【テーマ】コーヒーをもう一杯 Mr.ホワイト

  • 2019.05.31 Friday
  • 10:00

 12月のマドリッドはひどく寒く、コートを着て手袋をはめても体の芯から冷え込んでいく。最高気温が10度ほどしかない。マドリッドは内陸にあるため、夏は暑く冬は寒いのだ。スペインは比較的暖かいようなイメージを勝手に持っていたのだが、それは少なくとも地中海沿岸部のことであって、さらに言えば地中海沿岸部のバルセロナだって十分に寒かったのだ。情熱の国スペインはしかしその情熱によって気温までは変えられないことを、20代半ばの私たちはわかっていなかった。


 旅行というのは外でじっとしている時間が多いもので、美術館に並び、電車やバスを待ち、どこに行くかを調べるために立ち止まる。しかし、寒い。歩くのも寒いが、立ち止まるともっと寒い。このままここでじっとしていては死んでしまう、と思った私たちはめったやたらにカフェに入った。カフェの暖房を求めてというよりも、ただコーヒーを飲むために。


 スペインのカフェでコーヒーを頼むと、日本のようなブラックのドリップコーヒーは出てこず、必ず「カフェ・コン・レチェ」が出てくる。cafe con lecheとはcoffee with milkの意味であり、エスプレッソとホットミルクを混ぜたものである。カフェラテに近い。私たちはこのカフェ・コン・レチェに大変に助けられた。カフェ・コン・レチェはたいてい熱すぎるほど熱く、これを飲むとホットミルクが体に沁み渡り、冷え切ってカチコチに凍った体が一気に溶けていく。砂漠にオアシス、マドリッドにカフェ・コン・レチェ。


 早朝、駅の構内で電車を待つ時間が寒すぎて、コートのファスナーを顎まで上げても役に立たず、床も壁もすべてが青白く冷え切っているように見える。これはあかん、コーヒーだ、コーヒーはどこだ、と駅構内のテラス席しかないカフェにフラフラと歩いていき、「カフェ・コン・レチェ、ポル・ファボーレ(プリーズ)」と唯一暗記したセリフを唱えると、バイトのお姉さんは無愛想に「あら、そう」とでも言うようにコーヒーを作り始める。


 コーヒーを飲んでウロウロして、寒くなったらまたコーヒーを飲んで。よく考えたら仕事でもおんなじことをしている。コーヒーを飲んで仕事して、疲れたらまたコーヒーを飲んで。観光と仕事はおんなじくらい消耗するのかもしれない。




サウジアラビア紀行 補遺(3) Mr.ホワイト

  • 2019.04.30 Tuesday
  • 23:54

 MVPに選んでくださり、ありがとうございました。私は数を書けませんのであまり縁のない賞かと思っていましたが、今回はおそらくサウジアラビア紀行が終わったタイミングでの全13回お疲れさんという意味でのMVPなのかなと思っております。

 

サウジアラビア紀行(9)食べ物

 私は海外に行ったらなるべく今まで食べたことないものを食べるようにしています。そのためには深く考えずに選ぶのが一番で、例えばロシア語のメニューを見て、何が書いてあるかわからずに値段だけで適当に決めてしまいます。そうすると大抵何かよくわからない現地飯が出てきて、なんじゃこりゃとなって楽しめます。

 私はアジアはおいしい地域、ヨーロッパはおいしくない地域と思っていましたので、サウジがおいしい国なのは本当に意外でした。

 

サウジアラビア紀行(10)ファッション

 外国人がトーブを着ることは本当に珍しいようで、サウジアラビア人にたくさん写真を撮られました。もしかしたらSNSにアップされていたのかもしれません。自分でトーブを着てみると、高級なものとそうでないものの違いがわかってきます。高級なものは生地感、袖口、襟などが違いますし、サウジ人はきちんとカフスをつけてオシャレしています。ちなみにサウジでも流行というものはあります。サウジアラビア人が被っている頭巾はクーフィーヤと言いますが、サウジの若者たちは髪型でオシャレしたいのでクーフィーヤを被りません。そのあたりも被る被らないは実は自由なのです。ちなみにサウジアラビアのクーフィーヤは一般的には赤と白のチェック模様ですが、ドバイやカタールでは真っ白なクーフィーヤが一般的です。

 

サウジアラビア紀行(11)治安

 中東というだけでなんとなく治安が悪いイメージがあると思いますが、個人的にはそんなでもないのかなと思います。ただ、たまたまそういう場面に出くわさなかっただけかもしれず、治安の問題は主観で語るのは難しいです。

 

サウジアラビア紀行(12)街

 サウジはとにかく雨が降らないので街はどこも砂っぽいかんじで、アジアによくあるようなじめっとして汚いかんじの街ではありません。過酷な環境なのでカビもコケもはえず植物も育たずただ砂埃がすべてを覆い尽くしていきます。人間も外では生きていけませんので、ホームレスなどもいませんでした。

 

サウジアラビア紀行(13)人々

 サウジの人は夜に遊びに出かけるようで、夜中は交通量が多くなります。朝早くからお祈りしないといけないのに、夜遊んでて大丈夫なのかなと思いますが、適当にうまくやっているようです。

 

 ベストコメント賞はすべての項目に回答してくださったラッコさんに。いつもありがとうございます。

サウジアラビア紀行(13)〜人々〜 Mr.ホワイト

  • 2019.03.31 Sunday
  • 20:42

 サウジアラビアでは昼間は気温が高く直射日光が厳しいため、人々は夜になるとようやく外出し始める。夜は車の交通量も多く、12時すぎでも道路が渋滞している。海沿いの公園には日本の公園と同じように遊具があり芝生がある。子供たちは夜になると父母に連れられて公園に出てきて、街灯に照らされる中、遊具で遊び、広場でサッカーをして大騒ぎする。父母は芝生の上に敷いたレジャーシートに座り、子供たちが遊ぶ姿を嬉しそうに眺めている。

 

 海外に行くと、日本に比べて子供たちが生き生きしていると思うことが多い。サウジアラビアでもそれは同じで、子供たちはショッピングモールの中でサッカーボールを蹴って走り回り、大人はそれを注意などしない。大きな声で親に話しかけ、好きなことをずっとしゃべり続けている。子供たちは大人たちに愛されているのだな、と思う。電車の中で子供が泣けば眉をひそめる大人が多い日本とは違って。そして自分も、自分に子供ができるまではそういう大人だったのだ。

 

 サウジアラビア人の男女は話すことができないので、恋愛結婚はほとんどしない。親族が決めた人と結婚して初めて男性は女性の素顔を見る。そんな世界が今もあるのかと思ってしまうが、思えば私たちの祖父母の代までは日本でもそのような結婚が多かった。恋愛結婚などこの100年程度の歴史にすぎない。私がサウジアラビアで感じたのは価値観のとんでもない遠さだったが、それは同時に私たちの価値観が遠くまで来てしまったことなのだと気付いたとき、私が信じている価値観は「正しい」ものではなく、「変わりやすい」ものとなった。敗戦してコロッと変えられるくらい、私たちの価値観は変わりすいものなのだ。

 

 宗教も価値観もぜんぜん違うけれど、家族が大事だということはどこも同じだし、やってることもだいたい同じ。生まれて育ち、遊んで学び、働いて結婚し、子を産み育てる。なんだか遠く感じるけれど、彼らも僕らと同じように家族をもち、日々を暮らしている。

 

「子どもはいるの?」

「二人目が1年前に生まれたところ」

「そうか、二人目は強いでしょ。ためらわないんだよね」

「ほんとそう!なんでもできると思ってるよ」

サウジアラビアでも、二人目はやっぱりやんちゃらしい。

 

 *

 

 長く続けてきたけれど、このあたりで終わりにしようと思う。地図の上から見た中東ではなく、街に立って感じた実際の中東の空気を文章に詰め込みたいと思った。これを読んで少しでも中東の空気を感じてもらえたとすればこれに勝る喜びはない。長らくお付き合いくださり、ありがとうございました。

サウジアラビア紀行 補遺(2) Mr.ホワイト

  • 2019.03.30 Saturday
  • 10:13

 2月の最優秀作品に選んでくださり、ありがとうございました。おかげさまで補遺その2をお送りできます。

 

サウジアラビア紀行(5)王位継承戦

 ぎょっとするような事件が起きて、人道に反する野蛮な国だと欧米人や日本人が思うのは当然のことだと思います。でも実際のところ、欧米人や日本人もつい100年くらい前までおんなじようなことをしていたわけです。価値観はそれくらい変わりやすいもので絶対的なものではないということをまず理解しておくべきでしょう。初代サウジアラビア国王の時代、サウジアラビアでは盗人は罰として右手を斬り落とされました。これを欧米に非難されたアブドゥルアジーズはこう答えたと言います。「罪を償わせるために何年も牢屋に入れるのと、いましめのために手首を斬って釈放するのと、果たしてどちらが個人の自由を尊重しているのか?」。これほどまでに価値観は違うものなのです。

 

サウジアラビア紀行(6)話好き

 サウジアラビア人は本当に話が長いです。でも彼らの話は面白くて、わかりやすい英語を話す人が多いので、聞いていて楽しいです。超スピードでアクセントの強い英語をベラベラ喋るインド人みたいなキツさはないです。サウジアラビア人の知識階級は英米に留学している人が多いからだと思います。

 すでに書いたかもしれませんが、サウジアラビア人は酒を飲むことができませんので、もっぱらお茶もしくはアラビアコーヒーで延々と喋り続けます。酔わなくても酔っ払い以上に喋ります。やっぱりそういう場では女性の話が多いらしいけど。

 

サウジアラビア紀行(7)女性

 これは僕も意外でしたが、読者の皆さんも意外だったのではないかと思います。サウジアラビアはいわゆる「かかあ天下」です。もちろんそれは女性が一人で出歩きにくく不自由だからという社会的な背景もあります。男性には女性に贅沢させてあげられるような器量が求められます。合コンで割り勘を要求するような日本男児ではやっていけません。

 ところで、サウジアラビア人の女児は金の腕輪をしています。大きくなって腕輪が小さくなると、その腕輪を売ってより大きな腕輪に買い換えます。小さな頃から女性には金銀宝石を買い与えねばなりません。金スーク(市場)には腕輪を売っている店が数多くあり、親と一緒に来た娘さんが好きな腕輪を選んでいました。それはもちろんファッションでもありますが、それよりもむしろ「価値のあるものを常に身につける」という遊牧民の習慣であるようです。

 

サウジアラビア紀行(8)外国人

 なぜサウジアラビアに外国人労働者が集まるのか、というのはいまだによくわかってはいません。彼らに聞いたところ、どうやらサウジアラビアには外国人のコミュニティがあって、その伝手で人が集まっているようです。あとはやはりイスラム教徒にとってはあこがれの地だというのが大きいようです。パキスタン人はもともとイスラム教徒ですので、サウジの居心地は悪くないのかもしれません。インド人やフィリピン人は・・やはり給料が良いからなのかなあ。ただサウジでは、外国人でも、英語しか喋れなくても、能力があれば要職につくことができるということは間違いないと思います。

 

 

サウジアラビア紀行(12)〜街〜 Mr.ホワイト

  • 2019.03.22 Friday
  • 20:00

 空港からジェッダの都市部へ向かう車中から街の様子を見ていた。砂嵐の向こうに霞んで見える街は、どこまで行っても乾いた土の色しかない。緑がないのだ。雨が降らないということはこういうことなのかと思い知る。草も生えないような過酷な環境に、街は延々と広がっている。高層の建物はあまりなく、ほとんどは5〜10階建の建物のように見えた。

 サウジアラビア第2の都市ジェッダの人口は約4百万人である。これは横浜市の人口とほぼ同じ程度。開かれた港町という特色も同じであるため、おそらくサウジアラビア版の横浜というイメージでよい。港町らしく文化的には首都リヤドよりも開放的でゆるい。

 紅海沿いには公園がありホテルがありショッピングモールがあり水族館があり遊園地がある。当たり前だけどサウジの人も娯楽施設で遊んでいる。そこら中にモスクがあることを除けば、日本の都会とそれほど変わらない。

 

 サウジアラビアの生活はかなりアメリカナイズされていて、スーパーマーケットに行くと欧米の多国籍企業の製品がずらっと並んでいる。ネスレとかダノンとかケロッグとか、聞いたことがあるような食品メーカーばかり。飲み物はペプシが圧倒的に強く、コカ・コーラは弱い。これはコカ・コーラはイスラエル人資本が入っているかららしいが、本当なのかどうかはよくわからない。スーパーマーケット自体もアメリカ風で、日本のスーパーに比べると一品一品の箱が大きい。多分、日本でも最近流行っているコストコのようなかんじだろうと思う(コストコに行ったことがないので想像だが)。

 ただ、ひとつ違ったのが、今まで行ってきた外国のスーパーではあまり見なかった規模の鮮魚コーナー。氷が敷かれた大きなテーブルにどんどんと様々な魚が置かれている。どれも日本ではあまり見ないくらいサイズが大きい。1匹まるごと単位でしか買えないらしく、日本で売られているような切り身はなかった。

 スーパーの中にはスポーツ用品店もあって、ナイキやアディダスの服や靴が普通に売られている。アディダスのランニングシャツとパンツを買う。靴はパチモンばかりだったので買わなかった。ドレッドヘアの男前の黒人店員は音楽を聴きながらレジを打ち、フレンドリーに対応してくれた。

 

 宗教は違ったとしても、街はどこに行っても大きくは変わらない。車に乗り、スマホを使い、買い物をして、家族と遊ぶ。宗教は人々の心を支えるためにあるが、街は人々の欲望を満たすためにある。頭と体。頭では別々のことを考えていても、体はみんな同じようなものを求めている。私は昔から街が好きなのだが、それは人々の欲望がそこに凝縮されているからなのだろうと今あらためて思い返した。

サウジアラビア紀行(11)治安 Mr.ホワイト

  • 2019.03.15 Friday
  • 00:00

 サウジアラビアは危険な国だというイメージがまずあるため、帰国すると「治安はどうだったか」ということをよく聞かれた。「うーん、まあ、治安は良かったですよ」などと適当に答えるのだが、「治安」とは果たして何を意味しているのか、彼らは一体何が聞きたいのかを考えると「うーん、まあ」が頭についてしまう。

 

 私が行った中でもっとも治安が良いと感じた国はロシアである。理由は簡単で、街中をバカでかい警察犬を連れた警官が常にウロウロしているから。これでは悪事はできない。ロシアは今もやはり管理社会・監視社会であって、安全度は高いが居心地は良くない。

 逆に治安が悪いと感じたのはスペインのマドリッド。地下鉄でネオナチのようなスキンヘッドの若者達が老人を囲んでいた。なんとなくという感覚でしかないのだが、夜出歩くのは怖かった。パリも少し裏手に行くと良くなかった。友人はスリにあいかけたし、路上で普通にドラッグが売買されていた。ただ、だからといってマドリッドやパリの人たちが悪人だということはまったくなく、むしろ非常にフレンドリーで優しく、居心地は良かった。

 

 つまり、安全であることと居心地が良いことは必ずしもイコールじゃないし、治安は「人々が心優しいかどうか」だけでは決まらない。むしろ、その社会がどれだけ厳しいか、その社会がどれだけ裕福か、その社会がどれだけ平等かというような、制度や経済の問題が重要な要素になるように思う。

 

 サウジアラビアは世界でもっともイスラム教に厳格な国なので、社会のルールが厳しい。酒を飲んじゃダメ、賭け事をしちゃダメ、男性は女性と話しちゃダメ、ちゃんとお祈りしなきゃダメ。しかもムタワと呼ばれる宗教警察がタクシー運転手や店員などに化けて人々を監視している。そして何よりも、彼らは敬虔なムスリムであるため、自身の宗教心や道徳心が彼ら自身の行いを監視している。

 こんなに宗教に厳しく裕福な国の治安が悪いはずがなく、治安が悪い場所にあるような怖さはほとんど感じなかった。ただ、厳しい国であるためやはり不自由だし、自分がそのルールに抵触しないようにリスク管理する必要があり、居心地は良くない。例えば街中で写真は撮らないよう気をつけていた。偶像崇拝を禁止しているというだけでなく、街中のどこに軍事施設があるかわからず、それが写真に写りこむと捕まる要因になる。このあたりが冒頭の「うーん、まあ」に出てきてしまう。

 ちなみにサウジにはなんとなくテロのイメージがあるが、外国人に死者が出るようなテロは長年起きておらず、現地ではみんなテロのリスクは認識しているものの、別になんとも思っていないようだった。北朝鮮からミサイルが飛んでくるかもしれないとなったときに、日本から逃げた外国人はいたが、日本人は平気だったのを思い出した。

サウジアラビア紀行(10)ファッション Mr.ホワイト

  • 2019.03.08 Friday
  • 00:00

 中東のファッションというとみんながみんな真っ白な民族衣装を着て、頭に布を被っているイメージを抱かれると思うが、これはもう本当にイメージ通りというかイメージ以上で、サウジアラビア人男性はほぼ間違いなくこの「オバQ」を着ている。日本人はみんなこの民族衣裳のことをオバケのQ太郎にちなんでそう呼んでいるが、正しくは「トーブ」という。彼らは仕事中は必ずトーブを着ているが、だからといって仕事着というわけでもないようで、街ゆく人もカフェで喋っている人もみんな常にトーブを着ている。年のいった男性はお腹が出て来るのでダボっとしたものを着ているが、若者は細身のものを着ていてシュッとしているので何だか格好良く見えてくる(アラブ人の若者は男前が多い)。ちなみに外国人はトーブを着ないので、服装を見ればサウジアラビア人かどうかはすぐにわかってしまう。

 

 私はこのトーブはイスラム教の宗教衣裳のようなもので、だからこそ彼らは常にトーブを着ているのだと思い込んでいたのだが、実はそうではない。女性が着ている真っ黒なアバヤという服は宗教衣裳であるが、トーブは単なる民族衣裳であって宗教とは関係がないらしい。

 

 となればやるべきことはひとつ。着るしかない。トーブを購入したい旨を伝え、トーブ版の「SUITS SELECT」のようなチェーン店に連れて行ってもらった。トーブの選び方は紳士シャツのようなもので、首回り、袖の長さ、細身かどうかなどで様々なサイズがラインナップされている。トーブの場合もっとも重要なのは着丈(長さ)であって、足首が見えるか見えないかというくらいスレスレのものを着なければいけない。なお、私が購入したのは安いものだが、実はこのトーブのマーケットは東洋紡などの日本企業が握っていて、高級トーブはほぼすべて日本製である。

 

 翌日は購入したトーブを丸一日着ていたのだが、これは現地の人、特にサウジアラビア人にバカ受けした。嬉しかったようである。外国人がトーブを着るのは非常に珍しいらしく、街を歩いていても知らない人から声をかけられる(笑われる?)始末だった。ちょっと怒られたりするかもと思っていたので、この反応には安心した。

 

 インドでクルタという民族衣装を着た時も思ったが、やはり民族衣装というのはよく出来ている。トーブは肌触りがサラサラとしていて風通しが良く、日差しの厳しいサウジアラビアではちょうど良い。でも、鏡を見て思ったけれど、やっぱり日本人には似合わない。トーブは彼らが着てこそ格好良い。

 

サウジアラビア紀行(9)食べ物 Mr.ホワイト

  • 2019.03.01 Friday
  • 00:00

 

 

 海外に行くと必ず人に聞かれるのが「食事はどうだった?」ということで、もっと早くお話ししておけばよかったのかもしれないが、少し食事について触れておく。

 

 まずサウジアラビアでは酒と豚肉は完全に禁止されており海外から持ち込むと捕まる。みりんですらダメ。酒好きには辛い国だが私はあまり酒を飲めないのでまったく問題なく、むしろ酒を飲んでしんどい思いをすることがなかったので非常に快適だった。ちなみに豚肉はなくても気になる人はいない。

 

 ではサウジアラビアにはどのような料理があるのかというと、実は大体何でもある。日本に大体の料理があるのと同じ。洋食も普通にあるし中華・韓国・タイ・インド料理もたくさんある。和食は少ないけどあるにはあった(行ってないけど)。外国人が多いので各国の料理が揃っているらしい。私は現地の中華料理と韓国料理を食べたが、これは日本の平均的なお店よりも美味しく非常にレベルが高かった。また、サウジアラビアは完全にアメリカナイズされているので、マクドナルドもKFCもスターバックスもたくさんある。スタバも行ったけど日本のスタバと完全に同じ味だった。

 

 ただ、サウジアラビアのメインはやはり中東料理。これは日本では食べられない。現地ではほとんど中東料理を食べていたのだが、これはもう抜群にうまかった。「カブサ」と呼ばれる料理が基本なのだが、これは非常にシンプルなもので、とんでもない量のサフランライスの上にとんでもない量の肉や魚をドンとおく、というものである。肉は羊やヤギやラクダの肉を丸焼きしただけのものだが、これがめちゃめちゃうまい。彼らは店でしめたばかりの肉だからうまいのだと言っていたが、遊牧民の肉食の歴史を感じる味だった。魚の場合もおなじようなもので、丸ごと塩焼きにするか丸ごとフライにしてそいつをドンとライスの上に置くだけなのだが、これもフレッシュな魚を調理するからか抜群にうまい。意外だったのだが、サウジアラビアでは肉だけではなく魚もよく食べられている。すでに書いたようにジェッダは紅海に面しており、スーパーに行っても派手な色をした魚が氷の上にズラッと並んでいる。

 

 ちなみにサウジアラビアのすべてのレストランは「男性だけのスペース」と「ファミリーのためのスペース」に完全に区切られており、入り口もふたつに分かれているし受付もふたつある。これも女性から野蛮な独身男性を遠ざけるため。単なる女性差別であればこうはならないはずで、我々の目からすると女性差別のように見える慣習も多いかもしれないが、彼らとしてはやはり女性を守るべきものとして扱っているのだ。「価値観の違い」と一言で片付けてしまいがちではあるが、実際にそれにぶつかってみると、自分は自分の価値観をあまりにも当然のように思っていたことに気がついて唖然とする。ああ、自分もずっと、自分が「正しい」のだと思い込んでいた。

 

サウジアラビア紀行 補遺  Mr.ホワイト

  • 2019.02.28 Thursday
  • 21:58

 1月の最優秀作品に選んでくださり、ありがとうございました。今回のサウジアラビア紀行ではテーマごとにまとめていますが、端々のことは本筋から離れてしまうので書ききれていません。せっかくなのでこの場を借りて語り漏れたことを補足いたします。

 

サウジアラビア紀行(1)熱風

 文中で「におい」について少しだけ触れていますが、サウジから帰国して荷物を開けてびっくりしたのがこのにおいのきつさでした。サウジにいたときには鼻が麻痺してわからなくなっていましたが、持ち帰った服などすべてのものからなんとも言えないきついにおいがするのです。部屋に焚かれている香のにおいなのか、あるいは人々がつけている香水のにおいなのか、いまだによくわかりません。

 サウジアラビア人はヤギや羊を好んで食べますが、基本的に新鮮な肉をそのまま焼くだけですので、こういう食事をしていると人間の体臭も獣臭くなってしまうのではないか、その獣臭さをやっつけるためにきつい香水をつけているのではないかと想像しています。

 

サウジアラビア紀行(2)海と陸

 よく考えれば当たり前なのですが、サウジアラビアのほとんどの街は沿岸部にあります。首都リヤドは内陸部ですがこれはかなり例外。沿岸部でも過酷なのに、内陸部は砂漠気候ですのでとにかく暑く、乾燥がひどく、昼夜の寒暖差が激しいというさらに過酷な環境です。海は石油というキャッシュを生み出すだけではなく、飲料水や生活用水をも生み出してくれる重要な存在です。そして物資は海を渡って北米からやってきます。ラクダに乗って砂丘をわたるあのイメージはどこかにやってしまったほうがよいように思います。

 

サウジアラビア紀行(3)宗教

 イスラム教には聖地が3つあります。エルサレム、マッカ(メッカ)、メディナです。このうちの2つ、マッカとメディナはサウジアラビアにあります。これはサウジアラビアにとってはきわめて重要なことで、サウジアラビア国王はイスラム教の世界ではCustodian of the Two Holly Mosques(二聖都の守護者)と呼ばれています。イスラム教には色んな宗派がありますがおそらくどの宗派でも聖地はこの3つであって、だからこそサウジアラビア国王はイスラム世界においては決定的なパワーを有することとなります。私たちには聖地というものがうまく理解できませんが、聖地を巡礼することはイスラム教徒にとってはひとつの夢で、世界中のイスラム教徒は一生に一度は行ってみたいと思っています。ちなみにテレビでは常にマッカの様子が放映されていて、たとえばレストランのテレビでもずっと流れていました。

 

サウジアラビア紀行(4)国家と歴史

 教科書では習わないサウジアラビアの歴史。初代国王のアブドゥルアジーズは怪力の大男でした。体力的にもちょっと人間離れしていたようで、過酷な環境にあるサウジアラビアでは異例の長命で、その子供達も大柄で寿命が長い人が多いです。




 

サウジアラビア紀行(8)外国人 Mr.ホワイト

  • 2019.02.22 Friday
  • 00:00

 すでに書いたように思うが、サウジアラビア人はとにかく働かない。国家歳入の9割を占める石油収入を国民に分配しているので、サウジアラビア人には税金も教育費もかからないし福祉は非常に手厚いしなんなら公務員として雇ってしまう。さらにサウジアラビアは人的関係が濃い社会なので、外国企業がサウジでビジネスをしようとする場合に紹介料をとったり(いま日産のゴーン事件で問題になってるのもこれ)、縁故入社したりさせたり、不動産を転がしたりと、「サウジアラビア人であること」を利用して色々と金を稼いでいる。やはり彼らは商人なのだ。

 

 これだけ働かないサウジアラビア人だけでは世の中がうまく回るわけがないので、サウジアラビアにはとんでもない数の外国人労働者が集まって3Kの仕事のすべてを請け負っている。実に労働者のおよそ半分が外国人であり、工場労働者、建設作業員、オフィスワーカー、ドライバー、ウェイター、看護師など、どこに行っても外国人だらけ。国籍はインド・パキスタンがもっとも多く、周辺国のイエメン・スーダン・シリア・レバノン、アフリカのエジプト・モロッコ、英語が話せるフィリピンなども多い。ミーティングをすると4〜5カ国の国籍の人間が集まってそれぞれの訛りの英語を話すので、これはなかなか辛い経験だった。訛りがどうこう以前に単に英語ができないだけではあるのだが・・。

 

 サウジアラビアでも外国人労働者は低賃金で働いており厳しい状況にあることには違いない。外国人労働者の仕事は3Kの仕事が多く賃金も低い一方、サウジアラビア人は働かないくせに裕福だという歪んだ社会になっている。ただ、裕福で何もできないサウジアラビア人が会社のトップに居座って、外国人労働者を奴隷のように働かせているかというと必ずしもそうではない。少なくとも私が現地で目にしたのは、レバノン人の上司にサウジアラビア人の部下がついているという状況だった。

 

「外国人が上司でサウジアラビア人が部下、というのは珍しいんですか?」

「いや、別に普通にあると思うけど。」

「あ、そうなんですか。」

「え?だってそうじゃない?」

 

 また馬鹿な問いかけをしてしまった。サウジアラビアには聖地マッカ(メッカと発音するのは日本人だけ)があるため大昔から外国人が多い。そしてサウジアラビア人は商人であるため外国人とやりとりする機会も昔から多かった。外国人が国内にいるのは彼らにとっては普通のことで、おそらく我々がイメージする「外国人」とは捉え方が違う。

 

 いま、日本で働く外国人労働者もほとんどは低賃金できつい仕事をしている。出入国管理法を改正して外国人労働者を増やそうとしているけれど、これは建設とか介護とか日本人が嫌がる仕事を外国人にさせようというもの。まるで奴隷を輸入するみたいに。たぶん、サウジアラビア人よりも日本人の方がはるかに外国人労働者を差別している。低賃金だし差別されるし英語は通じないし外国人に厳しいので、僕が思うに、インド人やフィリピン人の「部下」は日本に来ない。おそらくこれから日本にやって来るのは、中国語と英語しか喋れない中国人の「上司」だろう。「部下」になるのは我々のほうだ。

 

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