テーマコンテスト受賞配信  Mr.アールグレイ

  • 2020.03.25 Wednesday
  • 07:00

テーマコンテストの女王の座を防衛いたしましたアールグレイです。

こんばんは。

今回は新型コロナウィルスの拡散防止の観点から受賞パーティはとりやめ、私の自宅からメッセージを配信することになりました。

あらー、コメント沢山ありがとうございます。

初めてやるのでいろいろ不慣れな所があると思いますけど、よろしくお願いしますね。

 

今回の投票を私になりに振り返ります。
努めて平静に。
MVPから参りましょう。
1/15の方が私に投票してくださってます。
みしぇるさん、ありがとうございます。
もっともっと面白い作品をたくさん書きたいと思っています。
これからも応援よろしくお願いします。

次に最優秀作品賞です。
私は三本エントリーしていました。
結果はこんな感じです。
「逆立ちしたってかないっこない」1/15
「雨の日のライオン」1/15
「気象兵器」0/15
私の作品に対してほめていただき過ぎのコメントをBlackさんから頂戴し、本当に嬉しかったです。
とてもかなわないですけれど、これからもBlackさんを目指して文章を紡いでいきたいです。
また、ダックスフンドさんのコメントも嬉しかったです。
多分フィクションですよ(ニッコリ)。

しかし、承認欲求に灼かれた私がコメント欄を読んでいくと、「アールグレイどれも良かったよ」的な投票にぶつかります。
がりはさんです。
じゃあ入れてよ!!
でも、彼も同じ思いを今月はしてそうなので、そっとしておきます。

で、本題のテーマコンテストです。
私の作品「気象兵器」は4/15を集めて同点優勝でした。
私はPinkさんの作品が素直に一番良いと思いました。
Pinkさんはヤマブキさんの作品に入れておられますね。
私に投票してくれたのはがりはさん、ごとうさん、ハッタリストさん、うべしさんでした。
凄く素敵な四名の方に見えてきます。
ごとうさん、初めまして。
これからも是非読んで頂いて、できれば私に投票をお願いいたします。

ハッタリストさん。
私はかなり前からPREMIERの読者で、ハッタリストさんの作品がとても好きでした。
票を入れて頂いてとても嬉しいです。
ハッタリストさんと戦ってみたいのですが、もう書かれないのですか?

うべしさんがうべべさんだとすると(違っていたらすみません)、あのアンパンマンのうべべさん、あきらめさせ屋(今回MVPで票が入ってましたね!)のうべべさんでしょうか。
戦いましょう。
テーマコンテストで。
がりはさん、ギリギリで投票を私に切り替えてくださってありがとうございます。
あなたのおかげで薄氷の防衛でした。
あれ?
今回がりはさんだけテーマコンテスト得票ゼロじゃないですか?
ちょっと気合を入れてくださいよ!

そろそろ次のテーマを発表しなければならないようです。
私は「おじさん」をテーマに選びます。
今回はピンクさんの選んだテーマとのダブルテーマになるようですので、その観点で使いやすそうな物を選びました。
強豪との対決を楽しみにしております。
よろしくお願いいたします。

 

あれ?

まだ時間ちょっと余ってますか。

じゃあ最近の私のお話を。

自らテーマを「ヤマンバ」に設定しておいてなんなんですが、私が「ヤマンバ」にたどりつくまでにあと「分数」「平静」「なのはな」「コロナ」という四つの作品を書く必要があります。
どう考えても無理。
愛しのブッキーと戦うためにブッキーのくれたテーマを指定したのですが、まさかこんなトラップがあったとは。
苦しすぎます。

でも、頑張りますよ。

まずは今月のテーマにたどりつくところから・・・。

それじゃ今回の配信は以上です。

来月はパーティが開けるような雰囲気になっているといいんですけどね。

 

(テーマ「分数」を使って努めて「平静」に会見しました。)

さくら  Mr.アールグレイ

  • 2020.03.23 Monday
  • 07:00

町の小高い丘に一本だけ咲いている大好きな桜の木の下まで駆けていくと、桜の木がどんどん大きく見えます。
近づいているんだから大きく見えるのは当り前じゃないかと思われるでしょう。
当り前の大きくなり方ではなかったのです。
ぐんぐんぐんぐん大きくなっていきます。
それとともに私はぜんぜん近づけなくなっていきました。


やっとの思いで下にたどり着いた時に、降ってきた花びらの下敷きになって私は四つん這いになりました。
花粉まみれになって巨大な花びらをどけると、凶悪な鳥が頭上の花弁をつついて落としているではありませんか。
察しの良い私はわかりました。
あの獰猛な鳥はスズメ、この巨大な花びらはソメイヨシノ、それらが大きくなったのではなく、私が小さくなったのだと。

花びらをカッパのように被ったまま、土がずぼずぼする中必死に漕いで進みました。
横を音を立てて通り過ぎていく特大のミミズやら働きアリの隊列やらを見るに、どうも私はとても小さくなってしまったようです。
ミミズやらアリやらは私のことを食べるかな、どこが急所かなと忙しく頭を働かせながらサクラのごつごつとした根に飛びつきました。
私は桜が好きですし、守ってくれそうに思ったので。
とにかく地面から早く離れないと何に襲われるかわかりません。
ヒキガエルに誘拐されたり、モグラに求婚されたりするかもしれません。
とにかく少しでも高い所へ。
幹を目指して根の尾根を渡っていきました。
ボロボロとはがれる桜の皮。
めくれたところはほんのりピンクになっていて、桜は体の中から桜色なんだなあと感心しました。

 

親指姫はチューリップから生まれて、生まれた時から小さかった。
私もサクラから生まれていればどこが安心で、何をしてはいけないのかわかっただろうに。
こんな時に助けてくれる人の一人や二人いただろうに。
桜の花びらから生まれた桜姫、うーん、薄命にも程がありそう。
不思議の国のアリスは薬を飲んで小さくなった、私は何かをして小さくなったんだろうか。
桜に向かって走っただけ。
桃の花たちがメンタルの不調を抱えていて、私がうまく向き合えないまま逃げ出してこっちに駆けてきただけ。
近づいたから小さくなったのなら、遠ざかれば大きくなるのではないか。
でも土の上に戻るのは走りにくいし、何が出てくるかわからなくて嫌。

 

強い風が吹いて、花びらもろとも私は舞い上がりました。
舞い上がったというのは「花びら」に引っ張られた表現で、実際は乱気流に飲み込まれてめしべを束にしてつかまっているのがやっと。
眼がくらむような高さまで吹き上げられた、と思ってうっすら目を開けた途端にぐんぐんと身体が大きくなり、大体元の大きさに戻りました。
私はどこに行っていいかわからず、立ち尽くしてしまいました。
やがて私には鳥が止まるようになり、春には花が咲き、花が散ったあと葉が茂り、冬はほとんど寝て過ごすようになりました。

きっと春には体の中からピンクになっていると思います。

確かめる術はないのですけれど。

 

 

(テーマ「さくら」。なんだか自分の体の中にいる知らない人が書いたような感じです。)

花言葉  Mr.アールグレイ

  • 2020.03.16 Monday
  • 07:13

今日もアールグレイさんは家の周りのお花さんたちに声をかけてまわります。
お花さんたちも皆アールグレイさんにご挨拶します。

 

あら梅ちゃん。おはようさん。
「おはようございます!昨今の肺炎騒ぎで世の中は騒がしいですが、高潔なアールさんは不屈の精神精神できっと切り抜けられますでしょう!」
そんなに固くなってどうしたのです。いつもどおり、丁寧に丁寧に生きていればそんなに慌てることもありませんよ。一昨年あなたから頂いたもので作った梅干しで粘膜を健康に保てていますよ。いつもありがとう。
「そういっていただけるととっても嬉しいです。ごきげんよう。」

 

おやおやネモフィラちゃん。
「可憐なアールさん!おはようございます!」
私仕事がちょっと変わったの。うまくやっていけるかしら。
「どこでも成功されますよ。」
ありがとう。

 

むせるような菜の花の香りね。
「快活活発元気いっぱい、私のアイドルアールさん!!」
なになになにその最近のアイドルがやらされてる自己紹介みたいな声掛けやめてやめて。
「小さな幸せの競争、豊かさ、財産の象徴アールさん!」
今年は暖冬のせいで、菜の花ちゃん壊れちゃったのかしら。
お大事にね・・・。


あら、おとなしい桃ちゃん。
「おはようございます!今日も良い日よりですね。私はチャーミングで気立ての良いアールさんのとりこです!天下無敵です!」
あら、ありがとう。菜の花に比べると自然ね。すっごく自然。あなたが照らせる場所の邪気を祓いなさい。あなたが祓えない邪気は早急に私までエスカレーションしなさい。
「わかりました!でも折られるのは嫌・・・。」
そうよね、痛いよね。慣習や行事を大事にする人ほど折るのよね。私はお互いを邪魔しない範囲でみんながやりたいことができる世の中がいいと思う。あなたは折られるべきではない。
でもね、桃の節句に向けてあなたを手折ろうとする者がいたとしても、できれば許してあげなさい。その者は花が咲かないものなのです。あなたにすがる者なのです。どうか許してあげてほしい。
「いや・・・・と思う自分がいや・・・。」
邪気を祓うのには邪気をもってするのか。しかしこれは邪気なんだろうか。邪気がない、無邪気なのではないか。たくさんの桃の花からの声を受け止めきれず、アールグレイさんは桜の木の下に駆け出しました。

 

(テーマ「もも」難産でした。花言葉って誰が考えたんでしょうね。)

 

テーマコンテスト受賞スピーチ

  • 2020.02.22 Saturday
  • 21:57

こんばんは。
イメージカラーはパウダースノー、小説班のアールグレイです。
この度、久しぶりに賞を頂きましてありがとうございます。
しかしながら申し上げたいのは、私の作品はこの賞を頂くのにふさわしいものではないということなんです。
気になって調べたことを書いただけです。
ブラックさんのような深い洞察と詩情もなければ、Indigoさんのような緻密さと熱量もありません。
(がりはさんは「ザ・プリミエール」を登場させるのを忘れたんでしょうか。よくわかりませんでした。)※小声で。


本作は編集長に掲載を止められそうになったものです。
ストロングスタイルってがりはさんの中にだけあってハッガリーニさんの中には無かったのかしら、と思いました。
ま、そんなことは脇に置いておいて。


今回お詫びしなければならないことがあります。
私は小説班に異動したにも関わらず、また他の作品は小説を書いているにも関わらず、本作はお気楽なエッセイです。
誠に申し訳ございません。
私をMVPに推してくださったお二方も、作品自体の評価ではまだまだということのようです。
反省しております。
たくさん書けば良いものを書けるのでしょうか。
同じ小説班のX先輩の一票が心にしみます。


あら、いけない。

湿っぽくなっちゃいました。

いつもの明るくて優しいアールさんに戻りますね。
テーマコンテストについてですけど、皆さんの作品を楽しく読みました。
ありがとうございました。
私としては村をたくさん踏破してそうなマルーンさんや、限界集落での生活インフラとして医療に一家言ありそうなヤマブキさんの作品も読みたかったです。


そろそろお時間が来たようなので、締めますね。
それじゃいつものやついきますか?
東京ドームのみなさーん!!
え?違う?
そんなに大きくなかったですか。
テーマを?
ああ、すみません。
最近丁寧に生きてなくて。


じゃあ改めて、テーマを発表します。
来月のテーマは「ヤマンバ」です!!
大好きなヤマブッキーと勝負したいので。
ほほほ。


それでは後楽園ホールにお集まりのみなさーん!!
え?コロナのせいで、観客がいない?
ほんとだ。
これVRだったのね…。
さっき東京ドームのくだりの時、どういう気持ちだったんですか!

まあいいや。
じゃあお待ちかねの大合唱、思う存分楽しんでください。
PREMIERをご覧のみなさん!
しぇりいいいいいいいいいい!!!!

【テーマ】気象兵器  Mr.アールグレイ

  • 2020.02.16 Sunday
  • 19:08

最後に恋をしたのはいつだっただろう。
一つはっきりしているのはそれは冬で、記録的な暖冬だったということだ。
統計を見ればすぐにわかる、手帳を見ればすぐにわかる。
でもそれをしたくない。
気持ちの全てを持っていかれた、全てを詰め込んだ恋だった。

人に相談するのが苦手な私は始まりから終わりまで誰にも言っていなかった。
終わった後、気持ちの持って行き場がないまま宙ぶらりんな魂を抱えて、春は近づいてきた。
たまにご飯を食べる口の悪い友人からお誘いがきた。
乾杯をして「最近どうよ」という極めて雑な問いがいつものように来たタイミングで、自分の恋の顛末を話すことにした。
乾いた感じで、つまみ何にする、というトーンになるべく近い感じで。

一生懸命頑張って、
「久しぶりにめちゃくちゃ好きな人できたんだけど、一冬もたなかったわ。なんというかスタミナがさ。」
と言ったのだけど、それが終わる前に語尾を食べる形で
「だから暖冬だったのか!お前のせいで日本の雅が失われるだろう!!」
と言われ、記録的な暖冬を指してお前のせいだと笑った。
ある引退したテニスプレイヤーが日本を出ると大雪が降ったり、猛暑になるという事象があったそうだ。
私の恋も似たようなものだ、と。
四季という日本の財産がなくなっちゃうから冬に恋するのは控えろとか、とろ火でことことやれとか、終わった後なのになぜかアドバイス調なのはなんだったのだろうか。
そのうちどんどん乗ってきて、アル・ゴアも事実に基づいて話しろよな、こんな大事なことを見落とすなんて、あたりから人を人と思わなくなり、恋では温暖化、怒るとどうなるの?めっちゃ笑うと風吹いたりする?気象兵器やな。
最終兵器お前やな、すごい夕焼け出せたりする?お前がどこにいて恋をするかどうかはお前とNASAしか知らん最高機密や、いや、お前もコントロールできひんねんから若干神に近いよ、存在が。四大災厄の一つ違うか。などとなぜか関西なまりになって、止まらなくなった友人に防戦一方だった。

さんざんからかわれ、カチンときて席を立とうとしたタイミングで、バーカウンターを滑るグラスのような滑らかさで「辛かったんだね。」が手元に来た。
そう言われるまで私は私が必死で話をしようとしていたことにも、それを何とか笑い話にしようとしていたことにも気が付いていなかった。
口を開いてしまうと体の中からみっともなく何かが溢れそうなのを、できれば笑い話にしたかったのだ。
それをさせずに茶化しに茶化した彼のある種の野蛮さで私は救われたのだ。


立とうとして大きくて暖かいマフラーを持ち上げたタイミングだった。
一連の動きでそれは首に巻かれてしまい。
「今日は帰るね。ごちそうさま。またね。」

彼は私に肝心なことを伝えなかった。
私はそれを確認しなくても良いと思った。
そして、その肝心なことについての留保、保険のために、私は彼に肝心なことを伝えなかった。

 

彼のふりやまぬ雪のようなからかいのおかげで私の恋は永久凍土の下に埋まった。
今年は暖冬らしいが、今回は私のせいではない。


(テーマ「暖冬」。フィクションかどうかはあまり関係ないですよね。)

雨の日のライオン Mr.アールグレイ

  • 2020.02.10 Monday
  • 23:44

動物園に行くのが趣味だったことがあります。
雨の動物園は人が少なくて最高です。
天気予報が雨になると制服の上からレインコートにレインブーツ、学校に行かず千葉駅からモノレールに乗って動物公園に向かったものでした。


年間パスポートでスマートに入り、その頃はワオキツネザルやアビシニアコロブスといった落ち着きのない猿を観ているのが好きでした。
追いかけっこして遊んでいる小猿が大人の背中を踏んで、それを三回ほど繰り返した時にものすごい声で吠えます。
その声に反応して遠くの南国の鳥が断末魔のような声をあげます。
吠えられた子猿たちはたいていもっとスピードアップして、他の大人も踏んでしまい、懲らしめられて終わります。


オランウータンはいつも少しイライラしていて、なにかあるとフンを投げてきました。
傘は雨や雪だけを防ぐわけではないのです。


ゴリラは私のことをじっと見つめ返してくることがあり、どちらが観察されているのかわからなくなることがありました。
ずっとずっと賢い生命体のような気がしてくるのです。


象はいつも憂鬱そうでした。
ほとんどこちらに尻を向けて、何か内緒話をしているみたいで。

覇気がないんですよね。

漂う諦念。



動物園に行くと一応ライオンの檻に行きます。
なんというか、ご挨拶せねばと。

TMネットワークの金曜日のライオンという曲があります。
当時の私は軽快なメロディとキレキレのウツの歌唱、さぞかしサハラは踊り狂うライオンだらけなんだろうとハートを鷲掴みされていました。
(クラシックばかり聞いていた反動でしょうか。)
何かが起こりそうな予感に満ちた曲です。
だけど、金曜日どころかいつ行ってもライオンは寝てばかり。
挨拶しても聞こえてるんだかいないんだか。
頭だけ大きくて、あれじゃ走れないだろうと。


あまりに人がいないので、私も油断してたんでしょうか。
ライオンに向かって
「そんなに頭でっかちで走れんのかよ。」
と話しかけていました。
すると背中を向けて横になっていたライオンが頭をこちらに向け、私を睨んだのです。
ものすごく冷たい目でした。
彼が狩る側で私が狩られる側であることが直観されました。
私は身動きもできず、どれくらいの時間が経ったのかもわかりませんでしたが、彼が視線を切ったあとも動けず、珍しく彼が立って向こうの岩の陰に消えて、やっと息をつくことができました。
以来、二度とライオンの檻にはいかなかったのですが、ライオンがいると思うだけで落ち着かず、そのうち動物園にはいかなくなりました。


レッサーパンダの風太なんか影も形もない頃のお話です。


(テーマ「ライオン」。もちろんフィクションですよ。学校をサボって動物園だなんて。)

逆立ちしたってかないっこない! Mr.アールグレイ

  • 2020.02.08 Saturday
  • 11:55

逆立ちしたってかないっこない、という言葉があります。
しかし、普通にやっても勝てないのに逆立ちしたらますます・・・と思いませんか。
勝つ気あるのか、と問いたくなりますよね。

 

三十代に入った頃、少しの必要性と多くはストレス解消のために、クラヴ・マガのジムに通っていました。
様々な護身術がある中で私が気に入ったのはそれが近接格闘術であり、殺人術だというところでした。
私の抱えていた少しの必要性はそれを要求したのです。
懲らしめることなど求めていない、私は私に降りかかる火の粉を払うのに精一杯でした。
最短距離で相手の戦闘能力を奪う、そこには派手なハイキックなど必要ありませんし、巴投げもブレーンバスターも(かかれば一撃必殺だと思いますが。)必要ありません。
不利な体勢から始まる闘いの中で、自分の受けるダメージを最小限にしながら、各急所を効率的に狙うことが求められるのです。

私の通っていたジムは護身術のクラスと総合格闘技のクラスがあって、ある日護身術のクラスを終え、シャワーを浴びてありがとうございました、と声をかけようと思った時、総合格闘技のクラスのスパーリングが目に飛び込んできました。
普段は日本人だけしかいないのですが、その日は違っていました。
うちのジムの日本人と、もう一人はもじゃもじゃ頭のすごく大きな(この言い方はなんだか今嫌ですけど)ガイジンでした。
私の知っていたスパーリングは、プロレスやボクシングのそれと似た構えだったのですが、その日目の前で展開されていたそれは、ガイジンがまるでサンバを踊るような軽快なステップを踏み続けていました。
上体を低くし首を左右に振りながら、足をさばいています。
時々側転をしたり、側転の途中で蹴りを繰り出すのですが、それが不規則で相手はかなり戸惑っているように見えました。
私は楽しくなってしまい、彼に合わせて軽くステップを踏んでいました。
突然、彼の体がまっすぐに体が伸び、相手に前蹴りが突き刺さりました。
横にずっとステップしていた人が突然すごいスピードで。
下腹部に直撃したせいで完全に前のめりになった相手の頭部を、逆立ちした彼は上から蹴りで叩きつけました。
ヘッドギアの上からでも十分なダメージを予想させるその蹴りは完全に相手をノックアウトしてしまいました。

 

最短距離で急所を狙うクラヴ・マガを習っていた私は完全にその人に憧れてしまい、インストラクターに「あの人は何をしている人なんですか?」と聞きました。
「カポエイラだよ。」
「カポエイラ?」
「ブラジルの。ほら、サッカーだってうまいじゃん。彼らはサッカー下手なやつを見ると『日本人』て馬鹿にするらしいよ。」
「え?ほんとに?」
「行ったことないし話したことないけどね。あの人と話してみる?」
「いいの?」
「アリさんていうんだけどね。」
「え?ブラジル人なのに?」
「ブラジルじゃないみたいよ。」
とひそひそ話しているうちに本人が目の前に来ました。
「お疲れ様です。」
大きな笑顔と美しい日本語とともに右手を差し出したアリさんに釣り込まれるように右手を出したら、何をされているかもわからないうちに肘の逆関節を極められていました。
「護身術をやっているんでしょう?まずは気持ちからですよ。」
耳元で囁かれてゾクッとしました。
インストラクターが慌てて
「アリさん!!」
と割って入ったので、ぱっと離すと私に正対し、
「失礼しました。またどこかで!カポエイラはお勧めしませんよ!」
とお辞儀をして出て行ってしまいました。

 

(テーマ「逆立ち」。がりはさんの「アリ・ホッグァー」さんを借りてみました。全部フィクションですよ、多分。)

【テーマ】長生村について Mr.アールグレイ

  • 2020.01.30 Thursday
  • 08:42

私が住んでいた千葉県には一つだけ村があります。
長生郡にある長生村。
「ちょうせい」と読むのだけど、そのおめでたい名前はどうしても「長生き」と読みたくなります。
オリンピックのサーフィン会場である一宮の北で、アイガモ農法のお米が名産で(一回見学に行った)、くらいのことしか知りませんでした。
平成の大合併の話があった時、あの辺一帯は茂原市になるものだと思っていたけれど、くっつかず六個の町村が今もあります。
今回のテーマで長生村を思い出したので少し調べたら面白くて止まらなくなってしまいました。

 

何が面白かったのか。
まず、周囲の5町よりも人口が多いのに村。
サーフィンの一宮、テニス合宿の白子、笠森観音の長南、天然ガスの睦沢、長柄ダムと廃墟の長柄を抑えてぶっちぎりの人口一位。
あえての村!という感じがすごい。
町とか言ってるけどうちの方が人口多いんですけど!という感じ。
無いんでしょうけどね。

町の成立要件はあるけれど、村の成立要件は特になく、村から町に昇格?する義務もないそうなので、手続きが面倒だっただけでしょうかね。


「長生き」には「町」でも「市」でもなく「村」が合うというのはわかる気がします。
ピンと来ないというか。
しかし読みとしては「チョウセイ」なわけで、「ちょーせーちょー」の方が「超成長!」という感じで意識高い系の若者を引き寄せたい企業の(怪しい)セミナーを呼び込めそうです。

 

幸福の科学が大学を開学しようとして文科省の認可が下りなかったニュースがありましたが、その予定地が長生村でした。
千葉科学大学は大丈夫なのに?と大変興味深くニュースを眺めていたのですが(別種の問題ですけれど、似た部分もあるので。)、認可が下りなくても学校自体は私塾として開校されています。
新入生480人は村内の寮で暮らすこととなっており、人口の三十分の一を占める一大勢力となります。

順調なら四年で十分の一以上の勢力が!

 

双葉電子工業の工場群が村内にあり、そこで働く従業員の寮も村内にあるとのこと。
従業員が単独で約千人、連結で約五千人。
村内に住んでいるのが五百人としても村の30分の1ですからね。
一大勢力ですよ。

 

現職の村長が獲得した票が約4300票で、次点との差が400票足らず。
今年が選挙の年にあたるようなのですが何が起こるか楽しみにしたいと思います。
いや、起こらないでしょうけどね。


 

眼球  Mr.アールグレイ

  • 2020.01.27 Monday
  • 00:00

オカシラ付きの鯛、と言われた時に「付き」に着目すれば尾と頭なのだとわかりそうなものだけど、おめでたいことをジャパニーズスタイルでお祝いする時に「お頭!」という威勢の良さ、意気の良さはとっても似つかわしく思えて、長い間何となく「お頭」の方でイメージしていて、突き詰めて考えると祝いの席に招かれた魚屋のお頭が持ってくる一番素晴らしいお魚が「お頭付き」なのだと勘違いしていました。
お相撲さんが本場所で優勝すると、鯛を片手に皆で記念撮影するじゃないですか。
周りにお頭らしき人も見かけるんですよ。

 

なんて話しながら私はお魚料理で頭が付いているのが苦手。
眼が合うとどうしても。
焼かれて白くなった眼球をほじくって食べている人を見ると、気味の悪さと気持ち悪さとそれがどうしてそんな感情を起こすのかよくわからず処理ができないストレスとで「どうしてそんなことができるの!」と叱りつけたくなるくらい。
刺身は平気なのに。
眼が眼球がダメ。
あんな目をした男たちに追いかけられたことがあって、その時は仕方がなかったの。
仕方がなかったんです。
持っていたボールペンでもってぐにゅっと・・・・。

 

「箸をそんな風に握りこんでどうしたんですか?」
気が付くと私は二本の箸を逆手に強く握ってしまっていた。
「なんでもないんです。ちょっと外しますね。」
箸をおいてお手洗いに立つことにした。
鯛の塩釜が開いてからどうにも調子がおかしい。
お手洗いで個室に入って、自動で蓋があいたその便座が魚の下唇のようだと思う。
どうにも座ることができず、ただ呼吸のことだけを意識して立つ。
追いかけられたあの日のことが心の真っ黒い底の方から浮かび上がって来ようとするのを、深い呼吸で押し下げる。
息を吐くときは少しずつ、深さはキープしながら体を薄くしていくイメージで。
どのくらい戦っていたかはわからないけれど、何とか収まった。
個室から出て、目元を少し直してリップを塗り直し、お手洗いを出たところに男が立っていた。
「大丈夫でスカ?」
もう語尾がおかしい。
特徴のない眼鏡の奥にまたあの眼球だ。
まずい。
ボールペンは持っていない。
「箸ならココですヨ?」
ここは狭い広い所にでなくては。
でもこいつが邪魔。
にっこり微笑んで
「大丈夫です。心配してくれてありがとう。戻りましょう?」
ジャケットの左胸の模様のように見えるはずのスリットに仕込んだカミソリを右手の中指と人差し指で探りながら。

 

(テーマ「眼球」。難しかったです。私のアイドル、マルーンさんとヤマブキさんを意識しました。)

流れ星を投げる  Mr.アールグレイ

  • 2020.01.25 Saturday
  • 00:00

この地に流されてきてもう十年になる。

子どもの頃、夜になると空を見上げて星座を探し、望遠鏡で月や惑星を見た。
しらじらと光っているだけの月や惑星が豊かな表情を見せることにすっかり心を奪われた私は親に叱られてもこっそり夜中に天体観測をしたものだった。
しぶんぎ座流星群やしし座流星群のタイミングには一晩中眺めるため学校を仮病で休んだ。
お腹が痛いという理由は誰にとっても都合が良かったのだろう、大丈夫なの?と問われても寝てればすぐに治ると思うと答えればそれ以上詮索されなかった。
実際に寝てれば”治る”のだから。
星が流れて消えるまでの間に願い事を三回唱えられればその夢が叶うと教わった。
そんなのは嘘だと思った。
あの短い時間では叶いそうもない具体性のない夢しか唱えられないし、具体的なものはとてもそんな秒数では三回も唱えられなかった。

三十を目の前にし、仕事に追われる生活に疲れたある日、真夜中にメールが来た。
「月がきれいだよ。」
終電での帰り、空を見上げても月はなかった。
真っ暗な空をツイイと星が流れた。
私はああ、と思った。
今度流れ星を見たら「星を投げたい」と願おうと。
空を見上げて流れ星を待つのではなく、純真な少年少女たちの願いを叶える側に回るべきではないか、そんな気持ちになったのだ。
そうしたらツイイと。
「星を投げたい星を投げたい星を投げたい」
冗談のつもりだったのだが、三回言えた。
言えたと思ったら私はここにいた。

荒涼とした月の裏側。
私の職場。
うずたかく積まれた、縁がギザギザした反射板。
直径十メートルの円形のそれを気合とともに投げる。
最近は「そおおおぅいやああああ!!」というのが一番速度が出る。
月の第二宇宙速度にまで持っていくには修練が必要だった。
今や私はヒョロヒョロのOLではなく、ムキムキのアスリートであった。
円盤は投げた瞬間に見えなくなるほどの勢いで消えていく。

私としては子供たちが夢を持つきっかけを与える人になりたい、くらいの気持ちだったのだがまさか星を雄たけびとともに投げる人になるとは思わなかった。
流星群のシーズンにピークを合わせて体を作っていく。
誰かが説明してくれるわけではないのだけれど、そうしなければならない気がするのだ。
十年経っていっちょ前の星投げに近づいてきたと思うがまだまだだ。
私の願った流れ星は本物だったのかしら、と時々思う。
 

 

(テーマ「円盤投げ」。なんかちょっと思っていたのとは違うのですけれど。)

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