xは気にせず話し続ける・

 

X「しかしPスポの記者、全く油断がなりませんな。まさか私が通っていた書店まで調べるとは・・・。軽くですが本当に汗をかきました。

 べらべら話す自転車に、『何勝手に喋ってんだよ』と速度切り替えをせずに坂道を駆け上がってやったら苦しそうでしたよ」

 

議場にどよめきが広がる。恫喝じゃないか?と議員たちが口々に話している。

 

議「Mr.X、今の言葉は聞き捨てなりません! あなたは自分が乗っている自転車の人格を侵害しているのではありませんか?」

 

途端に焦りだすMr.X。後ろに座る官僚と何か小声で話をしている。

 

X「えー、これ以上は刑事訴追の恐れがあるため答弁は差し控えたいと・・・」


ふざけるんじゃない!と怒号が議場に広がる。まだまだ混乱は続きそうだ。

善きクレーマー  Mr.X

  • 2018.03.21 Wednesday
  • 19:33

今週は大変だったな。仕事が忙しいのに花粉症は出るし、勝負将棋は指すことになるし。日曜の夜は栄養のあるもん食べるか。今日はトンカツだ! ちょくちょく行く定食屋で食べるか。

 

トンカツ定食 ¥1,500。これお願いします。

 

一切れ目。美味い。これですよ。トンカツですよ。

二切れ目。・・・なんか臭い。なんか脂身が臭い。気のせいかな。。。

三切れ目。・・・・・・脂身のところがやはりなんか臭う。ありゃ、これ困ったな。残り二切れ、食べる気にならんぞ。

 

どうしようかな。どうしようかな。クレーマーと思われたくないしな。黙って残そうかな。いやでもまだ満腹ちゃうしな。「今日はトンカツだ!」ていう気分このままにもできんしな。でも代金踏み倒そうとしている客に思われないかな。もちろん全額出しますよ? 二度と来るつもり無い店なら黙って出るんだけど、この店少し気に入っているから、また来たいんだけど、このままだったら二度とトンカツ頼めないよな。どうしようかな。『同じトンカツを食べて怒鳴り散らす真性クレーマーが今後出るかもしれない。それよりは自分が礼儀正しく指摘し、修正を図るべきではなかろうか? 良い店だからこそ、「善きクレーマー」が必要なのでは無いだろうか?』と理論武装。いやでも、どうしようかな。。。。。

 

すいませ〜ん。このトンカツ(中略)

すいません、ごめんなさい、いや大丈夫です。揚げ直し? 半分だけでいいですけど、、、あ、はい、一枚揚げるんですよね、そうですよね。分かりました。

 

・・・実家の母から電話だ。店の外に出るか。

 

(中略)

 

兄貴のあれが気に入らんとか知らんがな。「私は、あんたに結婚して欲しいとか、孫の顔見たいとか言わんけど」 母さん、電話の度に言ってますよ、それ。

 

あ、トンカツ揚がってる。え、作った人? 腐っている恐れはない? 良かったです、安心しました。なるほど。新鮮過ぎて逆に臭みが強いなんてことも? そうなんですか? 牛乳で臭みを? へえ。あ、はい、早速食べてみます。

 

やばいよ、電話の間に満腹中枢すっかり刺激されちゃってるよ。結構お腹いっぱいだよ。トンカツ一枚はちょっとしんどいよ。かといってこれ全部食べんわけには絶対にいかんよ。臭い? あ、ほぼ無いです。大丈夫です。ごちそうさまでした。はい、¥1,500。

 

なんなんだろうな、この罪悪感、未消化感、後悔の念。俺は何も間違ったことはしていないと思うんだけどな。

【テーマ】老いた赤鬼  Mr.X

  • 2018.02.27 Tuesday
  • 12:00

34年前、青鬼を殴った赤鬼のその後は順調だった。木が倒れて道を塞いだと聞けばその怪力を存分に発揮した。鬼我慢強くもあったので、村の揉め事は双方の言い分を聞き続けることで解決した。さすがに断ったが村長に推されたこともあった。歳を取ったものの、村人が世話をしに来てくれたので何不自由無く暮らすことができた

 

そんなある日、世話をしに来た、昔のことを知らない若い娘から、山二つ越えた先の磯で青鬼がいるという噂を聞いた。波が激しく漁師もめった近づかない崖の下に青鬼がいるのを見た人がいるという。

 

人目を避け、厳しい環境で一人生き続ける青鬼をそのままにして良いのか? いや、34年間吐き続けてきた嘘が露呈しないか?

 

赤鬼は、悩んだ末、まだ体が動く内に、と会うことに決めた。青鬼が大好きだった酒と食料をたくさん持って山を越え、息を切らしながら険しい崖を降りた。大きな岩のそば、日に焼け、真っ青黒になった青鬼が銛を研いでいるのが見えた。

 

「アオくん……!!」

『おお、アカくん! 久しぶりじゃないか!』

「え、ああ、久しぶり。こんなところでどうやって生活しているんだ? 漁師?」

『ああ、人間って、鬼が相手だと商売したがらないからさ、口が固い人間と組んで魚を売っている。有能な奴でね。おかげで酒を毎日酔いつぶれるくらい飲んでるよ、まあ俺も結構な歳だし、ハッハッハ』

「..てっきり苦労しているのかと..」

『何言ってるんだよ、最初は苦労したよ。良い漁場は人間が独占しているからさ、普通に鬼が魚を売っても商売にならないんだ。だから考えたんだ。俺、超人的に泳ぎうまいから、人間がいない海で魚を獲ろうってね。正しく、ブルーオーシャン戦略さ』

「え、はい..」

『この湾では、波に鍛えられた旨い魚が獲れる。しかし新鮮なまま崖の上まで持って行くのが難しい。しかし逆に考えた。ここは風が強いだけじゃなく、南向きで日当たりも良い。干物に最適だとね』

「そう、ですか」

『さすがにもう歳だし、今は泳ぎが達者な若い人間を雇っている。そのうち上がってくるだろう。今日は34年ぶりに飲もう』

 

その夜、赤鬼は語りたかった、34年間、どれだけ苦しんできたのかを、どれだけ罪悪感を持ち続けてきたのかを。けれども「うわー、うちの社長、鬼だわー」『鬼だよ』「うちの会社、ブラック過ぎるってー」『いやブルーだよ』という宴会のやりとりを見て、彼は鬼我慢することに決めた。

【テーマ】23時59分60秒 Mr.X

  • 2018.01.30 Tuesday
  • 22:30

「このままでは、我々人類は2018年2月を迎えることができません。2018年の1月31日の23時59分59秒の1秒後、世界中のコンピュータの時刻と日付が狂う可能性があるのです」

 

2018年の1月1日、某国の総理大臣が記者会見で大仰な身振りで語った。

 

ことの始まりは数十年前に遡る。コンピュータ黎明期の当時の開発者たちが書いたコードに不備があった。その後すぐにエラーは修正されたはずだった。しかし2018年1月31日23時59分60秒になった瞬間、0年1月1日0時0分0秒になるというエラーは修正されていなかった。

 

全世界のほとんど全てコンピュータのシステムはこれを基にして発展してきたものだったので、エラーは修正されないまま世界中に根を張り、広がり続けることになった。

 

「2月になると、銀行の預金残高が0円になる可能性があるらしいぞ」

そんな噂が流れた。銀行も政府も否定した。皆が本当にそうなると思っていたわけではない。しかし「そうは言っても、もしかしたら、万が一でもそうなったら」 少なくない数の人々が銀行に集まり、全預金を引き出そうとした。その結果、世界中で経済が混乱することになった。

 

「コンピュータの異常に乗じて、隣国が我が国に攻め入ってくるらしいぞ」

緊張関係にあるXX国とOO国は疑心暗鬼に陥った。そんな1月のある日、OO国でXX国人が暴行を受けるという事件があり、一部のXX国人はその報復を求めた。全てのOO国人とXX国人が戦争を望んでいたわけではない。しかし、世界の経済の混乱していた最中、和解が仲介されることもなく、その結果、両国は戦争状態となった。

 

世界は2018年1月31日を迎えた。

 

「2月1日になった瞬間、全ての人工衛星が落下するらしいぞ」

そんな噂を信じた人達は、自宅に核シェルターを作り、そこに引きこもっていた。

 

「2月1日になった瞬間、原子力発電所は爆発するらしいぞ」

そんな噂を信じた人達は、家を引き払って移住をしていた。

 

2018年2月1日0時0分0秒になった。世界は何も変わらなかった。一部の古い機種のスマートフォンで時間がおかしくなっただけだった。そしてそれもすぐに修正された。

 

無意味に血が流れ、無意味に経済は混乱していた。それはいつもと同じ情景を、1月31日に詰め込んで少しだけ規模を大きくしたものだった。世界は、いつもの通りだった。

ペンタゴン機密文書(2)前  Mr.X

  • 2018.01.21 Sunday
  • 00:01

〜この文書は、米国防総省が盗聴した宇宙人の会話をGoogle翻訳で日本語にした機密文書である〜

「エージェント、我々の会話盗聴記録の一部を不特定多数で共有する形でデータ保存した(*)地球人だが、我々が宇宙船に持ち帰って以降の様子はどうか?」

  *)この異星人には「インターネット」「ブログ」という概念がない。

『司令官、以前から保管しているイヌネコ幼体数匹と一緒にしているのですが所持していた携帯型情報端末でこれらの写真を継続して撮影しています。理由は不明です』

「やはり地球人類を理解するには時間が必要だな。ところで、この地球人から要求があったとのことだが?」

『はい。いくつか質問しようとしたところ、こちらの姿を見せて欲しいと要求されました』

「地球人類と交流するというのが現在の本部の意向だ。要求に従っても問題ない。私が直々に尋問しよう」

「私がこの宇宙船の船長である。いくつかの質問に答えていただきたい」

【私の方でも質問してもいいですか?】

「何か?」

【あなた方の姿を見るのは初めてなんですが、フィクションで見るのとかなり似ているんですね】

「我々が接する地球人類はあなたが初めてではない、とだけ言っておこう…。サイズはかなり異なるが、地球人類が言うところのグレイ型というのが近いだろう」

【左右相称動物なんですね】

「サユウソウショウ動物とは何か?」

【クラゲなどそうでないものもいるのですが、地球に生息する動物のほとんどには右と左があり、これを左右相称動物と呼んでいます。フィクションで見る宇宙人はみんな左右相称なんですが、本当にそうなんですね。
 系統的には、クラゲよりも私たちに近いのかもしれません。ちょっと調べてみたいので、DNAが抽出できるくらい体組織もらえないですか?】

「それは許可されていない。それにDNAが我々の遺伝情報物質かどうかも地球人類には不明なはずだ。そもそも我々には地球で生息した歴史はない」

【そうなんですか。もし地球の生命と全く異なる形で進化してきたのだとしたら、結果として同じような左右相称性を持ったということになります。こういうのを進化の収斂現象というのですが、とても興味深いですね。左右相称性というのは、宇宙レベルで普遍的な合理性を持っているということになりそうですし。
 よろしければ、あなた方の星にいるその他の生物についても色々教えていただけませんか?】

ペンタゴン機密文書(2)後  Mr.X

  • 2018.01.21 Sunday
  • 00:00

「…こちらの質問にも答えて欲しい」

【あ、はい】

「我々の会話記録が複数の地球人類間で共有され、その結果、あなたが一部で評価されたとのことだが」

【はい。6人の方に選んでいただきました】

「”懐柔”、”戒重”というテーマでもデータ共有がなされたが、何故、”怪獣”が評価されたと考えるか?」

【”怪獣”で他の人と被らなかったので、目立つことができたのが理由かなと考えています。トイプードルみたいな人間に愛でられるためだけの動物とか、前から変な生き物だと考えていて。読んでいただいた方にも身近なところにいる怪獣、というのが面白がっていただけたのではないかと思います】

テーマコンテストという分野ではあなたは評価されることもあるようだが、何が原因と考えるか?」

【普段の日記とテーマコンテストには、”商店街の店”と”祭りの出店”のような違いがあると考えています。プロレス道場や競馬予想屋、怪しげな雑貨店、子育て相談所、振り返る博物館に登山写真館などが並ぶ商店街で、「あのレストラン、いいぞ!」と覚えてもらうのは簡単ではありません。一方で、祭りで店を出す場合は「隣はフランクフルトで、向いはお好み焼きか。それなら自分は佐世保バーガーで目立ってやる!」みたいな戦略を考えやすいのではないかと。
 昨年12月も、「”怪獣”なら目立てる!」というようなことを意識的ではありませんが、考えていたように思います】

「来月はどのようなテーマが良いと考えるか」

【”オニ(鬼)”を推す方が2人もいましたし、これが良いと思います】

「”オニ(鬼)”ではどのように目立つつもりか?」

【えーと、それは極秘事項なんでここでは…】

〜以降、どのように機密文書を手に入れられたのか尋問がなされているが、ここでは割愛する〜

「質問に答えていただき、感謝する。地球にお送りする」

【あ、ここに来る時のあの機械、どういう原理なんですか?
上からライトが当たったと思ったらふんわり吸い込まれたんですが、重力を調節したからかとも思ったのですが、ゆっくり、というのがイマイチよくわかりません。落下じゃないし。物理学的にどうなっているのか、ハッタリスト氏が多分興味を持つと思うんで教えてあげたいんですが】

「地球まで、お送りする」

〜記録はここで途切れている〜

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