卍  がりは

  • 2019.03.13 Wednesday
  • 00:01

卍について書けと言われて卍固めについて触れないのは難しい。

かの燃える闘魂アントニオ猪木の代名詞ともいうべき技で、新日本プロレスでなくとも使うには勇気と覚悟が必要だ。

猪木は卍固め、ナックルパート、延髄斬り、スリーパーホールド、ジャーマンスープレックスの五種類の技でどんな相手とも熱戦を繰り広げることができた。

実際は他にもいろいろ技を持っているし(インディアンデスロック、四の字固め、弓矢固めなど)支持もされていたが、上記の五種類の技は見た目が非常に美しく、遠くのお客様からもわかりやすいという特徴がある。

切り絵にしたら美しいだろうな、という造形なのだ。

弓を引くようなナックルパートは殴る前の溜めから美しい。

延髄斬りは背の高い外国人選手と戦う時に、猪木の跳躍力、瞬発力を最大限見せつけられる技。

当たった瞬間の直角感が素晴らしい。

スリーパーは相手をグロッキーに追い込んだあと、相手の背後に立って手を広げて見栄を切る姿が美しい。

ジャーマンスープレックスは人間橋と呼ばれ、二人の体が半円型を形作り美しい。


さて、卍固めはどうだろうか。

四肢が卍型になり、相手に蛸のように絡みつく姿もさることながら、必死に締め上げる猪木の表情と苦悶する相手の表情を見ることができるフォトジェニックな技なのである。

長い髪を振り乱して絞る猪木、飛び散る汗、ロープに伸ばされる相手の腕が届くのか届かないのかという攻防。

一つのカメラでずっと追うことができる。

金看板の猪木の魅力を最大限引き出す技なのだ。


体格に恵まれ、アメリカマットのトップに君臨し、有力な外国人レスラーと太いパイプを持っていたジャイアント馬場と比べ、体格でも実績でも人脈でも劣るアントニオ猪木は、世の中を相手にプロレスをする必要があった。

テレビでも会場でも観客の心に直接届くような試合が切実に必要とされており、猪木はその要請に応え続けた。


卍固めよりも有効な技はたくさんある。

しかし猪木がやろうとしていたプロレスを考えた時に、卍固めが選ばれたのは必然であった。


(テーマ「卍」)

 

バカステラ がりは

  • 2019.03.09 Saturday
  • 23:34

この寺の和尚さん、この間も狸に騙されて悔しがっておった。

なんでもまんさくの花のいいのが入ったと言われて、ご馳走用意して待っとったら、料理だけ食われて、酒は小便だったんだと。

包んであったお布施が木の葉だったもんで狸の仕業じゃ、ちゅう話になっとった。

 

狸は悪いやつで興味もないくせに、銀縁眼鏡で七三の脂ぎった社会学者の態で「AI時代における宗教信仰の形とは」という論戦を吹っ掛けてきよった。

テレビで見たことがある奴だと思った和尚は、議論が嫌いな方じゃないから苦労しながらそれに応戦し、10時に始まった戦いが日付が変わる頃、最終的にはやはり信仰は必要であろうという結論に至りかけたその瞬間。

狸はボン!と大きな腹鼓を叩いて、毛むくじゃらの正体を現し、あっけにとられた和尚にとびかかり、馬乗りになって「何が与えられたものをまずは受け取るところから始めるのはAIで始まったことではなく、宗教と言うのはそういう営みを積み重ねてできたものでしてじゃ!!」とボカボカと殴りつけて去っていった、ちゅうこともあったな。

 

一番最近は狐が来て、どうしても和尚さんに抱いてほしい、そうでなければ死ぬ、ちゅうてな。

もちろん、若いおなごの姿で来てな、歩くたびにぼったんぼったん色気がこぼれるような。

狐にしとくのがもったいないのう、とわしも思ったんじゃが、和尚もさる者、なかなか首を縦には振らんかった。

それでも体をそっと触られておるうちに奴も男じゃ、ついに一念発起して、一念発起というと悟りを開こうと決意することになってしまうか、真逆やのう、まあ、抱こうと一大決心しおったんじゃ。

「だ、抱こう!」

鼻の穴拡げてのう。

「わたくしにも心の準備が・・・」

「ええいうるさい!これをこうしてやる。」

と言って帯をくるくるくるくるくるくるくるくるくるくる、手繰っても手繰っても帯ばかり。

部屋の中は帯だらけになって娘の姿は消えておった。

帯じゃと思っていたものがトイレットペーパーだったと気づいたのは翌朝。

和尚は後生大事に守り続けていた信仰心と貞操を打っ棄ったところを梯子外されたのがショックで一週間寝込みよった。

 

で、今に至るんやが、わしもそろそろこやつにほんまのことを言うたろかいな、と思っておる。

わしは寺の形をした化け物なんじゃ、と。

そろそろ飽きたからお前のこと食うてもうてええかと。

せっかくやから今度狸と狐が来た時にしよか。

と、思ったら和尚の見舞いに二人で来よったな。

さて、と。

 

(テーマ「カステラ」)

アカツキ  がりは

  • 2019.03.06 Wednesday
  • 00:00

「二人のアカボシ」という曲をご存知でしょうか。

2002年にすい星のごとく現れ、しばらくすると燃え尽きてしまったキンモクセイというバンドの素敵な曲です。

リアルタイムで聞いた時は2度目の大学生をしている頃でした。

部室で夜更けまで将棋に勤しみ、明け方帰る途中にローソンに行くとこの曲がかかっていることが多かったです。

2002年と言えば、浜崎(Flying kidsではない方)が「H」や「Voyage」(このPVは必見です。浜崎あゆみは好きじゃないけれどこのPV「月に沈む」には惹きつけられました。)を歌い、宇多田ヒカル(歌姫)が「Travling」(このPVも必見です。迷作「キャシャーン」を撮った紀里谷がやりたい放題やっています。)や「SAKURAドロップス」「光」を歌い、ミスチルなら「君が好き」「any」、平井堅が「大きな古時計」をリリースした年です。

 

「二人のアカボシ」は端正な歌い方、懐かしいメロディ、せつない歌詞、面白い曲だなあと思ったのですが、リアルタイムでは好きな曲ではありませんでした。

チャルメラのパロディのジャケットとか、ミヤウジヨウと歌っちゃうところとか、少し鼻についたんですね。

 

しかし大学時代を懐かしく思い出す時に、様々なBGMの中から「二人のアカボシ」が選ばれてしまうのはなぜでしょうか。

 

普段、曲の歌詞など味わうことをほとんどしないのですが、二人のアカボシの歌詞を眺めてみました。

一緒にいたいけれども離れなければならない男女の歌です。

駆け落ちしたい、けどできない、そこにどんな理由があるのかはわかりません。

どっちかが不倫なのか、ロミジュリ的な家柄の問題なのか、他にもいろいろあるでしょう。

連れていこうか、連れ去ってやろうか、と言いながら最後には思いを告げることができない、夜が明けてしまった、また結論を先送りにしてしまったんではないか、という。

なんやねんと。

でも、そこで勇気が出ない、ドラマの主役になり切れない、それも人間の業ですよね。

僕らヒューマンビーイング、そんなことの連続でできてますよ。

 

1998年のスマッシュヒットで「おなじ星」というJungleSmileというデュオの曲があります。

この曲は離れ離れだった二人が星の数ほど繰り返されるめぐりあいの中で、やっと出会ってもう離さない、運命が二人を裂いたとしても必ずまた出会ってみせる、という女子目線の曲です。(なんだか村上春樹の「1Q84」みたいです。東京ですれ違っている件などまさに。村上さんがこの曲をモチーフに書いたとは思えませんが。)

真夜中に出会ってイチャイチャしている若さがあふれています。

この年代でしか歌えない儚さと信じる者の強さが詰まった名曲です。

 

1998年にようやく巡り合った二人が、2002年までグダグダしていて、連れ去ってやろうか!などと言いながらちっとも実行できないことに業を煮やした女が背を向けているのが「二人のアカボシ」のラストだと思うと、趣があります。

 

アカボシというのは明星のことで、夜明けの明星がタイトルになっています。

夜明け、暁というのは明るいイメージの象徴です。

わからないことが明らかになる、暗闇に光が差す、汚れが清められる、ほらご来光ですよ。

なのにこの曲ではもう夜が終わってしまう、俺たちの時間が終わってしまうことの象徴になっているんです。

私にとって貴重な時間、贅沢な時間を振り返る時に、そんなに好きでもなかったこの曲がかかるのは、そんな理由なのかもしれません。

 

私の記憶ではキンモクセイもJungleSmileも体調を崩して活動休止していたのですが、今webで調べたら、キンモクセイは2018年に活動再開しているし、JungleSmileの高木いくのさんは妙高市で歌っておられるようで本当に良かったです。

人生いろいろあるけれど、楽しそうに続いていることの尊さを最近はよく噛み締めます。

 

(テーマ「暁」)

G-Sports(3月号)  がりは

  • 2019.03.03 Sunday
  • 01:39

先月号のG-Sports、皆様のお役に立ちましたでしょうか。

今月も雑兵日記PREMIERの月間投票に資するアウトラインをお届けいたします。

それでは2019年2月のトピックスです。

1.Mr.Indigo28日間で47都道府県縦断!

2.サウジアラビアの嵐続く

3.執筆陣の多様化、継続

4.テーマ「都道府県」コンテスト、皆苦悶

5.たりきの予想大的中!

 

1.Mr.Indigo28日間で47都道府県縦断!

進撃の中年ことMr.Indigoがテーマ「都道府県」コンテストにおいて、一都道府県につき一本ずつ、28日で書ききりました!

最後の追い込んで届かずかと思いましたが2月28日23時56分に47本目の沖縄を入稿するという末脚を見せ、平成最後、Indigo30代最後の快進撃を完成させました。

もちろんPREMIER史上ぶっちぎりの月間生産本数です。

まさに偉業、すばらしい!

それぞれ読み応えのあるエッセイです。

 

2.サウジアラビアの嵐続く

毎週金曜日午前0時にサウジアラビアからの熱風が吹き渡る。

大人気コーナー、Mr.ホワイトによるサウジアラビア紀行が1月に続き2月も展開されました。

格調高い美文でサウジアラビアのことを語りながら、メッセージが様々散りばめられています。

必見です。

 

3.執筆陣の多様化、継続

進撃のIndigo、悩み相談とテーマを受注生産するがりは、競馬のたりき、アラビアのホワイト、鉄の海のヤマブキ、自由なアールグレイ、にやられ気味のマルーン、難テーマ「都道府県」を提案したMr.X、それを採用したミッチー(1788は意欲作。投稿日時ににも注目)、数年ぶりにマスクで復活したMr.Black(ダーツゴルフカップ)、そしてバレンタインデーの憂鬱でデビューした注目の新人Mr.Blondと11名がエントリーしました。

バラエティの豊富さ、生態系の多様性を維持することが雑兵日記PREMIERの価値に直結しますので、今後も続いてほしいものです。

復活してほしい人が私には明確に4名いるんですけどね。

心当たりの方は近いうちにお戻りください。

 

4.テーマ「都道府県」コンテスト、皆苦悶

「都道府県」にみな苦労した模様で、のびのびやったかに見えるIndigoは量で苦労しましたし、一県ごとに言及するという王道を押さえられてしまった他の作者は都/道/府/県の比較や、県境に関するあれこれや、アイデンティティの不確実さなどに転化して頑張りました。

アールグレイの作品は楽屋落ちを用いて全県言及するというアイディアで、自由を満喫している彼女らしさはありますね。

参加した方々に対しては、圧倒的な強者に対し「見」という判断もあるなかで、それでも立ち向かっていったことに書き手の一人としては敬意を表します。

もちろん最大の敬意は圧倒的な強者たりえている進撃の中年に捧げます。

 

5.たりきの予想大的中!

ついにたりきが的中しました。

普段から買い目を絞って絞ってお届けしているたりきが3連単(66.2倍)、3連複(23.1倍)をさく裂させたので、現在は大赤字から黒字手前くらいになっているのではないでしょうか。

 

おまけ

 

6.がりはの受注生産続く

「ハートビートが止まらない光降りそそぐnew world」「符堅」といった一種嫌がらせのようなテーマも何とかこなしています。

いいよ、もっと来いよ。

受けて立つよ。

 

 

2月の投票用紙はこちらです。

投票よろしくお願いいたします。

宇宙とわたし がりは

  • 2019.02.27 Wednesday
  • 00:00

世界を知ることは宇宙を知ることだ。

宇宙を知ることはモノがどういう仕組みになっているかを知ることだ。

モノの仕組みと言えば物理であり、今わかっていることの全てを動員してもわからないことが多く、ともするとわからないことがわからないのだ、だから物理を勉強したい。

 

1996年、高校生のがりはくんはこう思っていた。

 

美しい。

まったくもって美しい理想である。

加えて、高校卒業程度、センター試験レベルであれば、理系文系など関係なく教養として修めておくべきだなどと公言していた。

美しい。

さりとて熱心に全ての授業を聞くわけでもなく、将棋をしたり、サッカーをしたり、恋をしたり、議論を吹っ掛けたり、コントをやったり、広末涼子の絵を描いたり、デニーズで夜を明かしたり、海で焚火したりしていた。

試験では気の向いた教科だけ人間らしい点数だったものの、ダメなものはダメ。

赤点を取ると部活に参加できなくなるのでぎりぎり回避しながら、空いた時間で答案用紙の裏にいろんなことを書いた。

国語では千手観音くん」という小説を、化学で原子核の仕組みが出た時には核の傘の実効性についての論説文、物理では剛体を仮定した場合の矛盾について(光より信号を早く伝える方法)など、試験問題に解ける部分が少ないことを逆に生かした文筆活動を行っていた。

(思えばこの時から30分程度でまとまった文章を書く能力を鍛えていたのだ!)


周囲の反対や忠告や嘲笑を押し切り(三年生で理系コースに行った初日、担任の先生に「悪いことは言わないし、向いてないと思うからあっち(文系クラス)に行きなよ。頼んでやるよ。」と言われ、「苦手なのが何が悪い。苦手だから勉強するんです。やりたいようにやる。未来は俺が作る。」と言い返したという説がある。ストロングスタイルってつくづく損。)、一年の浪人を経て、めでたく理学部応用物理学科に入学したがりはくんであったが、物理の頂きに至るまでの道のりの長さを実感する出来事に遭遇し絶望、宇宙のことはNEWTONでわかればいいやと割り切った。

 

2001年、いくつかの出会いや誤算や勢いやツキがあり、紆余曲折を経て、がりはくんは経済学部経済経営学科に入学した。

 

2019年、がりはくんは「僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない」(ジョージ・チャム+ダニエル・ホワイトソン)という本を買った。

自分は少しはわかっている、と思ったので少し早熟な息子にプレゼントしようと思ったのである。

アマゾンでジャケ買いしたので、届いた時に渡すかどうかの最終判断をしようと読んでみた。

 

全然、わかっていなかった。

 

むさぼるように二日で読み通したという。

世界有数の学者が「宇宙のことがこんなにもわかってないんですよ。」ということを、いまわかっていることをわかりやすく説明しながら教えてくれる。

自分でそれを裏付けることができないから飲み込むしかないのだけれど、あの時物理の頂に至る階段が見えた、なんてのはとんでもない誤解で(薄々知っていたが見えない振りをしていた。)まだまだまだまだやれること、勉強すべきことがあったなあと思い知って胸に苦みが広がったのでした。

 

(テーマ「宇宙」)

試合後のマイクアピール  がりは

  • 2019.02.18 Monday
  • 23:37

ZPGPヘビー級チャンピオンシップ(バトルロワイヤル形式)

がりは 〇 (31日間 テーマ作品の積み重ねによる丸め込み) ● Mr.ホワイト

 

あまりに激しい試合終了後、ざわつく館内。 

ホワイトは淡々とリングを去る。

その背中にはまだ余力が見られる。

対照的に全身で息をしながらがりはが立ち上がる。

両ひざに手を置き、ぐっとつっかえ棒にしながらなんとか体を立て直した。

支えようとする若手の手を振り払い、がりははマイクを要求。

 

「おい!ホワイト!!」

大歓声がリングを包む。

バックステージに消えかかっていたホワイトが歩みを止める。

「お前の技、四発、全部効いたよ。めちゃくちゃいてえよ。」

ホワイトが振り返る。

「でもさー、今日は俺の勝ち!!またやろうぜー!!」

さらりとした笑顔を残してホワイトはバックステージに消えていった。

がりはは両手を天に突き上げた。

アクラム・ペールワンの腕をへし折って勝利したあの日のアントニオ猪木のように。

 

「あるべきものが、あるべきところに戻っただけだ。ノープロブレム、ノーサプライズだよ。だよね?」

 

大歓声。

 

「試合前はやれ三連覇はしてないだとか、一月のがりははイマイチだとか、これだけ書いてて負けたらホワイトアウトだろうとか、色んなこと言われたよ。内容が薄いだとかな!でもさ、見てよ、このベルト。結局俺が一番似合うんじゃないの?どーですかー??」

 

その時、解説席から蒼い影がすっと立ち上がり、リングにするりと上がるとがりはの後ろに立ち、マイクを持った。

気付いて身構えるがりは。

さすがに襲撃慣れしている。

 

「まあまあ、待てよチャンピオン、トランキーロやったっけ?今日は話をしにきたんや。」

 

どよめきが広がる。

 

「こんなところで立ち話もなんやし、裏で茶でもしばこかIndigo!」

「わざわざここまで上がって来とんねん。チャンピオン、ホワイトだけ見てたら大変なことになるから覚えとけよ。今日はそれだけや!」

「そらおおきにごくろうさん。気をつけておかえり。」

 

Indigoは微笑みながらがりはに握手を求めた。

がりはが不用意に差し出した腕を極めながら素早く背後に回り、変形のアルゼンチンバックブリーカーに抱え上げた。

 

「ベストコメントは誰や?」

「みんな大切なコメントだ!俺には選べない!!」

「甘っちょろいことを言うな!」

Indigoががりはの背骨を折りにかかる。

「ぐわあああああああ」

「ベストコメントは誰や?」

「俺には選べんと言うたやろ」

「ほなこうじゃ!」

 

がりはの体が限界まで撓められていく。

過酷なバトルロワイヤルを皆から狙われるチャンピオンとして戦い抜き、最後はホワイトとの一騎打ちで極限までダメージを負ったがりはにはもう耐える術が無かった。

 

「言わんかい。」

「ぎばっぷ!!ぎばっぷ!!」

「ちゃうやろ!ベストコメントや!言わんかい」

「ぐわああああ、言う言う言うぎぶぎぶぎぶ」

「そんな投票者おらんやろ。」

「インディゴ!インディゴ!!インディゴにあげます!!」

 

どさっとがりはを投げ捨てると、Indigoはマイクをがりはの口元に近づけた。

「チャンピオン、ベストコメントは誰ですか?」

「イン・・・ディゴ」

「理由は?」

「全ての項目に・・・答えていた。」

「そうか。ほかに言うことは?」

がりははにやりと笑って答えた。

「インディゴ、おめでとう。これで無冠やなくなったな。来月もがんばってや。」

 

インディゴはストンピングの雨を降らし、三人の若手に抑えられながらリングを後にした。

がりはは担架で退場した。

将棋界の一番長い日(今年は3月1日)  がりは

  • 2019.02.16 Saturday
  • 08:14

将棋の世界には「一番長い日」と呼ばれる日があります。

名人への挑戦者を決めるA級順位戦の最終局が一斉に行われる日のことです。

例年三月の頭に行われ、その日は各所で解説会が行われるほか(プロの解説つきのパブリックビューイングです。)、テレビやインターネットで中継が行われる一大イベントです。

 

なぜ一大イベントなのか。

ここで順位戦の仕組みを少し説明しましょう。

将棋のプロは約160人おります。

頂点に佐藤天彦名人がいて(将棋界の細かい序列はこの際おいておいて、歴史と伝統を重視でいきます。)、A級が10人、B級1組が13人、B級2組が24人、C級1組が39人、C級2組が49人で行うリーグ戦です。

(B級2組から下は総当たりではなく抽選で決めた10回戦で行います。)

A級を勝ち抜いた一人が名人戦の挑戦者になり、四月の椿山荘から始まる七番勝負で名人位を争います。

名人をのぞくトップ十人が一年かけて血みどろの戦いを終え、ただ一人の勝者が決まる日なのです。

昨年の「一番長い日」は大変なことが起きました。

11人(特殊な事情で昨年はA級が11名でした。)が総当たりのリーグを戦って、稲葉、羽生、稲葉、佐藤、久保、豊島の六名が6勝4敗で並んだのです。

順位最下位の豊島が序盤5連勝し、昇級即挑戦か?やっぱり豊島強いよね!という機運が高まったのですが、そうは問屋が卸さず。

そこから1勝4敗で、前代未聞の六名によるプレーオフに突入することに。

 

「一番長い日」が一大イベントである理由は他にもあります。

トップ十人から二人が脱落する日でもあるのです。

A級に居続けることが非常に困難であることは、永世竜王の資格を持つ渡辺棋王がB級1組にいることからも感ぜられます。

今季B級1組で11連勝中、俺はA級なんだぞ、去年のあれは何かの間違いだ!と主張するかのような勝ちっぷりです。

羽生九段はA級に22歳で上がってから48歳の現在までB級1組に陥落したことがありません。

コンピューターソフトと現役の棋士が戦った電王戦において、最後は佐藤名人が敗れ決着がつきました。

しかしかなりの数の将棋ファンは羽生九段なら勝てる、とまだ信じています。

彼が数々の対局で勝ち続けたこともそのよりどころになっていますが、なにより順位戦でA級から落ちていないことがその信用を大きく支えています。

同じ成績の場合、前期の成績で決まっているリーグ順位が上の棋士の成績が上になります

不運の棋士、不屈の棋士として知られる深浦九段は四勝五敗で二度陥落しています。

現在はA級に復帰していますが、大抵三勝の下位が陥落ラインとされているなか、四勝でしかも二回も陥落した深浦九段の挫折感たるや想像を絶します。

A級に上がることも大変だが、復帰することはもっと大変だ、という言葉があります。

我らがダニーこと糸谷八段は現在A級でB級1組から今年度復帰しました。

渡辺棋王は陥落したB級1組で10連勝し復帰を決めました。

ひふみんと呼ばれ親しまれている加藤一二三九段はA級在位36期でそれだけでももちろんものすごいことですが、それに加えて4度A級復帰を経験しています。

あれだけ愉快なキャラクターでありながら化け物であることがよくわかります。

 

昨年は特別で、十一名のうち三名が落ちるリーグでした。

落ちたのは渡辺棋王、行方八段、屋敷九段でした。

現役のタイトルホルダーが陥落することも、順位が半分より上の棋士が二人も落ちるのもとても珍しいことでしたが、我々将棋ファンはもっと大きな物語をそこにみていました。

数年前、スマホによるカンニングがあると疑惑をかけられ、当時の渡辺竜王への挑戦が決まっていた三浦九段は、挑戦権をはく奪された上、休場に追い込まれました。

(今も三浦九段は対局前に金属探知機で身体検査を受けているそうです。)

その疑惑を訴えたのが渡辺竜王でした。

調査の結果三浦九段のカンニングはなかった、シロであったという判断がなされましたが、三浦九段の挑戦権は帰ってこず、順位戦も張り出しという非常に不利な状態で臨むことになりました。

その三浦九段と渡辺棋王が「一番長い日」にお互いの降級を賭けて直接対決。

結果、三浦が快勝し、渡辺は陥落。

小説でも滅多に読めない大きな物語を我々は受け取ったのです。

その後、渡辺は陥落後憑き物が落ちたように勝ち続け、今年度は勝率八割を超えるアンストッパブルぶりです。

 

(関連記事 プロ棋士なんでしょう?  がりは三浦ー羽生  がりは明るい悩み相談室PREMIER(226)〜抗議〜  がりは稀代のヒール Mr.Indigo

 

我々将棋ファンは名人に挑戦する光り輝く天才と自らの才能と努力を恃みながらトップから墜ちていく恐怖と戦う天才を同時に見ることができるA級順位戦最終局を「一番長い日」と呼んで楽しみにしています。

今年の「一番長い日」のイシューは

〇去年涙をのんだ豊島が今年こそ挑戦できるのか(現在7勝1敗で単独首位。勝てば挑戦。負ければ羽生ー広瀬の勝者とプレーオフ。相手は去年の順位戦の連勝を止めた久保王将。)

〇4勝5敗で陥落することで有名な深浦が3勝6敗で残留できるのか(深浦が糸谷に勝利、三浦が稲葉に敗北が条件。)

 

今年の「一番長い日」は3月1日です。

お楽しみに。

 

(ちなみに藤井聡太七段はC級1組、現在4位につけています。彼がこの舞台に上がってくるのは早くても3年後です。そう、トランキーロですね。)

 

(テーマ「A級」 感想:いやー、疲れた。こういうのはIndigoに任せたい。A級からは「A級戦犯」「プリミエールのA級とは」「阿Q正伝」のパクリ、などを構想し、一番長い日を書くにあたって解説会に通った思い出を書こうとも思ったが、今スタイルチェンジに取り組んでいることもあり、ストレートに書いてみました。)

 

カイロ がりは

  • 2019.02.09 Saturday
  • 00:00

ずっと好きだった。

でも言い出せなかった。

今いるポジションを失うのが怖かった。

一番仲の良い友達。

 

どーんとぶつかってみろよ。

ダメだったらもう一回行けばいいじゃん、減らないよ。

百回負けても百一回目に勝てばいいじゃん。

僕も友達にならそうアドバイスしてきた。

そのアドバイスが実った友達もいた。

(そうでなかった人も残念ながらいた。)

リングに上がって負けるのと上がらないで負けるの、どっちがいいんだ。

そう迫ったこともあった。

その人は「なんで負けるの前提なんだよ!」と言ってリングに上がり、見事に判定勝ちをもぎ取った。

僕自身はというと、なんだかんだとリングに上がることを拒み続けていた。

網膜剥離で引退を余儀なくされた元名ボクサー、今はジムを経営してます、みたいな風情で。

実際やっていることは周りを煽って、僕は天井桟敷にいるだけ。

毎日毎日同じ色の泥水をすすって、お腹はいっぱいだからいいんだ、と言ってる。

あのぶどうはすっぱいんだ、て。

 

今、冴えない電車の冴えないロングシートで隣り合って座っている君の顔を時々見ながら僕はそんなことを考えていた。

眉を少し寄せながらほっカイロを両手で揉んでいる君を見て、僕はもういい、ほっカイロでいいんだ、と思っていた。

ほんの少しだけ君の手を暖めることができたらそれでいいんだ。

 

友達だけど、友達だから、その手を暖めてもいいかな。

いや違うな。

俺、昔から手が暖かいんだよ、ほら、触ってみ。

唐突感がすごい。

手が冷たい人は心が温かいというね。俺が心暖かなことは君も知っているだろう。ところで手が温かいかどうかは知らないんじゃないか。いまなら調査の機会を・・・

違う違う話が変わってきてる。

 

そんな独り相撲をとっている間に、僕らの電車は目的地に着いてしまった。

 

(テーマ「カイロ」)

符堅 がりは

  • 2019.02.06 Wednesday
  • 00:00

中国史に限らず、歴史に関しては証拠を吟味する能力が自分にないため、話を半分以下で聞いてしまう癖がある。

現在から100年前の柔道は、立ち技至上の講道館柔道ではなく、打撃、スラム、タックルも包含した総合武道としての柔道であったなんて、どれくらいの人が知ってるんだろう。

柔道着にも変遷があり、裾や袖をつかまれないためにスパッツや半袖が当たり前だったとか。

百年前の日本でもそんな感じなのに、ましてや異国の2000年前をや。

 

苻堅という有名人がいたそうだ。

その人は300年代の中国、群雄割拠の時代に小国の王の子として生まれ、大体天下統一しそうになったタイミングで腹心の優秀な部下が死に、そのあとこの戦いに勝てば天下統一ができるという圧倒的に優位な戦いを落とし、そこから急転直下の没落、次々に配下に独立を許し、最後は殺されてしまったという。

苻堅は諸民族を糾合するという理想を持ち、滅ぼした国の皇族を重用したり、腹心の王猛も自分とは違う民族(苻堅は氏族、王猛は漢族)だったりで、周りからは反発があってもそれを押し通していたという。幼いころから学問好きだったとのことで、その辺も影響したのかもしれない。学問好きはコスモポリタンになりがちです、いつの時代も。

苻堅は「腕が膝に届き、目に紫光を宿す」という異相で、まあ、化け物ですね。

 

Wikipediaにはもっと詳しく載っているし、苻堅のコスモポリタンとしての器量の大きさと、自負の大きさから天下統一にこだわって自滅していく様から何かを学ぶ人、腹心王猛との関係から何かを学ぶ人、淝水の戦いを分析して何かを学ぶ人、昔滅ぼした国の将であった姚萇を重用したにも関わらず、最後に王位の禅譲を迫られ断固拒否し殺されてしまったところから何らかのドラマを感じる人、何のために戦い天下を統一したかったのかと嘆く人、この時代の中国の人とは思えないほどのコスモポリタンになぜなれたのだろうと思いを馳せる人、いろいろいらっしゃるとおもうのだけれど、それはみな苻堅の話。

まあ、人は見たいものしか見ない、見られないので好きなものを持っていけばよいと思うのですよ。

 

たとえば。

日本の戦国時代と俗に呼ばれている時代、諸侯はみな天下統一のために頑張っていたかのように言われることがあるが、そんな人はほとんどいなかったとのこと。

考えてみれば当たり前ですね。

日本という概念だって持っている人が少なかったでしょうし、隣の隣の国の情報ってどうやって入ったのだろうと思うのです。

それから1200年も前の中国ではどうだったのでしょうね。

苻堅は本当のところ、何を考えていたんでしょうか。

 

しかし。

Indigoさんのお題は「符堅」であり、もしかすると苻堅の偽物の話なのかもしれない。

プリティ長嶋みたいな。

中邑珍輔みたいな。

作り物の腕を膝まで垂らし、LEDで紫に目を光らせたお面をかぶって節分にちびっこを襲っている苻堅をモチーフにした化け物のことなのかもしれない。

それは「てんかとーいつー!!」などど鳴く化け物かもしれませんね。

 

 

(テーマ「符堅」)

G-Sports(2月号)  がりは

  • 2019.02.04 Monday
  • 08:50

先月号のG-Sports、皆様のお役に立ちましたでしょうか。

今月も雑兵日記PREMIERの月間投票に資するアウトラインをお届けいたします。

それでは2019年1月のトピックスです。

1.執筆陣が多様化、10名に

2.サウジアラビアの嵐

3.テーマ「おもち」コンテスト、白熱

4.がりはの受注生産、続く

 

それではそれぞれ見ていきましょう。

1.執筆陣が多様化、10名に

 

「システム」とも呼ばれる三名、がりは・たりき・Mr.Indigoは月産8本以上のペースを続けています。そこに長編連載中のMr.ヤマブキが週1回、最近少し減らしてきているMr.アールグレイ、テーマコンテストを中心に活躍しているMr.X、山を中心に活躍するMr.マルーン、年末に久々に復活したミッチー、年始のご挨拶をしたA.ハッガリーニ、そしてサウジアラビア紀行を連載開始したMr.ホワイトと多士済々10名が参戦しました。バラエティの豊富さ、生態系の多様性を維持することが雑兵日記PREMIERの価値に直結しますので、今後も続いてほしいものです。

 

2.サウジアラビアの嵐

 

Mr.ホワイトが突然綴り始めたサウジアラビア紀行。サウジアラビアというと石油、王族、金持ち、オワイランというようなイメージの乏しいけれどもなんとなく知っていると思い込んでいる国でしたが、全然違いました。ホワイトが書いてくれなければ一生知ることがなかったであろう情報が格調高い文章で綴られています。この連載、終わってほしくない。。。

 

3.テーマ「おもち」コンテスト、白熱

 

おもち、でどこまで広がるものかな、と思いましたが結構広がりましたね。最近コンテストを荒らしまくっていたMr.Xの不参加が残念でしたが、おもちを正面から取り上げて小説に仕立て上げたMr.マルーン、ヤマブキ、やきもちに変化して漫才を書いたがりは、もちからの連想ゲームをなぜかパスカルの名言集とミックスしてきたMr.アールグレイ、おもちゃで奇襲をかけたMr.Indigo。特に普段は奇襲に対して点が辛いIndigoがポリシーを捨てておもちゃに行ったのは、マニア的には注目すべきところです。さてさて、どうなりますか。

 

4.がりはの受注生産、続く

 

12月に魂を見せる!と意気込んで始めた「テーマにふさわしいもの」で投票されたものを順にテーマにして書いていく試み、一月も何とか続きました。もったいない精神で続けていきたいものです。若い順にやっていってくれると、全部拾えるんですけどね。

 

おまけ

 

5.たりき、一月は的中なし

 

ま、平常運転かもしれませんが。

惜しかったのはありましたけどね。

 

一月の投票用紙はこちらです。

投票よろしくお願いいたします。

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