【テーマ】都道府県の風景と私(30)和歌山県  Mr.Indigo

  • 2019.02.22 Friday
  • 09:22

 

私の父方のルーツは和歌山県にある。高野山のたもとにある高野口という町で、平成の大合併によって橋本市の一部となった。93歳の祖母や叔母など親戚が住んでいるので、今も年に1度訪れる。

橋本のあたりは和歌山市との繋がりが薄く、大阪志向が強い。和歌山へ行くより大阪の難波へ行く方が早いし便利なのだ。白浜や熊野三山などは完全に別世界である。

和歌山県は山地が大部分を占めていて、人の居住に向いているのは沿岸部と紀ノ川沿いくらいだ。カタカナのフを左右逆にした感じで、橋本は横棒の先端にあたる。そして、毎年私が訪れるのは地元・奈良に近い先端部分だけである。足を踏み入れてはいるが、和歌山県へ行ったという感じは全くない。

 

高野山には数回行った。最も近いのは17年前、祖父が亡くなった直後だ。

場所が場所だけに、宗派は高野山真言宗である。近所にある真言宗寺院で葬儀が行われた後、遺骨の一部を高野山に納めるということで、親族3人で奥の院まで行った。

近いといっても高野山はかなりの山であり、高野口とは700mほどの標高差がある。国道370号をひたすら登り続け、金剛峯寺の駐車場まで1時間ほどかかった。傾斜はきついし急カーブが多い。景色は良いはずだが、楽しむような余裕はなかった。数日間ずっとバタバタしていて、かなり疲れていたのだろう。

駐車場からは少し歩いて奥の院に向かう。参道沿いには広大な墓地があり、歴史を感じさせる墓石が並んでいる。戦国武将など著名人の墓も多く、知っている名前があちこちにあるので、歩いていてなかなか面白い。

奥の院で手続きを行い、供養を受ける。年齢の割に寺院に参拝した経験は多かっただろうが、特殊な目的でしか入れない空間は初めてだった。堂内は真言密教の世界が表現されているのだろうが、何が何なのかほとんどわからない。ただ、とにかくものすごい迫力があった。

供養が終わり、来た道を通って高野口に戻る。短い時間だったが、得難い経験だった。

かつて弘法大師空海が人里離れたこの地に道場を構えたのは、俗世と距離を置くためだった。山が万人に開放された今も俗世とは全く違う空気が流れているから、そのコンセプトは守られているのだろう。

高野山の空気はいささか重い。煩悩の塊のような自分が来て良いのかと思うほどだ。しかし、そう思うことに意義があるのだろう。自分を見つめ直すように衆生を導くことは、宗教の大切な役割のひとつだと思うからである。

サウジアラビア紀行(8)外国人 Mr.ホワイト

  • 2019.02.22 Friday
  • 00:00

 すでに書いたように思うが、サウジアラビア人はとにかく働かない。国家歳入の9割を占める石油収入を国民に分配しているので、サウジアラビア人には税金も教育費もかからないし福祉は非常に手厚いしなんなら公務員として雇ってしまう。さらにサウジアラビアは人的関係が濃い社会なので、外国企業がサウジでビジネスをしようとする場合に紹介料をとったり(いま日産のゴーン事件で問題になってるのもこれ)、縁故入社したりさせたり、不動産を転がしたりと、「サウジアラビア人であること」を利用して色々と金を稼いでいる。やはり彼らは商人なのだ。

 

 これだけ働かないサウジアラビア人だけでは世の中がうまく回るわけがないので、サウジアラビアにはとんでもない数の外国人労働者が集まって3Kの仕事のすべてを請け負っている。実に労働者のおよそ半分が外国人であり、工場労働者、建設作業員、オフィスワーカー、ドライバー、ウェイター、看護師など、どこに行っても外国人だらけ。国籍はインド・パキスタンがもっとも多く、周辺国のイエメン・スーダン・シリア・レバノン、アフリカのエジプト・モロッコ、英語が話せるフィリピンなども多い。ミーティングをすると4〜5カ国の国籍の人間が集まってそれぞれの訛りの英語を話すので、これはなかなか辛い経験だった。訛りがどうこう以前に単に英語ができないだけではあるのだが・・。

 

 サウジアラビアでも外国人労働者は低賃金で働いており厳しい状況にあることには違いない。外国人労働者の仕事は3Kの仕事が多く賃金も低い一方、サウジアラビア人は働かないくせに裕福だという歪んだ社会になっている。ただ、裕福で何もできないサウジアラビア人が会社のトップに居座って、外国人労働者を奴隷のように働かせているかというと必ずしもそうではない。少なくとも私が現地で目にしたのは、レバノン人の上司にサウジアラビア人の部下がついているという状況だった。

 

「外国人が上司でサウジアラビア人が部下、というのは珍しいんですか?」

「いや、別に普通にあると思うけど。」

「あ、そうなんですか。」

「え?だってそうじゃない?」

 

 また馬鹿な問いかけをしてしまった。サウジアラビアには聖地マッカ(メッカと発音するのは日本人だけ)があるため大昔から外国人が多い。そしてサウジアラビア人は商人であるため外国人とやりとりする機会も昔から多かった。外国人が国内にいるのは彼らにとっては普通のことで、おそらく我々がイメージする「外国人」とは捉え方が違う。

 

 いま、日本で働く外国人労働者もほとんどは低賃金できつい仕事をしている。出入国管理法を改正して外国人労働者を増やそうとしているけれど、これは建設とか介護とか日本人が嫌がる仕事を外国人にさせようというもの。まるで奴隷を輸入するみたいに。たぶん、サウジアラビア人よりも日本人の方がはるかに外国人労働者を差別している。低賃金だし差別されるし英語は通じないし外国人に厳しいので、僕が思うに、インド人やフィリピン人の「部下」は日本に来ない。おそらくこれから日本にやって来るのは、中国語と英語しか喋れない中国人の「上司」だろう。「部下」になるのは我々のほうだ。

 

【テーマ】都道府県の風景と私(29)奈良県  Mr.Indigo

  • 2019.02.21 Thursday
  • 09:30


奈良県は私の地元である。生まれは岡山県だが、住んだ年数は奈良が最も多い。

奈良の魅力はなんといっても神社仏閣である。県内には3つの世界遺産(法隆寺地域の仏教建造物、古都奈良の文化財、紀伊山地の霊場と参詣道)があるが、いずれも信仰に関連する構成資産がほとんどだ。

同じ古都である京都と比較した場合、奈良の特徴は古さということになるだろう。京都は長らく国内有数の大都市だったから、古代から近世までさまざまな時代の寺院がある。一方、奈良はほとんどの寺院が奈良時代以前の創建だ。中世から近世にかけて文化の発展から取り残されていたので、古代の面影が色濃く残されている。

国宝級の仏像が多数あり、手軽に拝観できるのも良い。東大寺の盧舎那仏像、興福寺の阿修羅像、薬師寺の薬師三尊像といった日本を代表する仏像美術が一年中公開されていて、いずれも駅から近く料金も安い。仏像好きにはたまらないエリアだと思う。

ただし、グルメは逆立ちしても京都には勝てない。京都のように各地の食材が入ってくるわけではないし、鎌倉・室町時代は寺院が大部分を支配していた。華やかな食文化が醸成されるはずがないのだ。

 

奈良県内には数多くの観光名所があるが、敢えて1つおすすめを挙げよと言われたなら、私は奈良公園と答える。何の捻りもないが、奈良の魅力が最も集約されていると思うのである。

奈良公園には東大寺、興福寺、春日大社という大きな寺社がある。いずれも建物には風格があり荘厳な雰囲気が漂っているが、それだけでなく緩さも感じさせる。

その一番の原因はおそらく鹿であろう。餌に困ることもなく、ぶらぶらと歩いたり休息をとったり自由気ままで、世界遺産の寺社の境内でも見境なく糞を撒き散らしている。野生動物ではあるが人間に慣れていて、刺激しなければ怖いところは全くない。

ただし、鹿が近くにいるところで弁当などを食べるのは避けるべきだ。食べ物を見ると鹿がすぐ近寄ってくる。人間の食料を奪うだけでなく、誤ってアルミ箔やビニールを食べてしまうこともある。奈良公園に行くのなら、鹿に最大限の配慮をしなければならない。

奈良公園を代表する景観として、猿沢池の畔からの眺望を紹介しておきたい。池の向こう側に興福寺五重塔がそびえるというカットはガイドブックなどでもおなじみである。

しかし、この景観は変貌しつつある。現在興福寺整備計画が進められていて、長い歴史の中で失われた建物の再建工事が行われているのだ。

慣れ親しんだ興福寺の風景が失われるのは寂しい。また、歴史ある名刹に真新しい建物が加わることに全く抵抗がないとは言えない。しかし、興福寺の関係者からすれば、全ての建物が揃った状態が本来あるべき姿であろう。かつて戦災などで堂宇が失われた時も、新しいものが再建されたのだ。

幸いなことに、奈良には薬師寺という再建の成功例がある。昭和50年前後から金堂や西塔が次々と再建され、今はすっかり周囲の景観に溶け込んでいる。

私が老人になる頃には、昔からある建物と再建された建物が調和し、薬師寺のように何の違和感も覚えさせない景観が形成されていてほしいものである。 

 

鉄の海(112) by Mr.ヤマブキ

  • 2019.02.21 Thursday
  • 00:00

「娘様のお気持ちはよく分かりました。Tさんを大切に思っておられることも伝わってきました。では、胃瘻をしてみる方向で考えてみましょう」

 

 電子カルテから胃瘻の同意書を印刷する。

 

「こちらが同意書です。胃カメラを使って胃と皮膚に穴を通し、そこにチューブを入れます。合併症としては、穴を開けますから、出血や傷の感染があります。他に、胃の内容物が漏れると腹膜炎と言って、お腹の中に炎症が広がる場合があります。これは緊急の開腹手術を要することがあります。致死的な合併症を起こす割合はそれほど高くありません。ただ、Tさんの場合は大量のステロイド投与のために、感染や、傷の治りが悪いということが想定されます。よろしければ、こちらにサインをお願いします」

「やらないといけないんですよね?」

「このままよりは良いと思います」

「分かりました」

 

 そう確認した後はためらいなく記載する。五日後に胃瘻造設を行うこととなった。急にやろうと言ったのは、Tさんの娘の強い希望を無視できないばかりでなく、自分自身の中でも人工呼吸までして何とか間質性肺炎を乗り越えられたのだから、その積極的治療の方針を継続していくことが筋の通ったやり方なのではないかという気持ちもあった。胃瘻をしないのであれば中途半端に経鼻栄養で不快感の強い延命を行うのではなく、経腸栄養自体そのものを止めることを考えなくてはならないし、そこまで消極的にならなくてもよいのではないだろうか。迷いはもちろんあるが、積極的治療の継続という考え方も一つだ……。

 

 その翌日、母の胃瘻造設の前日のことだった。

 

「先生、Tさん胃瘻作るんですか?」

 

 看護師のYさんだった。大きな瞳がこちらを真っ直ぐ見上げてくる。

 

「そうだよ」

「医学的な判断は先生が決めることだと思うからそれは仕方ないと思うけど、私たちは今のTさんの現状を、どうしてあげていいか分からないんです。これでいいのかなって思うんです。だから……一度、医療者カンファをしませんか?私だけの意見じゃなくて、看護師の中でもどう対応していっていいのか分からなくて、今後の方針を確認したいんです。先生、明日はお休みでしたっけ、明後日の2時でどうですか?」

 

 翌日の母の胃瘻には付き添った。処置前の病室の母は表情はさほど変わりないものの、動くほうの手足の位置を数秒おきに変えていて緊張していることが伝わってきた。母が検査に出て、病室に父と二人で待っていた。互いに何か話そうとするのだが、話し始めるとそれはいきなり核心に突き当たってしまいそうで、二人とも口を開けないでいた。そうして凝り固まった時間に耐えられなくなって、意識は母の病室を離れ、昨日Yさんから受けた提案を思い出していた。

 Tさんに対してどうしていいか分からない、というのは納得できないということだ。思い返すと、自分の診療を否定されたような軽い苛立ちを覚える。ような、というより実際に否定されているのだ。今後の方針を確認したい、と柔らかな表現を選んでいるだけだ。どんな石ころも箱に入れて包めばプレゼントの体裁だ。

明るい悩み相談室PREMIER(322)〜読解力〜  がりは

  • 2019.02.20 Wednesday
  • 23:30

明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。

こんばんは。

今日はどうされましたか?

 

「近頃本を読んでも色々と読みこぼすようになり読解力がガタ落ちになりました。リハビリとして何かやりたいのですが何から手をつけていいのかさっぱり分かりません。」

 

ほうほう、それはそれはお困りでしょう。

人が書いたものを読んでも何を書いてあるのかわからない、文字は読めても中身が読めないということでは、文字を追っていた時間私は何をしていたのでしょう、ととても悲しい気持ちになりますよね。

私も官庁の出すとても重要そうだけれども何を言いたいのかさっぱりわからん文書を仕事がら読まなければならないことがあるのですが、そんな気持ちになります。

あなたがそのようにお困りですと私どもとしても困ります。

一生懸命書いているのはみなさまに読んで楽しんでいただくためですからね。

 

あなたようなお困りごとがある時に、「私にわかるように書いていないのが悪い」という考え方もあります。

精神衛生上は良いように思います。

あなたが目にするほとんどの文章は生死に関わるものではないと思いますし、生死に関わる文はきっと読解できると信じています。

ただ、全てを他責とするのではなく、自分にできることがあるのではないか、配牌も自摸も変えられないけど自分の責任で切る牌は変えられるのではないか、とする姿勢は素敵ですし私も見習いたいと思います。

 

最近「読解力がないなあ」と思った機会がありました。

ネット記事のコメント欄を読んだ時です。

まあ、罵詈雑言がコメント欄にいくつも投稿されていたのですが、記事を読んでいると「あれ?そんなこと書いてありました?」というようなこと、時には記事の内容と真逆に受け取ったと思しきコメントがたくさん寄せられているのを見て背筋がぞっとしました。

副業で働いている会社で、同じ会議に出席して受け取っている内容が真逆だと確認できた時の悲しみたるや。

日本語は単語だけ追っていると危険で、助詞が大切なんですよね。

記事の見出しは単語だけになっていうことも多いですし、会議の資料も単語が赤くハイライトされています。

危ない。

 

さて、読解力のトレーニングとしておすすめしたいのは音読です。

声に出して読んでみましょう。

気持ちがわかるかもしれません。

少なくとも声に出すときにいろいろと考えると思います。

絵本を読み聞かせをする時に、声に出して次の文章を読んだときに「あ、このセリフはお姫様のセリフだったのか!」などと気付いて裏声で読み直したりするのですが、極端にいうとそんな感じで。

読解力が減ったのではなく、文と文をつなぐ部分が省略された美文・悪文があなたの周りに増えているだけかもしれませんよ。

声に出してよむと接続関係については注意深くなりますので、作者の不作為を補ってあげることができます。

最近、新聞記事もその辺が緩くなっていて、読み流しているとよくわからなくなっていることがあります。

 

昔英語のペーパーバックを買っては読むという苦行に取り組んでいた時期がありまして、大好きなPaul Austerを買っていたんです。

不朽の名作Moon palaceはもちろん読みました。

しかし当時邦訳の出ていなかったTimbuktuは見事に大破、座礁。

わけがわからないんですよ、本当に。

1ページ目から。

 

一人称で語っている主人公が犬だったんですね。

 

邦訳を読んだら。

小説だからそんなこともあるでしょうね、わが国にもあるじゃないですか、一人称の主人公が猫だったやつ。

名前はまだないやつ。

己の読解力のなさが恥ずかしくて恥ずかしくて。

英語で本を読むのをやめてしましました。

 

そんな哀しい話で相談を終えるわけにはいきません。

大体、こんなの私の恥ずかしい話であって、あなたになんら関係のある話ではないのです。

私たちは受け取るべき情報をすでに受け取っている、という説があります。

新しく気付いているように思っていることも全てもう知っていることで、それはリマインドに過ぎないのだと。

あなたが読解力が・・・と言っているのは、忘れてないのでリマインドされないだけなのかもしれませんよ。

そこに書いてあることに新しいことは一切なかったんです。

あなたはもう知っているんです。

大丈夫ですよ。

 

※明るい悩み相談室PREMIERではあなたのお悩みを受け付けております。

 

ブログにコメント、投票時にコメント、ハッガリーニにメール、電話、伝書鳩、のろし、などの手段でどうぞ。

ちなみに投票時のコメントでのお悩みには必ず回答いたします

【テーマ】都道府県の風景と私(28)兵庫県  Mr.Indigo

  • 2019.02.20 Wednesday
  • 18:33


兵庫県の中心都市・神戸は六甲山にへばりつくように広がっている。街全体を通して傾斜がかなりきつく、平坦なのは海沿いのほんのわずかな部分だけだ。

そんな神戸で私は学生時代を過ごした。当時は暇と体力があって金がなかったから、坂など気にせず徒歩や自転車であちこち出かけた。東は大阪、西は明石海峡大橋のたもとまで自転車で行った記憶がある。

神戸に対する思い入れはかなり強いようで、今も1〜2年に1度は訪れる。行くのはだいたい昔行った場所で、新しいスポットを開拓することはほとんどない。懐かしさを楽しむようになったのは、私が年を取ったからだろうか。

 

神戸の魅力は数多い。北野の異人館街や南京町といった定番もいいし、相楽園や須磨離宮公園などの庭園・公園も見ごたえがある。しかし、最大の魅力は地形が生み出す眺望だと思う。

冒頭でも述べたが、神戸の急坂はとにかくきつい。登りだと自転車は押すしかないし、徒歩は登り下りとも足に負担がかかる。バスに乗っていても傾斜を感じるし、急カーブも多い。

しかし、登りきってしまえば眼下に素晴らしい景色が広がる。特に夜景は圧巻だ。神戸の街並みはもちろん、天候などの条件が良ければ大阪方面まで見渡すことができる。

私が通っていた大学はキャンパスそのものが立派な夜景スポットだった。部活から帰る時にいつも見ていたので何のありがたみもなかったが、今から思えばずいぶん贅沢な眺めだった。

昼間は工場が多い灘区や東灘区よりも須磨区や垂水区の方が良い。晴れていれば明石海峡大橋と淡路島がはっきりと見える。

私のおすすめは五色塚古墳だ。5世紀頃の豪族の墓とされる前方後円墳で、近隣では最大級の規模を誇る。

この古墳は史料をもとに復原されていて、埴輪が並ぶ墳丘の上から眺望が楽しめる。私が訪れた時は秋晴れに恵まれ、遠く紀淡海峡まで望むことができた。

神戸ではタワーや高層ビルなどの展望スポットに行かなくても街並みを見下ろすことができる。山手の標高が高いところであれば、ぶらぶらと歩いているうちに突然視界が開けてきて驚かされることもある。

もっとも、住むとなると急坂は大きな負担である。子供連れだと特に大変だ。抱っこやおんぶにしろベビーカーを押すにしろ、平坦な土地よりは間違いなく危ないし怖い。街が広がるにつれて山の方まで住宅が続くようになったが、本質的には居住に不向きな場所だと言えるだろう。

まあ、居住に不向きなほどの傾斜があるから眺望が素晴らしいのだが…。

 

【テーマ】都道府県の風景と私(27)大阪府  Mr.Indigo

  • 2019.02.20 Wednesday
  • 12:23

 

大阪は豊臣秀吉が建設した城下町であり、天下の台所と呼ばれた商業都市であり、お笑いの総本山であり、食い倒れの街でもある。さまざまな個性を有しているが、風景という観点から考えると注目すべき枕詞は「水の都」であろう。

とは言っても、大阪に河川が多いわけではない。かつては多数の堀川が流れていたようだが、東京と同様に近代化に伴って大半は埋め立てられて姿を消した。残された川の中でも、道頓堀などは神田川と大差ない。要するに、街の中心を流れる大川(場所によって堂島川、土佐堀川、安治川と名が変わる)と中洲である中之島が「水の都」のほとんど全てなのである。

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中之島は見所が多い。代表格は大正時代に建てられた大阪市中央公会堂だ。ネオ・ルネッサンス様式の名建築で、並々ならぬ風格を漂わせている。

大阪市立東洋陶磁美術館も面白い。日本や朝鮮半島、中国の陶磁器も多数収蔵していて、かなり見ごたえがあった。ほかにも中之島には噴水やバラ園などがあり、楽しく散策できる。

近年は水都大阪というプロジェクトのもとでウォーターフロントの再開発が進められている。この取り組み自体は素晴らしいことだと思う。日本の大都市の中でも大阪は特に緑地が少なく、改善が必要なのは確かだ。このあたりはオフィスビルが多く昼間に人が集まるので、良い憩いの場になっているはずだ。

私が訪れた時には「水都大阪2009」というイベントが開催されていて、多くの人々で賑わっていた。ちょうど京阪中之島線が開通した直後で、中之島が注目を集めていた頃だ。

それから10年近い年月が経った。大阪には何度も行ったが、中之島は訪れていない。足を運ぼうと思ったこともない。外部の人間が積極的に行くような場所ではないように思う。大阪に期待しているのは爽やかなウォーターフロントではないのだ。

そこに大阪のジレンマがあるのではないか。数百万の人が暮らす都市空間をより快適にするのは大切なことだ。しかし、短期間しか滞在しない観光客はそれを求めていない。京都や神戸と差別化していくためには、コテコテのコンテンツは欠かせないだろう。

大阪の魅力を増大させていくのは、なかなか難しいことなのかもしれない。

【テーマ】都道府県の風景と私(26)京都府  Mr.Indigo

  • 2019.02.19 Tuesday
  • 18:00


京都は平安時代から長きにわたって日本の首都として繁栄した。果たしてその理由は何だろう。平城京などと比べてどこが優れていたのだろうか。

奈良と京都の違いはいろいろ挙げられるだろうが、重要なポイントのひとつに川がある。奈良に大きな川がないのに対し、京都には鴨川と桂川がある。平城京は水運による物資輸送が難しく、水不足になることもあったが、京都はその心配がない。

どちらの川も京都の文化の形成において大きな役割を果たしている。特に平安京の東端を流れる鴨川は現在の市街地の中心部にあたり、祇園や清水寺に行く際には必ず渡ることになる。牛若丸が武蔵坊弁慶を倒したという伝説が残る五条大橋も鴨川に架かる橋だ。鴨川なくして京都を語ることはできないと言っても過言ではないだろう。

 

鴨川は京都の北の山中から市街地へと流れていく。水神を祀る貴船神社のあたりを流れる支流は貴船川と呼ばれていて、夏は川床が人気を集めている。以前貴船口駅から貴船神社まで川沿いを歩いたが、緑が豊かで市街地とは全く違う風情があった。川幅は狭く、四条あたりの広大な鴨川は想像もつかない。

鴨川(上流では賀茂川と呼ばれる)本流と合流して下っていくと上賀茂神社、下鴨神社がある。どちらも平安遷都以前にこの地を支配していた賀茂氏の氏神であり、非常に長い歴史を誇る。両社とも広大な敷地と森が残されていて、荘厳でありながらどことなく明るさもある。

三条大橋から五条大橋あたりが最も賑やかなところで、西岸には納涼床がずらりと並んでいる。このあたりは堤防が高いので水面から遠く、水音が聞こえるとも思えない。貴船などとは違い、夜風を浴びながら風情を楽しむのが目的だと言えるだろう。

夜になると堤防の上にカップルが集まってきて、両サイドのカップルから等間隔になるように座っていく。噂には聞いていたが、実際に見て本当だったので驚いた。

もっと夜景が美しいところも、もっと静かなところもあちこちにある。それでもこの場所が選ばれるというのは、鴨川には独特の魅力があるのだろう。それは1200年を超えるこの街の歴史が培ってきたものかもしれない。

 

【テーマ】都道府県の風景と私(25)滋賀県  Mr.Indigo

  • 2019.02.19 Tuesday
  • 00:18

改めて言うまでもないことだが、滋賀県といえば琵琶湖である。面積としては県全体の6分の1ほどらしいが、それ以上の存在感がある。

エリア区分も琵琶湖が基準になっている。琵琶湖からの方角によって4つに分けられ、湖南と湖東は都市や農地が多く、湖西と湖北は山林が多い。

また、気候も地域によってずいぶん違う。湖南は積雪がほとんどないが、湖北は立派な豪雪地帯だ。冬場に東海道新幹線は米原付近だけ銀世界ということが多い。米原市の年間積雪量は新潟市とほぼ同じである。

さて、湖北と湖西は自然が豊かだが、その景色は諏訪湖や三方五湖など他県の湖畔とよく似ている。滋賀県ならではの風景としては、湖畔に都市が広がる大津を紹介したい。

 

大津は京都から非常に近い。京都の東の山科から国道1号を進めば5kmほどで大津市街に入り、さらに少し進めば琵琶湖にたどり着く。一度歩いたことがあるが、坂はきついものの歩けないような道のりではない。

この区間は京阪京津線が国道とほぼ並走していて、終点のびわ湖浜大津駅(浜大津駅から昨年改称された)の手前ではしばらく路上を走る。路面電車というとたいていは1両とか2両なのだが、京津線は4両編成だ。電車から見ると窮屈そうだし、路上からだと交通の流れを妨げているように見えることもある。

びわ湖浜大津駅から琵琶湖は目と鼻の先だ。駅の裏手からは湖に沿って遊歩道が設けられていて、散策を楽しむことができる。水の動きや音がほとんどないので、やはり川でも海でもないということを実感する。対岸はやはり大津の街並みで、その先には比叡の山並みが見える。

少し歩くと、湖に浮かぶ城のような建物がある。これは琵琶湖文化館という施設で、周辺の歴史や文化について学ぶことができたのだが、調べたところ老朽化に伴い10年以上にわたって休館しているらしい。長く行っていないとこんなこともある。

国内外問わず湖畔というとリゾート地のイメージが強いが、大津あたりの琵琶湖はそんな雰囲気を感じさせない。観光スポットというより生活の一部というような印象を受ける。当たり前のように湖がたたずんでいるというのが、このエリアの最大の特徴ではないだろうか。


 

試合後のマイクアピール  がりは

  • 2019.02.18 Monday
  • 23:37

ZPGPヘビー級チャンピオンシップ(バトルロワイヤル形式)

がりは 〇 (31日間 テーマ作品の積み重ねによる丸め込み) ● Mr.ホワイト

 

あまりに激しい試合終了後、ざわつく館内。 

ホワイトは淡々とリングを去る。

その背中にはまだ余力が見られる。

対照的に全身で息をしながらがりはが立ち上がる。

両ひざに手を置き、ぐっとつっかえ棒にしながらなんとか体を立て直した。

支えようとする若手の手を振り払い、がりははマイクを要求。

 

「おい!ホワイト!!」

大歓声がリングを包む。

バックステージに消えかかっていたホワイトが歩みを止める。

「お前の技、四発、全部効いたよ。めちゃくちゃいてえよ。」

ホワイトが振り返る。

「でもさー、今日は俺の勝ち!!またやろうぜー!!」

さらりとした笑顔を残してホワイトはバックステージに消えていった。

がりはは両手を天に突き上げた。

アクラム・ペールワンの腕をへし折って勝利したあの日のアントニオ猪木のように。

 

「あるべきものが、あるべきところに戻っただけだ。ノープロブレム、ノーサプライズだよ。だよね?」

 

大歓声。

 

「試合前はやれ三連覇はしてないだとか、一月のがりははイマイチだとか、これだけ書いてて負けたらホワイトアウトだろうとか、色んなこと言われたよ。内容が薄いだとかな!でもさ、見てよ、このベルト。結局俺が一番似合うんじゃないの?どーですかー??」

 

その時、解説席から蒼い影がすっと立ち上がり、リングにするりと上がるとがりはの後ろに立ち、マイクを持った。

気付いて身構えるがりは。

さすがに襲撃慣れしている。

 

「まあまあ、待てよチャンピオン、トランキーロやったっけ?今日は話をしにきたんや。」

 

どよめきが広がる。

 

「こんなところで立ち話もなんやし、裏で茶でもしばこかIndigo!」

「わざわざここまで上がって来とんねん。チャンピオン、ホワイトだけ見てたら大変なことになるから覚えとけよ。今日はそれだけや!」

「そらおおきにごくろうさん。気をつけておかえり。」

 

Indigoは微笑みながらがりはに握手を求めた。

がりはが不用意に差し出した腕を極めながら素早く背後に回り、変形のアルゼンチンバックブリーカーに抱え上げた。

 

「ベストコメントは誰や?」

「みんな大切なコメントだ!俺には選べない!!」

「甘っちょろいことを言うな!」

Indigoががりはの背骨を折りにかかる。

「ぐわあああああああ」

「ベストコメントは誰や?」

「俺には選べんと言うたやろ」

「ほなこうじゃ!」

 

がりはの体が限界まで撓められていく。

過酷なバトルロワイヤルを皆から狙われるチャンピオンとして戦い抜き、最後はホワイトとの一騎打ちで極限までダメージを負ったがりはにはもう耐える術が無かった。

 

「言わんかい。」

「ぎばっぷ!!ぎばっぷ!!」

「ちゃうやろ!ベストコメントや!言わんかい」

「ぐわああああ、言う言う言うぎぶぎぶぎぶ」

「そんな投票者おらんやろ。」

「インディゴ!インディゴ!!インディゴにあげます!!」

 

どさっとがりはを投げ捨てると、Indigoはマイクをがりはの口元に近づけた。

「チャンピオン、ベストコメントは誰ですか?」

「イン・・・ディゴ」

「理由は?」

「全ての項目に・・・答えていた。」

「そうか。ほかに言うことは?」

がりははにやりと笑って答えた。

「インディゴ、おめでとう。これで無冠やなくなったな。来月もがんばってや。」

 

インディゴはストンピングの雨を降らし、三人の若手に抑えられながらリングを後にした。

がりはは担架で退場した。

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