スーツ雑記 〜基礎系研究者の雑感〜 Mr.X

  • 2019.01.15 Tuesday
  • 23:24
およそ16年前、大学に合格して初めての授業に向かう日の朝、あくびをしながらジーパンを履き、ああこれからは私服で授業を受けるんだな、と思ったことを覚えている。大学生活も今ではずいぶん遠くなったけれども、やはり朝にあくびをしながらジーパンを履いている。スーツはまず着ることがない。
 
職場では仕事中も完全に私服である。少なくとも私が見て来た「基礎生物学」業界で普段からスーツを着ている人は1%もいない。学会で見かけたアロハシャツにサンダルのおじさんは、実はその道での世界的権威、みたいなことだって十分有り得る話だ。
 
そういう業界に属しているので、ネクタイをして暑そうにしているサラリーマンを夏に見ると「ああ自分は普通に就職なんてしなくてよかったな」と心から思える(内実、色々辛いこともあるけれどそれはまた別の話)。そんなこんなで30代半ばのおっさんの私だが、どうして社会人はスーツを着なくてはいけないのか、未だによく分かっていない。「スーツは信頼感を感じさせ、社会的な信用を与えるからだ」みたいなことを言われたこともある。しかし役所等で応対してくれる女性が私服なこともあるが(男性はどこでも大体スーツ。この性差も不思議)、私服の奴の言うことなど信用できん!など思ったこともない。
 
一方で、「応用」的な農学系や医薬系の人が参加する学会ではスーツの人も見かけるようになる。基礎系研究者よりも医薬、農学系研究者はビジネスパーソンと接する機会が多いから影響を受けているのか?などと個人的に考えている。(ミスターピンク、Mr.ヤマブキの話も聞いてみたい)
 
だとすると現在の格好が自由な状況も変化するのかもしれない。「役に立たない研究などする必要はない」という発言が普通にされる世の中である。好きな格好で大学にこもって研究のことだけを考える、では足りず、「私たちの研究はこういう形で社会に貢献してます!」と社会に向けてアピールすることが求められているからだ。
 
そう遠くない将来、全ての研究者が日常的にビジネスパーソンと接するようになり、次第にみんながスーツを着るようになる、みたいなことになるのだろうか。良い面もあるだろうとは思う。しかし、研究者には格好のことなど気にしないで自由に研究のことだけ考えさせた方がより多様な研究成果が生まれ、そしてそれが回り回って社会のためになるよなぁ、とも一人の研究者としては思うのだけれど。

【テーマ】続・月夜の下で(上) Mr.X

  • 2018.12.31 Monday
  • 15:14

私はMr.X。数年前、奈良公園で鹿に拉致され、トナカイの奴隷にされてしまった男だ。以前、トナカイから逃げ出そうとしたこともあるが、結局、狼に捕まり連れ戻された。その時のことは思い出したくもない。

 

長い冬が終わり雪が溶け始めた頃、ようやく私の全身の傷も癒えた。そんなとき部屋で寝ていると表からドサっと大きな音がして、慌てて見に行くことそこには1人の少年が倒れていた。私はすぐに理解した。

 

「君も連れてこられたのか。まだ若いのに」

 

その少年は、某国の裕福な家庭に育ったらしい。小さい頃から動物が好きで動物園に通っていたのだが、どうしてか、とあるヘラジカが気になり、何となく話しかけてしまい、その大きなツノに抱えられてここまで拉致されたという。

 

私は少年に心から同情し、トナカイたちに怒りを覚えたが、同時に久しぶりに人間と会話できることが嬉しく、ここに来るまではどう暮らしていたのか、ここではどう暮らしていくことになるのか、喉が枯れるまで話し続けた。もちろん最初は少年は混乱するばかりだったが、しばらくすると仕事も覚え、その年の冬には私の後ろに乗って世界を飛び回ることになった。

 

それから数ヶ月後、トナカイたちの世界旅行が終わって小屋に戻り、トナカイたちが好む草を紐で束ねながら少年は言った。

『Mr.X。世界には色んな子供がいるんですね』

「何の話?」とその草束を抱えながら私は言った。

『いえ、橇からは本当に貧しい人たちの暮らしが見えて』

「あの高速移動中に? すごいなあ」

『ああいう子達、何とかできないもんですかね』

「人の心配できるなんですごいね。俺は自分ことだけで手一杯だよ」

 

などと話していると、奥の小屋で寝そべっていたトナカイたちが全頭こっちに向かってきた。驚いて後ずさる私たちに、いや少年に向かってこう言った。

 

<私たちは、あなたを待っていたのだ>

【テーマ】続・月夜の下で(下) Mr.X

  • 2018.12.31 Monday
  • 15:08

え!と私たち声を揃える。トナカイは続けた。

 

<私たちは無駄にお前たちを連れ回していたわけじゃない。厳しい生活の中でも苦しんでいる赤の他人を心配できる、それが人間の魂というやつだ、と私たちが「あの方」と呼ぶ先代に教わった。私たちは「あの方」に感銘を受け、志を受け継ぐことに決めた。しかし、人間の魂を持つ人間は実に少ない。二代目を見つけるまでに、随分と時間がかかってしまった。しかし今日からはお前が私たちの主人として、世界中の子供のためになる仕事をして欲しい>

 

少年も最初は驚いたものの、トナカイたちの長い説得ののち、自分の仕事が誰かのためになるなら、と泣きながら承諾した。

 

私は慌てて自分の意見を言おうとしたが、気がつくと元いた奈良公園にいた。数年間行方不明だった理由を人々に説明したが、気が狂ったとしか思われず、信じる人はいなかった。私はすぐに某国に飛びだち、少年の家族を見つけた。会話の中で知った少年の情報を色々話すと、その家族だけは私のことを信じてくれた。

 

『しかし、Mr.X。どうすればあの子を見つけられるのでしょう? 雪深い森、というだけで見つけるのは難しいのでは?』

「大丈夫です。あの時、私はトナカイの餌の草を担いでいたので服が草の葉まみれでした。偶然ですが、それを持ち帰ることができたので保存しています。この葉からDNAを抽出して塩基配列情報を調べれば、その植物の種や属がおそらく明らかにできます。さらに、次世代シークエンサーを用いてゲノム全体を解読すれば大量の情報を得ることができ、そこからその植物がどこからきたものなのか、捜索範囲を大幅に狭めることが期待できます。私は小屋付近であれば地理を覚えているので、同行すればきっと見つかります!」

『何と心強い! 分かりました。解析に必要な経費や、救助チームの組織にかかる経費も私たちが用意します。しかし、Mr.X、どうしてあなたはあの子のためにそこまでされるのですか? トナカイや狼から再び危害を加えられるかもしれないのに』

「人間の魂がどういうものかは知りませんが、1人の人間に自己犠牲の精神を押し付けたまま自分はのうのうと暮らすとか、そういうのは許さないんですよ、私の魂がね、そんなんちゃうやろ、と。」

【テーマ】月夜の下で(上) Mr.X

  • 2018.12.01 Saturday
  • 08:23

ある日、研究室に試薬を届けに業者が「Mr.Xもバイオロギング、始めてみません?」と言いつつ、試供品のGPSロガーを置いていった。数日後、旅行先の奈良のホテルでリュックの底からこのGPSロガーが出てきたので、深く考えることなく公園の木のそばで寝ている鹿の角にこっそりつけた。
 
”バイオロギング(Bio-logging)”という研究手法がある。ペンギンなんか器具を取り付けてどんな深度で泳いでいるのかを明らかにしたり、渡り鳥につけてその移動速度を計測したりしてその生態を研究する。最近では、クジラに小さなカメラを取り付けて狩りの様子を録画する、といったものもあるから、GPSだけじゃああんまり評価されんかなぁとぼんやりそんなことを考えた。
 
数日後、アプリを起動させて鹿の位置を確認したとき、思わず声を上げた。
アプリはロガーが広島の宮島を指していたのだ。いくら何でも数日でこんなに移動できるわけがない。しかも、ログを見ると数分で奈良から広島にまっすぐ移動している。なんだ、不良品か、業者も変なもの持ってきたな、と当初は考えたが、その後しばらく宮島内での移動に変な様子はない。機械は正常なのか?いやしかし、と不思議に思っていると、その数日後、再び数分間で奈良公園まで移動していた。
 
居ても立っても居られなくなり、再び奈良へ向かった。あの鹿は前と同じ木の下で、同じように寝ていた。スマホで確認したが、アプリは正しくGPSロガーが目の前にあることを示している。

「なんなんだよ、お前は」と思わずつぶやきが漏れる。すると鹿はゆっくりと首をもたげて私を見た。
「なんだ、お前。気が付いているのか?」と鹿が言った。
「すまんが、気が付いた人間は、必ず連れて行く約束なんでね」という言葉が聞こえたかと思ったら、その大きな角で持ち上げられ、そのままロケットのように猛烈なスピードで飛び上がった。
 
訳も分からず、落とされまいと無我夢中で角にしがみついた。気が付くと、雪が降り積もった森に佇む一軒家の前に落とされていた。煙突からは煙がまっすぐ伸びている。かなり古い家だ。中から赤い服を着た老人が出てきた。
 
『あんたが私の後継きか』日本語じゃないのに、なぜか理解できた。
「あなたは…。」

 

 

【テーマ】月夜の下で(下)  Mr.X

  • 2018.12.01 Saturday
  • 08:22

 

『私もな、数年前にトナカイに誘拐されてここまで来たのだ。日本の鹿はトナカイの仲間で、人材を斡旋するよう頼まれていたのだろう』とその老人は言った。
「そんなバカな!」
『ここでの生活は厳しいぞ。夏の労働は辛い。一日中植物を刈り込んで、冬に備えたトナカイの保存食を大量に用意する。髭を剃る暇も、髪を切る余裕もない。冬は、世界を飛び回るあいつらのお供で凍えそうになる。・・・あんた、私が何歳に見えるかね? 髪が真っ白になってしまったが、こう見えて40歳なんだ』
「トナカイたちはどうして空を飛び回るんですか?」
『本当のところはわからんが、おそらくただの趣味だろう』
「馬鹿げてる..。どうしてここに居続けるんですか!? 逃げ出しましょうよ!」
『すぐに分かるさ。トナカイは森の狼どもを手下にしている。森から走って逃げ出そうとしても、狼に追われ、死なない程度に血まみれにさせられるだけさ。先代たちがどういう目にあったのか、受け継いできたこの服をみれば分かるだろう』
と両手を広げた。赤くまだらに染まったその服には無数の縫い跡があった。
 
それ以来私はトナカイに奉仕し続けている。トナカイが支配している鳥や狐に盗ませていたので、人間用の食料と酒は大量にあった。「寒空の下を飛び回る上で脂肪を蓄えることが必要だから」というのは後付けで、他にうさを晴らす方法も無く、暴飲暴食し続けた。先代たちも、きっとおなじだったろうな、と思う。
 
月日が流れ、全てを教えてくれた先代も「帰りたい」言いつつ息を引き取った。
私は心に決めた。毎年、トナカイたちが空を飛び回るおよそひと月前にソリを作り始めるのだが、一緒にこっそりスキーを作り、月夜の下、一目散で逃げ出したのだ。以来、狼たちに追われ続けている。暗くなるたび、遠吠えが聞こえる。「もうすぐだ、もうすぐだ」と狼たちが楽しそうに声を上げていることがわかる。狼たちは私の匂いを嗅ぎ、積もり続ける雪の中からスキーの跡を見つける。奴らは執拗だ。決して諦めることなく私を追い続ける。今日も日が落ちると遠吠えが聞こえた。一日中寝る間も惜しんで私は逃げ続けているというのに、その声は、日々大きくなり続けている

【テーマ】タイムマシーン Mr.X

  • 2018.10.29 Monday
  • 08:49
Mr.X「ドラえも〜〜〜〜ん」
 
ドラえもん『どうしたんだい、Mr.X。またハッガリーニにプロレス技かけられながら、「今日中に一本書けや!」とか言われたのかい?』
 
X「ちがうよ、ドラえもん。Mr.ヤマブキのテーマ作を読んで書く気が失せちゃったんだよ。コンテストであんなのに勝てる気がしないよ〜」
 
ド『しょうがないな君は。ベストを尽くしてMr.ヤマブキよりも面白い作品を書けばいいだけの話じゃないか』
 
X「正論がそのまま通る時代じゃないんだよ! 何とかして〜〜〜」
 
ド『仕方ないなあ。(テッテレ〜)”アンダードッグ効果”!!』
 
X「何それ〜?」
 
ド『これまでの何回か投票でもあったじゃないか、「こちらに投票します、ooさんの作品が勝ちそうですが」みたいなのが。今回Mr.ヤマブキが強過ぎるというなら、趣の違う作品で判官贔屓を期待して、みんながこちらに投票すれば優勝できるんだよ』
 
X「ドラえもん、そとみは青色なのに四次元ポケットの中は真っ黒なんだね〜。でもそれ、口に出して言ったらもう無理なんじゃない?」
 
ド『そうだね。この時点で君には無理だね』
 
X「わ〜〜〜ん」
 
ド『困ったなあ。そうだ!! (テッテレ〜)”メタフィクション”!!』
 
X「今度は何?」
 
ド『他の人の作品が凄すぎて書く気が失せた、というところからスタートすればいいんだよ』
 
X「どういうこと?」
 
ド『作中に作者が登場して「次の話、どうしよう?」みたいな会話から話をスタートさせるんだ。そういう感じの、漫画や小説とかで読んだことがあるよ』
 
X「ドラえもん、今のこれがそうなんだね!! でもこれ、一度使ったらもうできない技なんじゃない?」
 
ド『そうだね、おまけに内容によってはダダ滑りする恐れがあるよ』
 
X「そんなのもう無理じゃないか〜。おまけにこの作品が創作物なのか、その形を借りただけで心情を吐露しているエッセイなのか、自分の中でもまだ整理がつかないよ〜」
 
ド『そもそもこれでMr.ヤマブキに勝てるわけでもしないしね』
 
X「もういい! テーマコンテストは諦めた! タイムマシーンで過去に戻って、Mr.ヤマブキっぽい作品を書いてそっちで注目を集める!」
 
ド『君の作風じゃMr.ヤマブキのパスティーシュは無理だよ。というか、最後になってドラえもんらしいお願いするなよな』

【三題噺】不条理のヤマブキ色のハンカチ Mr.X

  • 2018.10.18 Thursday
  • 12:53
初めて訪れたのは旅行だったのだが、文化、風習、食事その全てが気に入り、私は母国を捨ててこの国の人間として生きて行くことに決めた。以来10年、始めた小さな店も軌道に乗り始め、ようやく生活も安定してきた。
 
当初はただの店員であった彼女は、すぐに公私ともに大切なパートナーとなった。私は心に決めた。高級レストランで彼女の好きな料理を振る舞い、花束を贈り、そして指輪を見せつつ「これからの人生を共に歩んでください」と言った。
「え? 私たちすでに一緒に暮らしているじゃない」と指輪を見たときの笑顔を口元に残しつつ、不思議そうな顔をして彼女は言った。
「えっと、公に認められる形で人生をともに送りたいんだ」
「一緒に暮らすことに、どうして『公に認められる』が必要なの?」
 
会話が全然噛み合わない。役所へ行ってみたが婚姻届のような書類そのものが無い。この国には「結婚」が存在しないのだ。どうしても彼女との生活を公式なものにしたかった私は、この国の人たちを巻き込み、「結婚」という世界では一般的なシステムを導入するための社会運動を始めた。
 
すると途端に「外国人が私たちの国の伝統を破壊する」とテレビで評論家達が私を名指しで非難し始めた。インターネットは私への非難の言葉で溢れ、店の窓が全て割られた。この国の主流であった保守政党は、私を国外の風習を持ち込んで国を変革しようとする「革命分子」として私を糾弾した。最終的に「国の秩序を乱した」という判決が裁判所から下り、苦労して築き上げてきた財産を全て没収された上で強制収容所に入れられてしまった。
 
看守以外の人間とは一切連絡が取れない社会とは隔絶した環境での強制労働を8年続け、ようやく釈放された。しかし、収容所の門を出たからといって私の絶望が無くなるわけではない。全てを奪われたのだ。これからどうやって生きていけばよいのか?
 
とぼとぼ歩いてかつて私の店があったところに向かった。そこには変わらず小さな店があった。彼女が出てきた。
「あなたがいない間、私ずっと頑張って働いてきたのよ」
 聞けば、私がいない間、彼女は政府から店を奪い返し、一人で続けてきたのだと言う。
「さあ私たちの家に帰りましょう」
「え? 私たちの、家?」
「もちろん。だって私たち、ケッコンしたんでしょ?」
 
私は、本当に大切なものは奪われなかったことを知った。

【テーマ】本当は怖い連絡網 Mr.X

  • 2018.10.01 Monday
  • 00:47
大学院に入った頃、私は1人研究室にこもり、実験を続けていた。夜は実験が捗る。とはいえ夜も遅くなり、だいぶ疲れてしまった。そろそろ帰ろうかと帰り支度を始めていると、携帯電話が鳴り出した。高校卒業以来顔を合わせていない友人Wくんだった。高校一年の時に同じクラスで「そこそこ親しい」くらいだった。電話番号を交換したのも、卒業式特有の変なテンションからだったと思う。何か、緊張してきた。
 
『…もしもし、Xくん? 久しぶりです。Wです』
 
緊張している声が聞こえてきた。なんだ、向こうも同じか。
 
「ごぶさたです。Wくん、元気? どうした?」と緊張していないふり。
『え、ああ、元気です。今、電話大丈夫?』と向こうの緊張はほぐれたようだ。
 
そこからは会話は順調に進んだ。大学行ってからあいつに会った?、あいつ今何している?、あいつ結婚したって、しかもあの女の子と、まじで?、とまあ一通り会話を済ませてから、Wくんは切り出してきた。
 
『いや実は学年全体で同窓会やろうという話が持ち上がっていて。それでできるだけ人集めたいんやけど、案外みんなお互いの連絡先がわかっていなくて』
「まあ、そのころはみんなが携帯電話持っているわけじゃなかったしね」
『そうそう。...で、連絡ついた人に、誰か別の人と連絡つかないか、っていうのも聞いているところで』
「なるほど! 新しい連絡網の形やね!・・わかった、誰かいないか、携帯電話、調べてみるわ」
『ありがとう!…あと、もう一つお願いというか、ちょっと考えて欲しい話があるんやけど』
「何?」
『実はこの同窓会を企画した最初の5人が、誰が一番人を集められるか賭けをしよう、と言っていて』
「へえ?」
『それで、1人に声をかけると1,000円を徴収できて、さらにその人がさらに誰かに声をかけて1,000円を徴収できれば、声をかけられた”親”にお金を500円を払うという仕組みで』
「え? え? それってつまり俺がWくんに1,000円払うってこと? 損するだけやん」
『いや、君も誰かに声をかければいいんだよ。さらにその人が誰かに声をかけると黙っていてもお金が入るというシステムなんだ!』
 
何がなんなのかわからなくなってきた。その後もWくんは熱心に話をしてきたが「ごめん、今電車来たから。また連絡するわ!」と無理やり電話を切った。冗談なのか、本気なのか、今でもわからないし、怖くて誰にも聞けやしない。

Chicken chicken chicken Mr.X

  • 2018.09.10 Monday
  • 23:57

YouTubeにChicken chicken chicken」という動画がある。極めてふざけている。学会発表の風景を映した動画なのだが、まあふざけている。

 

研究者の仕事は、研究をする事だ。ただ、自分の家で一人で実験して自分が満足できる結果を得られたからといって何も評価されない。その研究内容を論文という形で公開することが求められている。

 

医学・生物学系の研究者の憧れは「Nature」「Science」「Cell」(これらをまとめてCNSと称せられる)。少年漫画雑誌でいうところの「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」みたいな感じだろうか? 「おれ、ジャンプに漫画載せたことあるよ」と言えれば売れた売れなかった関係なしに漫画家としてすごいんじゃないかと感じさせるように、「おれ、Natureに論文載せたことあるよ」と言えれば、研究者として大したものだと思われる。無論、全ての論文が素晴らしいわけでないことは、2014年にみんな学んだことだけれど。

 

CNSほど有名ではなくとも優れた雑誌はたくさんある。研究者は何はともあれ「自分は優れた研究者である」というためにそういう雑誌に投稿を試みている。というか、論文を書かない研究者は死んでいる、と見なされるくらいだ。「その研究、論文として雑誌に載らないの? じゃあやる意味なかったね」と言われても不思議ではないのだ。

 

そうなるとあまり優秀でない研究者たちは困ってしまう。「私は優れた研究者だ。是非あなたの大学の研究者として雇ってくれ」と言いたいのに、論文がなければ「あなた研究者じゃないじゃん」と言われてしまうわけだ。

 

そういう心の隙間を埋める産業が現れた。最近も一部で報道されたが「ハゲタカジャーナル」という、要するにお金さえ積めば雑誌に載ったことになるよ?という悪魔の囁き的商売である。 

 

最初に紹介した動画は、その「ハゲタカジャーナル」がどれくらいふざけたものであるかを示したふざけたものである。論文として「chicken」以外の単語しか使っていない論文風のもの(PDF)を金を出して送ってみたら、なんと掲載されてしまったというのだ!

 

こんなふざけたことがあって良いはずがない。しかし、研究者という商売を評価する基準が、論文というものだけである以上、こういう闇が生まれて来るのもある意味学術的に興味深い。

【テーマ】カラオケ@地球系外惑星 Mr.X

  • 2018.08.30 Thursday
  • 21:15
宇宙エレベーターが一般化したのは今からおよそ200年前の話だ。宇宙へと向かうコストが下がり、多くの探査船が宇宙へと漕ぎ出した。

 

多くの人間が旅立った。すでに人間よりもはるかに賢い頭脳を持ったヒューマノイドが開発され、脳にデータを流して疑似体験する技術もすでに確立されていた。だから、人間が行くなんて無駄にコストとリスクがかかるだけなのに。だけど「自分の目で直接見たい!」などと言い、これまでに地球を飛び出した人数は軽く億を超えるらしい。

 

田植えを含む農業を、地球から1.3光年の距離があるこの惑星「ディープリバー」で行い、近隣の惑星に輸出するという私の祖先の計画は、当初、地球各地で嘲笑されていたという。有機物循環システムから食品を再生産することができるのに、どうしてわざわざ宇宙で高コストな農業を? しかし、そもそも合理的な理由がないのに宇宙へ向かうのが人間である。「やはり自然のものは味が違うから」「再生産ミールはやっぱりなんか臭う」などと非科学的なことを言って多くの宇宙船がこの惑星へ降りてくるようになり、祖先たちは巨万の富を築き上げ、この惑星で事実上の新しい「国」を作った。

 

ヒエラルキーが自然と出来上がり、創立者の子孫であった私はその上位にあり、生活に不便を覚えたことがない。だから地球へ行ったこともないし、特に今は行きたいとも思えない。20年前、地球で火山の噴火や地震が立て続けに起きる時期があった。お互いが強く依存しあう社会システムを築き上げられていたので、複数の国にまたがって生じた大規模な食糧危機と経済や社会の混乱が地球中が波及し、今は混乱の極みにあるという。

 

カラオケで昔々の地球の歌を歌った。数百年前のある国の女性シンガーの歌だ。頼めばこの女性シンガーの歌によく似たものを人工知能が作ってくれる。だけど、非科学的だと初恋の相手には笑われるけれども、それはやはり亡霊が作ったようなもので心が位置する脳には響かないはずだ、と私は思う。

 

ルーツである地球だが、混乱が収まってからいつか行こうと思っている。地球には、とんでもなく青い"海"というものが広がっているという。いつかこの目で見てみたい。「そういうところが人間っぽいよね」と初恋相手のヒューマノイドにまた笑われるとしても。

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