【テーマ】かんげきしゃ  Mr.アールグレイ

  • 2018.05.31 Thursday
  • 23:58

時々ふと自分が空っぽであるような気持ちがします。

私はただのカメラで、目に入る風景や人間模様をただ眺めているだけ。

みんなが主人公として生きている世界で、私は傍観者として生きている。

 

そんな時、虚しいなあと若い頃は思っていました。

私も充実したドラマの主人公でありたいと。

でも今は違います。

贅沢だなあと思うようになりました。

私が主人公であったなら、他の人のドラマを眺めてのほほんとしてなんていられません。

周りにはドラマが溢れていますし、その一つ一つが愛おしいし滑稽だしとても悲しいし胸が潰れそうになったり頭に来たりもします。

そんなよくできたお芝居を見ているような気持ちがして、気持ちが動く体験というのは経験を重ねることで少なくなっていくので、とても贅沢だなあと。

 

私が大学二年生の冬、一浪して大学に入った友人が学校をやめると言い出しました。

理由を聞いてもわけのわからないことを言うばかりで、ほとほと困ってしまいました。

ずっとフリーターとして生きていく、生きるという意味から逃げたくない、今もって理解できませんが、彼は大切な友達です。

結婚して子供生まれたらどうするの?

結婚しないし、子供も産まない。

そりゃね、産むのはあんたのパートナーでしょうけど。

 

ある程度何かあっても備えてなきゃだめでしょ?

いいんだよ。

怪我したらどうするの?

怪我したら死ぬよ。怪我しなくても四十になったら死ぬよ。

ミックジャガーが言うからそれはカッコいいの。大体ミックジャガーもまだやってるじゃん。

 

という会話をして、仲の良かったはずの友人とどうしてこんなに日本語が通じないのか、頭に来るやらもどかしいやら悲しいやらで心をぐちゃぐちゃにされました。

その彼も今年でいよいよ四十歳ですが、二児の父として楽しく生きています。

子育ての喜び、難しさを嬉々として語る彼の姿を二十歳の時の彼がどう見るのかとても興味があります。

 

これからも特等席で一人でも多くの方の人生の観劇を続けていきたいと思います。

【テーマ】ダービー2018  がりは

  • 2018.05.31 Thursday
  • 13:00

いやー、感動しましたね、日本ダービー。

ご覧になりましたか?

競馬と言えば毎週毎週熱量の高い予想を展開するたりき、たりきが行けそうにない時はすかさず代打として予想するMr.Indigoです。

その二人がいつもより買い目を増やして予想する間隙をついて、見事的中させたのは誰でしょうか。

そう、わたくし、がりはでございます!!

いやー、ありがとう!ありがとう!!

とはいえ、馬券を買うことからはもう十年以上遠ざかっているわたくしには金の雨が降ってくるわけではありません。

身銭を切って予想をするお二人とは土俵が違うのは百も承知です。

私は純粋に筋書きのないドラマを最前列で観劇しているだけのことです。

そのドラマが格別だったのは、役者が素晴らしかったのはもちろんですが、観る側の私にPREMIERの名作「ダービー1998」があったことも大きいです。

偉大なる父洋一が取れなかったダービーに初めて乗った若き天才福永祐一の挫折と、やはり天才の武豊がダービージョッキーになった歓喜が同時に訪れた1998年のダービーの話を読み直した時に、今年は福永が取るだろうな、取らないと話が合わない、と思いました。

 

ワグネリアンと福永祐一がいつもと違って前目に取りついた時に、そうだよね、そうするよね、と思いましたが直線で追っても追ってもなかなか前との差が詰まらず、福永がいつものクールさをかなぐり捨てて柴田政人ばりの鞭で追ってもなかなか捉えられず、もう落っこちてしまうのではないかという不格好なフォームで追って、残り30mあたりでついに捉え、捉えるとぐいっと伸びて一着入線。

正座で観ていた私は自分の太ももを叩きすぎて痛いほど。

これだけ楽しんでも一銭も払っているわけではないのが申し訳ないほどです。

 

いま、この文章を書いていて、五度ほどダービーを見直したのですが、福永は鞭が多いし、がむしゃらに追っているように見えるものの、私が見たような落っこちてしまうような不格好なフォームではなく、力感溢れる感じで追っていました。

では私の魂を感激で打ち震わせたあの福永はなんだったのでしょうか。

私が見た不格好な福永は、情熱か怨念か欲求か狂気かはたまたその混合物か、何物かを全身から溢れさせ飛び散らせながら馬に憑りついたエネルギーの塊だったのですが、そんなものはパソコンのブラウザには映らないのかもしれません。

 

【テーマ】間隙を突いた名将たち  Mr.Indigo

  • 2018.05.30 Wednesday
  • 19:55

「会議は踊る。されど進まず」

1814年9月から開催されたウィーン会議は難航した。一致団結してナポレオンを倒したヨーロッパ諸国だが、戦後処理については各国の利害が複雑に絡み合い、ほとんど何も決められなかったのだ。舞踏会ばかりが盛り上がる状況を皮肉ったのが、冒頭の言葉である。

その間隙を突いて、前年失脚したばかりのナポレオンが復権を目指しフランスに乗り込んだ。国内にはナポレオンに味方する者が多く、彼は破竹の勢いで進軍しあっさりとパリを占領した。国王ルイ18世は逃亡し、ナポレオンは皇帝の座に返り咲いた。

ところが、ナポレオンはすぐにヨーロッパ諸国と戦わなければならなかった。共通の敵の出現によって諸国が妥協に至り、ウィーン条約が締結されたためである。そして、ワーテルローの戦いで連合軍に敗れたナポレオンは再び地位を失うことになる。

これは当然の結果であろう。かつてナポレオンに苦しめられたヨーロッパ諸国が彼を放っておくはずがない。前年にフランス軍を撃破した連合軍も健在だ。いかに指揮官が優秀でも、四面楚歌の状況で勝ち続けるのは困難である。

ナポレオンは稀代の戦略家である。だから見通しの厳しさはわかっていたのではないか。無謀だと知りつつも、理想の実現を目指し最後の勝負を挑んだのかもしれない。

 

ナポレオンほどの大物ではないが、日本にも間隙を突いて一世一代の勝負に出た男がいる。明智光秀である。

天正10年(1582)6月1日、羽柴秀吉や柴田勝家が率いる織田家の主力部隊が遠征に出ている隙を狙い、本能寺に滞在していた織田信長を急襲し討ち取った。しかし、毛利家と和睦して強行軍で戻ってきた羽柴秀吉の前に敗れ去っている。

光秀にとって秀吉の迅速な対応は誤算だっただろうが、そうでなくても彼が天下を取るのは困難だったのではないか。毛利家や上杉家と対峙しているとはいえ、織田軍主力は健在である。また、織田家と同盟関係にあった徳川家を敵に回すことになるのも明らかだ。局地的に勝利を収めることはできても、敵対する勢力を全て打倒もしくは懐柔するというのは不可能に近いように思われる。

光秀が本能寺の変を起こした動機についてはさまざまな説があるが、私は光秀自身の野望によるところが大きかったのではないかと思う。黒幕がいたにしても、地位も実力もある光秀が唆されただけでリスクの高い戦いを起こすことは考えづらい。この時55歳の光秀は、千載一遇のチャンスに全てを賭けたのではないだろうか。

 

昭和16年(1941)12月の日本軍による真珠湾攻撃も似たような例であろう。こちらは前2つと異なり、アメリカ軍について十分に研究して警戒体制の間隙を突いた奇襲であった。しかし、局地的な勝利の後が大変なのは同じである。連合艦隊司令長官・山本五十六の狙いは短期決戦で戦果を挙げて有利な条件で講和することだったが、それは軍部の共通認識ではなかった。

日米の総合的な国力の差は如何ともしがたい。ましてや日本は中国や東南アジアにも敵を抱えている。実際、日本が威勢よく攻めていたのはほんの半年ほどで、戦況はしだいに悪化していった。

 

間隙を突いた勝利を躍進につなげた例もないわけではない。日本三大奇襲と呼ばれる河越夜戦、厳島の戦い、桶狭間の戦いはいずれも該当する。しかし、これらは全て領土を守るための戦いであった。

河越夜戦では河越城に攻め寄せた上杉軍を北条氏康が撃破し、上杉朝定を戦死させた。厳島の戦いでは島を攻めた陶晴賢の軍を毛利元就が撃破し、晴賢を自害に追い込んだ。桶狭間の戦いでは尾張攻略を目指した今川軍を織田信長が撃破し、今川義元を戦死させた。すなわち、これらの戦いは敵を増やすリスクが存在せず、相手を動揺させるメリット(小領主が寝返るなど)が大きかったと言えるだろう。

 

敵の間隙を狙うのは軍事行動における常套手段である。特に守勢においては起死回生の一撃となり得る。しかし、間隙を突いて敵の拠点に攻め入るのは局地的、短期的には有効であっても、それを広域的、長期的な成功に結びつけるのは困難である場合が多い。

合戦における戦術の巧拙も重要だが、それが地力の差を逆転させる可能性はゼロに近い。弱者が強者を倒すためには、守りを固めつつ内政や外交戦略によって力を付けるしかないのである。

 

【テーマ】感激おじさん  Mr.X

  • 2018.05.30 Wednesday
  • 00:39

K氏は求職中の身である。34歳男性。どうにも已むに已まれない事情で前職を退いた。結婚はしていないが、これを考えている女性はいる。退職した時、彼女はK氏を励ましてくれたが、半年を過ぎたころから何か様子が違ってきた、とK氏は感じている。

 

そんな時、「株式会社ふぃーる・ぐっと」なる会社を知った。ホームページを見たが「周りの人たちを笑顔にする仕事です」という、ほぼ無意味な内容の文章しか書かれていなかったが、一頃話題になった「レンタルおじさん」のようなものらしい。最初は無視していたが、いつも求人を出していることが気になった。まあ、これも一つの人生勉強だ、とK氏は応募することに決めた。

 

勤務初日、K氏は先輩であるL氏とともに某巨大書店へと向かった。「Kくん、今から仕事をするから、よく見ていてくれ」と言い残してL氏は書店の入り口へ向かった。本を購入し、握手会の列に並ぶ。

 

「先生の見識にはうなずかされることばかりです。朝読新聞のコラム、毎週拝読しています。どうぞこれからも、体に気をつけて」とたどたどしくかつ早口で話しながら、L氏は遠目に見てもわかるほど力強い握手をした。

 

「何だったんですか、今のは?」

「彼は最近落ち目の経済評論家でね。握手会を開くから、熱烈なファンがいてほしい、という依頼があったんだ。次は女性演歌歌手のところだが、君がやってみろ。若いファンの方が喜ばれるからな」

 

3ヶ月後、K氏はテレビの旅番組を収録している某女性アイドルに"偶然"会って感動の涙を流した。同じ日の夜、オープンしたてのラーメン屋で、食べ始めはあえて色々とケチをつけ、最後は豪快な音を立ててスープを飲み干し、絶賛した。

 

順調に業務をこなせるようになった。しかし、仕事に慣れたはずなのに、何をしてもすぐに疲れるようになった。彼女と会っても何故かどこかに違和感のようなものを感じるようになった。

 

入社して一年後、後輩ができた。L氏がやって見せてくれたように、K氏もP氏に仕事ぶりを見せた。
「業務内容、理解できたか?」
「あの女性エステティシャン、ものすごく喜んでましたよ。先輩、マジですごいですね!」

 

K氏は、久々にやる気が出てくる気がした。しかし次の瞬間ある疑念が吹き出してきた。そして、この数ヶ月間、誰と会っても違和感を感じ続けてきた理由が、明確に理解できた。

 

K氏は、再び新しい仕事を探し始めた。

【テーマ】間隙婦人 Mr.ヤマブキ

  • 2018.05.28 Monday
  • 00:22

 安い物件には色々理由があって、ここを選んだときは駅から多少遠いくらいかと思っていたが、いざ住んでみると分かる。こちらのベランダのすぐ向かいにもう一棟アパートがあって、その廊下側が面している。要するに、丸見えなのだ。どちらが丸見えなのかこの際不問に付しておくが、とにかく落ち着かない。特に、夜寝る前にベランダで煙草を吸う習慣があるせいで、飲んで帰った住人が廊下を歩いて自室へ入るまでの一部始終を目撃する羽目になる。ほとんどは途中でこちらに気付くので、気まずそうに鼻歌を止めてさっさと自宅へ入ってしまう。

 そこに新しい入居があった。といっても元々空いていたのも知らなかったし、ただある日、廊下で見かけた見知らぬ女がさっと部屋に入っていっただけのことだった。その女は濃い青の嵩高い帽子を被り、こちらに気付くと目深にして、走るみたいに速足で扉の向こうへと逃げ込んだ。変わった女だと思ったが、見かけたのはそれきりだった。

 

 挿絵1

 

 その夜、いつものように煙草を吹かしているとガチャリと小さな音がした。星の瞬きの聞こえてきそうな静かな夜、それ以上の物音は聞こえなかった。特に気にもしなかったが、しばらくして刺されるような居心地の悪さに気付く。ベランダの向かいでは、玄関の扉の一つがわずかに開いている。目だ。たった5cmの隙間から誰かがこちらを覗いている。あの扉は、例の女が逃げ込んでいった部屋だ。変わった女。あの女なら合点がいく。とはいえ、何のために?安部公房は「見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある」と言った。あの夜に僕が彼女を見たことへの腹いせだろうか。逃げるような足取りは、確かに見られることへの憎悪があったはずだ。それ以上、何が起こるわけでもないが、不気味さは一層増して、さっさとベランダから撤退してカーテンを閉め切った。

 それからというもの、ベランダでの喫煙は止めざるをえなくなった。大丈夫だろうと閉め切ったカーテンを少し開けてみると、いつでもあの女がこちらを覗いているのだ。ほんのわずかな隙間から目がこちらを探っている。目的もよく分からないが、だからこそ気味が悪い。家にいてもあの女のことが頭を離れず、見透かされてしまうような心持ちで、とにかくカーテンから離れて生活をするようになった。

 しばらく寝苦しい日が続いた。喉が渇いて闇の時間に目が覚める。キッチンへと立つと、カーテンの下から光が漏れていた。心拍数が上がる。カーテンを人差し指と親指でつまんで恐る恐る開ける。目だ!ライトを持って、顔を窓ガラスに張り付かせた女の目がこちらの姿を捉える。大声をあげて、慌ててスマホを取って警察に連絡する。どうしました?……すでに女の姿は無かった。説明に困る。せいぜい不法侵入くらいのものだが、証拠もない。経緯を一から話してみたが、見られるばかりでほとんど何も起こっていないのだからまともに取り合ってはくれなかった。女の目が思い出される。カーテンを開けるかどうかなど分からないのに、ベランダで一晩中覗き見ようとしていたかと思うと、その異常性に体が震える。

 

 挿絵2

 

 もうベランダで煙草を吸うなんてことは考え付きもしなかった。どこから見られているか分からない。窓という窓はカーテンで閉め切ってしまった。それでも、心は落ち着かない。寝苦しい夜に女の夢でうなされる。女が家に入ってくる夢をすでに何度も見た。今日も同じ夢、女が家に入りベッドに近づいてきたところで夢であることに気付き、夢と現実の狭間へと意識が連れ戻される。目を閉じたまま、イメージだけが頭の中を駆け巡る。体が暑苦しい。顔ものぼせたように暑い。手で顔を拭う。手も暑く感じる。嫌な感じがする。やたら顔や手が暑いのは……ゆっくりと手を下ろし、目を開いてみる。目だった。体熱が感じられるほど近づいた女の顔だった!

 

 

※挿絵1 モディリアーニ作

※挿絵2 中野健夫作

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