【テーマ】親の背中 Mr.Indigo

  • 2017.11.24 Friday
  • 22:14
〜電車の中、押しあう人の背中に、いくつものドラマを感じて、親の背中にひたむきさを感じて、このごろふと涙こぼした。半分大人のSeventeen's map(尾崎豊『十七歳の地図』)〜
 
背中といえばまずこの曲が思い浮かぶ。17歳の青年が大人の背中を見ている。そして涙をこぼしている。尾崎豊という男の常人離れした感受性を、我々は窺い知ることができる。
ここで大きな意味を持つのが17歳という年齢である。まさに半分大人という時期で、「このごろ」という言葉からも、ようやく大人の背中が見えてきたというニュアンスが読み取れる。
同じ曲に、以下のような部分もある。
 
〜少しずつ色んな意味が解りかけてきたけど、決して授業で教わったことなんかじゃない〜
 
これも同じようにとらえて良いだろう。青年期にさしかかり、半分大人になることによって見えてくるものがあるのだ。
言い換えると、10代後半にならないと大人の背中はリアルに見えてこないということである。すなわち、それまで見えていたのは一面的なものに過ぎない。
子供は親の背中を見て大きくなるとよく言われるが、実際は大きくなることによって親の背中が見えてくるのではないかと私は思う。
 
「バカじゃ、バカじゃ、バカじゃ」
私が幼い頃、母がこんな独り言をこぼしていたのを聞いたことがある。もちろん小さな子供に意味がわかるはずがない。また、父は自らのファーストネームを連呼したり、突然猫の鳴き真似をしたりしていた。これも子供にとっては意味不明である。
ただ、自分が成長して親と同じように意味のない独り言を頻繁に発するようになり、なんとなく親の独り言の意味がわかってきた。やり場のない思いは両親にもあり、それをごまかしていたのだろう。
そして、自分が当時の両親くらいの歳になった今、なんとなくは確信に変わっている。要するに両親は自分と同類なのだ。社会が今よりおおらかだったから精神科などの世話にならずに済んだだけではあるまいか。
 
実際に父親業をやっていると、両親の思いがよくわかる。6歳の長女はもう日本語をしっかりと理解しているが、まだ私の内面はあまりわかっていないだろう。だから弱音は吐きたくない。後ろ向きなことは言いたくない。いずれはリアルな背中を晒すことになるにしても、まだ10年ばかり早い。30年ほど前の両親も同じ思いだったのではなかろうか。
次女もそうだが、青年期のことはなってみなければわからない。ただ、女の子だから成長とともに母親の影響が強まるのではなかろうか。父である私の背中を見ようとしないのであれば、それはそれで構わない。
とはいえ、結局は2人とも父親のリアルな背中に興味を持つのではないかと私は思っている。私の子であり、その私を人生の伴侶に選んだ人の子なのだから。
リアルな背中は口よりはるかに雄弁だ。ただ、それを見て娘たちが何を思うのかは、私の知ったことではない。そもそも多感な年頃の女の子が、父に対し率直な感想を言うはずがない。ひたむきさを感じて涙をこぼしたとしても、その姿はけっして見せてくれないだろう。
まあ、私もせっかく生きてきたのだから、参考資料にするなり反面教師にするなり、何らかの形で活用してもらえればありがたいと思う。

鉄の海(75) by Mr.ヤマブキ

  • 2017.11.23 Thursday
  • 14:37

 その肺炎患者にリハビリを行ってはいるが、意欲の低下があり思うようにリハビリや食事摂取が進まない。認知症のある高齢者が入院すると、意欲の低下がみられることがある。肺炎があるとその倦怠感から一時的に意欲低下が見られるのは当然だが、肺炎が治ってからも続くことがある。アパシーなどと言って、認知症の周辺症状の一つに分類される。

 認知症の中核症状は記憶障害や遂行能力の障害など知的能力の低下が主だが、そこから派生して起こるのが周辺症状で、それは認知症を持ちながら他者と関わるその困難さのことだ。一番有名なのはアルツハイマー病に起こる、物盗られ妄想だろうか。初期のアルツハイマー病では短期記憶障害が起こる。例えば帰宅して財布を玄関に置くとして、1分後にはそのことを本人は忘れてしまっている。すると、普段財布を置いているところのどこにも財布が無くて本人は財布を無くしてしまったと思う。本人が忘れているだけなのだが、すぐに忘れてしまうということに自覚的でないので、自分の中で目の前の現象に辻褄を合わせようと、家族が財布を盗んだ、という妄想が生まれてくる。これが物盗られ妄想だ。物を置き忘れるたびに同居の家族を泥棒と罵倒し、全員が疲弊する。

 その他にも徘徊、不眠、暴力などの多種多様な症状があり、その中の一つとして、無気力を主体としたアパシーがある。入院を契機とする環境の変化はこれらの症状を悪化させることがほとんどで、家では物忘れはあっても普通に過ごしていた人が、入院してから「おかしくなった」と家族に思われる。医者が変な薬を盛ったわけではない。そして、だからこそ高齢者の入院というのは、入院するだけで寿命を縮めてしまうのだ。病院の方が安心だからと入院させたがる家族も多い。が、それが命取りになり得る。入院直後に徘徊して転倒し、頭を打って脳出血・くも膜下出血という例も少なくない。あるいは大腿骨頸部骨折・腰椎圧迫骨折で動けなくなる。足の付け根である大腿骨頸部の骨折を起こした認知症患者の平均余命は1年程度とするデータもある。動けなくなることや長期の入院が及ぼす影響は計り知れない。足の骨折ですら認知症患者には命取りになるのだ。安易に入院させることだけが医者の使命ではない。

 しかしやむを得ず入院して周辺症状が悪くなる患者もいる。周辺症状への最大のアプローチは関わる人の接し方である。それ次第で周辺症状は良くも悪くもなり得る。病院で患者に最も関わる人は看護師だ。ただ簡単な投薬の指示を出すだけの医者とは違い、看護師の支持的なサポートがなければ認知症患者の入院治療は成立しえない。

明るい悩み相談室PREMIER(260)〜インスタ映え〜  がりは

  • 2017.11.22 Wednesday
  • 00:42

明るい悩み相談室PREMIER、本日の担当医がりはです。

こんばんは。

今日はどうされましたか?

 

SNSでの他の人がアップする食べ物の写真に対して、「イチイチ食いモンアップすんなや」とか思っていたくせに、美味しそうなものを前にして、思わず写真をアップしてしまいました。どうしたらよいでしょうか? どうでもよいのでしょうか?

 

ほうほう、わっかりますわっかります。

とても美しいものを見た時の感動、それを何度も何度も繰り返し味わうために写真に残したいという気持ち、わっかりますわっかります。

人生は短く、財布に入っているお金は有限です。

毎食毎食感動を味わいたいものですが、なかなかそうもいきません。

一度味わったあの感動を反芻したい、食べ物だけに、ということですね。

晴れ渡った空、光り輝く海、風にそよぐ緑の草原、雪化粧の木々、冴え冴えとした月、美しいものを残しておきたくて人は写真を撮ったり絵を描いたりします。

それはとても自然な欲求だと思います。

 

しかし一方で食事は時間の芸術であり、出された時点で食べごろのピークを迎えています。

写真を撮っている暇があったら食べてほしいという料理人の気持ちや、シャッター音が嫌いなお客さんの気持ちも理解しています。

私は食事を撮影しないことにしています。

ネタで食べ終わったお皿を撮ることはありますが。

私は何を食べたかよりも誰と食べたか、どんな話をしたかの方が大切だと思っていますし、シチュエーションを抜きにして料理の味は決まらないと考えているからです。(参考:明るい悩み相談室PREMIER(43)

 

あなたのお悩みは別のベクトルの話が入っていますね。

つまり、人にされて嫌なこと、軽蔑していたこと、腹を立てていたことを自分もついついやってしまって、茫然としているということです。

あなたはたどり着いたんです。

なぜ自分が腹を立て、軽蔑していたのかに。

そう、あなたもやりたいのに、何らかの力でそれを押しとどめていたんです。

それが解放された。

自己を一つ実現したんです。

なりたい自分になったんです。

インスタに料理をアップしたあなたはもう違う自分です。

生まれ変わったあなたなのです。

どうでもよくいいなんてこと、ありません!

誕生日おめでとうございます!

これからも今までしてこなかったことをして、どんどん生まれ変わっていってください。

 

※明るい悩み相談室PREMIERではあなたのお悩みを受け付けております。

ブログにコメント、投票時にコメント、ハッガリーニにメール、電話、伝書鳩、のろし、などの手段でどうぞ。

ちなみに投票時のコメントでのお悩みには必ず回答いたします。

いつの日か Mr.Indigo

  • 2017.11.21 Tuesday
  • 00:00
ヨーロッパを旅してみたいとしばしば思う。国内旅行の経験は豊富な私だが、海外は韓国しか行ったことがない。それも20年以上前の話だ。
海外旅行に興味がなかったわけではない。世界史も地理も好きだったから、行ってみたい場所はいくつもあった。しかし、金がかかるし語学は苦手だ。ツアーはカップルとか女性の団体ばかりだろうし、一人旅はコミュニケーションに不安があり過ぎる。
「あー、学生のうちに行っといたら良かったなー」
妻と出会ってから、私は何度もこう言った。妻は海外旅行の経験が豊富なのだ。自分が書誌やテレビから仕入れた知識だけ持っている場所へ、妻は実際に行っている。それが羨ましかった。
 
そんな妻と、いつか行きたい国として意見が一致したのがスペインである。ポルトガルには以前義母と2人で行ったが、スペインには行ったことがないらしい。
私が訪れたいのは、なんといってもグラナダやコルドバなどイスラム教国家の古都があるアンダルシア地方だ。アルハンブラ宮殿をはじめとする名建築や昔ながらの町並みを巡り、ヨーロッパに残るイスラム文化を体感してみたいのである。
余談だが、私がグラナダを知ったのは小学生の時だ。『ユーモア人間世界一』という本の中に「スペインはグラナダのトラックの運ちゃん(年齢が入っていたと思う)が、自殺をくわだてた。」というような一文から始まる話があり、4つの手段で自殺を図るも全て失敗したという男が紹介されていた。銃弾が全て頭蓋骨に食い止められていたとかいうその話が面白く、記憶に残ったのだ。
スペインの他の地方だと、古代ローマ帝国時代の水道橋が残るセゴビアも行ってみたい。奈良出身なので7〜8世紀の建築や美術品はそれほど珍しいものではないという意識が染み付いているが、この水道橋はそれよりもはるかに古い。2000年近く前に造られた巨大な建造物がそのまま残っているという事実は、それだけで興味を掻き立てられる。
 
ドイツも妻が行ったことがなく、私が行ってみたいと思っている国だ。定番だがヴュルツブルクやローテンブルクといったロマンティック街道の町は時間をかけて歩いてみたい。私は古い町並みが好きなのだ。川越や高山へ行った時にちょっと観光地化し過ぎていると感じたので、そんな不安がなくはないけれども。
そのほか、イタリアも面白そうで行ってみたいとは思うのだが、妻が訪れたことのある国なので優先順位は下がる。
 
ヨーロッパへ行くのなら1週間以上は取りたいから、現役のうちは無理だろう。リタイア後、2人の子供が成人してからというのが現実的だ。
しかし、そもそも60代まで健康でいられるのかも定かでない。仮に健康だとしても家庭の事情がある。まず90歳前後になっているはずの両親。元気に暮らしていればよいが、義父母も合わせて4人とも安泰というわけにはいくまい。また、長女は28歳、次女は24歳で、孫が生まれているかもしれない。
このように、いろいろ可能性を考えていくときりがない。1週間以上留守にしても大丈夫な時期というのは、それほどないような気がする。
とりあえず行ける時にスペインへ行く。次に機会があればドイツに行く。そんな感じでやっていくしかなさそうだ。
「あー、学生のうちに行っといたら良かったなー」
20年以上先のことを想像し、改めてそう思うのである。

できれば丁寧に2017年1月を振り返る(4)  Mr.アールグレイ

  • 2017.11.20 Monday
  • 20:00

前回の私の文章が妙なフォントで書かれているのは何だか釈然としませんが、こういうブログだとこちらで入力したフォントとハッガリーニさんで入力できるフォントとブログの方で入力できるフォントが合ってないとああいうことが起きるのかもしれません。

フォント(ほんと)にしっかりして!と言いたくなります。

(ちょっと思いついて書いてみたのですが、編集長がダメだと思ったら削ってくださいね。)

※編集部注 ある意味面白いので掲載。

 

201611月の振り返りを丁寧に(6 Mr.アールグレイ 

 

自作なので紹介だけー。

この中でヤマブキさんのMVPと最優秀作品賞連覇について触れているのですが、是非ご本人から解説をおうかがいしたいですね。

何を考えて普段書いておられるのか。

最近はがりはさんもMVPとテーマをよく獲っておられるので、そこのところをお伺いしたいです。

 

やまがある日記〜生駒山(642m)  Mr.マルーン 

 

マルーンさんのやまがある日記。

練習がてら、という位置づけですが、マルーンさんの数々の紀行を読んだ今、この作品を読むと改めてマルーンさんは奈良の山を愛してらっしゃるのだなあと思います。

 

オネエチャン写真やったらこっちから撮ったらええで。歩くん早いなオネエチャン。今日はひとりか。カメラ持って?ええ趣味やなァ。紅葉ももう最後やねえ。

 

このような会話の恐ろしいところは、表面上の意味とは違う意味を同時にかけられているかもしれないというところです。

特に「ええ趣味やなあ」という部分などは背筋がぞくっとしましたが、奈良は京都ではないのでそういうダブルミーニング、トリプルミーニングを日常的にかけてくることはないのでしょうか。

 

下山途中、誰もいないタイミングを見計らって、落ち葉を持ち上げて子どもみたいに投げあげてみた。少し楽しい。でも結構恥ずかしい。

 

この部分を読むまでマルーンさんは今回一人で登っておられたのかと思っていましたが、パートナーかそれに近しい存在の方と登っておられたのではないかと思いました。

初めは一人だと読んでいたので「ああかわいらしいなあ。」と思ったのですが、(パートナー以外)誰もいないタイミングを見計らって、ある種禁じられた遊びをしている様を想像して少し赤くなってしまいました。

この時の写真があるなら是非拝見したいです。

試合後のバックステージインタビュー  がりは

  • 2017.11.20 Monday
  • 00:00

が!り!は!が!り!は!

東京ドームを揺るがす大がりはコールの中、花道を引き揚げて来たがりは。

陽気なキャラクターの彼が一歩バックステージに入ると少し視線を落とした。

おめでとうございます!

と関係者から次々にかけられる言葉に珍しく目立った反応もしない。

会見場に着くまでの100mほどの道のりをゆっくり踏みしめて、大量のフラッシュがたかれる会場に入った。

入るなり用意されていたパイプ椅子で若手をこっぴどく叩き、机を蹴り倒して吠える。

「なにか聞きてえことあるのか!!」

―テーマコンテストのベルト奪取、おめでとうございます!

「この状態でよく聞けたな!それだけは褒めてやるよ!でもよ、カエサルの物はカエサルに、がりはの物はがりはに。あるべきものがあるべき場所に戻っただけだ。なにがめでたい?」

―なぜ、そんなに怒っていらっしゃるんですか?

「わからねえのかよ。今回の相手、強かったよ。正直、ヤマブキのも良かった、ヤマブキのはトラックの方もテーマに入ってたらイカれてたかも知れねえ。Xのも普通は獲るんじゃねえか、あれが。テーマ運動会だろ、ちょっとズレたところの王道、読者好きのするチョイスだよな。あれ読んで書くのやめた奴もいるだろうよ。初めは骨太の運動会批判を用意してたんだよ。でも二本読んでさ、おれも小説で行きたくなったんだよ。得意じゃねえよ、でもああ来られたら俺も行かざるをえないじゃん。」

―それはなぜですか。

「お前、頭ついてんのかよ。記者なら頭使えよ。聞けば答えてもらえると思ってんだろ。もう一回小学校からやり直して対話的で深い学びをしてこい!」

―わかりません!教えてください。

「食いついてくるのかよ。根性あるじゃん。殴ってきたらよけずに受けて殴り返す、全てを受けて立つ、それがストロングスタイルだからだよ。」

―小説で戦って勝利した、なぜ怒ってるんでしょう。

「考えて物しゃべれよ。目の前の人が怒り狂ってます、なぜか聞いてみます、てんじゃ記者じゃねえよな。推察して。」

―忖度しろってことですか。

「そんなこと言ってねえだろ。ぺしゃんこにすんぞ。」

―パワハラ反対!

「冥途の土産に答えてやるよ。前回のチャンピオンは今回どうしたんだよ!!外のタイトルの方が獲りやすそうだからってサボってんじゃねえのか?白旗上げるならはっきり上げろよな。お前が出てこないと予選みたいに見えちゃうだろ、読者の皆さんからすると。」

―ははあ。そこですか。

「9月と違って今回は少数精鋭だったよ。でもさ、もっと評価されていい戦いだったと思うんだよ。それが俺たちのせいじゃない部分で、むしろブッキーとXのが良かったせいで前回王者が出なかったことで、評価が割り引かれるのは頭に来るんだよ。」

―えー、そんなこと考えてる人いませんよ。さっさと来月のテーマ発表してくださいよ。

「カメラないところで一回話しような、お前な。じゃあ次のテーマ出してやるよ。『カイジュウ』でいこうぜ。ただし五百字だ!」

―その条件ではがりはさん負けてた気が・・・

「俺は負けず嫌いなんだよ。五百字で負けたら五百字で返すよ。ゲーム性が高い奴で負けるのは癇にさわるんだよ。」

―カイジュウというテーマにはどんな意味が込められていますか。

「漢字で『怪獣』ってんじゃねえんだよ。その辺から普通に読み解いてくれよ。頼むよ。他、なんかあるか?なければ帰るぞ。」

 

がりははベルトを腰に巻かず、肩にかけて控室に消えていった。

来月、あの男はテーマのリングに立つのだろうか。

 

 

馬券の現実(73)〜マイルCS予想〜 たりき

  • 2017.11.19 Sunday
  • 00:15

秋のマイル王決定戦マイルCSの予想です。今年は現段階で1〜3番人気が4〜5倍台と混戦ムード。予想しがいがあるとも言えますが、見当違いな予想になりそうな気も大いにします。

それでは過去の傾向から

 

続きを読む >>

鉄の海(74) by Mr.ヤマブキ

  • 2017.11.18 Saturday
  • 21:40

 治療薬を切り替えてその肺炎患者が良くなってくると、早期からリハビリテーションが始まる。確かに病院は病気を治すところだが、病気が治ったからといって退院できるわけではない、というのが現代医療の特徴かもしれない。

 運動機能を取り戻すリハビリテーションは、主にPTと呼ばれる理学療法士とOTと呼ばれる作業療法士が関わってくる。理学療法では主に歩行訓練や筋力維持訓練などが多い。認知症が高度で自分の意思で筋力を加えられない人には関節可動域訓練が行われる。関節はしばらく動かさないでいると拘縮といって全く動かなくなってしまうのでそれを予防する意味がある。だからどんな高齢者にも理学療法は有効だ。作業療法でも日常生活に即した運動訓練は行われるのだが、こちらはより生活に密着した動作の訓練になる。巧緻運動訓練といって、茶碗や箸の使い方、あるいは服のボタンの開け閉めの訓練をイメージするといいかもしれない。

 食事がとれていない期間が長ければ、高齢者では嚥下機能が低下している可能性が高く、そこはSTこと言語聴覚士の出番だ。その人の嚥下機能や喀痰の量などに応じて飲み込める食事の形態を決めていく。やわらかく形の無いものが食べやすい。が、その究極は水ではない。高齢者は食道と気管を切り替えるところの反射が落ちている。だから水だと通りが良すぎて、気管から食道へ切り替わる前に気管へ流れこんでいってしまう。水はあえて片栗粉を溶かしてどろどろにして飲ませる方が良い。食事も同じで、ミキサーでどろどろにした上にあんかけのような状態にしてとろみ具合を調整して食べることもある。

 ただ、それだけでは患者は食べてくれない。当然だろう。ミキサーでどろどろに混ぜられたものを目の前に置かれて、食欲が湧くだろうか。それしか食べられないのだから、飲み込めないのだから仕方ないだろうと思われるかもしれないが、それこそが病人扱い、というものだ。枯れ枝のようになった患者たちも尊厳を持っている。それしか食べられないのならせめて色や香りなど食べやすい工夫をする。嚥下機能が許せばミキサー食を柔らかく再固型化した食事形態も提供できる。この辺りはSTだけでなく栄養科の規模や病院の予算の問題もあるが、そうした細かな工夫が患者の回復に一役買っている。

不思議な夢の後で Mr.Indigo

  • 2017.11.17 Friday
  • 22:49
目が合った。書店の階段を上ったところだった。
目で軽く挨拶を交わす。声をかけられるような状況ではないが、彼女は私のことを覚えてくれているようだ。
店内で立ち読みをしていると、声をかけられた。
「何してるんすか?」
ビクッとした。声の主は某友人。私の交友関係の中でも有数の悪戯者だ。
「…お、おぅ」
驚きは隠せない。人に見せたくない本を読んでいるわけではないが、相手が相手だからか。
「立ち読みしてただけやん」
「そっすか」
彼はあっさりと去っていった。普段はもっとしつこい奴なのだが、ともあれ一安心だ。
別のところで立ち読みをしていると、また声をかけられた。今度は彼女だった。
「Indigoさん…ですよね」
やはり覚えてくれていた。
「あ、はい」
会話が始まる。初めのほうはどんな話をしたか覚えていないが、彼女の一言をきっかけに話題が変わったことははっきりと記憶している。
「私、Indigoさんの世界観を知りたいんです」
「それはお互いさんですよ」
我々は意気投合し、2人で帰路についた。彼女は左手を寄せてきて、私の二の腕を掴んだ。おいおい、俺には妻子がいるんやけど。
「もう家の近くなんで…」
見られたくないという意思を伝えると、あっさり応じてくれた。彼女は自転車に乗って進み始めたが、すぐに池に転落してしまった。慌てて駆け寄り助け出す。彼女も胎内にいる子も無事だった。
 
安堵したところで目が覚めた。夢だった。
 
昔から夢見が悪く、最近は特にその傾向が強いのだが、この時は気分良く目覚めた。右を見ると、すぐそばで妻が眠っていた。二の腕を掴んだのは妻だったのだろうか。後ろめたい感はあったが、珍しく良い夢を見たという思いに変わりはなかった。
夢に出てきた女性のルックスははっきりしないが、書店、世界観、妊婦から連想すると、脳裏にあったのは藤崎彩織(Saori)で間違いあるまい。すると、夢の中での自分の心理はなんとなく見えてくる。
「俺のことをわかってほしい!」
そう、それは青年のような激しく強い思いだ。
 
父親としての自分はわかってもらえている。妻はもちろん、長女の友達や彼らの保護者、保育園の先生方にも認められている。子供好きで子煩悩なのは紛れもなくありのままの自分だ。そこに何の損得勘定もない。
しかし、社会人としてはどうか。ありのままの自分は通用していない。そんな概念を持っていることすら通用しないのかもしれない。そもそも会社というのは損得勘定ありきの組織なのだから。
ありのままを大切にすることは、見方によっては頑固で向上心がないということになる。それは否定できない。仕事のために自分を変えていこうという意識が低いのだから。
自分は臆病な理想主義者を長年続けてきた。自分が自分でなくなることを恐れ、似非真人間を演じながら、ありのままの自分を受け入れてくれるところを探してきた。
そして、幸運なことに結婚活動では結果が出た。家庭を持ち、PREMIERという自分の思いを伝える場も得た。しかし、それでもまだ残っているのだ。わかってほしいという強い思いが。
きっと私はこれからも探し続けるのだろう。仕事における最高の理解者を。ありのままの私を高く買ってくれる人を。どこにもいないかもしれないけれど。
 
そして、その後も頻繁に襲ってくる悪夢に苦しめられる私なのであった。

【テーマ】夕焼け人間 by Mr.ヤマブキ

  • 2017.11.16 Thursday
  • 17:00

 日が高さを落としはじめた頃、ぼくは家から散歩に出ます。するとたちまち日は沈もうとし、黄色い街はオレンジ色に染まってしまいます。今日も夕焼けの時間がやってきました。ぼくは夕焼けを背負った夕焼け人間です。ぼくの夕焼けが淡い水色の空に滲んで溶けてしまって街に夕焼けが訪れたのです。

 夜の匂いを嗅ぎつけて、こうもりがやってきました。

 

「今日も散歩かい。それにしてもきれいな夕焼けだねえ」

 

 こうもりはいつもぼくのところへ来て優しい声をかけてくれます。でもそれはぼくのためではなく、こうもり自身のためなのです。こうもりは弱い人間の匂いに集まって、わざと優しく接するのです。彼が言うには弱い人間は夜の匂いがするんだそうです。

 

「こんな素敵な空を見れないなんてね」

「仕方ないさ。夕焼けを背負ってるんだから。それに、鏡やカメラでは見たこともあるからね」

 

 夕焼け人間の欠点は、自分の背中を見れないということです。ぼくの向く方は常に日が通り過ぎた後の夕闇です。それはいつも、すみれ色の澄んだ香りがします。全然嫌いではないのですが、ときどき、その香りに寂しくなることがあります。一度でいいからぼくの背負った自慢の夕焼けをこの目で直接見てみたいと思うのです。写真では見れても、自然の大パノラマで見るのは格別なものがあるからです。

 

 ある雨の日、空は雲で覆われ夕陽の射し込む隙間はありませんでした。そんな日でもぼくは行かなければなりません。雲の裏にでも夕焼けが広がることが重要なのです。なぜなら夕焼けが来ないと夜が来ないからです。

 そんなわけでいつもの道を散歩していると、ハトの羽のような薄暗い空に虹がかかっているのに気付きました。ぼくの夕焼けが雲に隠れてしまっているのに虹が出るはずがないのです。だからこそぼくは確信しました。虹人間しかありえません。これからすれ違う人の誰かが虹人間なのです。

 

「君かい、夕焼け人間は」

 

 そう思ったときにはすでにぼくは彼を通り過ぎようとしていて、ほとんど後ろから声をかけられてびっくりしてしまいました。期待と緊張で、返事はひっくり返ってしまいました。

 

「私のような人間に出会ったのは初めてだ」

「はじめまして、ぼくは夕焼け人間です」

「君が心配だ」

「どうしてぼくが夕焼け人間だと分かったのですか」

「私と同じようなつらい思いをしているんじゃないだろうか」

「もしかして、ぼくの背中の夕焼けが見えるのですか」

「自分の背負った美しいものを一生見ることができないという悲しみを」

 

 そこにこうもりがやってきて笑います。

 

「なんてへんてこりんな話をしているんだ」

 

「そうか、虹と夕焼けが同じ方向に見えることはないから二人の話が合うわけがない」

「こうもり君よ、これを見たまえ」

 

 虹人間はぼくと肩を並べます。たちまち曇り空が立ち退いて、茜色の光が射し込んできます。こうもりは驚いてふらふらと力なく飛んでいます。それを見て、夕焼けに虹がかかっているのだと気付きました。

 

「さあ行こう、悲しむことはない。皆に私たちの宝を見てもらおう!」

 

 こうもりが言います。

 

「ほ、ほんとうに行くのかい?」

 

 ぼくはこうもりの本当の気持ちを知っていました。虹人間とは話が合うはずがないと言って引き離そうとした意味もよく分かりました。

 

「一緒に行こうよ」

 

 こうして三人は夕暮れの町をどこまでもまっすぐ歩いたのでした。

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