やまがある日記〜鈴鹿2座周回 ̄乞岳(1237m)

  • 2017.10.21 Saturday
  • 00:02

2017年10月上旬 晴れ

 

滋賀と三重の県境に1000m級の山々が連なっている。おおよそ名神高速と新名神高速に挟まれたエリアにあり、関西を隔てるそれらを総称して鈴鹿山脈という。
登山をしない人からするとあまり知名度の高い山地ではないかもしれない。標高こそさほど高くないが奥深い山地である。
今回はその鈴鹿山脈の2座、雨乞岳と御在所岳を周回する。計画時点でコースタイム8時間超のタフなコースだ。

 

夜明け前に大阪を出発し、2時間ほど車を走らせる。鈴鹿スカイラインの武平峠駐車場に車を停めて、準備をして出発だ。

鈴鹿は関東の丹沢山地と並んでヤマビルの生息地として知られるエリアでもあるため、ズボンのすそを靴下に入れ込んでからゲイターを装着し、さらにヒル除けスプレーを足元にかけておく。リュックには塩水を入れたスプレーボトルを入れてある。

ここまでやっても、できるなら出会いたくないのがヒルである。
まずは雨乞岳を目指す。
雨乞岳はその美しい山名にふさわしく水の豊かな山だった。序盤はほとんど高度を稼がず幾筋もの小さな沢をわたって長いトラバースの道を行く。道は細く斜面は急なので慎重に進まなければならず、ペースは遅い。
途中開けた谷に出る。落葉広葉樹の明るい森はあと2週間もすれば紅葉がピークだろう。今はただ静かなばかりだった。
武平峠から1時間半ほど歩くとようやく東雨乞岳への急登にさしかかる。今まで標高を稼げていない分一気に登る。
豪雪のために低木しか生えない稜線から笹原に出るともう東雨乞岳山頂はすぐそこだ。東雨乞岳と雨乞岳は笹原が広がる短い尾根でつながっており、雨乞岳の方が標高が少し高いが、展望は東雨乞岳の方がよい。時折雲がかかるが景色はよかった。
東側には御在所岳のずんぐりとした巨体が迫っている。これからあれに登るのだ。
いったん400mほど下ってほとんど標高をリセットしなければいけないので、結構うんざりした気分になる。
西側には雲の下に琵琶湖と東岸の街、その向こうには比良山地も遠く見えている。あまりこのアングルから琵琶湖を眺めることはないため面白い。
羽虫が多いしまだ時間的に少し昼食には早いため、小休憩だけで出発した。
笹藪の稜線を歩いてあっという間に雨乞岳山頂へ着いた。この日の一つ目の目的地だったが、聞いていた通り背の高い笹藪に囲まれて展望はない。休めるようなスペースもないので、山頂の標示だけ写真に収めて先に進むことにする。
 

色づきかけ
東雨乞岳から雨乞岳への稜線

やまがある日記〜鈴鹿2座周回道中

  • 2017.10.21 Saturday
  • 00:01

雨乞岳からは杉峠を経ていったん登山口とほぼ同じ標高まで2時間ほどかけて谷を下り、そこから国見峠へと登り返すがこのコースが厄介であった。
杉峠までは黒土の滑りやすい急斜面の尾根を下り、そこから右に折れて谷に降りる。

まっすぐ尾根を縦走しても御在所にはたどり着けるが、コースタイムはそちらの方が長いのだ。

足を滑らせてトレッキングパンツが真っ黒になってしまった。
薄暗い谷筋を、何度も沢を渡りながら歩いていく。トリカブトがそこかしこで咲いている。猛毒で知られるが、秋の山ではよく見かける花だ。マムシグサの毒々しい赤い実も見かけた。これも食べると中毒を起こす。正体のわからないキノコもたくさん生えているし、毒なんてものは世界にありふれているのだと、山を歩いていると実感する。

トリカブトの一種

途中、人気のない山奥にいきなりいかにも人工物の石垣が現れておやと思っていたら、看板が立っていた。御池鉱山の遺構であった。明治大正期には300人もの人々がこの山深い場所に住み銀や銅を掘っていたのだという。ここまでの険しい道のりからもわかる通り搬出は困難を極めたことだろう。銀銅の価格下落に伴い廃坑になったそうだ。今はただ静かに朽ちている。
人が住んでいただけあって開けた箇所もあり、キャンプには適しているようだ。薪の後もある。前の登山者にぼんやりと着いて行っていたら道を見失った。テント泊らしい青年が正しいコースを教えてくれた。
さらに下っていく。登山者が少ないため、踏み跡が不明瞭でわかりづらい。GPSで常に現在地は確認しているし、沢筋を外れなければコースからはそれないこともわかっているが、V字に切れ込んだ谷はどこでも歩けるというものでもない。少し歩いては立ち止まって顔をあげ、木に巻かれたビニールテープの道しるべを探す。

川の反対側にテープを見つければ渡渉し、またすぐに渡りなおす。雨乞に登る途中の細かい沢とは違って川幅も水流もそれなりにあるため、毎回ポイントをよく見極めて渡らなければならない。登山靴は防水なので多少水につかってしまうのは気にせず、ストックでバランスを取りながら慎重に足を置いていく。

この沢を何度もわたって進む
秋だ


こういう集中力を要するコースではパーティの先頭の負担が大きいため、交代しながら進んでいく。道を探すのも複数人の目で探す方が効率がいいし、単独行でなくてよかった。
とはいえペースを上げるのは難しく、じりじりとコースタイムから遅れていった。1時半も過ぎると日が傾いて北側の谷筋は徐々に暗くなってくる。うっかり山の中で日没を迎えてしまったらどうしよう。不安が募ってきた。
中々ゆっくり休憩できそうなポイントがなかったので昼食の時間が遅くなってしまったが、河原の開けたポイントがあったのでここで休憩することにした。今日のメニューはツナマヨチーズのホットサンドとコーヒーだ。バターを塗った食パンにたっぷりと具材を挟み、アウトドアバーナーで焼いていく。
川のせせらぎも涼し気で心地よい。ゆっくり楽しみたいところだったが、時間がおしていた。食事をしながらこの後の行動プランを相談する。
今いる谷から武平峠まではコクイ谷を抜けて直接アクセスすることもできるが、そちらの道は危険箇所あり道迷い遭難多発、とリスキーだった。ただでさえ現状難しいのにその更に難易度の高いやつ、と言われるとかなり腰が引ける。逆算して、普通に行けばぎりぎり間に合いそうだったのでプラン通りのコースを続けることにした。御在所まで登ってしまえば最悪ロープウェイで降りてタクシーで駐車場まで運んでもらうという手もある。

 

 

やまがある日記〜鈴鹿2座周回8羣濬螻戞1212m)

  • 2017.10.21 Saturday
  • 00:00

食事を終えて出発する。

上水晶谷を抜けて分岐を右に曲がり、国見峠に向かって沢筋を登り始めるが相変わらず道は不明瞭だった。

以前最もスタンダードなコースから登ったときは人も多く開けていてこのようなことはなかったが、同じ山でも道を変えれば表情もがらりと変わる。
整備され尽くした登山道とは違った面白さがあるが、やはり遭難リスクは高い。同コースで道迷いをしたというブログ記事も多かったし、雨が降れば増水や鉄砲水の恐ろしさもある。

小さな滝があった

 

黙々と歩いていくと周囲の岩石がごろごろした花崗岩に変わり、ようやく御在所岳にとりついたのだとわかる。4時までに山頂につければ下山が間に合う計算だ。どうやらなんとかなりそうだ。
焦る気持ちはあるが、疲労もたまっていて適切な休憩も必要なので、適宜立ち止まる。
長い登山は自分の身体と向き合う時間だと思う。普段何気なく行っている「歩く」という単純な動作の難しさ、摂取した糖質がすぐさま燃料として消費される感覚、消耗した体力で持ち上げる自分の足の重さ。暑ければ汗をかき寒ければ震える。そういう身体の訴えに常に耳を傾けてコントロールしていかなければならない。
下山して一番に食べたいものは酷使した筋肉を回復させるために絶対に動物性たんぱく質だ。どうしようもなく私という存在は肉体なのだと実感する。
最後の登りはガレ場の急登で、あとひと踏ん張りの一歩がつらい。それでも登るしかない。振り返って見上げる国見岳の色づきかけた山体が、あとちょっとだと励ましてくれた。

最後の急登だ
山頂は観光地化されている


登りつめた山頂はいきなり観光地で、知ってはいたがギャップに驚く。スキー場のリフトに乗ってくる観光客がにぎやかだ。
残念ながらガスがかかって展望はなかったが、やっと一息つけた。達成感よりほっとしたという感じだ。
下山は1時間半ほど、御在所らしい花崗岩質の岩場ザレ場を下っていくと、夕日に照らされる四日市の街が美しかった。

鎌ヶ岳も目の前に凛々しく立っている。3月に登った霊仙もそうだったが鈴鹿の山はそれぞれなんとも個性的だ。
武平峠の駐車場にたどり着いた時には日没まで1時間を切っていた。休憩込の総行動時間は9時間半を超えており、移動距離は13km、累積標高差は上り下りそれぞれ1400mだった。1000m程度の低山だからと言って、なめてかかってはいけないとしみじみ実感した。
きつい山旅だったが、ここまで長い登山はこの先日がもっと短くなるので中々計画できない。挑戦できてよかったと思う。

 

夕日に照らされる鈴鹿の山々

零  Mr.Indigo

  • 2017.10.20 Friday
  • 20:00

「おい、単刀直入に聞くけど、どないやってん。初体験やったやろ?先月」

「なに言うてんねん。俺2児の父やで。先月なわけないやん」

「そんなくだらん話とちゃう!」

「…じゃあ、なんや」

「ゼロやったんや、ゼロ!初めてやろ?」

「なんやろか…健康診断の結果はヤバかったな。確かにこんな悲惨なんは初めてや。でも、異常なしがゼロっちゅうわけやないで」

「いやいや、健康診断とか知らんがな」

「じゃあなんやろか…」

「投票や、投票!」

「あー、そういえば衆議院解散したな。でも、俺とかゼロと何の関係があんの?」

「ちゃうちゃう、そんなん関係あるわけないがな」

「あ、わかった!最高裁判所裁判官国民審査や。これは落ちる奴ゼロや。間違いない」

「誰がそんなマニアックな話すんねん。そもそも全然初めてちゃうやろ!PREMIERや、PREMIER」

「PREMIER?最近ちょっとしんどいけど、毎週火曜には間に合わせてるし、テーマも必ず参戦してる。Pスポとダイジェストも毎月やってるで。渡海文殊も的中ゼロにはなってないやん、ずっと」

「いや、投票結果のことを言うてんねん」

「投票結果?」

「PREMIERに3つタイトルがあるんは知ってるやろ?」

「当たり前やん。MVP、最優秀作品賞、テーマコンテストや」

「で、お前が一番大事にしてるのは何や?」

「へ?家族に決まってるやん、家族」

「なんでそう来んねん!PREMIERの3つのタイトルで一番大切に思ってるのは何やって聞いてんねん」

「MVP」

「で、9月のお前の得票は?」

「最優秀1票、テーマ2票」

「で、MVPの得票は?」

「あぁ、ゼロやったな、今回は」

「はぁ、やっとたどり着いたわ。それで、初めてゼロになった感想を聞いてんねん」

「あ、そうなん?ゼロって初めてやったんや」

「なんや、知らんかったんかいな」

「ちょっと待って。過去の結果を見てくわ…うん、ほんまやな。去年の1月から今年の8月までずっと1票以上もらってる」

「そやろ?で、連続得票が20ヵ月で途切れた感想は?」

「うーむ…まあ、残念は残念やけど、ありがたいことやなぁ」

「ありがたい?」

「そらそや。20回の投票で、IndigoがMVPにふさわしいと思ってくれた人が必ず誰かいたってことやんか」

「なるほど」

「考えてみ。これは簡単にできる記録とちゃうで」

「まあ、それは認める」

「まず大前提として毎月作品を出すこと。そして、それなりの量もしくは質を維持すること」

「うん」

「そして、十数人の投票者の誰かにMVPとして推挙していただくこと」

「そやな」

「それを1年8ヵ月続けられる奴なんか、ほとんどいてないと思うで。昔の投票結果は見てないから、どのくらいいるんかは知らんけど」

「うーん…ひょっとするといてないかもな…」

「そやろ?この記録は俺が頑張るだけでは無理や。毎月誰かがMVPに投票してくれなあかん」

「うん」

「それでありがたいって言うてるわけや」

「わかった。でも9月がゼロやったんは事実やで。得票数を基準にするとこれまでで最低の出来ってことや。どや、文句あるか?」

「ない」

「えらいあっさり認めたな」

「最低かどうかは知らんけど、出来が良くないんは事実やからな」

「そやろ。物書きとしてはそろそろギブちゃうか?」

「ギブ?将棋部のこと?」

「アホ、ギブアップや」

「ギブアップ?てことは俺の勝ちやな。ところで、何の勝負してたん?俺ら」

「…もうええわ」

最優秀作品賞受賞を振り返って Mr.アールグレイ

  • 2017.10.20 Friday
  • 00:00

最優秀作品がほしくてもほしくても獲れなかった女、アールグレイです。

今回賞を頂けたことを大変うれしく思っております。

ありがとうございます。

 

MVP1月度に頂きまして、最優秀はいつか獲ってみたいけれど作品の性質上獲れなそうだと思っていました。

それが今回201612月の振り返りが終わったタイミングで言わば「お疲れ様賞」とでもいうような形で頂けたのは大変意外で、びっくりしています。

また、投票でのコメントを読んで大変うれしかったです。

何度も読み返してしまいます。

御礼の意味を込めてご紹介します。

マルーンさんから。

一つのことをやり遂げると言うことは、とても大変なことだからです。私はアールさんのお褒めの言葉にとても励まされましたけれど、それをアールさんにお伝えする機会を持たなかったことを、私の力不足として、口惜しくまた寂しく思います。」「最優秀とおなじ。一口に書評といっても、いろんな切り口を試していらっしゃるなと思っていました。

 

マルーンさんはとても高いレベルで表現しておられる方で、いつも素晴らしいなあという思いと少し妬ましいなあという思いで拝見しています。

そんな方から投票を頂いて、こんなにうれしいコメントまで!

ありがとうございます。

 

普段生きていると(元々人と自分を比べることにあまり興味はないのですが)妬ましいと思うことはほとんどありません。

でも、PREMIERに書く側で参加するようになって妬ましいという気持ちが出てきたのはとても新鮮です。

マルーンさんはPREMIER以外でもお忙しいと思いますが、どうかPREMIERで書き続けて私の妬みの対象でいてください。

私ももう少し上手になりますから。

 

ダックスフンドさんから

2016年を振り返りきった根気への敬意と、「あけおめ!」の気持ちを込めて。

ありがとうございます。

大変遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!

 

純粋な読者の方(変な言い方で申し訳ないのですが・・・。)から投票を頂くのは書き手で参加されている方から頂くのとは違った意味があると思っています。

根気というのは同じことを続けることかと思います。

その意味では私は根気がある方だと思います。

毎晩ストレッチ、しています。

毎晩お祈り、しています。

振り返りについては毎回違うもので、毎度途方に暮れながら書いている、というのが正直なところです。

ですが、それは書いている側の事情であって、うんうん唸りながら毎度別の回路がパカンと開けるような思いをし書いた物が、「振り返り」という定常的なコンテンツ、一定のクオリティを保ったコンテンツになっていたという評価をダックスフンドさんから頂けたのは(「根気」という一語からここまで引き出してみたのですが、拡大解釈であることは重々承知ですよ。)大変嬉しいです。

これからも是非よろしくお願いいたします。。

 

がりはさんから。

アールにはお疲れ様という意味で。最近一作一作に対するコメントも充実してきている

上から目線でありがとうございます。

同級生なのに高校の時から常に上からくるがりはさんには時々いらっと来ますが、今回はありがたく受け取ります。

書いてみるとがりはさんの凄みが改めてわかります。

相談室があれだけ続いていて、一切解決に向かわないところとか本当に尊敬しています。

普通、どっかでまともに受けちゃいますものね。

あ、3回ありましたか、真剣な奴。

影響を受けて私もまともに振り返らないで自分のインスピレーションを展開するやつをやってみたのですが、それはどうでしたか。

あと、私のことはいいんでけど、マルーンさんに暴力を振るわせるのはどうかと思います。

私のことはいいんですよ。

(雪崩式フランケンシュタイナー、今度出してみたいです。)

がりはさんもたまには暴力のない世界で、プロレスしてない世界で、面白いMVP会見をしてほしいなあと思います。

 

またながくなってしまいました。

皆様にぜひ伺いたいです。

良い振り返り、悪い振り返りがあったかと思うのですが、これは良かったよ、というのがもしあればコメント欄で教えてください。(15)などと、番号だけで教えて頂いても結構です。今後の取り組みに生かしますので。

私はこれから2017年を振り返っていくのかどうかから、考えたいと思います。

今回は本当にありがとうございました。

 

鉄の海(70) by Mr.ヤマブキ

  • 2017.10.19 Thursday
  • 00:00

 往診医への依頼や介護サービスの調整などMさんの退院準備を進めている間、Fさんの状態も徐々に悪化していた。モルヒネの量は順調に増え、内服から皮下注射へと変更した。必要な酸素量も増え、鼻からの吸入ではなくマスクでの吸入となっていた。一週間前に自宅で生活していたとは思えない状況だが、そういうものなのだ。癌での弱り方はy=-xのような単調減少ではない。芸能人が死の数週間前まで舞台に立っていた、などと報道されるように、意外と最後の方まで緩やかだ。そこから一気に悪くなる。Fさんはまさに最後のその時期だろう。数日ということもあり得る。彼の息子からの連絡は、まだない。

 

「ああ、先生」

「……どうですか」

「この手見てくれ。むくんでるだろ。なんでむくむんだろうな」

「栄養状態が悪いとむくんでくることがあります。なかなか食事も取りにくい体調ですから」

「そうか。こんな大層なのもついて」

 

 と、Fさんは口元のマスクを握る。

 

「体もむくんでるし、どうなるんだろうと思ってな」

 

 どうなるんだろう、という問いには、死ぬのだとしか答えようがない。それはFさんも分かっているはずだ。はずなのに問わざるを得ない。末期がんで死ぬことを分かっていて、死ねるなら「ちょうどいい」と言っていたFさんにも体のむくみといった間接的な変化が恐ろしいのだ。それは、「ちょうどいい」が虚勢であったのかもしれないし、差し迫る死をひしひしと感じるところに来たからこそ生々しく死の恐怖を感じているのかもしれない。あるいは、幽霊はいないと分かっても暗闇が怖いという心理だろうか。それならまだ死自体は「ちょうどいい」と思っているのかもしれない。それ以上は読めないが、得体のしれない恐怖がすり寄っているのは間違いないことだろう。

 

 また一日、一日と呼吸状態は悪化して、呼吸も荒くなる。

 

「せんせい。あいつは、くるかな」

「仕事を調整して来られるみたいですよ」

 

 はあ、はあ、と荒い呼吸が続く。ガラス片が淡いブルーの煌きとともに心に刺さる。

 

「そうか。……あやまりたい」

「え?」

「たぶん、まにあわねえ。すまんって。たのむわ」

 

 Fさんは弱弱しく右手を上げる。

 

「……分かりました」

 

 次の日にはFさんはほとんど眠ったように過ごしていた。顔はむくんでいるが割と穏やかな表情だった。息子にもう一度電話してみる。

 

Fさんはもう数日か、もしかすると今日中ということもあり得る状況になって来られています」

「そうですか……。しかし、すみません……」

「……そうですか」

「申し訳ないんですが、もし亡くなったらお電話いただけませんか?厚かましいお願いで申し訳ないのですが、そのことは知っておきたいんです」

「分かりました」

明るい悩み相談室PREMIER(253)〜部屋が殺風景〜  がりは

  • 2017.10.18 Wednesday
  • 00:00

明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。

こんばんは。

今日はどうされましたか?

 

何か消費財では無いものを買うたびに、「引越しのとき邪魔になるかも」という考えが頭をもたげます。そのせいで旅行に行っても記念品とか買えず、部屋が殺風景です。どうすればよいでしょうか?

 

ほうほう、わっかりますわっかります。

私の妻はそういう考えの持ち主で、私が購入してきた思い出グッズを隙あらば捨てようとするので困ります。

友人が南国に行って買ってきてくれたマラカス、寝坊で遅刻した私のために先輩が買ってくれた音が大きすぎて使えない目覚まし時計(ドイツ製)、もう着れないくらいヨレヨレになるまで着た真心ブラザーズのLOVE&PEACEシャツ、友達がくれたぬいぐるみたち、底が抜けるほど履いた赤い革のスニーカー(また抜けたので今は履けない)など思い出たっぷりで私の人生を彩ってくれています。

彼女は「使わないし飾ってもないものなんかなくても一緒でしょう。」と言います。

確かに飾ってませんけどね。

消費財であるノートやペンを買っても怒られる始末です。

「もう家にあるでしょう!!」て。

いつか使うのにねえ。

 

友人の家に遊びに行ったら模造刀がでーんと飾ってあってのけぞったことがありました。

リビングの机の上に乗ってるんですよ?

「これどうした?」

「博多で買った。」

「お、おう。」

となったのですが、それ以上の踏み込みを許さないサムシングがそこにはありました。

飾ってあっても「お、おう」となるものは存在しますね。

 

フィギュアやプラモデルが好きな後輩が結婚する時に悩んでいましたが、結局コレクションを新居に持ち込みました。

一年経って彼のフェイスブックに「今までありがとう」というコメントともにコレクションが破棄されたあとの陳列棚の写真が。

彼は何かを卒業したのでしょう。

卒業して一体何がわかったというのか、聞いてみたいところです。

 

あなたに一点伺いたいのは「買ったことがあるのかい?」ということです。

買ったことがないのに悩んでいるのであれば買って悩みましょう。

悩んで悩んで要らないなら捨てればいいんです。

反省してください。

でも買ってないならそれは机上の空論であり、悩んでいる振りであり、日本経済は1mmも回らないわけです。

「戦う前から負けることを考えるやつがいるか馬鹿野郎!!」

私の尊敬するレスラーの言葉です。

 

私の尊敬する作家が急逝した時の遺品整理をしていたらビニール袋二袋分の携帯ストラップが出てきました。

最後には家族が整理してくれますから、無駄な物を買っても大丈夫ですよ。

 

※明るい悩み相談室PREMIERではあなたのお悩みを受け付けております。

ブログにコメント、投票時にコメント、ハッガリーニにメール、電話、伝書鳩、のろし、などの手段でどうぞ。

ちなみに投票時のコメントでのお悩みには必ず回答いたします。

野球偏考(8)〜終戦〜 たりき

  • 2017.10.17 Tuesday
  • 23:13

クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージにて1勝2敗で敗退が決まり、阪神タイガースの2017年が終戦した。

シーズン終了後すぐにCSに入ったためペナントレースの総括を書くことができなかったが、それは後ほど書くとしてここではCSの総括・感想を書いていきたいと思う。

 

まず一言、弱いなということ。

シーズンでは17個の貯金を築いたものの、信頼できる先発ピッチャーが足りていないことや2戦目、3戦目で打ち負けたことを考えるとよくそんなに貯金を作ることができたものだと思う。

だましだまし勝ち星を拾っていったということなのかもしれないが、それならば采配が上手かったということなのかと問われればそうだったのかもしれない。ただし、CSに限ればまったくそんなことはないだろう。

 

雨が降りしきる中で強行された第2戦、先発の秋山の交代タイミングはさすがに早すぎたのではなかろうか。テレビ解説では調子が良くないため早めの継投といったことを言っていたが、ちょっと腑に落ちないところもある。雨の中の試合のため、コールドゲームとなることを見越した上の継投ではなかったのだろうか。

そうやって先発投手を3回で降板させてしまったため、後々の継投が難しくなってしまった。

7回に桑原が大量失点しまったのは結果論だが、果たして桑原に投げさせるべきだったのか。桑原はその前日の第1戦で1回をゼロ点に抑えたとはいえピンチを背負ってしまった。シーズン序盤では面白いように外角いいところに決まっていたボールが中へ中へと入ってしまって、疲れが溜まった後半の桑原の投球になってしまっていた。テレビ解説ではピンチを背負ったところで交代させるべきと言っていて、さすがにそれはどうかなあと私は思っていたのだが、その次の日に同点の場面で投げさせるべきではなかったのではないかとは思う。

雨の中の投球ということもあって、あそこは経験のある藤川に投げさせるべきではなかったかと。それも、1回限定というわけではなく延長まで見越して2回くらいは投げてもらうという想定で、である。

さらに言えば、これは完全に結果論で今思いついたことなのだが、誰もが2戦目の先発を予想した秋山を温存して他のピッチャー、例えば雨天ノーゲームとなった広島戦で先発していたベテランの能見に先発させるといったことはできなかったのか。仮に第3戦まで進んで秋山を投げさせざるを得なくなった場合、ファイナルステージのことまで考えるとその後の先発ピッチャーのローテーションが厳しくなるというデメリットはあるものの。。

第3戦で能見を早々に降板させたのは、そのタイミングはここしかないといったものだったと思うのだが、第2戦の投手起用については疑問が残る部分も大きいように思う。

第1戦で大胆にも井納を先発させたラミレス監督と比べると、投手起用では完全にラミレス監督が上回ったと言わざるを得ないだろう。

 

もう一つ、第3戦のスタメンを見たときに私は非常に落胆した。第1戦、第2戦と8番キャッチャーが変わっただけだったからだ。

第3戦の先発は右のウィーランド、左の雜のどちらかわからない状況ではあった。そのため不動のオーダーで挑んだというのであれば無策すぎないだろうか。

第1戦では普通に考えれば今永が先発のはずで、その中でも井納先発の可能性も示唆されていた中、守備に重きを置いて1番センター俊介、7番ショート大和としたのはそうするべきだろう。第2戦は第1戦で勝った流れがあるからスタメンをそのままとしたのは理解できる。

ただ、第3戦はどうか。第2戦でDeNA打線が打ちまくったことを考えると投手戦ということは考えにくいのではなかろうか。大和は打率も残しているから例えば糸原を先発させるというのは賭けのようなものでやりにくいところもあるだろうが、俊介は第1戦、第2戦とあまり打てていないから守備に目をつむってでも中谷か高山をスタメンとするべきではなかっただろうか。

これは、結果論ではなく試合開始前に周りに言っていたことなので確認してもらってもいい。

結果的にも、試合の早い段階で大和に替えて糸原を試合に出すということは間違いを認めたということにならないだろうか。(俊介は最後まで出場していたが。)

 

もちろん、いろいろと書いてみたものの采配は結果論のところもあるので、要するには弱いから負けたといことに他ならない。ただそれだけである。

来年、どのようなチームとなっていくのか、期待したい。

 

CSファイナルステージについて。

広島としては阪神ではなくDeNAが勝ち上がる方が嫌だったのではないだろうか。何といってもシーズンで唯一負け越しているチームなのである。

とはいえ、広島のチーム力に加えて、1勝のアドバンテージ、また全試合マツダスタジアムで試合ができるということを考えるとやはり広島が優位には違いない。

どのような戦いとなるのか、のんびりと観戦したい。

欲張り父子 Mr.Indigo

  • 2017.10.17 Tuesday
  • 00:00

「この子は欲張りだよね」

半年ほど前だったか、妻がぼそっと言った。ウチの長女のことである。妻は何気なく言ったのだろうが、私にとっては心に残る一言になった。欲張りか…。

確かに長女にはそんな一面がある。休日ともなると、図書館と商業施設と複数の公園に行きたいなどと言い出すこともある。言うまでもなくそれだけのメニューをこなすのは時間的にも体力的にも困難なのだが。


先日は「ジャングルジムのある公園に行きたい」と言い出した。少し前に保育園のクラスで行ったらしい。しかし、我が家の近所にジャングルジムのある公園はない。

話は若干それるが、ウチの娘達が通う保育園には園庭がない。たいていは先生達が公園に連れて行くのだが、同じ公園ばかりだと子供は飽きてくる。だから次女のクラスも複数の公園を使い分けているし、長女のクラスだと体力があるからさらに選択範囲は広まる。それで少し遠い公園に行き、ジャングルジムが新鮮で楽しかったということだろう。

一応思い当たる公園はあるが、我が家からだと1km以上ある。ただ、休日は人が多いだろうし、ジャングルジムは小学生たちに占領されているかもしれない。しかし、行かないと長女が納得しないだろうから、まあ行ってみよう。

私の懸念は杞憂だったようで、公園はガラガラだった。長女は着くやいなやジャングルジムへ直行。次女は滑り台に連れて行った。今風の趣向を凝らしたプラスチック製の滑り台で、傾斜も緩く危なそうなところはない。階段さえ注意すればよちよち歩きでも大丈夫だ。

次女はひたすら滑り台で遊んでいる。傍目からすると単調に見えるが、誰の手も借りずに一連の手順をこなせるのが嬉しいのだろう。

長女もほどなくこちらへ移動してきた。ジャングルジム目当てで来たというのに、あっさりしたものだ。保育園の友達が一緒だから楽しかっただけなのかもしれない。

もっとも、妹の相手をしていることもあれば、離れてブランコなどで遊ぶこともあった。本当は私に相手をしてもらいたいのだろうが、妹は動きがまだ危なっかしいから、父はそばにいなければならない。それを理解して、父子3人の時間と自分1人の時間を両方楽しもうとしているのだろうか。

結局、この公園には3時間近くいた。2人とも実によく遊んだ。「そろそろ帰ろっか」

「えーっ、まだ遊びたい」

「もう夕方だよ。少し暗くなってきたじゃない」

「うん」

一応は納得したようなので、次女をベビーカーに乗せ帰路につく。

「ねぇお父さん、大けやき公園行きたい」

長女の発言に私は面食らった。大けやき公園は家のすぐ近くだが、そもそもここから帰宅するだけで午後5時を回る。どうしても行きたいのなら、こちらの公園をもっと早く出なければならなかった。

ちょっと考えれば、そんなことはわかるはずだ。しかし、長女の脳内では次から次へとしたいことが湧き出てくるのだろう。その欲求を言葉にするから、欲張りに見えるのだ。


もっとも、私も長女のことを言えたものではない。理想主義者というのは基本的に欲張りだと思うのだ。

「後半生は自分が本当にやりたいことを仕事にしたいなぁ」

ある時ボソッと言うと、すかさず妻に突っ込まれた。

「本当に好きなことを仕事にしてる人なんてほとんどいないよ」

その一握りになりたいのだから、私もやはり立派な欲張りなのだろう。


最優秀作品賞受賞記者会見にかえて  がりは with A

  • 2017.10.16 Monday
  • 12:00

身長185cmくらい、頭にはターバン、顔の輪郭を覆うように黒いひげがもじゃもじゃ、上半身は浅黒い肌をさらして、使うことで大きくしてきたナチュラルな筋肉を見せつけている。

下半身は白のゆったりとしたパンツを腰紐で引き締め、靴は履いていない。

何より特徴的なのは口にくわえたサーベルだ。

アリ・ホッグァーのことだ。

記者会見に同席してくれとオファーしたところ、こんな格好で来たので会見は今回中止してインタビューの模様をお届けするにとどめる。

レスリングで本人曰く「オリンピック手前のいいところまで行った」という。

生まれはイラン、今の年については笑って教えてくれないが国籍は「今はカナダ」とのこと。

私がアラブの春について書いた記事を彼が読んでコンタクトを取ってきたことがきっかけで、しばらくメールでやり取りしていたが、会って話をするようになった。

仕事は物を考えることだ、と言うのだが、どうやってお金を稼いでいるのかと言い換えたら金は手段であり物差しだ、金を稼ぐために何かをすることは私はない、金など雨のようにどこからか降ってくる、ウゴノタケノコみたいにな!と大きな声を出された。

普段はもちろん上記のような恰好はしておらず、ストライプのはいった紺のスーツを愛用していて、会うときはいつもその格好だ。

長く縮れた髪を後ろで束ねている。

 

―この間のあのインタビュー、あるサイトで賞を取りました。ありがとうございました。

 

そうか。インタビューのコンテストか?あれはほとんど私が話して、あなたは文字起こししただけだ。その賞は私のものだ。

 

ー日本語にするの大変なんですよ。でも、まあ、ありがとうございました。それはインタビューのコンテストではなくて、千字くらいのテキストを書いて、一番良かったものに投票するんです。

 

投票?そういえば日本も投票の季節だな。お前も投票するのか?ほう。何党にいれるんだ?

 

ーそれは言いません。

 

そんな名前のパーティーがあるのか?さすが日本、変わっているな!

 

ー自分がどこに投票するかなんて、なかなか口に出さない文化なんですよ。

 

え?何を目的に投票してるんだ?

自分の理想の国の形に近づけるためにやってるんだろう?

一人でも多くの人を説得してより良い政策を実現できるような投票行動を促さなくてどうするんだ。

駅前で立っている政治家、車でわーわーとわめいている政治家に議論を吹っ掛けたことがあるか?

吹っ掛けなくてよく投票先が選べるな。

君は議会制民主主義を完璧に誤解しているぞ。

それはそんな機会すら与えられなかった我々からすれば甘え以外の何物でもない!

 

ー上半身裸でサーベルくわえてるくせによくもまあそんな立派なことを言いますね!

 

だってすっきゃねん!めっちゃすっきゃねええん!


―なんでいきなりたかじんなんですか。


これはウケないのか。日本人は難しいな。


―あなたの日本語のコーチは誰なんですか。


(無視して)

政治家だって君と変わらない人間だ。

みんながよい議論を普段から積み重ねて、そのエッセンスが彼女や彼に入るようにしなければ、議会制民主主義なんて独裁よりたちが悪い。

今の政治を見てみろ、アベがボスの党はアベと同じことを言わなくてはならない、コイケの党はコイケと違うことを言えば排除される、議論の余地がない、排除された人、それを応援している人のことは虐待すると言わんばかりだ。

真のリーダーであれば自分の意思決定で不利益を被るかもしれない人に対してこそ配慮しなければならないのに!

あれは彼らの魂の濁りの象徴であるとともに君たちが普段から議論を積み重ねてこなかったことの象徴だ。

真剣に議論していれば蔑ろにしたらどうなるか、馬鹿でもわかる。

あの最高で最低の帝国ですらここまで腐っていない!

私はバラク・オバマのことももちろんあの低能パート2のことも決して許していないがな!

で、君が賞をとったそのサイトでは議論は活発なのか?

中身の話、それを表現するテクニックの話、順番の話なんかもあるだろう?

 

ー正直、そこまで活発に議論があるとは言えません。

 

じゃあ君のその粗末なインタビュアーとしての能力も、私の卓越したインタビュイーとしての能力も正当に評価されず、どこを修正したらより良くなるのかも示されないのか。

確かに、君の内なる神と対話することでしか、究極的には成長はもたらされないとは思うがね。

日本にはヤオヨロズの神がいるんだろう?

皆の内なる神の意見を持ち寄ったほうがいいんじゃないか?

三人寄れば文殊の知恵なんだろう?

 

ーご意見ありがとうございます。そういえば三人の方が我々の作品に投票してくれました。

 

おお!!ぼうけんのしょとぼうぜんが受けたんだな!ハハッ!!選んだ奴もセンスがあるな。

 

ーそこじゃなかったんですけどね。。。

 

そろそろ寒いから帰るよ。ちゃんと議論を積み重ねて思考の強度を保つんだぞ。それは金と違って減らないからな。頼むぞ。


現場からは以上です。

アリさんに聞きたいことがあれば代わりに聞いておきます。コメントでくださいね。 

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