グリーンベルトの聖者  がりは

  • 2018.06.10 Sunday
  • 22:18

梅雨の合間の晴れ間、蒸しますね。
スーツを着てとぼとぼ外を歩いていると、シュウマイや豚まんを蒸すコシキの上にいるような気持になることがあります。
下から立ち上る水蒸気が見える気も。
ふらふらゆらゆらと歩いていると、ビル街の谷間、四車線道路の真ん中のグリーンベルトに一本の巨木が生えているのが見えました。
ちょうどビルとビルの間に太陽が来ていて、道路は余すところなく強烈な日光にさらされていたのですが、その巨木の威容たるや。
地にどっしりと根を張って、天に向かって開いていてあふれ出る安定感と開放感。
朦朧とした頭で立ち止まり、しばらくその木を眺めていたら、どうも木ではない。
ビルの4階くらいの高さがあるように見えていましたが、どうも3mくらいでした。
右に気を付けながら道路を渡り、近くに寄ってみると人でした。
半裸の人がヨガをしていました。
筋骨隆々の人が腰のあたりにこげ茶のぼろ布を巻いただけの格好で足を広く開き、両肩の高さに伸ばした両手、もじゃもじゃの髪の毛は全方位的に逆立っていました。
不知火のような現象で大きく見えたのかもしれません。
もしくは「気」というものがあって、私にそれが見えたのならば、その人の「気」は本人の物理的な大きさよりも余程大きかったのだと思います。
人が立っている後ろ姿をみて、これほど大きい、神々しいとおもったのは初めてでした。
汗が引きました。

背筋が自然とピンと伸び、しばらく私もじっと眺めていました。
その人の背中は大木のそれのようにぼこぼこと筋肉が浮き出ており、谷になったところにはさやさやと汗が流れ落ち、腰のぼろ布はこげ茶に変色し、その先からはぼたぼたと垂れた汗は足元に水たまりを作っています。
よく見ると上に向けた手のひらの先からも汗がしたたり落ちています。
彼が周りの熱を一身に吸い取っているかのごとく、私はさわやかな心持ちになっていきます。

眺めているうちに一つの仮説が頭に浮かびました。
しかしこの方の尊い様を見て、ただの仮説をぶつけられるわけもありません。
身もだえするようなじりじりした時間。
時間が経つに連れてその仮説は事実に近いのではないかという思いが高まり、臨界に達した時、ついにわたしはその行者に声をかけてしまいました。

「アリさん!こんなとこで何してるんですか?」

返事はありません。
正面に回ってみると、やはりアリ・ホッグァーです。
目を閉じて少し顎を上げ、太陽にまっすぐ向かっています。
もちろん顎髭の先からはぼたぼたと汗が滴っています。
先ほどの神々しい印象は対応を背景にしたせいだったのだと下方修正しながら、なおも問いました。

「アリさん!こんなとこで何してるんですか?」

右目だけゆっくりと見開いたアリさんは私を静かに見据えました。

「ハハー。どうした?」
「アリさんこそ何してるんですか。」
「戦っているんだよ。見てわからないのか。」
「正直、すごい神々しいとは思いましたが戦っているとは思いませんでした。何と戦っているんですか。太陽ですか?」
「何を言ってるんだ。太陽となんか戦えると思っているのか。大義も勝算もない戦争をするのを永久に放棄したのではなかったのかね、この国は。最近風向きがおかしいが。あの最高で最低の帝国に本気で喧嘩を売ったのは評価している。その後一切手を引いたのも素晴らしかった。ジョンブルとは違ったマチュアなやり口だ。でも最近は」
「じゃあ何と戦ってたんですか。」
「蒸し蒸しした湿気に決まっているだろう!ぐっ」

アリさんは急に上から重いものが降ってきたかのように膝を曲げ、何かを背中に背負ったような折れ方をしました。
かろうじて倒れないように立っているように見えます。
しかし何が彼をそこまで苦しめているのかわかりません。

「俺がこの国に何か役にたてるとしたらこれくらいだから。ちょっと緩めるよ。」

先ほどまでの蒸し暑さが突然戻ってきました。

アリさんは除湿器のような役割を果たすことができる魔法を使えるそうで、大気中の湿気をキャッチして液体の水にして地面に流していたそうです。
本当かどうかわかりませんが。
流す先が土であった方が良いということで、グリーンベルトを選んで時々やっているそうです。
腰布だけでやっているのは、「感じが出るから。」だそうで、本質とは関係ないそうです。
どこかで見かけても声はかけないでほしいとのこと。

本当は何をやっていたんですか、アリさん。

競馬講座(7)〜これであなたもたりきの言うことがわかるように〜 がりは

  • 2018.05.20 Sunday
  • 11:59

テイエムオペラオーが亡くなりましたので今回は追悼の意味を込めて特別編です。

 

競走馬はレースの成績によって5着までが賞金を得るのですが(今日行われるオークスでは1着が1億4千万円です。)、その賞金を日本競馬史上最も稼いだのがテイエムオペラオーです。(2017年11月まで。12月にキタサンブラックに抜かれました。)

G気鬘杵⊂,靴燭蝓覆海隆屬曚箸鵑稗加紊魯瓮ぅ轡腑Ε疋肇Α法⊇転泙鬘枯⊂,靴燭蠅筏録を数々打ち立てた名馬です。

26戦して6着以下になったことがありません。

つまり出走した全てのレースで賞金を稼いで帰ってきた馬主孝行な馬です。

ちなみに彼はセリ市で一人からしか声がかからず、お台価格の1千万円で買われています。

180倍に増えたことになりますね。

 

テイエムオペラオーという馬は素晴らしい馬だったのですが、今一つ華がありませんでした。

見た目がきりっとしてないです。

馬名がありきたりです。

ディープインパクト。

なんだかカッコよいですし、量産型の感じがありません。

オルフェーヴル。

いいですね、カッコいい。

テイエムオペラオー。

いやいや。

テイエム=TM=オーナーが竹園正継さんだからTM、オペラ=テイエムオペラオーの父がオペラハウスだったから、オー=その時竹園さんに牡馬には王になってほしいという意味を込めてオーを付けるブームがきていた、ということで、テイエム○○オーが結構いたんです。

竹園さんは有名馬主でたくさんの馬をお持ちだったので。

(この量産型馬名の有名馬としてはナリタブライアンがいます。)

竹園さんはテイエムオペラオーを一目見た時に光り輝いて見えた、なんておっしゃっていますがそういう扱いは少なくとも馬名を見る限りしていていないと思います。

また預けた先も竹園さんの幼馴染である岩元調教師のところであり、たとえば将来の海外遠征を見据えて藤沢調教師・森調教師のところへ、というような配慮も見られません。

岩元調教師は厩舎に所属していた若手、和田騎手に全レースで手綱を取らせました。

現在では考えられませんが、ミレニアム前後の日本競馬会では許されていました。

勝てるレースを随分落としたのではないかという批判もあり、竹園さんも菊花賞で負けた後に騎手の交代を命じるのですが、岩元さんが転厩(他の厩舎に馬を預ける)も辞さずの構えで強硬に抵抗したことで、和田とのコンビは続きました。

この辺のエピソード一つとってもあか抜けないところがオペラオーのすごい所ですが、さらにイケていないのが産駒(テイエムオペラオーのこども)がちっともいい成績を残さなかったことです。

自身はもっとも稼いだ馬でしたが、種牡馬としてはほとんど稼げませんでした。

多分競走馬としての彼の資質は遺伝するようなものではなかったのでしょう。

 

生まれも育ちも良く、物凄い名馬で、一流厩舎のスタッフに囲まれて一流のジョッキーを乗せてパリッと成績を出し、子供もみんなキリッと走っているディープインパクトのような馬も良いですが、テイエムオペラオーのような存在がいるとほっとします。

目的的でありすぎる我々に、そうでない在り方を。

 

謹んでご冥福をお祈りします。

メイショウドトウを応援してましたけどね。

 

MVPがりはの定例会見  がりは

  • 2018.04.16 Monday
  • 08:47

この度、MVPを無事に連覇したがりはです。
(万雷の拍手)
どうもどうも。
もう大丈夫ですよ、ご着席ください。
気楽にやりましょう。

 

感想から?
三月はどうも調子がでなくて大変でした。
そんな中でもなんとかやっていくのがベテランの調整力というか、ここが痛い、あそこが痛いなんて言ってられないわけですから。
チーム全体のバランスを見ながら今自分ができる貢献に集中するということの連続でやってきています。
今回もダブルボランチを組んでいるインディゴと同時受賞ということで大変うれしいですし、若手のね、アールグレイも育ってきて、あと一歩で三冠を取るところまで来たという非常にポジティブな状況だったなと思います。
本数はそこまで伸びませんでしたし、何度か我々ダブルボランチが身を投げ出して防がなければならないピンチもありましたが、プレイヤーの数が増えてきているのは非常に良いことだと思っています。
一つのポジションを二人三人で争うようになるとよりレベルが上がります。
彼らが二本、三本と書いてくれることでより強いチームになるわけですから。

 

え?受賞の感想?
すみません、三月の感想じゃなかったんですね。
受賞できて嬉しいです。
一言はっきりさせておきたいのは、ドローはチャンピオンの防衛ということです。
つまり、今回同時受賞なのか、よく皆さんには考えてほしいということです。
今月も来月も多分ドローまではあると思います。
でも最後に立っているのはチャンピオンである私であると確信しています。
投票率が上がれば上がるほど、私は強くなるでしょう。
ですから、みんなでいいものをたくさん書いて、多くの人に投票してもらえるようにしたいと考えてます。

 

はい、ここからは質問受けますよ。

三月で悔しかったことですか。
特にありません。
て、そんなわけないでしょう。
監督の卒業、あれでテーマも最優秀もいけてたでしょう。
それがどっちも獲れなかったのはショック。
素材が良かったのに捌いた私の腕が悪かった。
監督にはとても悪いことをしました。

 

書きあがりまでのプロセス?
おそらくですがうちの作家陣では最短最速だと思います。
作品によるけれど相談室は30分以内、だって目の前に相談者がいたらうんうん考えられないよね。
他のはまちまち。
お題を与えられて書いたり、カウンターを取らなければならない、という形で書くものは少し時間がかかる。
3日にわけて20分ずつくらいが平均だと思います。
大抵電車の中で書いています。
自分の中から素材を見つけて書いているものはすっと書けますね。
そろそろ時間をかけて構想を練るようなことにもチャレンジしてみたいと思っています。
ただ、今言ってたのは書こうと思ってからの時間で、素材としてはいつも頭で転がしているので、結構時間がかかっているものもありますね。
素材のインプットには時間がかかっていると思います。

 

アールグレイに一言?
素晴らしかったよ!!
たださ、今回のは良かったけど、真価が問われるのはこれからなので頑張ってください。
んー、違うな。
しぇりいいい!!
これかな。

 

負傷しているヤマブキに?
君が素直に私に投票してくれれば、気持ちよく連覇していたのだがね。
まあ、あの白票に君のプライドがにじみ出ていて印象深かったよ。
おっと、トランキーロだよ、今日は荒っぽいことはなしだ。
その傷を癒してさ、万全になってからこのチャンピオンに向かっておいでよ。

 

最後に読者の皆様に。
雑兵日記PREMIRERはこれからもっともっともっともっと色んな作品をホテルのビュッフェみたいに高いレベルでお届けしたいと思ってます。
その中で私は一枚一枚ローストビーフを切る職人、もしくはオムレツをふわふわに仕上げる職人として誠実に仕事をしていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

続・喫茶店にて  がりは

  • 2018.04.14 Saturday
  • 22:43

「ハハ―!!どうした!!」
―びっくりした。後から脅かしてきてしかも一言目に「どうした!!」て言われても・・・。
「私だったから良かったが、アサシンだったらお前はもう死んでいた!」
―お前はもう死んでいる、て言いたかったんじゃないんですか?そういうのはディテールが大事なんですよ。
「何を言っているんだ。ハサン・イ・サッバーの名言を借りたが、日本語で言うところの過去形だぞ。」
―そうでしたか。私の勘違いでした。すみません。
「君はそうやって間違いばかり犯すな。人の迷惑にならないように生きろよ。道は端っこを歩け。エスカレーターは使うな。恩は遠くから返せ」
―段々湯呑に書いてある親父の言葉みたいになってますよ。
「ユノミ?ドゥーユ―ノーミ―?」
―アリさんでしょ。
「そうだよ!わかってないのかと思った。今日はどうした?」
―どうしたも何も私はいきつけのコーヒー屋さんで心静かに季節の移ろいを楽しんでいるだけです。アリさんこそどうしたんですか。
「私はお花見だ。」
―え?花咲いてないじゃないですか。
「貧しき人よ。君の心には花が咲かないのか。今は緑が茂り始めた桜の木を眺めて、二週間前には咲き誇っていたソメイヨシノの淡い花弁を想起できないのか。君が未練がましくテーブルに残しているだいぶ前に飲み干したコーヒーカップは、飲んだ後もその味を想起しやすいトリガーとして置いてあるのではなく、もしかしてできるだけ安価にこの場所に居座りたいというセコい作戦なのか。これ、下げちゃって!それから注文!」
―なにを!
「もう一杯頼んだらいいじゃないか。ここは君のおごりだ!」
―ドヤ顔でいうことですか!
「エスプレッソをトリプレで。ダブルだ。」
―何を言ってるかわかりにくいじゃないですか、エスプレッソのトリプルを二つください。え?トリプルはない?
「トリプレがなければ今作ればいいじゃないか。それがイノベーションだろう。第四次産業革命の真っただ中で人間が果たすべき役割は」
―適当に持ってきて。ここは僕がうまくやっとくから。びっくりしてたじゃないですか。すごい剣幕で言うから。あなた自分で思っているよりもすごく怖い人ですよ。
「うまくやったな!君がうまく私をバッドガイに仕立て上げてくれたおかげで、きっとトリプレが出てくるぞ。私は満足だし、この店も新しいメニューができて満足だし、この店発信で広まればドッピオで物足りないと思っていた世の大多数の人々も満足するだろう。大きなパレート改善だ。」
―恫喝して何かをやらせるってもうそれはパワハラじゃないですか!
「こんな異国の地でひとりぼっちのみじめで矮小なるパワーのない人間によるパワハラとはいかなるものか、わたしには想像もつきません。」
―ほぼプロレスラーみたいな体格してて何をいってるんですか。だいたいね、エスプレッソをそんなにたくさん飲めないですよ。とか言ってたら来るし。
「ありがとう。できるじゃないか、トリプレ。素晴らしいよ。」
―ありがとね。無理いっちゃってごめんね。あれ?アリさん、何してるんですか。
「ミルク入れてる。」
―いやいやいやいや。エスプレッソにミルク入れたらカフェオレでしょそれ。何してるんですか。
「ミルク入れてる。」
―わかってますよ。無理強いしてトリプレッソ作らせて、挙句にカフェオレにしてるじゃないですか。カフェオレ頼んだらよかったでしょ!
「カフェオレは世の中にあるでしょ!トリプレはこの店になかったでしょ!私が飲みたかったのはこの店にないメニューだよ!」
―うわー、面倒くさい。この人面倒くさい人だよー。
「ところで君が先ほどまで続けていた飲み終わったカップを下げさせないでこの居心地のいいカフェに居座り続ける作戦と私のトリプレ、どちらが店にダメージを与えると思う?考えるまでもない。君の方だ。先ほど君はキャプテンアメリカのような顔をして『ここは僕がうまくやっておくから!』なんて言っていたが、たちの悪いジョークだったようだな。トリプレが冷めるぞ。」

アリ・ホッグァーはミルクを大量に注入することで程よく冷めたトリプレをごくごくごくと飲み干し、私の肩をパンと叩いて出て行った。
 

【テーマ】監督の卒業  がりは

  • 2018.03.31 Saturday
  • 23:09

「ごめんなあ、おまえら。監督はもう、おまえたちとサッカーできなくなっちゃった。」

今年七十三回目の春を迎えた男の片目は真っ白になって動かず、人工透析を受けるようになって一年経った体はすっかり縮んでいた。

普段は一瞬たりとも静かにしていられない六人の小学生と五人の大人は、お互いがごくりと唾を呑む音が聞こえるほど、静かに監督の言葉を聞いていた。

 

それはキッカーズの解散の日。

体調を崩しグラウンドに来ることができないキッカーズの代表兼監督のご自宅へ、OBOBコーチを呼んで盛大に行った最後の練習の後、現コーチ三名、OB三名、選手六名で最後の挨拶に伺った。

かつては浦和FCを率い、全国制覇をするなど浦和の少年サッカー界を牽引する存在だった監督は15年ほど前にキッカーズを引き受けた。

キッカーズは「サッカーが一番好きなわけではない子」がサッカーを楽しめるチームだった。

練習は日曜日の早朝だけ。

サッカーが大好きな子は土日練習ができる他のチームに行く。

浦和には強いチームがたくさんあるから。

早朝だけなら他の習い事にもいけるから、という配慮だと聞いた。

 

私の息子は去年入団し、二年間お世話になった。

初めの一年はサッカーの後に将棋の教室に行っていた、まさに「サッカーが一番好きなわけではない子」だった彼が、自己紹介カードの得意なことの欄にサッカーと書くまでになった。

息子が連れてきた友達が最後の入団者であり、私が最後のコーチとなった。

我々が加わった時にはもう監督は体調不良でグラウンドには姿を現さなかった。

運営は息子さん娘さんがキッカーズにいた頃からコーチに就いていたお二人がボランティアでやっており、そこに誘われる形で私も加わった。

チームは去年が9名、今年が6名。

全学年合わせてその人数なので大会出場など望むべくもない。

一般的なサッカーチームとは事情が大きく違った。

休憩になると喜んでボールを放り出し水場に走る姿が見られたり、日本代表の試合も観ていなかったり、「なんでサッカーやらなきゃいけないんですか。」とプリミティブな疑問をぶつけられたりと普通のチームでは想像もできないような状況に何度もなったけれども、卒団式の時に一人ひとりの胸の内を聞いたところ、皆少しずつ違った角度でサッカーを好きになったみたいで安心した。

 

監督は本当にたまにグラウンドに来ると、びっくりするくらい大きな声で「シュートはしっかり振りぬけ!」「パスを手加減するんじゃない!!」と怒鳴った。

保護者とコーチが集められた運営会議では、監督の体調の悪化と後継者がいないことを理由に今年度いっぱいでチームを畳みましょうと提案するコーチを叱りつけ、

「今所属している子供たちが卒業するまでは存続させるんだ。子供たちがかわいそうじゃないか!彼らからサッカーを奪ってはいけない!私は死んでもキッカーズを守る。死ぬ場所はグラウンドと決めているんだ!!」

と衝撃の発言をした。

想いとは裏腹に後継者は見つからず、先輩コーチお二人もボランティアで続けられる範囲をはるかに超えて尽くされてきたので、今年でチームを閉じることになった。

 

私もコーチをしていて多くの気づきがあったが、エリートをさらにストレッチすることに心血を注いできた監督もキッカーズを引き受けて考え方が大きく変わったらしい。

五十歳を超えて新しい価値観を築いたのはさぞかし楽しい経験だったでしょう、といつか聞いてみたいと思っていたが、それは叶わなそうだ。

監督は補聴器をしていても耳が遠く、コミュニケーションが段々難しくなってきている。

 

一緒に挨拶に伺ったOBのうち二人は今二十歳でとてもサッカーが上手い。

現役のプレイヤーだ。

監督が彼らの在籍していた頃の思い出話をしているうちに、記憶が混線して全く知らない世代の話になったり、話が突然終わったりするさまを彼らは必死に受け止めていた。

彼らは小学校六年間みっちり監督の指導を受けた世代で、その時の話をたくさん聞かせてくれた。

 

「おまえたち、サッカーは続けるんだよ。」

監督はかすれた声で言った。

「監督はもう、サッカーを卒業しなきゃいけなくなったけど、そうなるまで続けていいんだから。自分で卒業するんじゃないよ。」

 

MVP がりは

  • 2018.03.22 Thursday
  • 23:47

「みなさんにお聞きしたい。2018年2月のMVPはだーれでーすかー!??」


が!り!は!が!り!は!が!り!は!


「圧倒的な量を書いたたりき、深い知識と日常を鋭く切り取る視線を持つインディゴ、やたらとテーマコンテストに強いエックスを抑えてMVPになったのはだーれでーすかー!??」


が!り!は!が!り!は!が!り!は!


「スペイン語で友達はなんと言いますか?」


パ!レ!ハ!パ!レ!ハ!パ!レ!ハ!


「そうだよなー。俺のパレハがベルトを獲ったんだよ。せっかくだから新チャンピオン、いや真のチャンピオンから一言いただこうか。」


が!り!は!が!り!は!が!り!は!


「やりづらいよ。」


会場に静かな笑い。


「あるべきものがあるべき場所に帰ってきたぞ!!四ヶ月か。長かったな。プリミエールのリングは毎月毎月景色が変わるよ。最高峰のリングだから当たり前。立ってるだけでも大したもんだよ。立ち続けることができるだけでもすごいことだよ。でーもーさー!!」


がりはがにらみまわす。


「やっぱり一番獲らなきゃ駄目でしょ。俺はもう決めた。これ、しばらく俺のだから。飽きるまで俺が持つから。でさー!お前もお前もお前もお前も何してんだよ!!高みの見物か?かつこつけてんじゃねえぞ!必死に獲りに来いよ!全力で獲りに来ても簡単には獲れねえぞおい!!」


おおおおおおおおおお。


「ベストコメント、やるから上がって来いよ、うべべ。」


おおおおおおおおおお。


花道をゆっくりと歩いてリングに向かってくるうべべ。

う!べ!べ!が!り!は!う!べ!べ!が!り!は!

歓声は五分五分。


「がりはさん!!おつかれさまでした。これからはこの完全無欠のレインメイカー、うべべがプリミエールを引っ張って行きますんで、おつかれさまでした。」


「口だけは達者だな。しっかり頑張れよ。逃げんじゃねえぞ。」


両者は額をつけてにらみあう。

そこに背後から素早く駆け寄る黒い影二つ。

がりはとうべべに襲いかかると大乱闘が始まる。

打ち鳴らされるゴング。

競馬講座(6)〜これであなたもたりきの言うことがわかるように〜 がりは

  • 2018.03.14 Wednesday
  • 08:39
一部の方からはたりきの言っていることが少しはわかるようになってきた、とほめていただいている当コーナー。
今日も張り切って参りましょう。

〇右回りとか左回りとか
運動会で走ったことありますよね?
オリンピックでトラックを走っている姿、見たことありますよね?
野球でバッターが打つとどっち回りで走ってます?
どっち回りでした?
そうです、全部左回りなんです。
変わったところではF1もそうじゃないかと。
陸上に関してはIAAF(国際陸上競技連盟)が「左手を内側に」と1913年に定めたため、統一化された経緯があるようです。
根拠になったのはその時の右回りと左回りのタイムが400mで2秒ほど違ったこと、という説がありますがどんなもんでしょうか。
日本の競馬は右回りも左回りもあります。
牡馬クラシック(皐月賞・ダービー・菊花賞)で見ても皐月賞は中山競馬場で右回り、ダービーは東京競馬場で左回り、菊花賞は京都競馬場で右回りです。
フランスやイギリスの競馬場は自然の地形を生かしたものが多く、それに合わせて右回り左回りが混在しています。
IAAFが設立されたあとに整備されたアメリカ競馬は全て左回りで統一されています。
(因果関係は不明です。)

〇馬の走り方
馬の走っている音を真似してみるとパカラッパカラッという感じになるとおもいます。
競走馬はよく見ると右脚と左脚を同時に着地しているわけではなく、右左!右左!という感じで走っています。
右左!なのか左右!なのかを左手前、右手前、と表現します。
後から着地する脚のほうが「前」に出るので、後から着地する脚を見て右左!なら「左手前」と呼びます。
馬は左手前の時は左に寄っていきますし、右手前の時は右に寄っていきます。
それを騎手が修正してまっすぐ走らせています。
斜めに走って他の馬の走路を邪魔すると「斜行」という反則になり、影響度によって1着でゴールしても最下位になったりします。
そう、メジロマックイーンの天皇賞秋のようにね。

〇さらに細かい馬の走り方
左手前の時は左に、右手前の時は右に寄りがちな馬。
コーナーを曲がる時には、右回りなら右手前、左回りなら左手前で走るのが自然です。
馬にも利き足があり、自然と右回りが良い、左回りが良い、という相性があります。
左回りの時に左手前のまま走り続けるかというと、それでは左前脚と右後脚が疲れてしまうので、コーナー以外は右手前に替えて疲労を分散します。
騎手の合図で「手前を替える」のですが、これは馬によってうまい下手があります。
もしたりきの連載を読んで競馬に興味が出たなら、どっちの脚が前に出ているかとか、コーナーを回り切った後どこで手前を替えているかなどにも着目すると、一層深みが増すかもしれませんね。

【テーマ】でん!  がりは

  • 2018.02.28 Wednesday
  • 23:48
「でん!!」
やっとのことで追いついた。
「でん!て何?」
飛びのいて振り向いた顔は、鬼というより恐怖と不審のまだら模様で、浅い眠りから起こされた中型の草食動物のようだった。
角があるところは鬼と似ているとも言えるが、僕のでん!したかった相手ではなかった。
「また鬼かよー!」
何十回と繰り返してきた規定演技、演技力は徐々に高まり、高止まり、今は体調その他によって緩やかな単振動を描いている。
演技とは別のところで、僕の心の奥底からの嘆きというか、叫びだしたくなるような感情の奔流もここ数回は感じられるようになっていて、もう勘弁してくれ、さもなくば僕はどうにかなってしまう、と頭のどこかで恐れている。
両手を上げてどこまでも駆けたくなるような恐ろしさを今はまだ理性で押さえつけている。
両手を固く握り、空に向かって力の限り叫ぶことで保たれる正気。
もう正気でないかもしれないけれど。
見上げた青い天球は僕を捕える籠だった。
僕がでん!を受けたのは小学校四年生の時だ。
8月30日、引っ越すその日までいつもの仲間と鬼ごっこをしていた。
いつもは公園の中だけでやっていたのだが、その日は僕が最後だからということで場所の制限なしになった。
公園の外の道路が使えるようになったので、普段は使えないようなトリックを使ったりしていつもよりも盛り上がった。
ナツキが鬼になった。
彼女は男子より走るのが早く、体も大きくて女子のリーダーだった。
隣の家に住んでいたので、クラスが分かれてもいつも一緒にいる存在だった。
ナツキは他の友達には目もくれず、一心に僕を狙っていた。
なぜか僕にはわかった。
木に登り、四阿の屋根に飛び移り、ナツキが木を登りきる直前で屋根から飛び降りて距離を作った。
僕も足が遅いほうではないのだが、真剣になるのが遅かった分だけスタミナを消耗していた。
ナツキはもうすごい形相で追いかけてきていた。
振り向くとポニーテイルが上にまで跳ね上がっていた。
公園の隅に追いこまれ、僕はその時に試してみたかったトリックを出した。
公園の角の2mくらいの塀が直角を作っているところを、両足でリズミカルに蹴ることで駆け上がり、公園の外に飛び降りて逃げ出してしまおうとしたのだ。
1,2,3と三発蹴って塀の上に手が届いたところで、腰のあたりを思いっきりでん!された。
反動で僕は壁にぶつかって、みじめに地面に落ち、尻を払いながらすぐに立って追いかけたのだが、公園には誰もいなかった。
鬼が強いからみんなが逃げると思っていた。
自分から鬼になることもたびたびあった。
みんながいなくなってみると、鬼は罰としてそこにあった。
誰も鬼を解除してくれない。
誰かにでん!しないと。
公園の真ん中の時計が12時を指し、引越の時間が迫ってきてさらに焦った。
みんなどこへ消えたんだ。
僕はとぼとぼと帰りながら、ナツキの家を訪ね、ナツキにでん!してから鬼ごっこおわり!を宣言しようと思った。
しかし、呼び鈴を何度鳴らしてもナツキは出てこなかった。
家の人も出てこなかった。
パパとママに半ば強引に車に押し込まれた時に、道路に面したナツキの部屋のカーテンが少し開いてナツキの右目が見えた気がした。

その後会うことはなかった。
僕もあの町に戻ることはなかったし、ナツキが僕を訪ねてくれることもなかった。
訪ねてきてくれたとして、何ができたかは難しい。
千葉の新しい場所で新しいともだちと何度も鬼ごっこをした。
でもそれは僕の知っている鬼ごっこではなかった。
同じ名前の違う何かだった。
鬼が人を捕まえる時、でん!とは言わないのだ。
僕の腰に痣ができていることに気が付いたのは半年後だった。
姿見の前で裸になって見たそれは、ブルーブラックのインクで描いた紅葉のように広がっていた。
僕はそれがナツキの手形だとわかったけれど、それを誰にも説明しなかった。
引っ越して一か月後くらいに手紙が来た。
たわいもない手紙だったけれど、僕は本当に嬉しかった。
嬉しかったので返事を書いた。
今読んでいる本の話。
手紙のやり取りは緩やかに続いた。
お互いがケータイを持ってからも続いた。
電話番号を先に聞いたほうが負け、というようなくだらない意地があったように思う。
鬼ごっこの話には触れてはいけないことになっているみたいだった。
でもナツキは鬼ごっこのことを考えていると僕にはわかったし、彼女も僕がそれをわかっていることを理解していたと思う。
いつしか疎遠になっていき、もう手紙は書かなくなっていた。
僕らは写真のやり取りをしなかったので、どんな姿になっているかわからなかった。
どんな姿になっていたとしても、どこか気に入らなかっただろうし、絶対気に入ったと思うから必要なかったのだ。
痣は消えることなく、それどころか時折とても熱くなってその存在をアピールした。
僕には鏡越しにしか見ることができないのだが、僕が見ようとすると少し死角へ回り込もうとしているようにも見えた。
高校三年生になった時に予備校にむかう電車の中でナツキらしい人を見かけた。
ターミナル駅まで一緒で、そろそろ別れてしまうというタイミングで、多少の茶目っ気と照れ隠しもあって、でん!と後ろからタッチした。
よく見るとそれはナツキとは似ていない女の子で、悪いことに彼氏を連れていた。
猟奇的な彼氏。
無抵抗に五発殴られて、わかったか!と顔面を靴底でこすられた。
ナツキは関西にいるはずだったし、僕は千葉だった。
こんなところにいるはずもないのに100%の確信をもってでん!をしたのはなぜだろうか。
わかったか!と言われてもわからないものはわからない。
それからも100%の確信をもってしまうとでん!してしまう癖は治らなかった。
初めてでん!した時ほどひどい目には遭わなかったが、何度かは殴られたし何人もの人を脅かしてしまった。
こんなことはもう僕もやめたいと思っている。
何しろいつ100%の確信を持ってしまうのかわからないのだ。
そしてその時僕は運命的にでん!してしまうだろう。
時々考える。
本当のナツキにでん!した時に僕はどうなるんだろう、ナツキはどんな顔してくれるんだろう。
その時僕は鬼でなくなるのだろうか。

【三題噺】言葉のチョコレート  がりは

  • 2018.02.09 Friday
  • 00:00

お題:マリンバ、犬、風車、ありません

 

「バレンタインは誰とデートすんの?」

「えー。そんなこと聞きますぅ?」

「こないだ合コンしてたっしょ。結構ハイレベルだったとうかがっております!あたしもその場にいたかった!女を磨いて来るべきさやまんJAPANの代表召集に備えるのであります!」

「サトコ彼氏いるじゃーん。」

「正直、彼氏感なくなってきていて・・・・あやつはもう彼氏でもなんでもございません!ただの空気であります!」

「口調!」

「あはは」

「合コンも大したことなかったよ。」

「敵のスタメンはどんな感じだった?」

「マリンでしょ、犬でしょ、あと風車。」

「超おもしろそう!やばみがすごいのであります。」

「口調!」

「えへへ。マリン誰よ?」

「マリンはマリンでしょ。」

「里中智?」

「ぶぶー。それは小さな巨人でしょ?」

「まさか拾われるとは!ドカベンを拾われるとは!不覚であります!」

「マリンなら渡辺俊様で来てほしかったわ。」

「だれよ。俊様はさやの誰よ!」

「やば。えとねー、マリンは○○海上の営業。」

「あー、ごりごり?」

「ごりごりのぐいぐい。」

「うわー。素敵☆」

「そっち?」

「犬は?ラッカス?あの天下のシスコも恐れるラッカス?」

「あれは黒でしょ。白い方。」

「ビクター?」

「チョイスがしぶい。もっと!ほら、お父さん的な。」

「あー。あそこね。どうだった?」

「しゅっとしてたね。」

「しゅっと?」

「しゅっと!」

「次なんだっけ。風車だっけ。なに、どこ?オランダ?あ!オランダ屋!?」

「千葉みが過ぎるわ。○○重工の風力発電の技師。」

「ぎし。」

「ぎしぎし。」

「ぎしぎしぎしぎし。」

「ぎし。」

「あー!詰んだ!!負けた!!!」

「なんじゃそりゃ。以上の三名と戦ってきました。」

「成果はありましたか?」

「ありません。」

「またまたー。ジャンポールのチョコ買ってたの見たぞ。」

「マリンバが。」

「マリンバ?」

「マリンの彼女が合コンに乗り込んできてさ。」

「そんな年上だったの?」

「まあまあ。マリンネとマリンバの間くらい。」

「そんで?」

「マリン怒られるのかなと思ったら、私たち怒られて。意味わかんないっしょ。」

「おもしろーい。やばみが深み。」

「許してやるからチョコ買ってこいって。店も指定されて。」

「えー。やばみ。」

「うるせえ地域総合職!てさちが言ったら、ゴン!てされて」

「ゴン?」

「ゴン!」

「ええー。」

「めちゃ怖くて逆らえなかった。12日にお届けしなくてはならないさだめなのです。」

「マリンバすごいね。」

「逆にあのマリンバがいるのに合コンに来たマリンもすげえわ。」

「ゴリゴリだから。ゴリゴリとゴンだから。」

「マリン感ないねえ。」

「ありませんねえ。」

「でも、いいよね、マリンバ。なんか細くて小綺麗だったもん。金と時間を自分に投資してる感じ。」

「へええ。バレンタインどうしよっかなー。」

「ボルダリングしてヨガして寝れば。」

「つめた!でも・・・?」

二人「意外といいねえ!!」

「じゃあ決まりで。よろしくー。」

 

お風呂でマセマティカ  がりは

  • 2018.02.05 Monday
  • 23:45
うちの風呂には九九の計算表が貼ってある。
リンゴやらサクランボやらがお皿の上に載っていて、そのお皿が増えることによって掛け算を示している。
ある日息子と風呂に入っていたら真剣な面持ちで(彼は大体いつもにやけている)
「パパ、話があるんだ。」
と言った。
小学校二年生の息子の真剣な話、これはいじめか、もしくは庭の桜の木でも切り倒したか、と思ったのだがどちらでもなかった。
「不思議なことを発見したんだけど、これがすごいのかどうかわからないんだよ。僕はすごいと思うんだけど。」
彼は九九の表を指した。
「右上と左下、つまり1×9と9×1が同じで、その斜め下と斜め上の2×8と8×2も同じで、てこうやって同じ数字の組み合わせでこの表はできているんだ。」
ふんふん。
「ほう。たとえばここ(8×3)はどれと同じ?」
「ここ(3×8)。」
「ここ(2×5)は?」
「ここ(5×2)!」
「そうかー。面白いこと発見したな。」
と私がほめてやろうとしたところ息子は右手で私を制しながら言った。
「パパ、トランキーロ!!あっせんなよ。」
「ええ??」
「僕の発見はここからなんだ。」
「教えてください。」
「この表は右上の左下の関係だけじゃなくて、左上から右下の関係もあるんだ。」
「え?」
「たとえば1×1と9×9は1と81で1の位が同じなんだ。同じように2×2と8×8も4と64で1の位が同じ。」
「おおお!!!」
「1×8と2×9も8と18で同じ。4×7と3×6も28と18で同じ。」
「すごい!!すごいなあ!!」
「え?ほんとにすごい?」
「ほんとにすごい。パパは子供の頃こんなの思いつかなかった!!」
息子は右目を閉じ、左目を左手で大きく見開きながら、右こぶしを高々と上げた。
私も誇らしい気持ちでその小さなこぶしに私のこぶしを合わせた。
反証も見つからず、きれいな証明も思いつきません。
子供を育てているとこういう新鮮な驚きがたまにあります。

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