「あとがきに代えて」(前編) Mr.スカーレット

  • 2014.06.22 Sunday
  • 21:13
 僕の作品「生活保護を語るときに僕の語ること」が5月の最優秀作品に選ばれました。投票してくださった方、どうもありがとうございます。あれ以上書くつもりはなかったのですが、皆様の熱い感想や温かい応援コメントを読んで、せめてお返事を書かねばならんと思い立った次第です。以下、一問一答形式で各コメントにお答えします。

●「長さからして、これを最優秀にしてアフリカさんをMVPとしました。」(No.2のダメともさん)

投票ありがとうございます。「長さは正義」がプレミエールの傾向ですね。一つのテーマを深く掘り下げることで、読者の頭に残りやすいという利点があるのでしょう。
ちなみに余談ですが、公務員が仕事で書く文章は、正確性を期するあまり長くなりがちです。以前に某課長が「市役所で部長になるための条件」として、「難しい内容を易しい言葉で文章化する能力」を挙げられたことがあります。かくいうその方は課長止まりで定年されました。残念ながら、ご本人にその能力はなかったのでしょうか・・・。

●「スカーレット氏の記事の7のまとめ方は意外であった。それまで全く救いようがないなあと思いながら読んでいたが、そういう結論だったんだなあと。いい出会いや思いがあったなら、そちらの方の話も聞きたかったかも知れない。」(No.3のダメともさん)

「いい出会いや思い」で何を想定されているかは分かりませんが、例えばそれまで働く意欲のなかったケースが、CWの熱い支援で改心。見事に就職を決め、「CWのおかげで人生をやり直すことがでそうです。ありがとう!!」と涙の自立・・・というドラマ的な展開ならば一切ありませんでした。
就職を決めてくるケースは、CWがうるさく言わなくとも自ら危機感を持って活動できる人です。逆にそれができないケースは、CWがどれだけ言おうと暖簾に腕押し、どうにもなりません。残念ですが、それが現実です。
ただ、出会いという点では、生活福祉課でできた大勢の同僚は僕の貴重な財産です。

●「とっても勉強になりました。時間が取れたときに昔のとあわせて13本を一気読みしたのですが、あっという間でした。これからも書いてほしいという期待をこめまして最優秀にさせていただきました。」(Eのさん)

こういうストレートな賞賛は照れますけど、やっぱり素直に嬉しいです。読みながらニヤニヤしてしまいました。レギュラー執筆はお約束できませんが、ネタが溜まればゲスト参戦は続けていくつもりです。次回作の発表までは、申し訳ありませんが13本一気読みを繰り返しておいてください。

●「スカーレットさんの大作は妥当でしょうが、あの日に帰りたいも好きです」
●「CWの話以外でも書いて下さい。」(ヤマブキさん)

投票ありがとうございます。あの日に帰りたいは僕も好きな作品です。誰にでも取り消したい過去はありますが、こればかりは本当にどうしようもない。月並みですが、失敗の原因を分析できたら、あとはスッパリ忘れるしかありませんね。まぁ、それができないから人間は辛いんですけど。
次回作として、市役所・総務課編をお届けする予定です。乞うご期待。(時期未定)

●「作品数は多くはありませんでしたが、一つ一つが興味深かったため。CWの話以外でも、市役所あるあるみたいなのでも読んで見たいです。」(みしぇるさん)

 あるあるとは少し違いますが、一度「世の中の公務員批判に反論する」というテーマで書いてみようと思ったことはあります。言い訳くさくなるので止めましたけど。「市役所あるある」、考えておきます。

●「毎回、ゲスト参加を評価しています。今月はゲストさんがたくさんいましたが、その中でも長編を書かれたことを評価したいと思います。」(精霊さん)

 MVPおめでとうございます。実はこっそりMVPと最優秀作品の2冠に期待していたのですが、精霊さんにやられてしまいました。それにしても、大河の主人公を当てたのは凄いの一言ですね!

●「作品の数もそうですが、読んでいてとても心に残ったからです。」
●「とても面白かったからです。」
●「ぜひ、次の職場でのお話も書いてください。」(ダックスフンドさん)
 
MVPと最優秀の両方に投票、ありがとうございます。次の職場は総務課というところで、生活保護とはまったく違った仕事をしています。文章化できるほどの知識・経験が身に着き次第執筆しますので、気長に待ってもらえると助かります。
あと、別に20代が終わっても何てことはないので、怖がる必要はありません。

「あとがきに代えて」(後編) Mr.スカーレット

  • 2014.06.22 Sunday
  • 21:12
●「CWのお仕事、ご苦労さまでした。それだけです。」(No.11のダメともさん)
 ありがとうございます。大したCWではありませんでしたが、自分なりに給料分程度は一生懸命やってきたつもりです。

●「今月は非常にヴァラエティに富んだラインナップで読んでいて楽しかったが、社会へのコミットという今までのPREMIERで弱かった部分で良作が二つも読めて良かったなと思います。次点として天上天下唯我独尊を挙げておきます。」(がりはさん)

 僕もイエローさんの授業参観は興味深く読みました。失礼を承知で書くと、うちの市役所では学校の先生の評判は芳しくありません。学校側の理屈と市役所側の理屈にズレがあるように感じます。学校の先生には職人肌の人が多く、「現場を知らん役人の言うことなんか、眠たくて聞いてられっかい!」という意識があるのでしょうか。これはかなり分析に値するテーマだと思いますが、僕が書くにはあまりに学校現場に関する知識がなさすぎます。
イエローさんには、ぜひそのあたりを文章にしてもらいたいです。

●「文句なし。文章が上手いのは元々そういう人なのか、公務員は文章をたくさん書くからこなれているからなのか。」
●「会ったことないけど、お疲れ様、と言いたくなった。」(ほわいとさん)

 僕はほわいとさんの文章のファンなので、その人から「文章が上手い」と褒められるのは格別の思いです。
なお、公文書を書く技法はかなり特殊なので、いくら書いてもプレミエール向きの文章は上手くならないと思います。あと、CWは正式な公文書をほとんど書きません。一生懸命に書いてもどうせケースは読んでくれないし・・・。(ケース記録と呼ばれる日記形式のメモは残します。これも広義には公文書ですが、外に出すようなものではなく、形式もバラバラです。)

●「お疲れ様でした。」
●「僕の武器は論理だと勝手に思っていますが、この武器は前提を共有する相手にしか通用しない、あるいは、多くが共有されない相手に対してできることがあまりに乏しいために、大した武器にはならないことが多いはずであると思っています。ほとんどあらゆる考え方、行動の仕方を持つ人間が世の中にいるのでしょうし、それらが形成される過程も当然のように存在するわけで。大変おもしろく読ませていただきました。ありがとうございます。」(ハッタリストさん)

  毎度毎度、高い評価をくださってありがとうございます。確かにケースに理屈を説いても仕方ありませんが、公務員である以上、CWは常に生活保護法や各種の通知・通達を意識しながら彼らと接しています。ハッタリさんの「論理」はおそらく自然科学で用いられるような厳密なものでしょうが、そこまで行かずともCWだって論理を用いて仕事をしているのです。だからと言ってハッタリさんがCWに向いているかどうかは別問題ですが・・・。
 

以上です。コメントしてくださった方はもちろんのこと、僕の拙い文章を読んでくださった全ての方に感謝しています。どうもありがとうございました。

「生活保護について語るときに僕の語ること」vol.7〜おわりに〜 Mr.スカーレット

  • 2014.05.09 Friday
  • 08:36
 ようやく最終章までたどり着きました。
「で、結局のところ生活保護ってどうなん?」と聞かれたとき、僕は少し迷いながら「ベストではないが、ワーストでもない制度」だと答えます。
 確かにメディアで叩かれるように、働けるのに保護を受け続けるケースはたくさんいますし、彼らを排除できない行政は手緩いと言われても仕方ないかもしれません。保護費が高すぎるので、真面目に働いている人が馬鹿を見ると言われれば、それはそうだと思います。
 しかし一方で、食うや食わずやの状態に陥ったときには、「その経緯を問わず」「いかなる人も無差別平等に」、その命を国が保障しましょうという生活保護法の基本理念は、崇高なものだと思います。「若かったころに年金をかけていなかった」「酒の飲みすぎで体を壊した」「不義理を働いて親族に見捨てられた」全て自業自得かもしれません。だとしても彼らに「諦めて餓死しなさい」というのは、僕はやっぱり違うと言いたい。そんな狭量な社会には住みたくありません。

たった8,000字程度の短い文章ですが、5年間の思いの丈をたっぷり詰め込んだつもりです。だからこの文章を終わらせるのは名残惜しいのですが、いつまでもCW気分でいるわけにもいきません。新しい職場でもっと勉強して1ランク上の公務員になるため、この文章と生活保護CWとしての自分に幕を引きたいと思います。ご意見・ご感想をお待ちしています。


(編集部注:ご意見・ご感想はブログのコメント欄、もしくは月間投票のその他お気づきの点の欄にて受け付けます。)

「生活保護について語るときに僕の語ること」vol.6〜CWっていいな2〜 Mr.スカーレット

  • 2014.05.08 Thursday
  • 03:13
CWのメリットその5:実生活の役に立つ。

 「CWの苦労その3」と対になるメリットです。予算・決算についての知識は役所の内部では必須ですが、一歩外に出れば何の役にも立ちません。そんなことを知らなくても不自由なく生きている人がほとんどです。
 しかし僕がCWとして学んできた年金や介護の知識はそうではありません。自分が事故で障害者になってしまったとき、障害年金の存在を知ると知らないとでは大違いです。親が認知症にかかって面倒を見きれないとき、相談先を知っているか否かは、大げさでなく自分と親の人生を左右します。
僕は生活福祉課で、社会人として生きていくための大きな武器を手に入れることができたと思っています。
 
CWのメリットその4:世界が広がる。
 
今のご時世、市役所に勤めようと思えばそれなりにお勉強ができて、それなりの大学を出ている必要があります。そういう人材は大抵の場合、それなりに裕福な家庭に生まれ、それなりの生活をしてきています。やたらと「それなり」の多い文章で恐縮ですが、要するにそんな世間知らずの若者が、それまで付き合ったことのない層(付き合う必要のなかった、とも言える)の人たちと否応なしに向き合わなければならない、これはパラダイムシフトと呼べる経験だと思います。「普通は毎日お風呂に入るよね」「普通は4回も5回も離婚しないよね」「普通は文字の読み書きができるよね」「普通は家賃を滞納して追い出されないよね」「普通は酔っぱらって線路の上に寝転ばないよね」「普通は使用済みのオムツを食べたりしないよね」「普通は〜」「普通は〜」「普通は〜」・・・
当たり前だった世界のすぐ隣には、実は今まで知らなかった別世界が存在していて、そこの住人にとっては僕の「普通」が全然普通じゃない。むしろ自分の狭い世界を「普通」だと思いこんでいた僕の無邪気さこそが異常なんじゃないかと考えさせられる。そして、自分を「隣の世界」から隔離してくれていた両親と両親のお金に改めて感謝する。そんな繰り返しの5年間でした。

「生活保護について語るときに僕の語ること」vol.5〜CWっていいな1〜 Mr.スカーレット

  • 2014.05.07 Wednesday
  • 00:11
あまりにCWの苦労ばかりを強調して、この文章を読んでいるかもしれない同業者や、「将来市役所に勤めたいな」と思っている若者の意欲を削いでしまってはいけません。トータルで見たときに、僕は若い市役所職員がCWを経験するのは間違いなくプラスになると考えています。その理由をご紹介しましょう。

CWのメリットその1:役所内に知り合いが増える。
 
 生活福祉課は総勢80人を超える大きな課でした。異動先の課には職員が課長以下9人しかいない、と言えばその巨大さが分かってもらえるでしょう。もちろん絶対数は自治体ごとに差があると思いますが、リーマンショック以降、爆発的にケースが増えたわけですから、他部署に比べて生活保護担当部署が小さい、ということはあり得ないと思います。それだけの大人数が毎年の人事異動で出たり入ったりするわけですから、どの部署にもそれなりの顔見知りがいる、という状況が生まれます。日常業務を行う上で、これほど心強いことはありません。

CWのメリットその2:「法律の適用」を実地体験できる。

 一般の人にとって法律は「守るべきルール」というイメージでしょうが、公務員にとっては条文を解釈し、個々の事例にあてはめる、「適用すべきルール」という言い方が相応しいかもしれません。CWの場合は生活保護法をケースに適用するのが仕事ですが、この肝心の法律が意外と曖昧なのです。例を出しましょう。CWなら誰でも知っている生活保護法第63条です。

(費用返還義務)
第六十三条  被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

これで全部です。一切の補足説明はありません。この条文だけを基にして事務処理を行える人がいるでしょうか?「急迫の場合」とはいつなのか、「資力」とは具体的に何を想定しているのか、「保護の実施機関の定める額を」と言われても、何の基準もなく適当に返還額を定めていいのか等々、分からないことだらけです。
 このままではあんまりですから、厚労省は各種の通知・通達を出して、生活保護法の肉付けを行っています。(つまり、法律だけでは曖昧すぎて現場の役に立たないので、厚労省が「この条文はこのように解釈して処理しなさい」と文書で教えてくれるわけです。)法63条関係に限らず読むべき通知はたくさんあるのですが、何せ生活保護法は人間の生活全てに関わる法律ですから、全ての個別事例を想定して、明文化することは不可能です。そのためCWは想定外の事例が生じるたびに、分厚い参考資料を読み返しながら、「ああでもない、こうでもない」とその処理方法に頭を捻ることになるのです。
 これは人によれば苦痛かもしれませんが、何度もそういう経験を繰り返すうちに、生活保護法を作文した人の思いに直接触れた気になることがあって、僕にとっては結構貴重な時間でした。

「生活保護について語るときに僕の語ること」vol.4〜CWはつらいよ3〜 Mr.スカーレット

  • 2014.05.06 Tuesday
  • 17:07
CWの苦労その3:市役所職員としての知識が身に付きにくい。
 
 ここまでは対外的・対市民的な苦労について書いてきましたが、見方を変えて対内部的な苦労について考えたいと思います。
 生活福祉課で働いた5年間、数多の先輩から「ここの常識が役所の常識やと思ったらアカン」と口酸っぱく言われ続けました。入庁して初めての配属が生活福祉課だった僕を心配してのアドバイスでしょうが、異動した現在、この言葉の重みを実感しています。
 市役所職員には部署を問わず、当然身につけておくべき常識的な知識が多数存在します。パッと思いつくだけでも、

1. 予算要求から決算報告までの大まかな流れ
2. 業務委託や物品購入の際の契約方法
3. 公文書の取扱や決裁に関する規程
4. 市議会や委員会の仕組み

などがあって、僕が気づいていないだけで、他にもたくさんあるでしょう。CWの業務を行うだけでは、これらは全く身につきません。そして数年後、僕のように他部署に異動してから途方に暮れるのです。上司に「これ知ってる?」「あれやったことある?」と聞かれ、6年目にもなって「知りません」「ありません」を連発せざるをえない情けなさたるや!
 では、どうしてそんな困った事態に陥るのか?それはひとえにCW業務の特殊性(いいように言えば専門性)が原因だと思います。
誤解のないように書いておきますが、生活福祉課にも、上記のような業務は当然存在します。予算をとってこなければ保護費を支給することはできませんし、業者と契約しなければクリップやボールペン1つ購入することすら不可能です。しかし、それらの業務を行うのは(うちの生活福祉課では)庶務係と呼ばれる部隊で、CWは一切関与しないのです。偉い人にそんなつもりはないでしょうが、僕にはそれが「君たちは市役所業務のイロハは覚えなくてよい。そんな暇があればひたすらケースの相手だけをしていなさい」というメッセージのように感じられるのです。
 以上は残酷な話ですが、仕方ないと思える面もあって、CWに求められる知識は「広く浅く」が基本ながら本当に多岐に渡るのです。一例を挙げるだけでも年金・介護保険・雇用保険・障害者福祉・児童福祉など、切りがありません。それらについて最低限の知識がないと、経済的に困窮した人の相談にまともに乗ることはできないのです。さらに知識だけあったとしても仕方なくて、海千山千の猛者だらけのケースと渡り合うための、対人交渉術(というよりも単なる度胸?)も身につける必要があります。だから予算だの契約だの、細かい内部的な話まで手が回らないのも無理はありません。
 しかし、そんなことは部署が変われば言い訳になりません。「予算書の読み方が分からない」「財務システムの入力方法を知らないので、文房具すら購入できない」・・・1年目職員ですら当然のように知っていることを知らなくて、「これやからCW出身者は困ったもんや」と呆れられることもしばしばです。
(なお、これらはあくまで僕の市の事情です。小さな自治体は人手不足なので、CWが庶務の仕事を兼ねているところも多いと思います。ただ、自治体の規模が一定より大きくなれば、ほとんどがCWと庶務の分業制を敷いているでしょう。)

「生活保護について語るときに僕の語ること」vol.3〜CWはつらいよ2〜 Mr.スカーレット

  • 2014.05.05 Monday
  • 23:18
CWの苦労その2:保護者の割には非常に制約が多い。

 CWがケースの保護者代わりをするのは前述のとおりですが、当然ながら本当の肉親のようにはいきません。顕著な例が高齢者の金銭管理です。世間には年老いた親のお金を管理している子どもがたくさんいるでしょうが、まさか赤の他人のCWがケースの通帳や財布を預かるわけにもいかず、さりとて認知症の出ている高齢者に任せておくとまともに生活できず・・・というジレンマに陥ることがあります。少々知識のある人ならば「成年後見人や権利擁護を活用すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、ああいう制度は利用を申請してから開始するまでに大抵数ヶ月はかかるので、それまでをどう繋いでいくのか、という問題は依然として残るのです。
 認知症の疑いのある高齢ケースが、あまりにしょっちゅうお金をなくすので(落とすのか無駄使いしているのか、悪い人に搾取されているのか、本当のところは分かりません。本人も分かっていないでしょう。)他にどうしようもなく、本人の自宅に保護費の一部を隠したことさえあります。そうしておけば少なくとも全額なくなることはありませんから。結局あまりに認知症が悪化したため精神病院に緊急入院することになったのですが、その診察中にCW2名で自宅へ向かい、押し入れから現金を取り出して病院に持って行ったのは良い(?)思い出です。本人の留守中に押し入れから現金を抜き出すなんて、傍から見れば完全に空き巣ですよね・・・。
 常識的な人ならば「そこまでするならCWが金銭管理をすればよいのに」と思うでしょうが、福祉の世界には「支援者は金銭管理を行わない」という鉄則があって、これは基本中の基本として徹底されています。これには金銭絡みのトラブルを避けるための自己防衛と、そもそも他人の金銭を預かるだけの法的な権限がないという2つの理由があります。
 また、CWならではの制約は他にもあり、前述の守秘義務もそうですし、ケースからあまりに無礼な振る舞いをされたとしても、本気で喧嘩することもできません。あくまであちらは市民、こちらは市役所職員です。(この辺はCWの個人的な性格によるところも大ですが)ひどいケースになると「あんたらも税金で食ってるんやろ!私らと同類やないか、偉そうにすんな!」とか「私らがいるおかげであんたらも仕事にありつけるんやから、感謝しろ!」などと平気で言いますが、そこまでくるともはやコメディの世界で、怒る気力も失せてしまいますね。(このセリフ、創作ではないですからね!)
 公務員としての責任やリスクを背負う一方で、周囲からは公務員の守備範囲を超えたことを要求される・・・まさにCWはつらいよ、です。

「生活保護について語るときに僕の語ること」vol.2〜CWはつらいよ1〜 Mr.スカーレット

  • 2014.05.04 Sunday
  • 09:06
どんな職業にも勤めた者にしか分からない苦しさ・つらさがあるものですが、CWも例外ではありません。ここから何回かに渡って、僕が散々実感してきた生活保護CWならではの苦労を書いていこうと思います。多少愚痴っぽくなるのはご容赦ください。

CWの苦労その1:対外的にケースの「保護者」として振る舞うことを要求される。

 当たり前と言えば当たり前ですが、生活保護まで落ちてきた人の中には、頼れる家族がいない、もしくは絶縁されている人が山のようにいます。CWといえども所詮は他人、彼らの身内代わりになることはできないのですが、周囲は簡単に許してくれません。

事例1:大家さんからの苦情
 ケースには保護費として家賃が支給されるのですが、困ったことに家賃として支払わずに浪費してしまう人が時々います。そういう場合、大抵は大家もしくは保証会社からCWに苦情の電話が入ります。彼らの言い分は「CWならばケースがきちんと家賃を払うように指導・監督するのが仕事やろ!こっちは何のために税金を払っとるんや!」・・・一理あるのは認めましょう。しかし、個人情報保護の観点から、ある人が生活保護を受けているか否か、CWはたとえ大家相手でも教えられません。ですから「その人が生活保護を受けているかどうかお答えできませんが、もし受給者であれば善処します」という、何とも奥歯にものの挟まったような回答しかできないのです。この回答が気に入らんと言って炎上することもしばしばですが、公務員には守秘義務があるので仕方ありません。
 さらにここには別の問題があって、家賃を払い、それを受取るというのは賃貸人と賃借人の間の私的な財産関係であり、そもそも行政マンであるCWが関与すべき問題ではないはずです。普通、店子が家賃を払わないからといって、役所に相談に行く大家がいるでしょうか?それを取り立てるのが大家の仕事だと思いませんか?なぜ、店子がケースであるというだけで行政が間に入らないといけないのでしょうか?理不尽な思いを抱えつつも、保護費の不正流用を防ぐのはCWの役目。なんだかんだと言いながら、大家の思惑どおりに滞納の解消に向けて、ケースを指導せねばならないのがCWの泣き所です。

事例2:高齢者の子ども代わり
 経験した方もいらっしゃるでしょうが、体の弱った高齢者を抱えると、各種の段取りが本当に面倒です。身内がいれば解決するはずが、身内がいないならばまだしも、立派に成人した子どもがいるのに何の役にも立たないため、CWが子ども代わりを強いられることの何と多いことか!
入院一つをとってみても、病院から「治療の方針を説明するので書類にサインしてほしい」「一人で帰れない人なので、退院時には迎えに来てほしい」などと頼まれるのは可愛いほうで、明らかに一人暮らしができないほどに衰えた高齢者を、「治療の必要がないので引き取りに来い」と病院に言われ、CWが「今、家に帰してもこの人は生活できないので、せめて介護施設への入所が決まるまで入院させてほしい」とお願いしても「病院は病気の治療をするところで老人ホームではない。そこを何とかするのがCWの仕事でしょ」と平気で言う病院すらあるのです。
 ここは病院によって大きな差があって、ビジネスだと割り切って冷たい対応をするところと、患者に親身になって世話を焼いてくれるところと、本当に当たり外れがあります。(ちなみにそこには、治療の必要のない患者を長期入院させても、病院に金銭的なうまみがないという背景があります。なお、さすがに患者を強制的に外に放り出すような病院はありませんので念のため。)
親の面倒は子どもが見ろよ、と思いながらもそこは福祉関係者。あるときは病院に、あるときは介護施設に、またあるときは役所の別の部署に頭を下げながら、ケースの生活基盤を整えてあげるのがCWの役目なの・・・かなあ。
とにかく、実の親の世話を役所に丸投げし、無駄に業務量を増やす全国のドラ息子、ドラ娘の皆さまにおかれましては、未来永劫「税金が高い」などと不満を述べることのないようにお願い申し上げます。あなた方はご自分が払った税金に比べて、はるかに多くの行政サービスを享受しているのですから。

「生活保護について語るときに僕の語ること」vol.1〜はじめに〜 Mr.スカーレット

  • 2014.05.03 Saturday
  • 18:53
この文章は、読者が僕の前作「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」(2013年2月度の最優秀作品!)を読んでいる前提で書かれています。未読の方はぜひそちらを先にお読みください。
「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」vol.1  Mr.スカーレット
「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」vol.2  Mr.スカーレット
「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」vol.3  Mr.スカーレット
「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」vol.4  Mr.スカーレット
「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」vol.5  Mr.スカーレット
「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」〜終わりに〜  Mr.スカーレット

春の人事異動で生活福祉課(生活保護担当課)を離れ、新しい部署で働くことが決まりました。生活福祉課には新人時代から5年間も在籍しており、ここ2年ほどは「早く他の仕事を勉強したい」と強く思っていたので、今回の異動は願ったり叶ったりです。一方で5年間も働いた課にはそれなりに愛着もあり、お世話になった上司・先輩や可愛い後輩たちとお別れするのは予想以上に寂しく、柄にもなく感傷的な気持ちになったりもしています。とはいえ人事異動はサラリーマンの定め。生活保護と格闘した5年間を振り返ることでCWとしての自分に区切りをつけたいと思い、筆をとる、いやキーボードを叩くことにしました。

さて、生活保護はメディアでよく取り上げられる分野ですが、そのほとんどが納税者の視点、もしくは生活保護受給者の視点から報道されています。前者の典型例は「自分たちの税金が働かずにグータラしている受給者に使われるのは怪しからん。役所は何やっとるんや!」というもの。特殊な事例としては、母親に生活保護を受けさせていたお笑い芸人へのバッシング報道もこれに含まれます。一方後者は保護費の引き下げが決定されたときに多く出る、受給者を擁護する報道です。「保護費の引き下げは国による生存権の侵害だ!」とか「日本の捕捉率は先進国の中では最低クラスで云々」なんて言う人権派の弁護士が出てきたりしますよね。
(捕捉率とは生活保護を必要とする世帯のうち、実際に保護を受給している世帯の割合のことです。一説によると日本の捕捉率は20%程度だと言われていますが、仮に100%になれば財政負担が恐ろしいことになりそうです。)

これら2つの視点のうち、どちらを支持するということではありません。この文章の目的はメディアではまず取り上げられない3つ目の視点、つまりCWとしての視点を紹介することにあります。(と書いた矢先、ビッグコミックスピリッツで「健康で文化的な最低限度の生活」と題したCWが主人公の漫画が始まりました。要注目です。)前作「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」も同じ目的で書かれた文章なので、中身がかぶることのないように進めていこうと思います。

「生活保護をちょっとだけ学ぶ人のために」〜終わりに〜  Mr.スカーレット

  • 2013.02.14 Thursday
  • 01:28
「パイプ椅子を投げつけられた」
「目の前でリストカットされそうになり、必死で止めた」
「携帯電話ごしにプロポーズされる現場を見た」
「連絡が取れないお年寄りの家に鍵を壊して突入した」
「ヤクザまがいのおっさんに『夜道は暗いぞ』とすごまれた」
「警察が自殺死体の検分をしている隣の部屋で遺族と面会した」

すべて僕が仕事で経験した実話です。一つ一つにここには書けないストーリーがあり、ある意味貴重な思い出です。生活保護は最後のセーフティネットとも呼ばれますが、この国のごまんとある社会保障制度をすべてすり抜けて生活保護を利用するに至った人たちの中には、それはそれは一筋縄では行かない人が大勢います。およそ僕のような普通の家庭に生まれ、普通の高校・大学を出た人間が生きていく上で、絶対に出会わないような。いや、出会わないというより、親や学校の力で隔離されていたというほうが正しいかもしれませんね。
 不景気のせいなのか、生活保護制度への風当たりは強くなる一方で、おそらく当面この風は止みません。読者もニュースを見て「市役所しっかりせい!」と思うことが多いでしょうし、僕も一人のCWとして、果たして納税者の付託に応えられているのか、さっぱり自信はありません。(いや、別にサボっているわけではないですが。)
 もちろんCWとて市民ですから、「これでいいのか、生活保護!?」という問題意識は常に持っています。むしろ日々生活保護の現場を見ている分、一般市民より思いは強いと言えるでしょう。この文章はそんなCWとしての問題意識を、生活保護の初心者の人に分かってもらうように書いたつもりです。ご意見・ご感想をお待ちしております。

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